【加賀千代女の有名俳句 30選】代表作(名句)はこれ!!俳句の特徴や人物像など徹底解説！

また、千代女は自筆の俳句の掛け軸を多く残しています。40代後半くらいの時期から俳句を絵と共に掛け軸にする「書画軸」が流行し、実家が掛け軸を扱う表具屋だった千代女も多くの書画軸を残しています。61歳のときには朝鮮使節団へ献上する句軸や扇も依頼されており、千代女の名声の高さが伺えるエピソードです。

次に、加賀千代女の代表的な俳句を季節(春夏秋冬)順に紹介していきます。

朧月は、薄曇りの夜にぼんやりと輝く光が特徴の月です。秋や冬の月の鋭い輝きと違って、咲き誇る花を包み込むような優しい光を「丸うつつむや」と表現しています。

山桜への山道を、後に見に来る人のために誰かが丁寧に踏み分けて道を作ってくれていた光景を詠んだ句です。山道は踏み跡があるかないかで歩きやすさが全く違うため、人の情けに感動しています。

春になるとさまざまな花が一斉に開花します。また、桜餅など独特の香りのする食べ物も多く、お祭りなどではさらに多くの香りにあふれるでしょう。そんな香りがただよってくる、ではなく「風がそそのかした」としたところにユーモアを感じます。

60歳の春を迎えたことを報告する手紙に記されていた一句です。還暦とは干支十干が一巡りする区切りの歳であり、これからの人生に思いを馳せています。

どこからともなくただよってくる梅の香りと、月に照らされる夜の風景を呼んでいます。「ことに」と強調することで、春の月夜の趣深さへの感嘆を表現した句です。

「そこらほど」というまるで口語のような平易な表現を用いています。暗くて歩きにくい道でも、蛍を見ながら歩けるならいいじゃないか、という気楽さが伺える一句です。

夕顔はその名のとおり、日没から夜明けにかけて咲く花です。薄暗くなって庭や垣根などいろいろな物が見えなくなっていく中で、花だけがぼんやりと浮かんで見える美しさを詠んでいます。

「神の結び」とは縁結びのことで、ここではまだ結婚していない若者をさします。小さな子供たちまで総出で田植えをしている家族の風景です。

加賀千代女が夫と死別したときの句と伝えられていましたが、元禄時代の「浮橋」という遊女の句であることがわかっています。単なる寝床の広さではなく、蚊帳で囲まれた場所が広くて寂しいという、寂しさを空間的に表現した名句です。

サルスベリはその名前の通り、夏から秋にかけて100日もの間咲き続けると言われています。同じ花が咲き続けるのではなく散っては咲くことを繰り返しているため、作者の観察眼が光る一句です。

現代の日本とは違って作者が生きていた江戸時代には街灯がなく、川は真っ暗な暗闇の中に流れていました。その上を蛍が舞うことでわずかな光が水面に反射し、川の上の闇までもが水のように流れている感覚を詠んでいます。

加賀千代女の代表作です。「朝顔に」とされている句もありますが、後の句軸などで「朝顔や」と詠み直したことがわかっています。蔓を切らない優しさと、釣瓶を動かせずに近所に助けを求める江戸時代の庶民の生活を生き生きと描いた一句です。

「百生」とは「百生瓢箪」を略した季語で、ひとつの蔓に多くの瓢箪が付くことから名付けられました。この句は仏教における「三界唯心」を説いたもので、「全ては心から発生する」ということわりを百生瓢箪に例えたものです。

加賀千代女が幼くして亡くした子を思った句とされていますが、千代女が残した句集や句軸に残されていないため、本当に千代女が詠んだ句かはわからないとされています。子を気づかう母親の句と取るか、亡き子が遊んでいるのを想像した句と取るかで印象が変わってくる俳句です。

作者が仏門に入ったときの句です。仏教では全てを仏の慈悲に委ねる考え方が一般的のため、風に身を任せるススキと、仏に身を任せる自分自身を掛けています。

俗世にいた頃は髪を伸ばしていたため、その手入れや髪結いにとても時間がかかっていたのでしょう。剃髪してからは髪の手入れをする必要がないため、その分の時間をコタツに入って詩作に励んでいます。

冬の太陽は夏に比べて低い位置にあるため、光の入り方が変わってきます。日の光が届かずに寒い様子を平易な表現で詠んだ句です。

「松風の時雨」という表現があります。松林を風が吹き抜けていく音と時雨が降る音を掛けて詠まれる表現で、この句も松風の時雨を意識して実際の時雨を詠んだものです。

「万両」とはヤブコウジ科の常緑樹で赤い実をつけます。冬に実をつけることで正月の縁起物とされていて、この句では赤い実を兎の赤い目に例えているユーモアのある俳句です。

白い水仙の花と白い雪を対比させている一句です。落ちるものを花弁ではなく香りという目に見えないものにすることで、寒い冬に香り高く咲く水仙の花を称えています。

「福寿草」は黄色い花を咲かせる正月の縁起物で、名前の通りめでたいものとされてきました。作者は美しい黄色の花よりもそのおめでたい名前こそ重要だと詠んでいて、独特の感性を発揮しています。

朝鮮信使に献上した句のうちの一つです。めでたい鶴や初日の出を詠み込んだうえで、たなびく雲と「はるか遠いところ」という意味を掛けた雲井という言葉を使っています。

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