秋の味覚である林檎は、私たちの生活に密着した果物です。
赤くて丸いかわいい見た目や甘酸っぱいさわやかな味と香りを好む人は多いでしょう。
私たちにとって馴染み深い林檎は俳句の中ではどのように描かれているのでしょうか?
今回は、「林檎(りんご)」にまつわるオススメ俳句(有名俳句+一般俳句作品)を40句紹介していきます。
背の原で 冬のりんごを食う息子 #俳句 pic.twitter.com/MuyOvwCDha
— さすらいのちょこぱん (@yumeki03) January 6, 2015
林檎(りんご)の季語を使った有名俳句集【20選】
【NO.1】高浜虚子
『 食みかけの 林檎に歯当て 人を見る 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:齧りかけた林檎に歯を当てたまま、通りすがった人に目を向けた。
【NO.2】橋本多佳子
『 星空へ 店より林檎 あふれをり 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:星空へ向かうように店先から林檎があふれている。
【NO.3】中村草田男
『 空は太初(たいしょ)の 青さ妻より 林檎うく 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:空は天地の始まりと同じ青さをしている。そんな日に妻から林檎を受け取る。
【NO.4】野澤節子
『 刃を入るる 隙なく林檎 紅潮(こうちょう)す 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:包丁の歯を入れる隙間がないほど林檎は全体が紅色に染まっている。
【NO.5】飯田龍太
『 母が割る かすかながらも 林檎の音 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:母が割る林檎の音がかすかに聞こえる。
【NO.6】炭太祇
『 岩木嶺(みね)や どこに立ちても 林檎の香 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:東岳の岩木嶺よ。この地はどこに立っていても林檎の香りがする。
【NO.7】稲畑汀子
『 もぐときの 林檎の重さ 指先に 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:木からもいだ時の林檎の重さは指先に伝わる。
【NO.8】林桂
『 制服に 林檎を磨き 飽かぬかな 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:制服で林檎をごしごし磨いているが、飽きないなあ。
【NO.9】寺山修司
『 父と呼びたき 番人が棲む 林檎園 』
季語:林檎園(秋)
現代語訳:父と呼びたい人がいて、その人は林檎園に番人として住んでいる。
【NO.10】大野林火
『 不断燈 仏の林檎 真赤にす 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:不断燈の明かりが仏に供えた林檎を真っ赤に照らしている。
【NO.11】中川富女
『 我恋は 林檎の如く 美しき 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:私の恋は林檎のように美しい。
【NO.12】西島麦南
『 水温む 四方のひかりに 林檎園 』
季語:水温む(春)・林檎園(秋)
現代語訳:春になって水が温かみを増している。あちこちから差す光の中に林檎園がある。
【NO.13】杉田久女
『 父の忌や 林檎二籠(ふたかご) 鯉十尾 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:今日は父の命日だなあ。林檎は籠二杯分、鯉は十尾ある。
【NO.14】岸田稚魚
『 林檎園 やはらかき草 踏みて入る 』
季語:林檎園(秋)
現代語訳:林檎園にやわらかい草を踏みながら入っていく。
【NO.15】日野草城
『 舌端に 触れて余寒の 林檎かな 』
季語:余寒(春)・林檎(秋)
現代語訳:食べた林檎が舌の端に触れると、余寒を感じるなあ。
【NO.16】山口草堂
『 この雨で 林檎の花の 終りけり 』
季語:林檎の花(春)
現代語訳:この雨で林檎の花は終わってしまうだろう。
【NO.17】阿波野青畝
『 一刀のもと 香を放つ 初りんご 』
季語:りんご(秋)
現代語訳:一刀のもとに切ると、良い香りを放つ今年初のりんごだ。
【NO.18】桂信子
『 りんご掌に この情念を 如何せむ 』
季語:りんご(秋)
現代語訳: リンゴを手のひらに乗せる。この情念をどうしたものか。
【NO.19】森澄雄
『 徹夜の稿に いつ置かれたる 林檎凍む(しむ) 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:徹夜で原稿を仕上げていると、いつの間にか置かれていたリンゴが凍ったように冷たくなっている。
【NO.20】鷹羽狩行
『 木にたわわ 地にるいるいと 落林檎 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:木にたわわとなっているリンゴと、地に累々と落ちているリンゴがある。
林檎(りんご)の季語を使った一般俳句作品集【20選】
【NO.1】
『 紅指して 林檎は恋を してるよう 』
季語:林檎(秋)
意味:頬紅や口紅をして、林檎は恋をしているようだ。
林檎の色を人間のお化粧に例えた句ですね。人も恋をして好きな人に会うときは念入りにお化粧をしますが、林檎の綺麗な紅色も誰かを思って染まったと考えると愛着が湧きます。
【NO.2】
『 りんご剥く 赤いリボンを 解くごと 』
季語:りんご(秋)
意味:赤いリボンを解くかのように林檎を剥いていく。
【NO.3】
『 わけありの わけは問はずに りんご喰ふ 』
季語:りんご(秋)
意味:相手は何か訳ありのようだが、私は詳しいことは聞かずに林檎を食べている。
【NO.4】
『 ロケ隊を 入れて膨らむ 林檎園 』
季語:林檎園(秋)
意味:林檎園に取材が来た。大人数のロケ隊で、林檎園は膨らんだみたいになった。
【NO.5】
『 冬林檎 長寿の母に 会いに行く 』
季語:冬林檎(冬)
意味:冬林檎を手土産に長寿の母に会いに行く。
【NO.6】
『 冬りんご 賢さうなる 名前の子 』
季語:冬りんご(冬)
意味:スーパーで冬林檎を手に取る。近くで母親が子どもの名を呼ぶが、賢そうな名前だった。
【NO.7】
『 輪に切れば 蜜も輪になる 冬林檎 』
季語:冬林檎(冬)
意味:冬林檎を輪切りにすると、中の蜜も輪っかの形になった。
【NO.8】
『 ニュートンに 林檎わたしに 塩むすび 』
季語:林檎(秋)
意味:ニュートンといえば林檎だが、わたしには塩むすびがある。
【NO.9】
『 青林檎 吾妻安達太良(あずまあだたら) 肩を組み 』
季語:青林檎(夏)
意味:青林檎よ。吾妻山と安達太良山は肩を組んでいるようだ。
【NO.10】
『 青りんご 素手にて割るや 家郷(かきょう)なる 』
季語:青りんご(夏)
意味:青林檎を素手で割るのだなあ。これこそが故郷だ。
【NO.11】
『 青りんご いつもとちがう 服を着て 』
季語:青りんご(夏)
意味:青りんごはいつもと違う服を着ている。
【NO.12】
『 青りんご 村の人口 減るばかり 』
季語:青りんご(夏)
意味:青りんごよ。この村の人口は減るばかりだ。
【NO.13】
『 夜は星の 色となりたる 花林檎 』
季語:花林檎(春)
意味:林檎の花は夜には星の色になっているのだなあ。
【NO.14】
『 カーブミラーに 林檎の花が あふるるよ 』
季語:林檎の花(春)
意味:カーブミラーに林檎の花があふれるほどたくさん映っているよ。
【NO.15】
『 住む里に 林檎の花の 薫り満つ 』
季語:林檎の花(春)
意味:私の住んでいる里には林檎の花の香りが満ちている。
【NO.16】
『 ストーブの 上の林檎は 幸せの 』
季語:ストーブ(冬)・林檎(秋)
意味:ストーブの上で作られる焼きリンゴは幸せの味がする。
【NO.17】
『 林檎手に とる重力に 耐えかねて 』
季語:林檎(秋)
意味:リンゴを手に取ると、予想よりも重くて重力に耐えかねて落としそうになってしまった。
【NO.18】
『 風強し 林檎の花の 果敢かな 』
季語:林檎の花(春)
意味:風が強い中で咲いている林檎の花のなんと果敢なことだろうか。
【NO.19】
『 けふの日を 祈りて剥くや 冬林檎 』
季語:冬林檎(冬)
意味:今日という日が無事に済むように祈りながら剥く冬のリンゴだ。
【NO.20】
『 林檎剥く 窓のお月さん 今晩は 』
季語:林檎(秋)
意味:リンゴを剥いている。窓から見えるお月さん、こんばんは。
以上、林檎(りんご)をテーマにした俳句作品でした!
僕たちに馴染みの深い果物だけど、改めて手に取ったり切ってみたり並べてみたりすると、新しい発見があるかもしれないね!
実体験の中の気づきは、すばらしい俳句の種になるよ。種をたくさん集めて、素敵な俳句の花を咲かせよう!!