俳句は春夏秋冬それぞれを象徴する季語を入れて詠みます。
夏嵐机上の白紙飛び尽くす、てな感じで風が気持ちいいです pic.twitter.com/G5btz62TrT
— 田畑直 | 百森 (@sunaotabata) August 7, 2018
季語にはさまざまな種類があって、その単語が季語になるのかと驚くものもあるでしょう。
今回は、大学生におすすめの季節(春夏秋冬)の俳句を20句ご紹介します。
大学生向け!春夏秋冬を詠んだ有名俳句【12選】
【NO.1】 正岡子規
『 春立つや 昼の灯くらき 山社 』
季語:春立つ(春)
現代語訳:立春を迎えたなぁ。昼に灯りをつけてもなお暗い山の神社であることだ。
春とはいえ立春なのでまだ2月頃の風景です。日はまだ低く、昼でも鬱蒼とした神社には灯りが点っていて、なお暗いという幽玄な世界が見えてきます。
【NO.2】松尾芭蕉
『 草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家 』
季語:雛(春)
現代語訳:草でできたこの庵も住み替えの時期だ。小さな女の子のいる雛の家よ。
松尾芭蕉が「奥の細道」の旅に出発するときに、住んでいた庵に貼り付けた句です。あとから住む家族に小さな女の子がいると聞いたため、「雛の家」と書いています。
【NO.3】与謝蕪村
『 高麗船(こまぶね)の寄らで過ぎゆく かすみかな 』
季語:かすみ(春)
現代語訳:あれは異国の船だろうか、岸に寄らずに過ぎていく霞立ち込める海の上であることよ。
【NO.4】松尾芭蕉
『 夏草や 兵どもが 夢の中 』
季語:夏草(夏)
現代語訳::夏草が生い茂っている。かつてここで戦っていた兵士たちも今では夢の中のように何も残っていない。
平泉の古戦場跡を見た作者の有名な句です。かつては兵士たちが覇権を争って戦った戦場も、今や青草が生い茂る野原でその面影もない。芭蕉のわび・さびの真骨頂の句となっています。
【NO.5】山崎宗監
『 月に柄を さしたらばよき 団扇かな 』
季語:団扇(夏)
現代語訳:あの丸い月に柄をさしたなら、良い団扇になるだろうなぁ。
暑い夏の夜に月を眺めながら、団扇が欲しいとボヤいている姿が見えるようです。月は鏡やお団子など多くのものを連想させますが、柄をさせば団扇にできるというのは面白い発想です。
【NO.6】正岡子規
『 夏嵐 机上の白紙 飛び尽くす 』
季語:夏嵐(夏)
現代語訳:夏の嵐のような強い風で、机の上の白紙が全て飛んでいってしまった。
夏に窓を開けていたら、急に突風が吹いてチラシや書類などの紙が全て散らばっていってしまう情景です。現在でも経験した方も多いのではないでしょうか。
【NO.7】小林一茶
『 有明や 浅間の霧が 膳をはふ 』
季語:霧秋)
現代語訳:秋の冷え込んだ明け方だ。浅間山の方が降りてくる霧が、朝食のお膳のような低いところまではっている。
作者の時代にはテーブルはありませんので、お膳は床に近い高さに置かれていました。そんなところまで霧が立ち込めるとなると、外は真っ白に霞んでいそうです。
【NO.8】飯田蛇笏
『 おりとりて はらりとおもき すすきかな 』
季語:すすき/芒(秋)
現代語訳:折って取ると、見た目に反してはらりと穂が垂れて重いススキであることだ。
ススキは折って手に取って見ると重いものです。すべて平仮名を使って韻を踏むことで軽やかさを感じさせつつ、実際は「おもき」という言葉が光ります。
【NO.9】大野林火
『 かりがねの 声の月下を 重ならず 』
季語:かりがね/雁(秋)
現代語訳:雁が連なって月の出る夜を飛んでいる。雁は重なって飛んでいるが声は重なっていない。
雁が連なって飛ぶ様子は、浮世絵や図柄のモチーフとして有名なものです。そんな雁が飛んでいますが、姿は重なっても鳴き声は重なっていないという対比になっています。
【NO.10】小林一茶
『 南天よ 炬燵やぐらよ 淋しさよ 』
季語:南天(冬)・炬燵(冬)
現代語訳:外にある赤い南天の実よ、家の中にある炬燵やぐらよ、ああなんと淋しいことか。
作者には遺産相続を巡って弟と争っていた時期があり、その頃の句とされています。いつもならば目を慰める南天の実も、目に映るものしかなくて淋しいという嘆きになる、三回続く「よ」が際立つ句です。
【NO.11】井原西鶴
『 大晦日 定めなき世の 定めかな 』
季語:大晦日(新年)
現代語訳:大晦日という、何が起こるかわからない定めのない世で、暦の区切りという定めの日が来たことである。
何が起こるかわからない「定めなき世」と、暦という「定め」を対比した句です。明日どうなるかわからなくても、暦だけは定め通り訪れる、諸行無常の響きがあります。
【NO.12】正岡子規
『 帰り咲く 八重の桜や 法隆寺 』
季語:帰り咲く(冬)
現代語訳:八重桜が二三輪返り咲いていることだ。冬の初めの法隆寺よ。
「柿食えば~」の俳句は正岡子規の代表作ですが、他にも法隆寺で詠まれた句があります。季語は初冬ですが柿の句と同年に作られた句であり、柿を食べている最中に返り咲きの桜を見つけたのかもしれません。
大学生向け!春夏秋冬を詠んだ素人オリジナル俳句【8選】
【NO.1】
『 鈴の音を 野路にこぼして 遍路行く 』
季語:遍路(春)
意味:鈴の音をかろころと春の野の道に零すように鳴らしてお遍路の道を行く。
【NO.2】
『 散り際を 風は残さず 花筏(はないかだ) 』
季語:花筏(春)
意味:桜の散り際でも風は花を残さない。川に落ちて花筏になることだ。
桜の花が川に落ちて、水面に桜が敷き詰められる光景を「花筏」と言います。桜が咲いても風は花を残してくれない、春の寂しさを詠んだ歌です。
【NO.3】
『 あの頃の 日々がまわれり 扇風機 』
季語:扇風機(夏)
意味:扇風機を見ていると、あの小さい頃の日々が頭の中に浮かんで回っていることだ。
小さな頃に扇風機の前に陣取って声を出して遊んでいたのでしょうか、大人になって改めて見ていると、当時のことが思い出されていく一句です。
【NO.4】
『 夏深し ぎゅぎゅっと締める 靴の紐 』
季語:夏深し(夏)
意味:夏が真っ盛りだ。ぎゅっと靴の紐を締めて、あの山を目指そう。
山の写真と共に詠まれた句です。締めている靴は登山靴でしょう。夏の濃い緑の山にこれから挑もうとする気合いが「ぎゅぎゅっと」という単語から感じられます。
【NO.5】
『 月光に 荒海となる 芒原(すすきはら) 』
季語:芒(秋)
意味:月の光に照らされて、荒海のようにススキの穂が波打っている、ススキの野原よ。
ススキの野原は風が吹くとまるで波打つように銀色に輝きます。月光に照らされたその銀の輝きは、まるで荒海のような美しさを見せたことでしょう。
【NO.6】
『 無人駅 見えいて遠し 刈田道 』
季語:刈田(秋)
意味:無人駅が見えているけれど遠い。刈田の間の道を歩いていく。
鉄道の線路沿いの道でしょうか、無人駅に向けて稲刈りのあとの田んぼを見ながら歩いていく、秋の終わりの寂しさを感じる句です。
【NO.7】
『 朝はトースト 雪見の温泉宿 』
季語:雪見(冬)
意味:朝はトーストを食べよう。雪を見ながら温泉に入れる宿だけれど。
雪見の温泉宿という「和」の場所に対して、トーストという「洋」が面白い一句です。句またがりの破調もあり、トーストと温泉宿の対比が際立ちます。
【NO.8】
『 箱根駅伝 吐く白息の ちぎれ飛ぶ 』
季語:白息(冬)
意味:箱根駅伝だ。選手たちの吐く白い息がちぎれ飛んでいく。
冬の風物詩となった箱根駅伝で、沿道からも選手たちが吐く息が白いのが見えるようです。ちぎれ飛ぶという言葉から、ペースの早い呼吸であることがわかります。
以上、大学生におすすめの俳句集でした!
今回は、伝統的な俳句から横文字も登場する破調の俳句まで20句を紹介してきました。
どの俳句も日本の四季の風景が目に浮かぶ句ばかりです。
今も昔も「この光景を切り取っておきたい」という写真のような俳句が詠まれていますので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。