「小暑(しょうしょ)」は二十四節気の1つで、現在の暦では7月7日前後頃を指します。
梅雨がそろそろ開けてくる時期で暑さも厳しくなってくるため、暑さを詠む句が多くなってくる季語です。
二十四節気【小暑】
🔹しょうしょ
[期間]7月7日~7月22日
梅雨明けを予感させる本格的な夏の暑さを感じる頃
蝉が鳴きはじめるのもこの頃
小暑(梅雨明け後)から大暑の時季を暑中という。
暑中見舞いはこの頃から…,。≪七夕≫歌川国芳 pic.twitter.com/7c5wo5hUqz
— ふわふわ🌸 (@fuwa_miffy) July 9, 2017
冷やし中華の日!
「1995年に冷やし中華の愛好家らによって、7月7日が「冷やし中華の日」として日本記念日協会に登録された。由来はこの日が二十四節気の「小暑」となることが多く、冷やし中華がおいしい季節となるためだという」 pic.twitter.com/bkdSbGiYix
— くらげ (@kuragejump) July 6, 2015
今回は、「小暑(しょうしょ)」の季節に詠まれた有名俳句を20句ご紹介します。
小暑の季節に詠まれた有名俳句【前半10句】
【NO.1】皆吉爽雨
『 あぎともて 病後もの食ふ 小暑かな 』
季語:小暑(夏)
意味:顎を動かして病気の後の食事を食べる小暑であることだ。
「あぎと」とは顎のことです。病気の後のためか、一生懸命噛み砕いて食事をしている様子が浮かんできます。
【NO.2】皆吉爽雨
『 部屋ぬちへ 小暑の風の 蝶ふたたび 』
季語:小暑(夏)
意味:部屋の中へ小暑の風に運ばれた蝶が再び迷い込んできた。
「部屋ぬち」とは部屋の中という意味になります。暑さ対策で窓を開けていたのか、吹き込んでくる風に乗って何度も蝶が出入りしている様子を詠んだ句です。
【NO.3】萩原麦草
『 骨拾ふ 桂子夫人ら 小暑たり 』
季語:小暑(夏)
意味:お骨を拾う桂子夫人らがいる小暑である。
「桂子夫人」とはおそらく渡辺水巴の妻である桂子夫人のことでしょう。作者は俳句雑誌の『曲水』に参加しており、桂子夫人はその選者として選ばれています。
【NO.4】萩原麦草
『 骨小さき 碧雲居仏 南無小暑 』
季語:小暑(夏)
意味:骨がとても小さい。碧雲居は仏になったのだ。小暑の頃に。
「碧雲居(へきうんきょ)」とは、1952年に亡くなった大谷碧雲居のことです。上の句と同じ俳句集に載っている句のため、この2句は碧雲居のお葬式の様子を表しています。
【NO.5】都筑智子
『 追善の 鼓小暑の 紐締めて 』
季語:小暑(夏)
意味:追善の法要の鼓の音が、まるで小暑という日の紐を締めるように響いている。
「追善(ついせん)」とは法要の1つで、死者の冥福を祈って善事を行う法要のことです。その際に響いた鼓の音が、暑さで気が弛みがちな心を引き締めた様子が詠まれています。
【NO.6】勝又一透
『 一本の 細書キを購ふ 小暑かな 』
季語:小暑(夏)
意味:1本の細く書ける筆を買う小暑であるなぁ。
「細書キ」とは文字を細く書くための筆、もしくは筆記用具のことです。外の暑さと比べて細かい作業を必要とすることが伺えるのが対比になっています。
【NO.7】山西雅子
『 塩壺の 白きを磨く 小暑かな 』
季語:小暑(夏)
意味:塩壺の白さを磨く小暑であることだ。
【NO.8】鈴木しげを
『 序破急に 小暑の 不快指数かな 』
季語:小暑(夏)
意味:序破急のように小暑の不快指数が高まっていくことだ。
「序破急」とは日本の芸能における起承転結のようなもので、徐々に物事が展開していくことを表します。少しずつ夏に近づき、小暑をむかえて暑さと湿度で不快指数が高まっていく様子は身に覚えがある人も多いでしょう。
【NO.9】高澤良一
『 採血の 跡黄味がかる 小暑かな 』
季語:小暑(夏)
意味:採血の跡が黄色がかっている小暑であるなぁ。
注射の跡が残ってしまう様子を詠んでいます。夏の暑さは体調を崩しやすいものですが、作者は健康診断に来たのかどこか調子を崩したのか、どちらでも解釈できる句です。
【NO.10】曾根毅
『 小暑なり 四十九日を 遣り過ごし 』
季語:小暑(夏)
意味:小暑である。四十九日をどうにかやり過ごしてきた。
四十九日の法要まで、とても悲しんでいたことが伝わってくる句です。どうにか日々を暮らしてきたことが「小暑なり」という言い切りから感じ取れます。
小暑の季節に詠まれた有名俳句【後半10句】
【NO.11】小野裕三
『 引き連れて 小暑の市場へと 急ぐ 』
季語:小暑(夏)
意味:引き連れて小暑の市場へと急いでいこう。
引き連れているのは家族なのか友人なのか、読んだ人の印象によって変わってきます。朝市に向かって急いでいる様子が浮かんでくる句です。
【NO.12】池田瑠那
『 角砂糖 六面照りや 小暑なる 』
季語:小暑(夏)
意味:角砂糖の立方体の六面が照っているなぁ、小暑という暑い日に。
真っ白な角砂糖が小暑の強い日の光を浴びて照っている様子を詠んでいます。テラスのあるカフェの風景や日が差し込むキッチンなどさまざまな光景が思い浮かぶ句です。
【NO.13】高橋比呂子
『 小暑かな よしこの笑窪(えくぼ) ころころす 』
季語:小暑(夏)
意味:小暑だなぁ。よしこのえくぼもころころしている。
【NO.14】筑紫磐井
『 僕たちに ケチな小暑が やつてくる 』
季語:小暑(夏)
意味:僕たちにとってケチな小暑がやってくる。
「ケチな」という表現がユーモアあふれる句です。これからどんどんと熱くなっていく時期ですが、暑さ以外に恩恵がないことが「ケチ」と言わしめる原因でしょうか。
【NO.15】小林千史
『 小暑 産卵の虫 前進しつつ 』
季語:小暑(夏)
意味:小暑の日だ。産卵する虫が前進しつつ動いている。
これから産卵をむかえる虫が暑さの中を前進している様子を詠んでいます。草の影を移動する虫をじっと眺めている作者の観察眼が光ります。
【NO.16】池田澄子
『 目薬や 小暑にしては 涼しき午後 』
季語:小暑(夏)
意味:目薬をさそう。小暑にしては今日は涼しい午後だ。
目薬をさしていてふと涼しい風を感じたような心地の句です。気温が高くとも湿度が低ければ風や日陰は涼しいため、涼しく感じる午後だったのでしょう。
【NO.17】本井英
『 投票所に 小暑の風の 通ふかな 』
季語:小暑(夏)
意味:投票所に小暑の風が通っているなぁ。
投票所は締め切られていることがなく、常に風通しがいい状態です。そんな投票所の中を少し暑い小暑の風が通り抜けていく様子が浮かんできます。
【NO.18】依光陽子
『 音せぬやう ぬぐふ鍵盤 小暑なり 』
季語:小暑(夏)
意味:音がしないようにピアノの鍵盤を拭う小暑である。
ピアノの鍵盤は少し力を入れると音が鳴ってしまいます。音がしないようにそっと拭き掃除をしている様子を詠んだ句です。
【NO.19】小早川忠義
『 玉子焼 片方焦がす 小暑かな 』
季語:小暑(夏)
意味:玉子焼きの片方を焦がしてしまった小暑であることだ。
朝食の支度をしていたのでしょうか。2つ作っていた玉子焼きの片方が焦げてしまうほど暑い小暑の朝の風景です。
【NO.20】網野月を
『 夜歩きの 小暑の堤 隅田川 』
季語:小暑(夏)
意味:夜の散歩をしよう。小暑の隅田川の堤防を。
夜の散歩に隅田川沿いを歩いている風流な様子の句です。小暑とはいえ夜は涼しいため、涼しい夜風を堪能している様子が浮かんできます。
以上、小夏に関する有名俳句でした!
今回は、小暑の季節に詠まれた有名な俳句を20句ご紹介しました。
本格的な夏の始まりということで、暑さを詠んだ句がとても多かった印象です。
年によってはまだ梅雨が明けていないこともある小暑ですが、季節の移り変わりを感じたら一句詠んでみてはいかがでしょうか。