世界でもっとも短い詩といわれている「俳句」。
日常のちょっとした出来事や風景、自然や季節の移り変わりを詠んだものが多く残されています。中でも「海をテーマにした俳句」は数多く存在します。
今回はそんな「海」をテーマにした有名俳句と一般の方の俳句を40句紹介していきます。(小学•中高校生向け)
リス先生
ぜひ俳句作りの参考にしてね!
海をテーマにした有名俳句【15選】
リス先生
まずは、有名俳人が詠んだ名句を紹介していくね!
【NO.1】正岡子規
『 うつくしき 海月浮きたり 春の海 』
季語:春の海(春)
現代語訳:春の海に美しいクラゲが浮いていることだ。
俳句仙人
クラゲは厄介者でありますが、春の霞がかったような海に乳白色のクラゲが浮いている様子は美しくもあります。春だからこそ美しい海の様子が描かれています。
【NO.2】与謝蕪村
『 春の海 ひねもすのたり のたりかな 』
季語:春の海(春)
現代語訳:春の海を見ながら一日中ゆっくり過ごしていることだ。
俳句仙人
穏やかな春の陽気が感じられる句です。春の穏やかな海の様子と陽気が作者をゆっくりと過ごさせています。のたりのたりという部分に幸福感を感じます。
【NO.3】原 石鼎
『 青芒 ぼうぼうとして 夏の海 』
季語:夏の海(夏)
現代語訳:青ススキがぼうぼうと生えている夏の海の様子だ。
俳句仙人
夏の青々とした海の様子が詠まれています。ぼうぼうと生えている部分が海の力強さを感じ、青みが増している様子がススキから感じられます。海を直接詠んでいないのに海の色が伝わる句です。
【NO.4】野澤節子
『 花火待つ 港の闇に 誰も向き 』
季語:花火(秋)
現代語訳:花火を待っている港は真っ暗闇だけれども、誰もがそちらの方を向いて待っている。
俳句仙人
何もない真っ暗闇は誰も見ないはずなのに、今は誰もが見ているギャップに面白さがあります。花火を今か今かと待つ人々は静かでもあり、ざわついている様子もあると考えられます。花火を待つ人々の様子を特徴的に詠んでいます。
【NO.5】五島高資
『 半身を 魚に囲まれて いる土曜 』
季語:無季
現代語訳:海に入っていると、腰から下が魚に囲まれてしまった。そんな土曜日だ。
俳句仙人
のんびりした休日の様子が感じられます。気づいたら海に魚がたくさんいたような雰囲気を感じます。最後に加えられた土曜がのんきさを感じさせます。
【NO.6】西東三鬼
『 秋の暮 大魚の骨を 海が引く 』
季語:秋の暮(秋)
現代語訳:秋の暮れで海岸を見たら、大魚の骨を海の波が引いている。
俳句仙人
秋になると物悲しさを感じます。その様子を大魚の骨で示し、それを海がさらっていることでしんみりとした雰囲気を作り出しています。
【NO.7】飯田龍太
『 秋の船 風吹く港 出てゆけり 』
季語:秋(秋)
現代語訳:秋の季節の船は風が吹く港から出港している。
俳句仙人
寒くなり始めた秋の冷たい海の様子が感じられます。冷たい風が吹く港を去る様に船が出ていく様子は憂鬱さを感じさせます。
【NO.8】高山れおな
『 渡るべき 海の昏さよ 秋燕 』
季語:秋燕(秋)
現代語訳:渡らなければならない海はとても暗いことだ、秋燕よ。
俳句仙人
これから冬になる厳しさを作者は海を通して描いています。燕は秋になると海を渡り南国に向かいます。今から迎える季節の過酷さを暗示しています。
【NO.9】山口誓子
『 鷺とんで 白を彩とす 冬の海 』
季語:冬の海(冬)
現代語訳:サギが空を飛び、白い彩をつけている冬の海だ。
俳句仙人
サギは白い鳥です。冬のうす暗い海の中を真っ白な鳥が飛んでいる美しい風景です。冬のどんよりしている様子を逆手にとって、一点を描く高度な技法です。
【NO.10】加藤郁也
『 冬の波 冬の波止場に 来て返す 』
季語:冬(冬)
現代語訳:冬の波は波止場に寄せては返している。
俳句仙人
冬の荒々しい波が船の荷物を上げ下ろしする場所に返るということは、冬の厳しさを感じさせます。また厳しさを感じさせながら、波が返ってくる安心も感じます。苦しい中、出港した船もいずれ戻ってくるような優しさも感じられます。
【NO.11】松尾芭蕉
『 荒海や 佐渡に横たふ 天の川 』
季語:天の川(秋)
現代語訳:目の前には荒れた海があるなぁ。佐渡の上に横たわる天の川が輝いている。
俳句仙人
海、島、天の川と目の前の悠然とした大自然を詠んだ有名な句です。天の川が見えていることから夜の風景で、黒々とした島影と海に比べて輝く天の川が対比になっています。
【NO.12】松尾芭蕉
『 早稲の香や 分け入る右は 有磯海 』
季語:早稲(秋)
現代語訳:早く実る稲の香りがするなぁ。この道を右に分け入ると有磯海が見えてくる。
俳句仙人
『おくのほそ道』で詠まれた句で、古くから有磯海という歌枕として知られた富山湾西部を訪れています。一面の田んぼと海という、歌枕として知られていた昔から変わらない風景を詠んだ句です。
【NO.13】池西言水
『 木枯らしの 果てはありけり 海の音 』
季語:木枯らし(冬)
現代語訳:木枯らしにも果てはあるのだなぁ。海の音がする。
俳句仙人
木枯らしが吹いていく先には終着点として海があり、海の音が風の音をかき消している、と詠んだ句です。作者はこの句で有名になり、「凩の言水」として知られていました。
【NO.14】高浜虚子
『 春の浜 大いなる輪が 画いてある 』
季語:春(春)
現代語訳:春の浜辺に、大きな輪が描いてある。
俳句仙人
誰かが浜辺に大きな輪を描いた痕跡を見つけたときの一句です。波に打ち消されない砂浜に描かれた円は、激しい冬の海ではなく穏やかな春の海を感じさせます。
【NO.15】中村草田男
『 秋の航 一大紺 円盤の中 』
季語:秋(秋)
現代語訳:秋の海を航海中だ。周りは紺色で大きな円盤の中にいるようだ。
俳句仙人
全てが体言止めで終わっているめずらしい句です。静かな大海原を船で進んでいると、まるで紺色の円盤の中にいるようだと驚いている様子が伺えます。
海をテーマにした一般俳句【25選】
リス先生
ここからは、一般の方の作品(小学生・中学/高校生)を紹介していくね!
小学生の作品【おすすめ12句】
【NO.1】
『 ポケットに 貝がらしまい 秋が来る 』
季語:秋が来る(秋)
俳句仙人
海岸の貝が拾う様子が夏らしいですが、それが過ぎると秋が来ます。夏の終わりと秋の始まりが感じられる句です。
【NO.2】
『 海の音 目を閉じ聞くと 夢の中 』
季語:無季
俳句仙人
心地の良い波の音を聞いていると眠ってしまった様子がかわいらしいですね。海の音は心を癒してくれる音であることを思い出させてくれる句です。
【NO.3】
『 春の海 音にひかれて うふふふふ 』
季語:春の海(春)
俳句仙人
春の海は波の音や動物の声など、冬に比べて明るくにぎやかです。気持ちの高まりが「うふふふふ」に凝縮されており、言葉で表しきれない嬉しそうな様子が目に浮かびます。
【NO.4】
『 潮風に すずしさのあり 船の上 』
季語:すずしさ(夏)
俳句仙人
暑い夏の日の海の真ん中は照り返しなどで熱く感じることもありますが、海からの潮風が吹き抜けるいいスポットでもあります。夏らしい潮まじりの風の爽やかさが感じられます。
【NO.5】
『 おーい海 さかなのおやよ 海の春 』
季語:春(春)
俳句仙人
春は様々な動物が活動し始める時期です。魚が生きられる場所である海は魚の親であり、魚たちをはぐくみ始めるはずです。そのような海に言葉を投げかける面白い句です。
【NO.6】
『 しお風に 日焼けをしたよ わかめほし 』
季語:日焼け(夏)
俳句仙人
わかめほしとは生のワカメを乾燥させて日持ちさせる方法です。ワカメは濡れていると緑色ですが、干されて乾燥すると黒っぽく色が変化します。その様子を日焼けと例えた面白い視点を持った内容です。
【NO.7】
『 しおひがり ふりむくかおは ドロだらけ 』
季語:しおひがり(春)
俳句仙人
泥だらけになった顔は潮干狩りに夢中になっていた証拠です。振り向いて気づいいたことから、周りも自分も気づかないほど夢中になっていたことが伝わります。
【NO.8】
『 しおひがり かいがいっぱい 口とじる 』
季語:しおひがり(春)
俳句仙人
潮干狩りではアサリがたくさん顔を出しますが、すべて口を閉じています。獲られまいと口を閉じる貝の様子と、たくさん獲ったであろう作者の様子が感じられます。
【NO.9】
『 ほたるイカ 夜になると パレードだ 』
季語:ほたるイカ(春)
俳句仙人
ホタルイカは夜の海で青く光ります。群れているため、光の道のように見えますが、その様子をパレードと表現したところに美しさを感じます。作者が見たホタルイカの群れは美しく心躍るものと想像できます。
【NO.10】
『 うきわをし くらげみたいに ぷうかぷか 』
季語:うきわ(夏)
俳句仙人
浮き輪をした人たちをクラゲに例えたところに面白さを感じます。丸い浮き輪で下に足をのばした様子がそっくりです。ぷうかぷかという言葉の語感もよく、繰り返したくなるリズム感があります。
【NO.11】
『 初夏の海 船をつまんで 遊ぶ午後 』
季語:初夏(夏)
俳句仙人
遠くから海に浮かぶ船を見ていると、遠近法でとても小さく見えるため船をつまめるような感覚になります。ひょいと船をつまんで遊んでいる午後を詠んだ句です。
【NO.12】
『 貝殻に 海の声聞く かくれんぼ 』
季語:無季
俳句仙人
貝殻に耳を当てると海の音がするといいます。この句では聞こえてくる海の声を頼りにかくれんぼをしようとしていて、ユーモアのある句になっています。
中学生・高校生の作品【おすすめ13句】
【NO.1】
『 さくら貝 去年の夢が 箱の中 』
季語:さくら貝(春)
俳句仙人
去年拾った貝殻でしょうか。大切に箱にしまっていた様子が目に浮かびます。去年楽しく海で過ごした思い出が夢という言葉から感じられます。
【NO.2】
『 砂浜を 裸足で走る ラストシーン 』
季語:無季
俳句仙人
映画のワンシーンのような句です。青春を感じられる内容でもあり、ラストシーンという言葉が夏の終わりや思い出の終わりを感じさせます。
【NO.3】
『 何事も なかったような 春の海 』
季語:春の海
俳句仙人
冬や春先の海は荒れやすく波が高いときが多々あります。風が強く波がうねりやすいからです。しかし、いったん風が止まれば凪に入り穏やかな様子を見せます。素知らぬ顔をしているような海の様子が伝わります。
【NO.4】
『 海見えて 遠足の列 乱れけり 』
季語:遠足(春)
俳句仙人
海を見るとワクワクするのは年齢とわずありませんか?水平線や砂浜等見たいところはたくさんあります。そんなウキウキが止められない様子が遠足の列が乱れた様から伝わります。
【NO.5】
『 夏の海 パレットの中から 飛び出した 』
季語:夏の海(夏)
俳句仙人
夏の海は太陽が反射してキラキラ輝いて見えます。その美しさをパレットの中の色と表現したところに芸術性を感じます。パレットの様々な色から生まれたような海の美しさが目に浮かびます。
【NO.6】
『 垂直に 海女が飛び込む 春の海 』
季語:春の海(春)
俳句仙人
海女さんが海産物めがけて飛び込んだところが瞬間的に描かれています。垂直という表現が職人らしく獲物を捕らえている様子を生んでいます。
【NO.7】
『 風鈴の 音に重なる 波の音 』
季語:風鈴(夏)
俳句仙人
風鈴の涼し気な音と波の音が重なり、夏の爽やかさが表現されています。波の繰り返すリズムと風鈴の独特のリズムが相乗効果で夏らしさを出している様子が感じられます。
【NO.8】
『 「さようなら」 駅でもらった 春の貝 』
季語:春(春)
俳句仙人
大切な人とお別れをしたのでしょうか。春の海の思い出が楽しさから悲しさへと変わる瞬間です。別れ間際の駅でもらった春の貝は印象的です。同じような貝を見ると思い出されそうな心に残る句です。
【NO.9】
『 いくつかの 足跡遊ぶ 夏の海 』
季語:夏の海(夏)
俳句仙人
海岸に誰もいなくても、足跡の数で人の数や様子が分かります。作者が見た足跡は何人かが様々な向きのものだったのでしょう。楽しく遊んでいた様子が感じられます。
【NO.10】
『 夏過ぎて 少し淋しく 寄せる波 』
季語:夏(夏)
俳句仙人
夏と秋で大きく波が変わった様子がないのに、何か違っているように作者には見えたのでしょう。少し淋しくという部分に物悲しさを感じます。過ぎ去った夏への名残惜しさと寂しさが感じられます。
【NO.11】
『 昼顔や 海まだ見えぬ 砂の道 』
季語:昼顔(夏)
俳句仙人
昼顔が咲いている砂の道を歩いている様子を詠んでいます。海辺に咲くことの多い昼顔と砂浜を思わせる道を辿っているので、あと少しで海が見えてくる予感を感じさせる句です。
【NO.12】
『 夏きざす 南の海が 呼んでいる 』
季語:夏きざす(夏)
俳句仙人
「夏きざす」とは春が終わり、夏の気配がし始める時期のことをいいます。南の美しい海のシーズンが始まることにわくわくとしている一句です。
【NO.13】
『 曲がり道 蝋梅(ろうばい)たどり 海に出た 』
季語:蝋梅(冬)
俳句仙人
曲がり道にある蝋梅を辿っていくと海に出た、という散策の様子を詠んでいます。蝋梅は12月から2月にかけて咲く花で、まだ寒い時期の海にたどり着いています。
以上、海をテーマにしたオススメ俳句集でした!
さいごに
今回は、「海」をテーマに詠まれたオススメ俳句をたくさん紹介しました。
日常に密着した俳句から、絵画のような美しさを持つ俳句まで幅広くありました。きらめく夏の海だけでなく、どの季節の海も注目したくなりますね。
皆さんもぜひこの機会に海の俳句を一句詠んでみてください。
リス先生
最後まで読んでくれてありがとう!君もぜひ俳句作りに挑戦してみてね!
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