【旅終へてよりB面の夏休】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!!

 

「俳句」は、日本の伝統的な文芸でありつつも、常に革新と進化を続けています。令和の現代でも俳句をたしなむ人、鑑賞する人は増える一方です。

 

時代ごとの世相に合わせて俳句も変わり続けていますが、名句と呼ばれる句はすぐれた文学としての普遍性を持ち、多くの人々に衝撃を与えたり、共感を得たりしています。

 

今回は数ある名句の中から現代の句「旅終へてよりB面の夏休をご紹介します。

 

 

本記事では、「旅終へてよりB面の夏休」の季語や意味・表現技法・作者について徹底解説し、鑑賞していきます。

 

「旅終へてよりB面の夏休」の季語や意味・解釈

 

旅終へて よりB面の 夏休

(読み方 : たびおへて よりビーめんの なつやすみ)

 

こちらの句の作者は、「黛まどか(まゆずみ まどか)」です。黛まどかさんは神奈川出身、現代も活躍されている女流俳人です。彼女の父は俳人の黛執です。

 

この句は、夏休みのメインイベントであった旅を終えた後の感情を詠んだ作品です。

 

旅行という非日常的な夏休みに対して、自宅での平凡な夏休みをレコードの「A面」、「B面」にうまく喩えて表現しています。

 

季語

こちらの句の季語は「夏休み」で、季節は「夏」を表しています。

 

意味

こちらの句の意味は・・・

 

「夏休みのイベントとしての旅行が終わり、残りの休みは家で過ごすことになりました。日常を離れた旅のなかの休日をレコードのA面に例えれば、これからの休みはB面になります」

 

となります。

 

解釈

こちらのキーポイントは「B面」。レコードの「A面」に対して「B面」ということです。

 

レコード世代の方はご存知ないかもしれませんが、A面には歌手のメインとなる曲が入っており、B面はサブ曲となっています。

 

作者は夏休みをレコードになぞらえていて、「夏休みのメインであった旅行が終わってしまい、残りの夏休みはごく平凡な日々である」と作品を通じて表現しているのです。

 

どれだけ作者が夏休みの旅行を楽しにしていたかが分かりますし、そんな待ちわびていたイベントも終わってしまうとあっという間だったなという感情も伝わってきます。

 

「旅終へてよりB面の夏休」の表現技法

 

こちらの作品で使われている表現技法は・・・

 

  • 体言止め「夏休」
  • 「旅終えてより」の部分の句またがり

     

    になります。

     

    体言止め「夏休」

    こちらの作品では末尾の「夏休」が体言止めです。

     

    体言止めとは、俳句の結びを名詞で止める表現技法で、そのシーンをイメージしやすくなります。

     

    また同時にインパクトのある作品に仕上がって、読者の記憶に残りやすい俳句となるのです。

     

    こちらの句では、夏休みの情景をイメージしやすくなっています。

     

    「旅終えてより」の部分の句またがり

    「句またがり」とは、文節の終わりと句のきれ目が一致しない技法のことを言います。

     

    こちらの作品を定型で区切った場合と、意味で詠んだ場合で見ていきましょう。

     

    • 定型 :  旅終えて / よりB面の / 夏休
    • 意味 :  旅終えてより / B面の / 夏休み

     

    こちらの作品は、定型で詠むよりも意味で区切った方が、作者の意図を汲み取りやすいです。

     

    また「句またがり」には、俳句本来の「5・7・5」のリズムを崩し、独特の余韻を残す効果もあります。

     

    「旅終へてよりB面の夏休」の鑑賞文

     

    この句からは、楽しみにしていた夏休み最大のイベントであった旅行を終えて、いつもの平凡な夏休みを自宅で過ごしている様子が伝わってきます。

     

    旅行中は、非日常的な空間の中で景色や食事を楽しみながら、いろいろな体験ができたはずです。

     

    一方、旅を終えた後の残された夏休みは、ワクワクドキドキするようなことは何もない、極々普通の生活にしか過ぎず、作者にしてみれば退屈な毎日なのです。

     

    そんな作者の気持ちをレコードに謎って詠んだ面白い作品です。

     

    一方で見方を変えると・・・「夏休みのメインイベントである旅を終えて、これからB面の夏休みがはじまろうとしている。なにをして過ごそうかな、どんな夏休みの思い出が作れるか、こちらはこちらで楽しみだ。」とも読み取れます。

     

    作者の「B面の夏休み」が、退屈な毎日なのか、それとも有意義な休暇であったのかは、あくまでも憶測しかできない所にも俳句の持ち味がいかされています。

     

    作者「黛まどか」の生涯を簡単にご紹介!

    (湯河原町の中心部 出典:Wikipedia)

     

    黛まどか氏は、1962年7月31日に神奈川県足柄郡湯河原町で生まれ、1983年にフェリス女子学院短期大学を卒業しています。

     

    大学卒業後は富士銀行に勤務し、杉田久女と出会い俳句の世界に惹かれて行きました。

     

    その後、俳句結社「河」にて吉田 鴻司の指導を受けます。

     

    角川俳句激励賞や山本健吉文学賞を受賞し、現代俳句の先駆者として活躍。著名人達の会員制句会「百夜句会」の主宰者でもあります。

     

     

    黛まどかのそのほかの俳句

     

    • 別な人 見てゐる彼の サングラス
    • 観覧車 より東京の 竹の春
    • 虫の夜の 寄り添ふものに 手暗がり
    • かまいたち 鉄棒に巻く 落とし物
    • バレンタイン デーカクテルは 傘さして
    • 可惜夜の わけても月の 都鳥