【一物仕立てとは】簡単にわかりやすく解説!!俳句における意味や効果•例文•コツなど

 

俳句は五七五の十七音の韻律に、季節を表す季語を詠み込む文学です。

 

俳句を作る際にはいくつかの型があり、表現したい内容によっていろいろと検討する必要があります。

 

今回は、俳句の技法の1つである「一物(いちぶつ)仕立て」について効果や意味、例句を解説しています。

 

 

俳句仙人

ぜひ俳句作りの参考にしてください。

 

一物仕立てとは?簡単に分かりやすく解説!

意味

一物仕立てとは、1つの季語を中心として詠む俳句の型です。

 

松尾芭蕉の高弟である向井去来は「発句は、只金(こがね)を打ちのベたる様に作すべし」と評していて、黄金をうち伸ばして平らにするように切れ目なく俳句を作る技法であると述べています。

【例】高浜虚子

『 白牡丹と いふといへども 紅ほのか 』

意味:白牡丹という名前だけれども、中心部はほのかに赤い色をしている。

 

この句では「白牡丹」の花の色という季語に関することだけが詠まれています。

 

俳句仙人

季語に関連のない言葉を入れてしまうと後述の「取り合わせ」という技法になってしまうので注意しましょう。

 

効果

 

一物仕立ては上五から下五まで切れがなく、一気に詠みあげることで、1つの季語に注目させ、引き立てる効果があります。

 

また、1つの季語のみに焦点を当てることで、詠んだ人の観察眼や表現力が際立つ効果もあります。

 

俳句仙人

その俳人がどのような視点で季語を観察しているのかがわかるため、一物仕立ての俳句を読んだときは季語に対してどのような表現をしているかに着目してみましょう。

 

説明文になりすぎない様に注意

一物仕立ては、慣れないうちはただ季語を説明している俳句になりがちです。

【例】『 はらはらと 散りゆく桜が きれいだな 』

 

この句の場合はただ桜の花が散ってきれいだと説明しているだけの俳句になってしまっています。また、同じような発想の「類想」、同じような俳句の「類句」が非常に多くなってしまうという問題もあるため、詠む人の観察眼が試される型です。

 

俳句仙人

季語の説明や理屈を並べる、よくある感想をそのまま詠むのではなく、自分自身がどう感じたかをいろいろと書き留めたり言葉を工夫したりして一物仕立ての俳句を詠んでみましょう。

 

一物仕立てと取り合わせの違い

 

一物仕立てが「季語という1つの題材を詠む」技法なのに対して、取り合わせは「2つの題材を詠み込む」技法です。

 

1つ目の題材は一物仕立てと同じく「季語」を詠み込みますが、2つ目の題材は「季語とは適度に意味が離れたもの」を詠むのが一般的です。明と暗、静と動、空と海など、対比を意識すると良いでしょう。

【例】松尾芭蕉

『 荒海や 佐渡に横たふ 天の川 』

意味:荒海が目の前に見えている。佐渡ヶ島の上に横たわるようにして天の川も見える雄大な景色だ。

 

1つめの題材である季語は季語である「天の川」、2つめの題材は切れ字の「や」で句切られている「荒海」です。

 

俳句仙人

荒海と天の川を同時に詠むことで、2つの題材が効果的に響きあって雄大な自然を表現しています。

 

 

一物仕立てを使った有名俳句【5選】

【NO.1】与謝蕪村

『 春の海 終日(ひねもす)のたり のたりかな 』

季語:春の海(春)

意味:春の海では、一日中穏やかな波がのたり、のたりと寄せては返っていく。

俳句仙人

「春の海」という季語について詠まれた一句です。体言止めで季語に焦点を当て、穏やかな波の様子を「のたりのたり」と表現しています。

【NO.2】高浜虚子

『 流れゆく 大根の葉の 早さかな 』

季語:大根(冬)

意味:水の上を流れていく大根の葉のなんと早いことか。

俳句仙人

流れていく「大根の葉」を一息に詠みあげた一句です。川や水路の上流で大根を洗っていたのか、流れてきた葉がかなりのスピードで過ぎていく様子が切れ字のないテンポの良さから伺えます。

【NO.3】松本たかし

『 紫陽花の 大きな毬の 皆褪(あ)せし 』

季語:紫陽花(夏)

意味:紫陽花の大きな毬のような花が皆色あせてしまった。

俳句仙人

紫陽花という花に焦点を当てて、盛りが過ぎて色あせた様子を詠んでいます。毬のように色とりどりに丸く咲いていた花が枯れていく様子がよくわかる句です。

【NO.4】飯田蛇笏

『 くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり 』

季語:秋(秋)

意味:鉄製でできた風鈴が秋の風に揺らされて鳴っているなぁ。

俳句仙人

この句には「秋」と「風鈴」という2つの季語がありますが、秋になっても出しっぱなしにされている風鈴に焦点を当てています。秋の風に揺られて鳴っている様子が寂しさを感じさせる一句です。

【NO.5】水原秋桜子

『 冬菊の まとふはおのが ひかりのみ 』

季語:冬菊(冬)

意味:冬の菊が纏うのは自分の光だけだ。

俳句仙人

「冬菊」という花の少ない冬の季節に咲く菊の花に焦点を当てています。周りが枯れ野の中で、光り輝くように咲く健気さを詠んだ句です。

 

さいごに

 

今回は、一物仕立ての意味や効果、代表的な俳句について解説してきました。

 

一物仕立てと取り合わせという2つの型を理解することは、俳句を作る際にとても重要です。

 

詠みたい題材に合わせてどちらを使えばより効果的なのか、どちらがより表現したいことを表せるのか、いろいろと試してみてください。

 

俳句仙人

最後まで読んでいただきありがとうございました。