【山口素堂の有名俳句 20選】江戸時代の俳人!!俳句の特徴や代表作(目には青葉〜など)を紹介!

 

俳句は五七五の17音で構成される、江戸時代を発祥とする短い詩です。

 

季語と呼ばれる季節を表す単語を入れることで、短い音の中にさまざまな風物詩を詠み込めます。

 

今回は、江戸時代前期に活躍した松尾芭蕉の友人である「山口素堂(やまぐち そどう)」の名句を20句ご紹介します。

 

 

俳句仙人
ぜひ参考にしてください。

 

山口素堂の人物像や作風

(山口素堂 出典:Wikipedia

 

山口素堂(やまぐち そどう)は1642年に現在の山梨県北杜市に生まれ、後に甲府に移住しました。実家は裕福な酒造業でしたが、家督を弟にゆずって20歳の時に江戸に移り住みます。

 

さまざまな学問や芸能について学んでいて、漢学を林鵞峰に、章句を林春斎に、和歌を清水家に、書を持明院家に学び、茶道や俳諧連歌は北村季吟に学んだとされています。この頃にまだ無名だった松尾芭蕉と出会い、門弟としてではなく友人として芭蕉が亡くなるまで交流を続けました。

 

素堂は「葛飾風」と呼ばれる俳諧の流行は興しましたが、門弟は取らず、文芸や芸能に遊ぶ教養人として生涯を過ごし、1716年に75歳で亡くなりました。

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山口素堂は多くの漢籍や古典、芸能を身につけた教養人です。山口素堂の句は、漢籍や古典、芸能などの知識を遺憾無く発揮されています。
松尾芭蕉の句にも見られる、漢籍の知識を前提とした蕉風俳諧にも影響を与えています。

 

 

山口素堂の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 雪なだれ 妻は炉辺(ろばた)に 居眠れ 』

季語:なだれ(春)

意味:雪なだれが起きた。大きな音がしたはずが、妻は炉端でうとうとと居眠りしている。

俳句仙人

家の外の雪なだれと、居眠りするほど暖かくのどかな家の中の囲炉裏端を対比しています。なだれが起きるほど外の気温も緩んでいるため、春の訪れを感じる句にもなっています。

【NO.2】

『 海苔若和布(のりわかめ) 汐干(しおひ)のけふぞ 草のはら 』

季語:汐干(春)

意味:海苔やワカメがある。潮干狩りに来た今日は海藻で草の野原に見える海だ。

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春は海藻も生い茂る季節です。潮干狩りのメインは貝をとることですが、海苔やワカメなどの海藻がまるで草原のように広がっている様子が浮かんできます。

【NO.3】

『 小僧来り 上野は谷中の 初桜 』

季語:初桜(春)

意味:年少の召使いがきた。上野谷中の初桜だ。

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上野谷中といえば寛永寺のある場所です。寺の小坊主が、桜が咲いた知らせを届けに来たのか、来客の対応に走り回っているのか、にぎやかな江戸の様子を詠んでいます。

【NO.4】

『 宿からん 花に暮なば 貫之の 』

季語:花(春)

意味:宿を借りよう。貫之の梅の花を見ていたら日が暮れてしまった。

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「貫之」とは紀貫之(きのつらゆき)のことです。俳句で花と詠んだ場合は桜であることが多いですが、ここでは紀貫之が愛したという「貫之の梅」がある長谷寺で詠まれているため、梅の花を詠んでいます。

【NO.5】

『 池に鵝(が)なし 仮名かき習ふ 柳陰 』

季語:柳(春)

意味:故事にあるように池にガチョウはいないが、仮名を書き習うように柳の影が風にそよいでいる。

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中国の故事にガチョウの動きが書の上達に役に立つというものがあります。素堂は漢文の知識も多く持っていたため、手習いでガチョウを思い浮かべたのでしょう。

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作者の有名な一句です。季語が3つ重なるという季重なりに加えて体言止めによる三段切れという特異な構成が、五感を使って初夏を楽しもうとする気概を感じます。

【NO.7】

『 綿の花 たまたま蘭に 似たるかな 』

季語:綿の花(夏)

意味:綿の花は蘭に似ていると言われるが、たまたま似ただけだろうなぁ。

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綿の花は中央が濃い茶色で、花弁が淡いクリーム色のものが普及しています。中央の濃い部分が蘭に見えることから、蘭と例えられることが多かったのでしょう。

【NO.8】

『 長雨の 雲吹き出せ 青あらし 』

季語:青あらし(夏)

意味:長雨を降らせる雲を吹き出してしまえ、初夏の強い風よ。

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「青嵐」とは初夏の頃に吹く強い風のことです。春の長雨がそのまま続いていたのか、さわやかな初夏の風に雨雲を吹き散らして欲しいというシンプルな句になっています。うか。春雨の中傘をさす、女性の優美なしぐさが浮かんできます。

【NO.9】

『 夕立や 虹のから橋 月は山 』

季語:夕立(夏)

意味:夕立が降っているなぁ。虹がまるで唐橋のようにかかり、月が山の向こうから顔を出している。

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「から橋」は中国風の模様が施された橋を意味しますが、「瀬田の唐橋」という滋賀県にある大きな橋が想定されます。虹が瀬田の唐橋のように長く延び、その先にある山から月が顔を出している、写実的な一句です。

【NO.10】

『 垣根破る その若竹(わかたけ)を かきね哉 』

季語:若竹(夏)

意味:垣根を破るほど勢いのある若竹を使って垣根を作ろう。

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この句は日本で最古の短歌と言われている「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」という歌に着想を得たと書かれています。「垣根」を2度繰り返しているテンポがよく似た句です。

 

【NO.11】

『 三日月に 必ず近き 星一つ 』

季語:三日月(秋)

意味:空にかかる三日月に必ず近くに星が一つある。

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三日月は夕方には西の地平線近くに沈んでしまいます。日没間際に見える目立つ星となると金星である宵の明星が連想されますが、惑星だったのか目立つ一等星だったのか想像の余地がある表現です。

【NO.12】

『 名もしらぬ 小草花咲 野菊哉 』

季語:野菊(秋)

意味:名も知らぬ小さな草に花が咲いているのを野菊と称しているのだなぁ。

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野菊とは実際にそのような名のある植物ではなく、野生の菊の花に見える野草全般をさす言葉です。「小草花咲」という表現は野菊の実態をよく表しています。

【NO.13】

『 唐土に 富士あらばけふの 月もみよ 』

季語:けふの月(秋)

意味:お月見の発祥である中国の地に富士山があるならば、富士山とともに仲秋の名月を眺めて見るといい。

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富士山とともに見る仲秋の名月の素晴らしさを称えた句です。素堂は漢籍の知識も豊富ですが、季節の風物詩としては自国のものを愛する心が見える表現になっています。

【NO.14】

『 うるしせぬ 琴や作らぬ 菊の友 』

季語:菊(秋)

意味:漆を塗らない琴を作ろう。菊の友として。

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琴は漆を塗り重ねて美しく飾るものが一般的です。また、江戸時代の菊は品種改良が進み、さまざまな色や形の菊が開発されました。しかし作者は、飾りのない琴こそが品種改良されていない菊に相応しい友だと詠んでいます。

【NO.15】

『 ずつしりと 南瓜落て 暮淋し 』

季語:南瓜(秋)

意味:ずっしりと重いかぼちゃが落ちていて、日が暮れを感じて淋しいものだ。

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立派なかぼちゃが出回るようになると、冬の訪れを実感します。かぼちゃのオレンジ色と夕日の色をかけているのは独特の感性と言えるでしょう。

【NO.16】

『 哀れさや しぐるる頃の 山家集 』

季語:しぐるる(冬)

意味:なんと哀れで悲しいことだろう。時雨が降る頃に山家集を読むと、故人を思い出す。

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この句は松尾芭蕉への追悼として詠まれた句です。「山家集」とは平安時代に活躍した西行法師の歌集で、「哀れさや」という表現から友人同士で読んでいたのを懐かしんでいる様子が伺えます。

【NO.17】

『 古足袋(ふるたび)や 身程の宿の 衣配り 』

季語:衣配り(冬)

意味:古い足袋だなぁ。そこそこの身の程の家の衣配りだ。

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「衣配り」とは、新年を前に使用人などに新年の晴れ着用の衣を渡す行事のことです。ここで渡されたのは古い足袋なので、自分にはこれくらいでちょうどいいと感じている句になります。

【NO.18】

『 行ずして 見る五湖煎牡蠣(いりがき)の 音を聞 』

季語:牡蠣(冬)

意味:行かなくても、中国の五胡の名産である煎牡蠣を作っている音が聞こえるようだ。

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この句は松尾芭蕉へ時節のあいさつとして送った句です。「五湖」とは中国の地名で、牡蠣を煎る料理が名産でした。この句が届いた時に芭蕉は実際に牡蠣を食べていたので、千里眼かと驚いたエピソードが伝わっています。

【NO.19】

『 茶の花や 利休が目には 吉野山 』

季語:茶の花(冬)

意味:茶の花が咲いているなぁ。かの千利休の目には、この白い花が吉野山の桜に見えたのだろうか。

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利休とは戦国時代の茶人の千利休のことで、吉野山は奈良県の山桜で有名な景勝地です。白い茶の花がたくさん咲いている様子をただ桜に例えるのではなく、風流についての権威でもある千利休の目を通すことで称えています。

【NO.20】

『 初夢や 通天のうきはし 地主の花 』

季語:初夢(新年)

意味:初夢だなぁ。天に届く浮橋に、地主神社の桜が見える。

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山口素堂の最後の句です。この句は源氏物語の最終巻である「夢浮橋」と、京都にある地主神社の地主桜がモチーフになっています。「夢浮橋」は明確な終わりのない「開けたままの終結」と呼ばれていて、作者自身の人生もそのように結んだのではないかといわれています。

以上、山口素堂が詠んだ有名俳句でした!

 

 

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山口素堂は古典や漢籍の知識が豊富で、俳句にもその知識を下地とする句が多く、松尾芭蕉一門の句と比べると難解なものもあります。
同時期の俳人たちでもその作風はかなり異なるものになるため、ぜひ読み比べてどのような違いがあるか見つけてみてください。