睡蓮は7月から8月にかけて開花する水生植物で、季語の季節は「晩夏」です。
水面から茎を伸ばす蓮と花が似ていますが、睡蓮は直接水の上に浮かぶように咲きます。
睡蓮の
ささやき聞こゆ
長き午後*夏至の頃の午後は長いですね。#俳句 #睡蓮 #写真haiku pic.twitter.com/gCnQ780EvW
— とんぼ (@tonbo_yu_yu) June 22, 2015
今回は、「睡蓮」をテーマにしたオススメ俳句20句をご紹介します。
睡蓮を季語に使った有名俳句【10選】
【NO.1】高浜年尾
『 炎天の 下に睡蓮 花を閉づ 』
季語:睡蓮(晩夏)
意味:炎天下の暑い日差しに、睡蓮は花を閉じてしまった。
睡蓮は未の刻、午後2時頃に花を開閉させると言われています。午後2時は一日の間で最も気温が暑い時間のため、その暑さから逃げるように花を閉じてしまったように見えたのでしょう。
【NO.2】高浜虚子
『 雨意迫り来ぬ 睡蓮の池暗く 』
季語:睡蓮(夏)
意味:雨が降る気配が迫って来ているようだ。睡蓮が咲く池も暗くなっている。
雨が降る前の暗雲や空気を、華やかな花が咲くはずの睡蓮の池が暗いと詠むことで表しています。今にも雨が降りそうな曇天が目に見えるようです。
【NO.3】阿部みどり女
『 睡蓮の 葉よりも青き 蛙かな 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の青々とした葉よりもなお青いカエルであることだ。
睡蓮の葉は水面に浮いているため、カエルが上に乗っていたのでしょう。青々とした緑の睡蓮の葉よりも濃い色のカエルを見つけた感嘆が下句から読み取れます。
【NO.4】杉田久女
『 睡蓮や 鬢(びん)に手あてて 水鏡 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮が咲いているなぁ。結い上げた髪の左右に手を当てて、水面を鏡にして乱れていないか確かめる。
鬢(びん)とは、結い上げた髪の側面のことです。睡蓮が咲くくらい穏やかな水面は、鏡のように覗き込んだ人の姿を映すでしょう。どことなく艶っぽい雰囲気の漂う句です。
【NO.5】香西照雄
『 切味よし 卵で作る 白睡蓮 』
季語:睡蓮(夏)
意味:この包丁は切れ味がよい。卵で睡蓮の花の飾り切りを作っている。
睡蓮の形をした卵の飾り切りをしようとしている一風変わった俳句です。食卓の彩りにするのか、供養にする食事なのか、いろいろと想像が広がります。
【NO.6】長谷川かな女
『 渉(わた)る蝶あり 睡蓮の池果てず 』
季語:睡蓮(夏)
意味:池を渡る蝶がいる。睡蓮が咲くその池は果てがないようだ。
空を飛ぶ蝶の視点になった句です。蝶からすればどこまでも広がる睡蓮の咲く池は、同じ風景が広がって果てがないように感じるでしょう。
【NO.7】川端茅舎
『 睡蓮に 鳰(にお)の尻餅 いくたびも 』
季語:睡蓮(夏)
意味:水面に広がる睡蓮に、鳰が着地しようとしては尻もちをついている。何度も何度も。
鳰はカイツブリとも呼ばれる水鳥です。睡蓮は水面に葉を広げるため、空からはまるで着地できる場所のように見えるのでしょう。実際は水に浮いているだけなので、着地し損ねた鳰は尻もちをついています。
【NO.8】柴田白葉女
『 睡蓮の 花閉づ月光 浄土かな 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の花が閉じている。月光が降り注いで、まるで極楽浄土のようである。
仏教では、蓮の花と睡蓮の花を合わせて「蓮華」と呼び、極楽浄土に咲いている花としています。花は閉じていますが、月光に照らされる睡蓮の様子はまるで極楽浄土のように静かで穏やかなことでしょう。
【NO.9】伊丹三樹彦
『 睡蓮に 問う雨の日の モネの起居 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の花に、雨の日のモネの日常生活を問うてみる。
モネは睡蓮の花を題材にした連作で有名なフランスの画家です。多くの睡蓮の絵画を残したことから、睡蓮の花ならばモネの普段の生活を知っているのでは、という洒落心が込められた一句になっています。
【NO.10】星野立子
『 睡蓮の 敷き重なりし 広葉かな 』
季語:睡蓮(夏)
意味:水面に睡蓮の葉が重なるように敷かれている。大きな葉であることだ。
浮かんでいる睡蓮の葉が、水面を覆い隠すように敷きつめられている風景かわ浮かんできます。見事な風景に下句の詠嘆の言葉が飛び出したのでしょう。
睡蓮を季語に使ったオススメ俳句ネタ【10選】
【NO.1】
『 水面に うかぶ宝石 睡蓮花 』
季語:睡蓮(夏)
意味:水面に浮かぶ宝石のような睡蓮の花であることよ。
睡蓮は茎が伸びた先に咲く蓮とは違い、直接水面に浮かぶ形で咲く花です。その様子がまるで水に浮かぶ宝石のようと例えたシンプルながら美しい句になっています。
【NO.2】
『 睡蓮の池に 睡蓮が咲く今朝 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の池に、睡蓮の花が咲いている、今朝である。
毎年、睡蓮が咲く池に、今年も無事に睡蓮が咲いているのでしょう。朝のお散歩中の一句でしょうか。心が清々しい気持ちになる一句です。
【NO.3】
『 睡蓮の 葉上に光る 水硝子 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の葉の上に光るガラスの玉のような水よ。
睡蓮の葉は蓮の葉と違って水を弾く性質はありませんが、日の光に照らされた水滴がまるでガラスのように見えたのでしょう。「水硝子」と結ぶことによっていっそうその輝きが見えてきます。
【NO.4】
『 睡蓮を 揺らし鯉の背 見え隠れ 』
季語:睡蓮(夏)
意味:水面に浮かぶ睡蓮を揺らしている鯉の背が、睡蓮の葉や花の間から見え隠れしている。
池をゆったりと泳ぐ鯉が、水に浮かぶ睡蓮を揺らしながら見え隠れしています。葉が揺れたところに鯉が泳いでいる日本画のような風景の句です。
【NO.5】
『 睡蓮の みづの傷口より 咲けり 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮は水の傷口から咲くように水面に浮いている。
睡蓮の花は水に直接浮かんで咲きますが、その様子を「水面を切り裂いてできる傷」に例えているのが特徴的です。「みづ」とあえて旧仮名遣いを使うことにより、いっそう印象的な句に仕上がっています。
【NO.6】
『 左舷(さげん)より 睡蓮沈み かけてゐる 』
季語:睡蓮(夏)
意味:左舷から睡蓮の葉や花が沈みかけている。
「左舷(さげん)」とは、船の左側の側面のことです。船に使われる言葉から始まり、睡蓮と続けることによって、風雨で左側が沈んでいる様子を強く印象付けます。水に浮かぶことから船に例えているのが面白い句です。
【NO.7】
『 すいれんは こんぺいたうの やはらかさ 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の花は金平糖のような淡い色をしていて、金平糖のような柔らかさに見える。
全てひらがなで表記されることで、「こんぺいたうのやはらかさ」という現実的でなない質感を表現することに成功しています。淡い色合いは金平糖のような睡蓮ですが、虚実が混ざった幻想的な一句です。
【NO.8】
『 睡蓮の ひかりを捧げ持つ かたち 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮の花は光を捧げ持つ形をしている。
睡蓮は蓮と並んで仏教において極楽浄土を象徴する花です。そのことを念頭に置いているのか、水面に広がって咲く花を「捧げ持つ」とうやうやしく表現しています。
【NO.9】
『 日本の睡蓮 パリの睡蓮より愚直 』
季語:睡蓮(夏)
意味:日本に咲く睡蓮は、パリで描かれた睡蓮よりも愚直にたくましく咲いている。
「パリの睡蓮」とは、フランスの画家のモネの描いた睡蓮のことです。淡い筆遣いで幻想的なモネの睡蓮と比べて、日本で実際に咲いている睡蓮はしっかりと根付いて咲いているのだという感覚が「愚直」という言葉に表れています。
【NO.10】
『 睡蓮を巡りて 何処からも遠き 』
季語:睡蓮(夏)
意味:睡蓮が咲いている池を巡っても、どこからも花が遠いことだ。
睡蓮の花は水辺に咲くのではなく水面に浮かぶため、池の周囲を回って近い場所を探してもどこからも遠いところに咲いている、という嘆きが聞こえてくる句です。
以上、睡蓮をテーマにしたオススメ俳句でした!
今回は、「睡蓮」を季語として使用している俳句を、有名なもの10選と一般の方の俳句10選にわけて紹介してきました。
睡蓮は特徴的な形状や水に浮かぶ様子、名画に描かれていることなどから題材として用いられやすいテーマです。水に浮かんで咲く睡蓮を見かけたら、一句詠んでみてはいかがでしょうか。