鈴虫は秋の初めの夜に美しい音を奏でる虫で、日本の「秋の風物詩」となっています。
残暑や熱帯夜の最中でも、鈴虫の声を聞くとどこか秋を感じることでしょう。
朝の散歩で、セミの声から、鈴虫の声を聞き秋を感じる今日この頃 pic.twitter.com/WWx7caT
— makorin (@DOGLUCK2) August 30, 2011
夜と朝の境目
鈴虫かコオロギが鳴いてる、秋が近づいているのを感じる pic.twitter.com/d7UG3rKRSO— タイシ (@taishi_0000) August 26, 2017
今回は、「鈴虫」に関する有名俳句・学生向け俳句ネタを10句ずつ紹介していきます。
鈴虫に関する有名俳句【10選】
【NO.1】宝井其角
『 鈴虫や 松明さきへ 荷(にな)はせて 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が鳴いているなぁ。松明を先に荷にくくりつけて歩いている。
鈴虫が鳴く夕方から夜にかけての旅の様子を詠んだ句です。松明がぼんやりと道を照らす周りで鳴いている鈴虫の音はさぞ美しかったことでしょう。
【NO.2】正岡子規
『 鈴虫や 土手の向ふは 相模灘(さがみなだ) 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が鳴いていることだ。その声がする土手の向こうは相模灘につながっている。
海沿いの土手を歩いているときの一句です。海と鈴虫という対比になっていて、土手を越えてしまえば鈴虫が生息できない海なのにという思いが込められています。
【NO.3】高浜虚子
『 鈴虫を 聴く庭下駄を 揃へあり 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫の声を聞くために庭に下駄が揃えておいてある。
鈴虫の声を愛でるために庭を散歩できるようにしてあるという句です。いつでも庭を巡れるように準備万端で待ち構えている様子が見て取れます。
【NO.4】阿波野青畝
『 鈴虫の 音をくらべむと 目をつむる 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫の音を比べようと目をつむって聞いている。
秋の虫の音はさまざまな虫が鳴くため、どれがどの虫の音か聞き分けるのも楽しいものです。目を閉じてどの音が鈴虫なのか確かめようとしています。
【NO.5】阿部みどり女
『 鈴虫の お伽に安き 眠りかな 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫の声がおとぎ話のように安らかに夜のお供になってくれる眠りであることだ。
「お伽」とはおとぎ話や夜の供を意味します。鈴虫の鳴き声を夜のお供に聞くとよく眠れると喜んでいる一句です。
【NO.6】中村草田男
『 すず虫や 月無き夜の 声たゆたふ 』
季語:すず虫(秋)
意味:鈴虫が鳴いているなぁ。月が無い夜にも声がたゆたうように響いている。
月が無い夜は真っ暗です。そんな暗い中に、まるで水中をたゆたうように鈴虫の声がどこからともなく響いている、幻想的な表現になっています。
【NO.7】稲畑汀子
『 鈴虫の 鳴き継ぐ夜を 書き継げる 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が鳴き声を継ぐように上げている夜を私は書いて継いでいく。
「鳴き継ぐ」と「書き継げる」を掛けている句です。鈴虫が鳴き続ける様子を私は書き続けようという、長い秋の夜の過ごし方を詠んだ句です。
【NO.8】高浜年尾
『 鈴虫の 逃げしと思ふ 鳴きゐたり 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫がカゴから逃げたと思う。鳴いている虫がいる。
鈴虫は都心部などでは生息場所が少ないため、買って音色を楽しむ場合があります。聞こえてこないはずの場所から虫の声が聞こえたため、カゴから逃げたと考えている一句です。
【NO.9】日野草城
『 鈴虫の ひげをふりつつ 買はれける 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫がヒゲを振りながら買われていった。
買われていく鈴虫がうろうろと動いている様子を詠んでいます。まるで何かの意思表示をしているように見えたのでしょうか。
【NO.10】臼田亞浪
『 雨来り 鈴虫声を たたみあへず 』
季語:鈴虫(秋)
意味:雨が降ってきた。急な雨だったので鈴虫は声をたためなかったようだ。
雨が降ると鈴虫を始めとする秋の虫は鳴きやみますが、小雨程度の雨ならばそのまま鳴いていることがあります。この句では、急な雨に鈴虫が対応できなかったのではと想像するユーモアあふれる発想の句です。
小学生/中学生向け!鈴虫に関する一般俳句ネタ【10選】
【NO.1】
『 夜かざる すずむしたちの コンサート 』
季語:すずむし(秋)
意味:夜を飾る鈴虫達のコンサートが始まった。
秋の夜をにぎやかにする鈴虫たちの虫の声をコンサートと表現しています。日が暮れるにつれて大きくなっていく虫の声を「夜かざる」と表現している句です。
【NO.2】
『 スズムシの ひらいた羽は ハートがた 』
季語:スズムシ(秋)
意味:鈴虫の開いている羽は上から見るとハート形だ。
鈴虫は羽を擦りあわせて音を出します。そんな鈴虫たちを上から見ると、羽がまるでハート形に見えたというかわいらしい視点の俳句です。
【NO.3】
『 すずむしは あきをかなでる おんがくたい 』
季語:すずむし(秋)
意味:鈴虫は秋を奏でる音楽隊のようだ。
美しい音色から、音楽に例える句も多いのが鈴虫です。他にも虫の声と呼ばれる音を出す松虫などもいますが、みんな合せて音楽隊のように聞こえるのでしょう。
【NO.4】
『 すずむしが ないたらあきが こんばんは 』
季語:すずむし(秋)
意味:鈴虫が鳴くと秋がこんばんはと言いながらやって来る。
鈴虫が夜に鳴き始めると、昼がまだ暑い残暑の時期でも秋を実感します。単に「秋の訪れ」ではなく、「こんばんは」と表現することで夜に訪ねてくるようなユーモラスな様子を表した句です。
【NO.5】
『 鈴虫や 畳の上の 回覧板 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が鳴いているなぁ。畳の上に回覧板が置いてある。
鈴虫が鳴き始めた夕方に、畳の上に置きっぱなしになっている回覧板に気がついた日常を詠んでいます。回覧板は地域のお知らせのほかに、小中学校のお知らせも挟んであった場所も多いのではないでしょうか。
【NO.6】
『 鈴虫が 夜の出番を 待っている 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が夜に鳴く出番を待っている。
夜になり暗くなる前の鈴虫を見かけたのでしょうか。鳴き始める出番である夜を今か今かと待っている様子を詠んでいます。
【NO.7】
『 すずむしと 共に奏でた 夢の中 』
季語:すずむし(秋)
意味:鈴虫と共に音楽を奏でた夢の中の出来事だ。
夢で鈴虫と一緒に演奏をしたというメルヘンチックな出来事を詠んだ句です。どんな楽器を演奏したのか、一緒に歌ったのかなど想像が広がります。
【NO.8】
『 鈴虫が かなでる音色 闇の中 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫が奏でる音色が闇の中から聞こえてくる。
鈴虫は、声はよく聞くけれど、実際に鳴いている現場は飼育している場合を除いてあまり見かけません。真っ暗な闇の中から音色だけが聞こえてくる様子を詠んだ句です。
【NO.9】
『 すずむしの やさしい声が こもり歌 』
季語:すずむし(秋)
意味:鈴虫の優しい声が子守唄になっている。
秋の虫の声は騒音としてではなく、心地よい音色として受け止める人が多いでしょう。虫の声を聞いているうちにうとうとと眠ってしまう様子を表しています。
【NO.10】
『 鈴虫の その声一つで 風がふく 』
季語:鈴虫(秋)
意味:鈴虫のその声一つでまるで風が吹いているようだ。
秋は風が強くなっていく時期です。鈴虫が鳴けば鳴くほど秋が深まり、風も強くなっていくように感じた様子を詠んだ句です。
以上、鈴虫に関するオススメ俳句でした!
今回は、鈴虫について詠んだ俳句 20句をご紹介しました。
いずれも鈴虫の声に関するものや、その声を聞いてどう感じたかといった俳句が多いのが印象的です。
残暑が厳しい時期から鳴き始めますが、鈴虫の声を聞いた時の感情をぜひ一句詠んでみてください。