今回は、中学・高校生向けにおすすめの初夏の俳句集を紹介していきます。
ご紹介する俳句の中には、たくさんの人が知っている有名な句や個人的なおすすめの俳句もありますので、この機会にぜひ俳句に触れて楽しんでみてくださいね。
木漏れ日の
ジグソーパズル
初夏に揺れ#俳句 pic.twitter.com/KgP9OcS2O7— みずたま (@k_mizutama) May 26, 2015
この記事を読み終わるころには、あなただけのお気に入りの一句が見つかるかもしれません。
目次
「初夏」って何月?どんな季節?
みなさんは、『初夏』という言葉を知っていますか?
『初夏』は、現在の暦(こよみ)では、5月の初旬から6月の初旬のことを言います。
そもそも日本では、1年を24の季節に分けるという、【二十四節気(にじゅうしせっき)】という考え方があります。
「なんじゃそれ?」と思うかもしれないのですが、少し想像してみてください。たとえば、暑くて長い夏の季節にも、夏休みの前の暑さと夏休みが終わる頃の暑さって、なんだか少し違うと思いませんか?
夏休みの前も、夏休みの終わりも、大きく分ければ同じ『夏』なのに、外の暑さだけではなく、聞こえてくるセミの声や雨が降る量など、少しずつ違いますよね。
二十四節気の中では夏は【立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑】という6つの時期に分かれています。このうち最初の二つ「立夏・小満」の季節が『初夏』にあたります。
俳句に初夏らしさを出す!初夏の季語を知ろう
みなさんは『初夏』の俳句を詠もうとするとき、どんな言葉を思い浮かべますか?
俳句には必ず、季節を表す言葉「季語」を盛り込まなくてはなりません。
春夏秋冬それぞれの季節によって、決まった【季語】があるよ。
ここでは、『初夏の季語』をたくさん紹介していくので、ぜひチェックしてね!
初夏の季語
【時候】四季折々の気候・お天気のこと
卯月/五月/小満(しょうまん)/初夏/清和(せいわ)/夏残し/夏の朝/夏めく/薄暑(はくしょ)/麦の秋/立夏/若夏(わかなつ)
【天文】天体におこる、さまざまな事象のこと
卯月曇/卯の花腐し/筍(たけのこ)流し/茅花(かやはな)流し/迎へ梅雨/麦の秋風など
【地理】
青葉湖/卯波/代田 など
【生活】
新茶/新麦/セル/筍飯/ダービー/端午/麦飯/麦わら/武者人形/メーデー/矢車/鯉幟(こいのぼり) など
【動物】
蜘蛛(くも)の囲い/早苗蜻蛉(さなえかげろう)/鹿の袋角/巣立ち鳥/初鰹(はつかつお)/松蝉 など
【植物】
アカシアの花/あやめ/苺/卯の花/瓜の花/カーネーション/烏麦(からすむぎ)/蒟蒻(こんにゃく)の花/バナナ/茉莉花(ジャスミンのこと)/マーガレット/若葉 など
もっと知りたい人はぜひ「歳時記」などを用いて調べてみてね♪
中学・高校生向け!!有名な初夏の俳句集【22選】
ここからは、中学生・高校生のみなさんにおすすめの有名俳句集22選を紹介していきます。
【NO.1】日野草城
『 朝の雨 あらくて 夏に入りにけり 』
季語:夏に入り/立夏(夏)
意味:朝の雨が荒く降っている。もう立夏を迎えたのだなぁ。
【NO.2】日野草城
『 夏立ちぬ いつもそよげる 樹の若葉 』
季語:若葉(夏)
意味:立夏を迎えた。いつも木々の若葉は風にそよいでいる。
【NO.3】松尾芭蕉
『 暫時(しばらく)は 滝に籠(こも)るや 夏(げ)の初 』
季語:夏(夏)
意味:『裏見の滝』を見物しながら、まるでその夏行に入ったような気になった。そういえばそろそろ、夏行が始まる季節だなぁ。
(※夏(げ)とは、夏行(げぎょう)のことで、夏の初め頃から90日間、水垢離(みずごり)などをする僧の修行のこと)
【NO.4】富田木歩
『 たまさかは 夜の街見たし 夏初め 』
季語:夏初め(夏)
意味:たまには夜の街も見たいなぁ、夏の初めのいい気候だ。
【NO.5】泉 鏡花
『 わが恋は 人とる沼の 花菖蒲(はなあやめ) 』
季語:菖蒲(夏)
意味:私の恋は、泥沼から花菖蒲をとるようなものだ。
【NO.6】稲畑汀子
『 三日ほど 主婦を忘れて 初夏の旅 』
季語:初夏(夏)
意味:3日ほど主婦であることを忘れて初夏の旅に出る。
【NO.7】原石鼎
『 初夏や 蝶に眼やれば 近き山 』
季語:初夏(夏)
意味:しばらく蝶々を目で追っているうちに視界から蝶が消えた。そこには山がせまっていた。この間まで枯れ木山であったのに、今日はもう新緑に染まった山である。山の緑は、日一日と濃くなっていくであろう。
【NO.8】中村汀女
『 樫若葉(かしわかば) 夏はじめての 雲が湧き 』
季語:若葉(夏)
意味:樫の木の若葉が茂っている。今年の夏初めて雲が湧いているのを見た。
【NO.9】山口誓子
『 歳時記を 愛して夏に 入りけり 』
季語:夏に入り/立夏(夏)
意味:歳時記にある季語を愛したまま夏が始まった。
【NO.10】飯田蛇笏
『 さきがけて 初夏の山草 花は黄に 』
季語:初夏(夏)
意味:野に先駆けるように、初夏の山の草は黄色い花を咲かせている。
【NO.11】高浜虚子
『 一様に 筍さげし 土産かな 』
季語:筍(夏)
意味:みんな同じようにたけのこを持っている、お土産だなぁ。
【NO.12】原石鼎
『 初夏の 三日月金や 雲の中 』
季語:初夏(夏)
意味:初夏の夜空に輝く三日月が金色だなぁ。雲の中からうっすらと見える。
【NO.13】松尾芭蕉
『 あらたふと 青葉若葉の 日の光 』
季語:青葉若葉(夏)
意味:ああ何と尊いことか。日の光が青葉や若葉を照らす日光は。
【NO.14】与謝蕪村
『 ほととぎす 平安城を 筋違に 』
季語:ほととぎす(夏)
意味:ホトトギスが平安京の碁盤の目のような街並みを斜めに飛んで行った。
【NO.15】河合曽良
『 卯の花を かざしに関の 晴着かな 』
季語:卯の花(夏)
意味:この卯の花を髪飾りにして、関所を通る晴れ着といたしましょう。
【NO.16】山口素堂
『 目には青葉 山ほととぎす 初鰹 』
季語:青葉(夏)/ほととぎす(夏)/初鰹(夏)
意味:目には青葉が飛び込んできて、山ではホトトギスが鳴き、初鰹が美味しい初夏の季節になった。
【NO.17】高浜虚子
『 白牡丹と いふといへども 紅ほのか 』
季語:白牡丹(夏)
意味:白牡丹とはいうけれど、よく見るとほのかに赤い色をしているのだなぁ。
【NO.18】石田波郷
『 プラタナス 夜も緑なる 夏は来ぬ 』
季語:夏は来ぬ(夏)
意味:プラタナスの濃い緑の葉が夜になってもよく見えている。夏の訪れだ。
【NO.19】石田波郷
『 雨がちに 端午近づく 父子かな 』
季語:端午(夏)
意味:雨が降っているけれど、端午の節句が近づいてくるのを心待ちにしている父親と子供だなぁ。
【NO.20】西東三鬼
『 おそるべき 君等の乳房 夏来る 』
季語:夏来る(夏)
意味:女性たちが薄着をして体のラインを出すおそろしい夏が来る。
【NO.21】森澄雄
『 ぼうたんの 百のゆるるは 湯のやうに 』
季語:ぼうたん/牡丹(夏)
意味:百個ほど咲き乱れる牡丹の花がゆらゆらと揺れるのが、まるで湯けむりのように見える。
【NO.22】細見綾子
『 葉桜の 下帰り来て 魚に塩 』
季語:葉桜(夏)
意味:花が散って葉桜になった帰り道を通って、買ってきた魚に塩を振る。
一般の方が作った!初夏のオリジナル俳句集【10選】
ここまでは、『初夏』の俳句の中でも有名な句をみなさんに紹介してきました。
「うーん、やっぱり俳句って難しいかも?」「自分にも詠めるのかな?」と不安になった方もいるのではないでしょうか。
大丈夫です!!世の中には、いろんな種類の俳句があるんですよ♪
ここからは、色々な人が詠んだオリジナルの俳句を紹介していきます。
【No.1】
『 手のひらに 初夏の香りと 観覧車 』
季語:初夏(夏)
意味:僕は友人を笑わせようと、目の錯覚を利用して、観覧車を自分の手の上にのせているように見せました。友人はクスリと笑いながら、まぶしそうに僕の手の上の観覧車を眺めていました。
【No.2】
『 新緑の 映えてガラスの 丸の内 』
季語:新緑(夏)
意味:発展著しい丸の内には、立派な街路樹が植えられ、よく手入れされている。ガラス張りの高層ビルの窓には、新緑がよく映える。
【No.3】
『 手を休め 駄菓子頬張る ちまき味 』
季語:ちまき(夏)
意味:作業の手を休めて駄菓子を頬張ると、ちまきの味がする。
【No.4】
『 図書館車 新緑の中 やって来る 』
季語:新緑(夏)
意味:図書館の設置が難しいような過疎地にやって来るのが、移動図書館。へんぴな場所と一言で片づけるのではなく、自然豊かな人間らしい生活ができる場所と考えたい。
【No.5】
『 初夏の城 箱根を望む 眺め良し 』
季語:初夏(夏)
意味:小田原ラスカ屋上庭園へ上り、小田原城を眺め、箱根を眺めた。とても眺めのいいところだ。
【No.6】
『 野良猫も 乾く暇なし 梅雨の入り 』
季語:梅雨の入り(夏)
意味:普段はきっと軒下辺りにでも身をひそめているのでしょうが、外を歩けば雨に濡れてしまう野良猫に同情してしまいます。
【No.7】
『 風薫る バトミントンの 羽は屋根 』
季語:風薫る(夏)
意味:風に乗ったのか勢い余ったのかバトミントンの羽が屋根に乗ってしまった。外遊びが気持ちのよい季節だ。
【No.8】
『 薫風や 赤い如雨露(じょうろ)の 跳ね回る 』
季語:薫風(夏)
意味:水遊びが楽しい時期。如雨露(じょうろ)を持って走り回る子供の姿は活き活きとしている。
【No.9】
『 志(こころざし) 工学にあり 柏餅 』
季語:柏餅(夏)
意味:工学という自分の決めた進路を目指してゆるがない。そんな若い志がすがすがしく、応援したくなる。
【No.10】
『 ビル街の 蟻(あり)と暮しを 語り合ふ 』
季語:蟻(夏)
意味:都会のビル街にも蟻が這う。蟻にとって、人間にとってのビル街とはいかなるものか。
さいごに
今回は、中学生・高校生のみなさんに向けて『初夏』の俳句について紹介しました。
本格的な夏に向かって、植物も動物も、そして人間も、力強く成長していく季節『初夏』。
さわやかな風や葉っぱたちに心地よさを感じながら、ぜひ、あなただけの一句を見つけてくださいね。