梅雨とは、6月頃から7月中旬にかけて梅雨前線と呼ばれる前線によって引き起こされる長雨のことを言います。
梅雨の時期を表す季語には、下記のように雨の降り方についてのものや空模様、季節特有の動植物など多くのものがあります。
【参考】梅雨に関連する季語一覧
- 時候…入梅・梅雨寒・梅雨明
- 天文…梅雨・梅雨空・空梅雨・五月雨・薬降る・虎が雨・五月晴れ・梅雨晴・梅雨曇・梅雨の星・梅雨の月・五月闇
- 地理…出水・皐月波
- 生活…蒼朮を焚く・水見舞・神水
- 動植物…雨蛙・蝸牛・紫陽花
現在の暦では6月頃ですが、旧暦では1ヶ月ズレが生じるため「五月」を冠する季語が多いのが特徴です。
今回は、そんな「梅雨」を題材にした中学生&高校生向けのオリジナル俳句を20句ご紹介します。
除湿機を
買ってはみたが
梅雨開けた#俳句 pic.twitter.com/8c6ZgHPCxW— デブピエロ (@Uemaaax) June 17, 2016
梅雨ぞらの あめに喜ぶ 子とかえる。 #イマソラ #俳句 #仙台 pic.twitter.com/Mwn0oTs2kw
— 鷹ノ橋商店 (@tanoshisho) June 30, 2015
中学生&高校生向け!梅雨をテーマにした俳句作品ネタ集【前半15句】
【NO.1】
『 キヨスクの 朝刊風に 濡れて梅雨 』
季語:梅雨(夏)
意味:駅のキヨスクで売っている朝刊が、風で吹き込んでくる雨に濡れている梅雨の朝だ。
コンビニや売店では雨の日は新聞が濡れないように、ビニールのカバーを掛けている所があります。そんな朝刊が風でめくれてしまい、雨にしっとりと濡れてしまっている光景です。
【NO.2】
『 青梅雨や テーブル下の 果実酒瓶 』
季語:青梅雨(夏)
意味:木々が雨に濡れて美しい梅雨だ。テーブルの下に果実酒を仕込んだ瓶がある。
青梅雨とは、緑の木々が雨に濡れている様子を表す季語です。果実酒とは繋がらないように感じますが、「青梅」と考えると梅酒と掛けたオシャレな俳句であることがわかります。
【NO.3】
『 日本より 梅雨の匂ひの 茶封筒 』
季語:梅雨(仲夏)
意味:日本から梅雨の匂いのする茶封筒が届いた。
梅雨は雨季の一種ですが、長雨のない国もあります。そんな国へ宛てた国際郵便で、懐かしい雨の匂いがするような封筒が届く、ロマンのある俳句です。
【NO.4】
『 髪型を さっぱりとして 梅雨に入る 』
季語:梅雨に入る(夏)
意味:髪形をさっぱりとさせて梅雨入りを迎えよう。
梅雨に入ると蒸し暑くなるため、髪が長い女性が短い髪形にした句です。じめじめした梅雨と対比するような「さっぱりとして」という句が軽やかな印象を与えます。
【NO.5】
『 入梅(にゅうばい)や 鉛の空に 浮かぶ月 』
季語:入梅(夏)
意味:梅雨入りだ。鉛のような色の空に月が浮かんでいる。
夜の曇り空は真っ暗にはならず、どこか灰色がかった鉛色になります。そんな夜空の晴れ間に月が見えているため、雲との色の対比が見事な一句です。
【NO.6】
『 あの群は きっと教員 梅雨寒し 』
季語:梅雨寒し(夏)
意味:あの人の群れはきっと先生たちだ。寒い梅雨の日なのに。
遠目に見た大人たちが学校の先生だとなぜか気がついてしまうことがありますよね。下校時なのか休日なのか想像がふくらみますが、「梅雨寒し」と寒さを訴えることでびっくりして「肝が冷えた」感じをよく表しています。
【NO.7】
『 五月雨るる フラスコBは 加熱中 』
季語:五月雨(夏)
意味:梅雨で雨が振っている。理科の授業で実験中のフラスコBは今加熱しているところだ。
「フラスコB」という言い回しがとても面白い句です。理科の実験中に複数のフラスコを使用して、フラスコAは冷却、Bは加熱というような実験をしている様子が浮かんできます。五月雨という「雨の水」と、「加熱中」の対比も見事です。
【NO.8】
『 五月雨に 霞(かす)むは水位 観測所 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨の雨足で、霞んで見えるのは川の水位観測所だ。
句またがりの一句です。梅雨の長雨では川が増水し、場合によっては氾濫が起こることもあります。水位観測所では常に川の水位を観測していて、そんな観測所が霞んで見えるほど強い雨が降っている様子を表した句です。
【NO.9】
『 マンションの 灯りの数や 五月闇(さつきやみ) 』
季語:五月闇(夏)
意味:マンションの灯りの数が目立つなぁ。梅雨の頃の夜の闇夜は。
五月闇とは梅雨の頃の月のない鬱蒼とした闇夜のことを言います。そんな月明かりや星空のない夜では、マンションの廊下の照明や家の灯りがとてもよく目立つでしょう。
【NO.10】
『 五月闇 東京大学 志望なり 』
季語:五月闇(夏)
意味:梅雨の夜だ。私は東京大学を志望しているのだ。
6月という受験生にとって勝負の夏の直前に加えて、闇という先の見えない不安、それらを吹き飛ばすように「志望なり」とはっきりと断定してみせる気概のある一句です。何がなんでも合格してみせるという覚悟を感じます。
【NO.11】
『 五月雨に 石段滝と 化しにけり 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨で石の階段が滝になった。
梅雨の雨で石段が滝になったと詠んでいます。余りの雨の量に道が川のようだと言われるように、石段も滝のように水が流れ落ちている様子が想像できる句です。作者は石段を上ることができたのでしょうか。
【NO.12】
『 五月雨や 新しき傘 選びたる 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨だなあ。新しい傘を選びに行こう。
梅雨が来たので、新しい傘を選んでいる様子を詠んでいます。陰鬱としがちな中でもお気に入りの傘で気分をあげようとしている様子が伺える句です。お気に入りの柄の傘をさしていると、楽しくなってきます。
【NO.13】
『 五月雨や 何もなき日の チョコの味 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨が降っている。何もない日のチョコの味だ。
雨が降っている中で、特に何も無い日に食べるチョコの味も格別だと詠んだ一句です。ご褒美としてチョコを食べることもあるでしょうが、何も無いときに食べるチョコの味もまた格別でしょう。
【NO.14】
『 五月雨や 未読の本を 積み重ね 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨が降っているなあ。読み終わっていない本が積み重なっている。
梅雨が降っている中で読んでいない本を積み重ねている作者の部屋を詠んでいます。これから読むのか、積み上げて読まないままなのか、どちらになるでしょうか。梅雨の時期に昇華しようと作者も焦っているのかもしれませんね。
【NO.15】
『 五月闇 歌声だけが 響きをり 』
季語:五月闇(夏)
意味:梅雨の夜空に歌声だけが響いている。
梅雨の夜に歌声だけが響いているという不思議な一句です。誰かが歌っているのか、どこかのお店の曲が聞こえているのか、色々と想像できます。夜になると不意に聞こえてくる歌声という情緒あふれる一句です。
中学生&高校生向け!梅雨をテーマにした俳句作品ネタ集【後半15句】
【NO.16】
『 水かけて 出水(しゅっすい)の水を 押し流す 』
季語:出水(夏)
意味:水をかけて、川が増水してあふれた泥水を押し流す。
「出水」とは、梅雨の大雨で河川が氾濫することを言います。氾濫した水はただの水ではなく泥を含んだ濁流であり、家財や家の床を水で洗い流しているシーンをテレビで見て想像できる人も多いでしょう。
【NO.17】
『 梅雨晴れに 用事抱えて 走りけり 』
季語:梅雨晴れ(夏)
意味:梅雨の晴れ間に用事を抱えて走っている。
雨のときは急ぎでない限り外出したくないものです。たまの晴れ間にいくつかの用事を一気にこなしてしまおうという考えが「走りけり」という言葉に表れています。
【NO.18】
『 思ひ切り 噴水の伸び 梅雨晴間(つゆはれま) 』
季語:梅雨晴間(夏)
意味:思い切り噴水の水が伸びをしているような梅雨の晴れ間だ。
雨が降っていると、噴水の水はあまり目立ちません。場所によっては噴水自体が止められているところもあるでしょう。「思い切り」伸びをするように勢いよく噴きあげられる噴水の様子が浮かんできます。
【NO.19】
『 いつよりの 閉店セール 梅雨曇(つゆぐもり) 』
季語:梅雨曇(夏)
意味:いつから閉店セールをしているのだろう。もう梅雨の曇り空の時期なのに。
いつ見ても閉店セールを行っているお店を見かけることがあります。年の初めから観察していたのか、「いつよりの」と「梅雨曇」の組み合わせが時間の経過を感じさせる句です。
【NO.20】
『 梅雨明けが 最後の試合 つれてくる 』
季語:梅雨明け(夏)
意味:梅雨明けが最後の試合を連れてくる。
作者は中学3年生です。7月の梅雨明けのあとは最後の部活動である夏です。2学期からは受験勉強に専念するために引退となる生徒たちの試合への気合いを感じます。
【NO.21】
『 洗濯物 嬉々と踊りて 梅雨明くる 』
季語:梅雨明くる(夏)
意味:外に干した洗濯物が、嬉々として踊り出している。梅雨明けがくる。
梅雨の間は洗濯物を外に干せずに部屋干しになってしまいます。梅雨が明けたあとの強い夏の日差しに、洗濯物も「踊るように」はためいているのです。
【NO.22】
『 枕木(まくらぎ)に 柔らかな雨 かたつむり 』
季語:かたつむり(夏)
意味:線路の枕木に柔らかな雨が降り注ぎ、かたつむりが歩いている。
あまり電車の往来のない区間の枕木なのでしょう。河川の氾濫を起こすほどの強い雨ではなく、しとしとと降り続く雨にかたつむりが木の上を這っている、優しい雰囲気の句です。
【NO.23】
『 蒼朮(そうじゅつ)を 焚く真昼間の 芝居小屋 』
季語:蒼朮を焚く(夏)
意味:梅雨の間の湿気を取るために、蒼朮を焚いている真昼間の芝居小屋だ。
蒼朮とは、ホソバオケラのことで、漢方薬としても使われる植物です。乾燥させた蒼朮の根を焚くと家の中の湿気やカビを除く効果があります。独特の匂いがするため、この芝居小屋では今蒼朮が焚かれているなとすぐわかる、嗅覚に訴えかける季語です。
【NO.24】
『 紫陽花の 明日は何色 思案顔 』
季語:紫陽花(夏)
意味:紫陽花の色はよく変わるが、明日は何色になっているだろうと思案顔だ。
紫陽花は植えた土の成分によって花の色が変わるとされています。また、咲いた紫陽花が途中で色を変えることもあるため、この紫陽花は、明日は何色だろうと色当てゲームをしているような雰囲気です。
【NO.25】
『 紫陽花や 幕間のごとき 通り雨 』
季語:紫陽花(夏)
意味:紫陽花が咲いているなぁ。芝居の幕間のように通り雨が降っていった。
幕間とは、芝居の一幕が終わって次の幕が開くまでの間のことです。大抵は15分程度であることが多く、まさに「通り雨」であると実感できま。
【NO.26】
『 ボート池に 人影のなく 梅雨に入る 』
季語:梅雨に入る(夏)
意味:ボートで遊ぶ池に人影がない。梅雨が始まったのだ。
ボート池に誰もいなくなることで梅雨になったことを実感しています。梅雨明けまでボート遊びはお預けだと寂しがっているようにも感じる句です。池の端には使われないボートが係留されています。
【NO.27】
『 大切な ことは雲間の 梅雨の星 』
季語:梅雨の星(夏)
意味:大切なことはあの雲間の梅雨の星のように輝いている。
大切なことはあの雲間の梅雨の星のようなものだと例えています。一体どんなことを梅雨晴れの間だけ見える星に例えたのか、想像してみましょう。
【NO.28】
『 珈琲の 香の嬉しきは 梅雨のころ 』
季語:梅雨(夏)
意味:コーヒーの香りがうれしいのは梅雨のころだ。
コーヒーの香りが恋しいのは梅雨の頃だと詠んだ一句です。コーヒーの香りは入れ方や時期によって感じ方が変わるのか、作者は梅雨の頃が1番だと感じているようです。お気に入りのコーヒーを飲みながら、ゆったりとした時間を過ごすのでしょう。
【NO.29】
『 映像の 緑におにぎり 外は梅雨 』
季語:梅雨(夏)
意味:映像の中の緑を見ながらおにぎりを食べよう。外は梅雨だ。
テレビで緑を楽しみながらおにぎりを食べている梅雨の様子を詠んでいます。梅雨の間はピクニックにはいけないので、映像で自然を楽しんでいる面白い一句です。梅雨が明けたら本物の森へピクニックに行こうと相談している様子が浮かんできます。
【NO.30】
『 梅雨トンネル 出口はいまだ 闇の果て 』
季語:梅雨(夏)
意味:梅雨のトンネルの出口はいまだ見えずに闇の果てだ。
長く続く梅雨をトンネルに例え、梅雨明けという出口が闇の果てのように見えないと嘆いています。その年によって変わりますが、長い梅雨は7月になってもなかなか開けずにヤキモキした人も多いのではないでしょうか。
以上、梅雨を題材にして詠んだオススメ俳句作品30選でした!
一口に梅雨と言っても、雨を嘆くものから楽しむもの、つかの間の晴れ間を喜ぶもの、そこに息づく動植物を詠んだものなど、多くの俳句があります。
降り続く雨を眺めながら、人々や自然の様子を観察して一句詠んでみてはいかがでしょうか。