【旅終へてよりB面の夏休】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!!

 

「俳句」は、日本の伝統的な文芸でありつつも、常に革新と進化を続けています。

 

令和の現代でも俳句をたしなむ人、鑑賞する人は増える一方です。

 

時代ごとの世相に合わせて俳句も変わり続けていますが、名句と呼ばれる句はすぐれた文学としての普遍性を持ち、多くの人々に衝撃を与えたり、共感を得たりしています。

 

今回は数ある名句の中から現代の句「旅終へてよりB面の夏休を紹介していきます。

 

 

本記事では、「旅終へてよりB面の夏休」の季語や意味・表現技法・作者について徹底解説し鑑賞していきます。

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

「旅終へてよりB面の夏休」の季語や意味・解釈

 

旅終へて よりB面の 夏休

(読み方 : たびおへて よりビーめんの なつやすみ)

 

こちらの句の作者は、「黛まどか(まゆずみ まどか)」です。

 

黛まどかさんは神奈川出身、現代も活躍されている女流俳人です。彼女の父は俳人の黛執です。

 

この句は、夏休みのメインイベントであった旅を終えた後の感情を詠んだ作品です。

 

俳句仙人

旅行という非日常的な夏休みに対して、自宅での平凡な夏休みをレコードの「A面」「B面」にうまく喩えて表現しています。

 

 

季語

こちらの句の季語は「夏休み」で、季節は「夏」を表しています。

 

「夏休み」は晩夏の季語で、学校や仕事が休みになる7月下旬から8月末の期間を指します。

 

俳句仙人

家族との時間、帰省、旅行、自由な時間といった「開放感」や「子供の活動」を想像させる言葉です。

 

意味

こちらの句の意味は・・・

 

「夏休みのイベントとしての旅行が終わり、残りの休みは家で過ごすことになりました。日常を離れた旅のなかの休日をレコードのA面に例えれば、これからの休みはB面になります」

 

となります。

 

解釈

こちらのキーポイントは「B面」。レコードの「A面」に対して「B面」ということです。

 

レコード世代の方はご存知ないかもしれませんが、A面には歌手のメインとなる曲が入っており、B面はサブ曲となっています。

 

作者は夏休みをレコードになぞらえていて、「夏休みのメインであった旅行が終わってしまい、残りの夏休みはごく平凡な日々である」と作品を通じて表現しているのです。

 

俳句仙人

どれだけ作者が夏休みの旅行を楽しみにしていたかが分かりますし、そんな待ちわびていたイベントも終わってしまうとあっという間だったなという感情も伝わってきます。

 

「旅終へてよりB面の夏休」の表現技法

 

こちらの作品で使われている表現技法は・・・

 

  • 体言止め「夏休」
  • 「旅終えてより」の部分の句またがり

     

    になります。

     

    体言止め「夏休」

    こちらの作品では末尾の「夏休」が体言止めです。

     

    体言止めとは、俳句の結びを名詞で止める表現技法で、そのシーンをイメージしやすくなります。

     

    また同時にインパクトのある作品に仕上がって、読者の記憶に残りやすい俳句となるのです。

     

    こちらの句では、夏休みの情景をイメージしやすくなっています。

     

    「旅終えてより」の部分の句またがり

    「句またがり」とは、文節の終わりと句のきれ目が一致しない技法のことを言います。

     

    こちらの作品を定型で区切った場合と、意味で詠んだ場合で見ていきましょう。

     

    • 定型 :  旅終えて / よりB面の / 夏休
    • 意味 :  旅終えてより / B面の / 夏休み

     

    こちらの作品は、定型で詠むよりも意味で区切った方が、作者の意図を汲み取りやすいです。

     

    また「句またがり」には、俳句本来の「5・7・5」のリズムを崩し、独特の余韻を残す効果もあります。

     

    「旅終へてよりB面の夏休」の鑑賞文

     

    この句からは、楽しみにしていた夏休み最大のイベントであった旅行を終えて、いつもの平凡な夏休みを自宅で過ごしている様子が伝わってきます。

     

    旅行中は、非日常的な空間の中で景色や食事を楽しみながら、いろいろな体験ができたはずです。

     

    一方、旅を終えた後の残された夏休みは、ワクワクドキドキするようなことは何もない、極々普通の生活にしか過ぎず、作者にしてみれば退屈な毎日なのです。

     

    そんな作者の気持ちをレコードに謎って詠んだ面白い作品です。

     

    一方で見方を変えると・・・「夏休みのメインイベントである旅を終えて、これからB面の夏休みがはじまろうとしている。なにをして過ごそうかな、どんな夏休みの思い出が作れるか、こちらはこちらで楽しみだ。」とも読み取れます。

     

    俳句仙人

    作者の「B面の夏休み」が、退屈な毎日なのか、それとも有意義な休暇であったのかは、あくまでも憶測しかできない所にも俳句の持ち味がいかされています。

     

    知っておきたい!夏休みに関する有名俳句【5句】

     

    夏の休暇については、元々盆休みなどの季語がありました。

     

    明治以降学校制度が普及して7月下旬から8月下旬まで長期休暇に入るようになり、盆休みを含む夏の長期休暇として「夏休み」が季語と認められるようになります。

     

    俳人たちはどのような気持ちで夏休みを詠んだのでしょうか。

     

    俳句仙人
    ここでは参考のために、「夏休み」に関する有名俳句を5句紹介していきます。

    【NO.1】高浜虚子

    『 下宿屋の 西日の部屋や 夏休み 』

    季語:夏休み(夏)

    意味:下宿屋の西日の部屋にいる夏休みだ。

    俳句仙人
    せっかくの夏休みなのに下宿屋の部屋にいるのを嘆いているとも、何か用事や遊びをして帰ってきて夕方を迎えたとも取れる一句です。夏休みの頃の西日は午後六時頃とかなり遅く、どのような一日を過ごしていたのか気になります。

    【NO.2】山口誓子

    『 大学生 髪油にほはす 夏休み 』

    季語:夏休み(夏)

    意味:大学生が髪油の香りを匂わせている夏休みだ。

    俳句仙人
    髪油は今で言う整髪料やヘアミストのことです。大学生たちがそれぞれお洒落をしてどこかに出かけていく様子を、夏休みだなぁと感慨深げに眺めています。普段は講義に出る昼の時間帯の出来事なのかもしれませんね。

    【NO.3】阿部みどり女

    『 忙しさを 楽しむ母や 夏休み 』

    季語:夏休み(夏)

    意味:忙しさを楽しむ母がいる夏休みだ。

    俳句仙人
    夏休みは子供たちが学校に行かずに家にいるため、普段より食事の準備などで母親の家事が忙しくなります。どれだけ忙しくなっても楽しそうに夏休みを満喫する我が子が可愛いのか、お母さんも楽しそうにしている様子を詠んだ一句です。

    【NO.4】三橋敏雄

    『 野の朝日 山の夕日を 夏休 』

    季語:夏休(夏)

    意味:野原で朝日を、山で夕日を見る夏休みだ。

    俳句仙人
    夏休みを利用してリゾートやアウトドアを楽しむ様子を詠んだ句です。この句では具体的に何をしたとは詠まれていませんが、朝に野原にいて夕方に山にいるとなると、ハイキングや登山を楽しんだのかもしれません。どちらも夏が主流のアウトドアなので、夏休みらしい過ごし方です。

    【NO.5】伊丹公子

    『 カレー粉と 蝉の匂いの 夏休み 』

    季語:夏休み(夏)

    意味:カレー粉とセミの匂いが印象的な夏休みだ。

    俳句仙人
    夏休みということで、カレーを作ったのでしょう。実際にセミの匂いを嗅いだわけではないので、セミの声とカレーの匂いが強烈な夏休みの体験として印象に残っていることを詠んでいます。音や匂いは記憶を刺激するので、ふとした瞬間に夏休みのあの日を思い出しているのでしょう。

     

    作者「黛まどか」の半生を簡単に紹介!

    (湯河原町の中心部 出典:Wikipedia)

     

    黛まどか氏は、1962年7月31日に神奈川県足柄郡湯河原町で生まれ、1983年にフェリス女子学院短期大学を卒業しています。

     

    大学卒業後は富士銀行に勤務し、杉田久女と出会い俳句の世界に惹かれて行きました。

     

    その後、俳句結社「河」にて吉田 鴻司の指導を受けます。

     

    角川俳句激励賞や山本健吉文学賞を受賞し、現代俳句の先駆者として活躍。著名人達の会員制句会「百夜句会」の主宰者でもあります。

     

     

    黛まどかのそのほかの俳句