春になると若葉が芽吹き、色とりどりの花が咲き始めます。
あたたかい陽気に、咲いた花を目当てに虫たちも活動を始めます。
今回は、春を代表する花のひとつ「たんぽぽ」にまつわる俳句を20句紹介します。
蒲公英のぽぽのあたりが火事ですよ
の詩が強烈すぎて、タンポポみながらぽぽを探す春。 pic.twitter.com/0OBi1x4Wtg
— あやた (@7ajax6) April 17, 2015
「たんぽぽ」の季語を使った有名俳句【15選】
【NO.1】 加藤楸邨
『 たんぽぽの ぽぽと綿毛の 立ちにけり 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの綿毛が、ぽぽとした様子で立ち上がっているよ。
綿毛が1本1本立ち上がっている様子を、擬態語でぽぽと表現したところがユニークな句です。実際に声に出して読んでみても、響きが楽しい句です。
【NO.2】坪内捻典
『 たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽのぽぽのあたりが火事になっているように感じられますよ。
この句の「ぽぽのあたりが火事」とは、どういう意味なのか、作者自身も解答がないと言っています。現代俳句を代表する作者であり、解釈の自由さを特徴とします。思わず、どんな意味だろう?と引き込まれてしまう句です。
【NO.3】中村汀女
『 たんぽぽや 日はいつまでも 大空に 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:足元にたんぽぽが咲いている。大空には太陽がゆうゆうととどまっていて、春の日の長さを感じられるなあ。
【NO.4】 高野素十
『 たんぽぽの サラダの話 野の話 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽをサラダにして食べることができる話から、野の草花の話へと話が広がっていった。
「たんぽぽってサラダにできるんだって」という会話が聞こえてきそうなユニークな句です。日常の会話を切り取り、17音の俳句に表現したところも見事な句です。
【NO.5】星野立子
『 たんぽゝと 小聲で言ひてみて一人 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:「たんぽぽ」と小さな声に出して言ってみた、私はひとりぼっちだ。
明るく元気に咲くたんぽぽに、小さな声でそっと呼ぶ作者の、ひとりぼっちのさみしさが対比されています。
【NO.6】中村草田男
『 蒲公英の かたさや海の日も一輪 』
季語:蒲公英(春)
意味:道端に咲いている一輪のたんぽぽをさわってみると、意外にかたかった、海に沈もうとしている夕日もまた、一輪の花のようだ。
「かたさ」をたんぽぽそのもの、ではなく「つぼみ」と解釈している訳もあります。意外とかたさのあるたんぽぽの生命力も感じます。
【NO.7】星野立子
『 たんぽぽの 皆上向きて 正午なり 』
季語:たんぽぽ(春)
意味: 正午になり、太陽が高くたんぽぽもみな上を向いている。
春のあたたかな1日が感じられます。正午は、時計の針も重なって上を向き、たんぽぽも太陽を追いかけてまっすぐに上を向いています。とても明るい雰囲気の句です。
【NO.8】三橋鷹女
『 あすが来て ゐるたんぽぽの 花びらに 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの花びらに、明日が来ているように感じる。
たんぽぽの明るい色の花びらに、明日への希望を感じたのでしょうか。そのうち綿毛になって飛んでいくたんぽぽに、自分の思いを重ねたのかもしれません。
【NO.9】山口青邨
『 山門に うなゐら遊ぶ たんぽぽもち 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:寺院の正門の前で、子供たちがたんぽぽを持って遊んでいるよ。
「うなゐ」とは、幼い子供をさします。小さな子供が、たんぽぽを持って遊んでいる春の日の、のどかな光景が目に浮かびます。
【NO.10】稲畑汀子
『 たんぽぽの 白の孤高に 黄を配す 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽが咲いている、一輪の白いたんぽぽの周りに黄色いたんぽぽが咲いている。
たんぽぽには黄色と白色があります。白色はあまり見かけませんが、それを「孤高」と表現しています。なんだか、たんぽぽが人間のようにも見えてきます。たんぽぽの配色に注目した句です。
【NO.11】 正岡子規
『 たんぽぽの ぽぽと綿毛の 立ちにけり 』
季語:蒲公英(春)
意味:馬を借りて、たんぽぽが多い野原を行く。
作者の時代ではまだ馬が交通手段として残っていました。馬の上から眺めるたんぽぽの咲く春の野原は、どれだけ美しかったことでしょう。
【NO.12】夏目漱石
『 犬去つて むつくと起る 蒲公英が 』
季語:蒲公英(春)
意味:犬が去って、むっくと起きるたんぽぽがある。
犬が遊び回って倒されてしまったたんぽぽが、いなくなった途端にむくりと起き上がった様子を詠んでいます。生命力の強さを感じる一句です。
【NO.13】松本たかし
『 たんぽぽの 大きな花や うす曇り 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの大きな花が咲いているなぁ。外は薄曇りだ。
【NO.14】 星野立子
『 たんぽぽに かこまれ草に 坐りけり 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの花に囲まれて草の上に座っている。
草原に散歩に来たのか、たんぽぽに周りを囲まれている場所に腰をおろしています。辺り一面たんぽぽの花が咲く様子はさぞ圧巻だったことでしょう。
【NO.15】種田山頭火
『 もう転ぶまい 道のたんぽぽ 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:もう転ぶまい。道のたんぽぽよ。
自由律俳句の一種です。作者の俳句にはたんぽぽが多く登場しており、季節を感じられる草花だったのでしょう。
「たんぽぽ」の季語を使った一般俳句作品ネタ【15選】
【NO.1】
『 たんぽぽの わたげ飛ばして 命生む 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽが綿毛を飛ばしている、綿毛は地面に落ちて新しい命となるだろう。
【NO.2】
『 たんぽぽに 光のシャワー ふりそそぐ 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽに、太陽の光のシャワーが降りそそいでいるよ。
小学生の詠んだ句です。たんぽぽは黄色や白の花を咲かせます。太陽の光のシャワーを浴びて、黄色になったのでは、という発想も浮かんできます。
【NO.3】
『 今ここで 蒲公英になれ 種になれ 』
季語:蒲公英(春)
意味:蒲公英のように、綿毛になって、また別のところでも何度でも花を咲かせていきたい。
とても力強く、エネルギーが感じられる句です。高校生が詠んだ句で、色々な場所でいろいろなことを楽しみたいという思いが込められています。まっすぐな思いが伝わってきます。
【NO.4】
『 タンポポの 暖かい色 寝てしまう 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:タンポポを寝そべって見ていたら、その暖かさで寝てしまいそうだ。
中学生の詠んだ句です。母親がたんぽぽを寝転がって見ている様子を詠んでいます。あたたかい春の、ぽかぽかとした日差しが感じられます。
【NO.5】
『 たんぽぽや たんぽぽ組は みな元気 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:咲いているたんぽぽよ、たんぽぽ組の園児はみんな元気ですよ。
たんぽぽの語がたくさん出てきて響きも楽しい句です。たんぽぽ組の子供たちが、たんぽぽを見つけて嬉しそうにしている様子が浮かんできます。
【NO.6】
『 たんぽぽや 役目を終へし 古校舎 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽが咲いている、生徒がおらず役目を終えた古い校舎がひっそりと建っている。
古い校舎にたんぽぽがひっそりと咲いています。生徒がたくさんいた頃には、たんぽぽを摘んで綿毛を飛ばしていたりしていたかもしれません。少し、さみしさを感じるたんぽぽの句です。
【NO.7】
『 たんぽぽの わたげが肩で 一休み 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの綿毛が飛んできて、私の肩に止まって休んでいるようだ。
たんぽぽの綿毛は一斉にふわっと風に舞います。一休みする綿毛をみつめている、優しい句です。花だけでなく、綿毛も俳句の題材としてよく使われています。
【NO.8】
『 たんぽぽが おそれ知らずに 旅に出る 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの綿毛が、恐れを知らないのか、飛んで風に乗って旅に出ていく。
たんぽぽの綿毛は、行く先も決めずに風に舞っていきます。綿毛が風に舞う句は多いですが、綿毛の様子を「おそれ知らず」と表現したところに、センスを感じます。
【NO.9】
『 蒲公英や ゆつたり育つ 三人目 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽが咲く季節になった、3人目の子供はゆったりと育っている。
育児にも少し慣れ、たんぽぽを見て時間の流れを感じたのでしょうか。たんぽぽを見つめ、わが子を見つめる、あたたかいまなざしが感じられます。
【NO.10】
『 たんぽぽが ぽぽぽぽぽぽと さいており 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽが、ぽぽぽぽぽぽとたくさん咲いている。
たんぽぽが、あちこちにたくさん咲いている様子を、「ぽ」で表現しています。読んでみて響きが楽しく、気分が明るくなります。
【NO.11】
『 たんぽぽの ぽぽのあたりが 魅力的 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの「ぽぽ」のあたりが魅力的なのだ。
【NO.12】
『 たんぽぽを 踏まずに歩く 野原かな 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽを踏まずに歩く春の野原だなぁ。
春の野原といえばたんぽぽが一面に咲いている風景を思い浮かべる人もいるでしょう。そんな中でたんぽぽを踏まないようにして歩く作者は、野原の様子をよく観察しています。
【NO.13】
『 たんぽぽの 綿毛飛ばして 丘の上 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽの綿毛を丘の上に飛ばした。
たんぽぽの綿毛を吹いて飛ばすことは春の恒例です。どこまで飛ばせるか友達と競い合ったことがある人もいるでしょう。
【NO.14】
『 たんぽぽを カシャリスマホに 閉じ込める 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽをカシャリとスマホに閉じ込める。
綺麗に咲くたんぽぽをスマホで撮っている様子を詠んだ句です。「カシャリスマホに」というテンポのいい表現が作者の嬉しさを物語っています。
【NO.15】
『 蒲公英を 捧げて土手は 陽を浴びる 』
季語:蒲公英(春)
意味:たんぽぽを捧げて土手は陽の光を浴びる。
黄色いたんぽぽは太陽によく映えます。土手がまるでたんぽぽを太陽に捧げて日光を得ているように見える美しい光景を詠んだ句です。
以上、たんぽぽを季語に使った俳句集でした!
今回は、「たんぽぽ」の季語を使ったオススメ俳句を30句紹介しました。
たんぽぽは春を代表する花であり、綿毛も含めて多くの句が詠まれています。
ぜひ、お気に入りの句を探して音の響きも楽しみながら読んでみてはいかがでしょうか。