梅雨から夏へと移り変わるという日本の季節らしさがある「7月」。
夏休みが始まる月でもあり、旅行に出かける方も多いことと思います。
そして、空も海も山も美しい7月は、俳句を作るのにはぴったりの季節です。身近な生活のひとコマやほっこりした出会いなど、今年の夏を俳句に残してみませんか?
7月30日俳句季語の 一
凌霄花(のうぜんか)
ノウゼンカズラ凌霄花 一尺五寸 頭上哉
のうぜんか いっしゃくごすん ずじょうかな
— 海翔 kaito (@itumo_aozora) July 29, 2015
今回は、俳句作りの見本となる7月の季語を含んだ俳句集(有名俳句20句+一般俳句10句)を紹介していきます。
目次
俳句に7月らしさを出す!7月の季語を知ろう
俳句には、「十七音で作る」「季語を入れる」という2つのルールがあります。
四季の彩り豊かな日本では季節にまつわる言葉がたくさんあり、俳句の世界は季節の言葉をとても大事にしてきました。
「季節を入れないといけないなんてむずかしい…」と最初は思われがちですが、季語を使うことで作者の表現したいことが鑑賞者にはより伝わりやすくなります。
季語を使うことは俳句の持つ面白さのひとつでもあります。まずは実感がもてる好きな言葉をみつけてみましょう。
7月の季語【一覧】
【季節や気候・自然】
秋近し 秋を待つ 炎暑 炎昼 極暑 三伏 七月 小暑 盛夏 大暑 土用 夏の果 夏深し 熱帯夜 炎ゆ 灼く 夜の秋 冷夏 朝曇 朝凪 朝焼 雲海 炎天 梅雨明 送り梅雨 風死す 喜雨 御来迎 涼風 土用東風 西日 熱風 旱星 夕凪 夕焼青田 土用波 熱砂 日焼田
【生活】
梅酒 泳ぎ 水着 海水浴 汐浴び 夏期講習 夏期手当 川開き 帰省 キャンプ 草取 昆虫採集 サングラス サンドレス 夜濯ぎ 暑気払 除草機 夏休み 暑中見舞 西瓜割り 納涼 ダイビング 滝浴び 登山 土用鰻 ナイター 日射病 花氷 避暑 氷室 冷し西瓜 プール 虫干 野外演奏 山開き 誘蛾灯 冷房 海の日 海開き 祗園会 茅の輪 薄翅蜉蝣 空蝉 天牛 蝉 玉虫 夏茜
【植物】
青瓜 青柿 青胡桃 青山椒 青芒 青唐辛子 青葡萄 青鬼灯 青林檎 麻 瓜 亜麻の花 芋の花 含羞草 蒲の穂 胡瓜 烏瓜の花 草いきれ 孔雀草 グラジオラス 月下美人 午時花 胡蝶蘭 胡麻の花 ささげ 沙羅の花 紫蘇 睡蓮 新生姜 千日草 ダリア 千鳥草 月見草 蔓手毬 芭蕉の花 玉蜀黍の花 トマト 茄子 韮の花 合歓の花 はまなす 浜木綿の花 瓢の花 棉の花 向日葵 百日草 糸瓜の花 烏瓜の花 蛍草 甜瓜 茗荷の子 紫草 夕顔 松葉牡丹
7月の季語を使った有名俳句集【10選】
ここからは、7月の季語を使った有名俳句(俳人が詠んだ句)を紹介していきます。
【NO.1】松尾芭蕉
『 閑かさや 岩にしみいる 蝉の声 』
季語:蝉(夏)
意味:岩にしみいるように蝉の声が響いています。今わたしの心はこの目の前にひろがる風景に非常に深い静けさを感じています。
【NO.2】山口青邨
『 夕顔の 花咲き女 いそがしく 』
季語:夕顔(夏)
意味:夕顔が咲いてもう気がつけば夕方だ。なるほど女性たちは夕餉の準備で忙しそうです。
【NO.3】森川暁水
『 夜濯ぎに ありあふものを まとひけり 』
季語:夜濯ぎ(よすすぎ)(夏)
意味:夜中にありあわせの衣服をひっかけて洗濯をやっています。
【NO.4】星野立子
『 旅なれば この炎天も 歩くなり 』
季語:炎天(夏)
意味:せっかく旅に出てきたのですから、この暑い天気のなかでも歩いていきます。
【NO.5】山口誓子
『 一点の 偽りもなく 青田あり 』
季語:青田(夏)
意味:この見渡す限り青々とした水田の美しさは、まったくもって美しく、私はとても感動しています。
【NO.6】山口青邨
『 梅酒を かもすと妻は 梅おとす 』
季語:梅酒(夏)
意味:梅酒をつけるのだと言って、妻が梅の実を枝から落としています。
【NO.7】波多野爽波
『 西日さし そこ動かせぬ ものばかり 』
季語:西日(夏)
意味:西日が部屋にさしている。大切なものに日が当たらないようにと思うものの、そこは動かせないものばかりだ。
【NO.8】ふけとしこ
『 おとうとを トマト畑に 忘れきし 』
季語:トマト(夏)
意味:トマト畑に行ったとき、弟を置いてきぼりにしてしまった。
【NO.9】中村草田男
『 松葉牡丹 玄関勉強 腹這いに 』
季語:松葉牡丹(夏)
意味:松葉牡丹が咲くある夏の暑い日、玄関の板張りで腹這いになって子どもが勉強をしている。
【NO.10】水原秋桜子
『 跳躍台 人なしプール 真青なり 』
季語:プール(夏)
意味:飛び込み競技が始まる前の飛び込み台はまだ人の姿がなく、プールの水も波ひとつなく真っ青に澄みきっています。
こんな俳句もある!オリジナル俳句集【10選】
ここからは、一般の方が詠んだオリジナルの俳句集をご紹介していきます。
【No.1】
『 波音に まだ寝付かれず 浜キャンプ 』
季語:キャンプ(夏)
意味:海辺でのキャンプ。夜になると思いがけなく波音が耳について、まだ寝付くことができません。
【No.2】
『 潮騒や 浜木綿の花 傾きて 』
季語:浜木綿の花(夏)
意味:満ち潮の浜辺。波の音と勢いに押されるように浜木綿の花が傾いています。
【No.3】
『 子供らの 好みそれぞれ 花氷 』
季語:花氷(夏)
意味:花氷を子どもたちと見ていると、だんだんみんなそれぞれが好きな花氷のところへいって、見たり触ったりしている。いろいろ好みがあるのだなあ。
【No.4】
『 クレーン車の 夕焼雲を 眺めをり 』
季語:夕焼(夏)
意味:高くそびえたクレーン車が、今日の仕事を終えて夕焼雲を眺めています。
【No.5】
『 青柿の 短き命 ころげ落ち 』
季語:青柿(夏)
意味:短命の青柿なのに、さらに地面に転げ落ちています。
【No.6】
『 烏瓜 一夜の花の 白く裂け 』
季語:烏瓜の花(夏)
意味:烏瓜の一夜だけの花が咲いた。夜の闇のなかで裂けるように咲いた白い花でした。
【No.7】
『 葉の波に 飛天の如き 合歓の花 』
季語:合歓の花(夏)
意味:葉が波のように広がる上にまるで飛天のように合歓の花が咲いています。
【No.8】
『 梅雨明けの それがどうした 風呂掃除 』
季語:梅雨明け(夏)
意味:ニュースでは梅雨明けと言ってるけど「それがどうした」とつぶやきつつ風呂掃除をしています。
【No.9】
『 糠床へ 一本刺して 初胡瓜 』
季語:胡瓜(夏)
意味:ぬか床に一本差し入れたのは、今年の初キュウリです。
【No.10】
『 不揃ひの 砂場の棚の 青葡萄 』
季語:青葡萄(夏)
意味:子どもが遊ぶ砂場の上の葡萄棚に、不揃いのまだ青い葡萄がなっています。
7月の季語を使った有名俳句集【おまけ10選】
「もっと7月の俳句を知りたい!」という方のために、有名俳句(俳人が詠んだ句)をもう10句紹介していきます。
【NO.1】松尾芭蕉
『 象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が ねぶの花 』
季語:ねぶの花(夏)
意味:象潟の美しい風景だなぁ。雨に降られて俯いたように咲くねぶの花がまるで美人と名高い西施が俯いている姿のように見える。
【NO.2】小林一茶
『 涼風の 曲がりくねって きたりけり 』
季語:涼風(夏)
意味:涼しい風が細い路地を曲がりくねってやってきた。
【NO.3】山口誓子
『 ピストルが プールの硬き 面にひびき 』
季語:プール(夏)
意味:スタートの合図であるピストルの音が、プールのどこか硬く思える面に響いた。
【NO.4】山口誓子
『 炎天の 遠き帆やわが こころの帆 』
季語:炎天(夏)
意味:炎天下の遠くの海に浮かぶ船の帆は、私の心の帆のようだ。
【NO.5】正岡子規
『 茗荷より かしこさうなり 茗荷の子 』
季語:茗荷の子(夏)
意味:茗荷よりも賢そうな茗荷の花穂だなぁ。
【NO.6】中村草田男
『 はまなすや 今も沖には 未来あり 』
季語:はまなす(夏)
意味:ハマナスの花が咲いているなぁ。昔のように今も海の向こうに未来を感じるのだ。
【NO.7】西東三鬼
『 岩に爪 たてて空蝉 泥まみれ 』
季語:空蝉(夏)
意味:岩に爪を立てて止まっているように見えるセミの抜け殻が泥まみれになっている。
【NO.8】黛まどか
『 旅終へて よりB面の 夏休 』
季語:夏休(夏)
意味:A面のような旅が終わり、これからはB面のような残りの夏休みが始まる。
【NO.9】黛まどか
『 別な人 見てゐる彼の サングラス 』
季語:サングラス(夏)
意味:彼のサングラスの奥の目は別の人を見ているようだ。
【NO.10】神野紗希
『 飛び込みの もう真っ白な 泡の中 』
季語:飛び込み(夏)
意味:飛び込み台からプールに飛び込むと、もうそこは真っ白な泡の中だ。
以上、7月の有名俳句とオリジナル俳句を30選でした!