梅雨は6月から7月にかけて降り続く長雨のことです。
雨の降り方や空の様子など多くの季語があり、旧暦では5月にあたることから「五月雨」「五月闇」など5月を冠する季語もあります。
【参考】梅雨に関連する季語一覧
- 時候…入梅・梅雨寒・梅雨明
- 天文…梅雨・梅雨空・空梅雨・五月雨・薬降る・虎が雨・五月晴れ・梅雨晴・梅雨曇・梅雨の星・梅雨の月・五月闇
- 地理…出水・皐月波
- 生活…蒼朮を焚く・水見舞・神水
- 動植物…雨蛙・蝸牛・紫陽花
梅雨の時期を表す季語には、雨の降り方についてのものや空模様、季節特有の動植物など、多く存在することがわかります。
今回は、そんな「梅雨」をテーマにした小学生向け俳句作品を30句紹介していきます。
梅雨上る
水音のあればあそぶ子梅雨あがる 幢舟 #kigo #jhaik #俳句 pic.twitter.com/wotdNulIzN
— 氷下魚 幢舟 (@k_dousy) July 27, 2016
予報はずれ
大忙しの
梅雨晴れ間#俳句 #アザミ #イワベンケイ #写真haiku pic.twitter.com/mEjyfIHBq1— とんぼ (@tonbo_yu_yu) June 23, 2015
目次
小学生向け!梅雨を題材にした俳句作品ネタ【前編10句】
【NO.1】
『 梅雨入りの 宣言すぐ後 中休み 』
季語:梅雨入り(夏)
意味:梅雨入りの宣言のすぐ後に雨が降らない中休みが来る。
雨が降り始めて梅雨入りの宣言をした後に、急に雨が降らなくなってしまった時の句です。梅雨といっても常に雨が降っているわけではなく、ムラがある年や全く降らない年もあります。
【NO.2】
『 梅雨が好き 君と二人で 相合傘 』
季語:梅雨(夏)
意味:梅雨が好きだ。君と二人で相合傘ができるから。
雨の日に傘を忘れてしまった気になる人と相合傘、という甘酸っぱい青春の一コマです。普段は勇気が出せなくても、相合傘の中ではいろいろと話に花を咲かせられるかもしれません。
【NO.3】
『 髪の毛が 大仏様だよ 憎き梅雨 』
季語:梅雨(夏)
意味:髪の毛が大仏様のようにくるくるになってしまうよ。憎い梅雨め。
大仏様の髪の毛はくるくると渦巻きのようになっています。梅雨で湿気を含むと癖毛の人は髪の毛がまとまらない苦労が、「憎き」という言葉遣いからあふれているようです。
【NO.4】
『 梅雨寒(ざむ)や 朝の独りの だし茶漬け 』
季語:梅雨寒(夏)
意味:梅雨の寒い日だ。朝食に一人で暖かい出汁茶漬けを食べよう。
寒い日は暖かい物が食べたくなります。出汁茶漬けという暖かくさらっと食べられるものを出すことで、朝の忙しさと寒さが際立つ表現です。
【NO.5】
『 いつか読む 本を積み上げ 梅雨となる 』
季語:梅雨(夏)
意味:いつか読もうと思っている本を積み上げていたら梅雨になってしまった。
晴耕雨読という言葉があります。晴れた時は田畑を耕し、雨が降ったら本を読むという生活のことです。雨の日は本を読んで過ごしたくなりますが、この作者の場合は読もうと思った本を読まないでいるうちに積み上がって梅雨を迎えてしまっているユーモアがあります。
【NO.6】
『 入梅(にゅうばい)や 昨日と違う 暗き空 』
季語:入梅(夏)
意味:梅雨入りだ。昨日と違う雨が降り出しそうな暗い空だなぁ。
初夏の曇りとはいえ明るい灰色の空と、雨が降る前の暗い曇り空を対比しています。これから雨の季節がくるという気分の重さを感じ取れる句です。
【NO.7】
『 梅雨寒(ざむ)の 週刊ジャンプ 鈍器めく 』
季語:梅雨寒(夏)
意味:寒い梅雨の朝の週刊少年ジャンプはまるで鈍器のように見える。
週刊漫画誌はかなりの厚みがあり、湿気を吸いやすい紙で作られています。梅雨という湿気を含む日の週刊漫画誌はどこかしっとりとしていて、重みを増しているように見えたのが「鈍器」という例えに繋がったのでしょう。
【NO.8】
『 五月雨を 斜めに離陸機の 灯り 』
季語:五月雨(夏)
意味:五月雨を斜めに横切るように離陸する飛行機の灯りよ。
句またがりの俳句です。まっすぐ降る梅雨の雨の中を斜め上に離陸していく飛行機と、その航空灯が輝いています。民間飛行機には左翼の赤い照明と右翼の緑の照明、衝突防止用の照明など多くの灯りがついているため、鮮やかな光が空港を飛び交う様子が目に浮かぶ句です。
【NO.9】
『 縄文の 遺跡青々 五月雨(さつきあめ) 』
季語:五月雨(夏)
意味:縄文時代の遺跡が青々とした草木に覆われている。五月雨の時期だ。
縄文時代など、遺跡の跡地の公園は保護のために草原のまま保たれていることがあります。「遺跡青々」という言葉は、現在の草原から人々が生活していただろう古代に思いを馳せたようなロマンを感じる表現です。
【NO.10】
『 傘畳み 見上げた空は 五月晴れ 』
季語:五月晴れ(夏)
意味:雨が止んだようなので、傘を畳んで見上げた空が五月晴れだった。
通り雨などで晴れていても雨が降ることがあります。この句では、五月晴れになる直前まで雨が降っていたようなので、通り雨だったのでしょう。上を見ても傘の生地しかない雨のときと、畳んで見上げれば青空だったときの対比がきいています。
小学生向け!梅雨を題材にした俳句作品ネタ【中編10句】
次の10句を紹介していくよ!
【NO.11】
『 あの雲の 上で寝たいな 五月晴れ 』
季語:五月晴れ(夏)
意味:あの雲の上で寝たいなぁ。五月晴れのよい天気だ。
ふわふわの雲の上で寝てみたいというのは、誰しも一度は感じたことではないでしょうか。梅雨の雲は全体的に空を覆いますが、この句が詠まれたときは上空にふわふわとした雲が浮いているだけのよい天気だったことが伺えます。
【NO.12】
『 梅雨晴れ間 黒光りする 路面かな 』
季語:梅雨晴(夏)
意味:梅雨の晴れ間だ。水に濡れて黒く光っている路面だなぁ。
アスファルトの道路は雨などで水に濡れたあとに光を受けると黒く光ります。梅雨の晴れ間は雨が降ったあとに晴れたか、通り雨だったかのどちらかでしょう。「黒光り」と光りを入れることで、日がさしている晴天だとわかるよい表現です。
【NO.13】
『 空梅雨に 実る故郷の 桃甘し 』
季語:空梅雨(夏)
意味:空梅雨の年に実る故郷の桃は甘くなるのだ。
桃は収穫直前の降雨量が少なければ少ないほど甘くなります。空梅雨であれば、出荷が始まる7月頃の桃は甘くなるのです。空梅雨は飲料水不足や作物によっても水不足になりますが、雨が降らない方がおいしくなる物もあると教えてくれます。
【NO.14】
『 梅雨明の 証の雲は 乱れをり 』
季語:梅雨明(夏)
意味:梅雨が明けたという照明の雲は積乱雲のように乱れている。
夏の雲の特徴としては、入道雲や積乱雲のようにもくもくとした形が挙げられます。梅雨時の雲は一面に広がる暗い雲ですが、入道雲や積乱雲を見て夏が来たという実感する句です。
【NO.15】
『 梅雨あけて さあ始まるぞ 夏休み 』
季語:梅雨明(夏)
意味:梅雨が明けた。さあこれから始まるぞ、夏休みが。
梅雨明けは地域によって変わりますが、大体7月の中旬頃になります。この時期になると多くの学校は終業式を迎えて夏休みになるでしょう。雨だらけでなかなか外に遊びに行けなかった作者の遊びへの意気込みが聞こえてくるような表現です。
【NO.16】
『 雨呼ぶか 鳴き止むことなき 雨蛙(あまがえる) 』
季語:雨蛙(夏)
意味:雨を呼んでいるのだろうか。鳴き止むことのない雨蛙よ。
雨蛙は雨の前後になると鳴き始めるため、雨を呼ぶから「雨蛙」と名付けられた説もあるほど雨とは切っても切れない関係です。梅雨はずっと雨が降り続くため、雨が降るから蛙が鳴くのか、蛙が鳴くから雨が降るのかどちらだろうと詩的な疑問を抱いています。
【NO.17】
『 バス停の 時刻表這ふ 蝸牛(かたつむり) 』
季語:蝸牛(夏)
意味:バス停の時刻表の上を這っているカタツムリよ。
カタツムリは寒く乾燥する冬や暑い夏には休眠するため、雨が降り暑くもなく寒くもない梅雨によく見られます。また、晴れている日の昼間は天敵の鳥などに見つかりやすいため、昼間に活動しているのは雨が降っているときです。このため、時刻表という目立つ場所を這っているこの句は雨の日の昼間の出来事だと想像できます。
【NO.18】
『 薬降る 野生のものの つやつやと 』
季語:薬降る(夏)
意味:旧暦の5月5日に雨が降っている。野生の植物が薬となる雨を受けてつやつやと輝いている。
「薬降る」とは、旧暦5月5日の正午に雨が降ることを意味し、この雨で薬を煎じると効き目があるとされたことから名付けられました。また、この日は薬草などを摘むといい「薬日」でもあるため、薬になる雨が薬になる植物に降り注いでいる、なんとも薬効のありそうな光景になっています。
【NO.19】
『 紫陽花や 雨のにおいの 雲が来る 』
季語:紫陽花(夏)
意味:紫陽花が咲いている。雨の匂いがする雲が来るよ。
「雨のにおい」は科学的に証明されていて、「ぺトリコール」と呼ばれています。紫陽花という梅雨を代表する花に雨の匂いが漂い始め、そろそろ一雨くるなぁと視覚や嗅覚を動員させた天気予報のような句です。
【NO.20】
『 ロープウェイは 紫陽花の尾根を越え 』
季語:紫陽花(夏)
意味:このロープウェイは紫陽花が咲き乱れる尾根を越えて登っていく。
十六音の自由律俳句です。「紫陽花」がなければ季節がわかりにくく、「尾根」がなければどのような風景がわかりにくい句ですが、「紫陽花の尾根」と表現することで視界いっぱいの色とりどりの花を連想させます。
小学生向け!梅雨を題材にした俳句作品ネタ【後編10句】
【NO.21】
『 戻り梅雨 大猫終日 眠るらし 』
季語:戻り梅雨(夏)
意味:梅雨が戻って来た。大きい猫は終日眠って過ごすらしい。
梅雨明けと思われた矢先に再び降り出す雨を「戻り梅雨」と呼びます。外に出られない猫は1日眠って過ごすことにしたようです。雨に濡れるのが嫌いなのは人間も猫も同じようです。
【NO.22】
『 色変わり 過ぎゆく梅雨に 映える青 』
季語:梅雨(夏)
意味:色が変わり、過ぎていく梅雨に映える青色だ。
雨が降って濡れると色々なものの色が変わります。そんな梅雨から青空に変わる時に青色が一層映えて見えると喜んでいる一句です。また、紫陽花の青が映えるという解釈の仕方もあります。
【NO.23】
『 梅雨寒や 思いも寄らず 薄日さす 』
季語:梅雨寒(夏)
意味:梅雨寒だと思っていたが、思いもよらずに薄日がさしてきた。
気温が低く寒い雨の日だと思っていたら、薄日がさしてきたときの様子を詠んだ句です。薄日とはいえ曇りよりは暖かいので、ありがたかったことでしょう。晴れているうちに用事をこなしてしまおうと動き出す様子が伺えます。
【NO.24】
『 梅雨トンネル 出口はいまだ 闇の果て 』
季語:梅雨(夏)
意味:トンネルのような梅雨だ。出口はいまだ闇の果てで見えない。
終わらない梅雨をトンネルに例えた面白い一句です。梅雨明けがまだまだ遠く、果てが見えない様子を嘆いています。「果て」とあることから天気予報でも終わりがわからないのでしょう。
【NO.25】
『 梅雨の月 自ら光る 術を知る 』
季語:梅雨の月(夏)
意味:梅雨の時期に出る月は自ら光る術を知っているのだ。
梅雨の晴れ間に少しだけ見える月を詠んだ句です。太陽からの反射で輝いているのは変わりませんが、雨や曇りという状況からまるで自力で光っているようだと称えています。
【NO.26】
『 梅雨晴の 涼しい場所は 猫のもの 』
季語:梅雨晴(夏)
意味:梅雨時の涼しい場所は猫のものだ。
猫は涼しい場所や暖かい場所をいち早く察知します。蒸し暑さを感じる梅雨の時でも、ここが涼しいのだとその場所を譲らない猫の様子が見えるようです。ゆったりと昼寝をしている猫の姿が浮かんできます。
【NO.27】
『 空梅雨に 首を傾げる 蛙かな 』
季語:空梅雨(夏)
意味:雨が降らない空梅雨に首を傾げるカエルがいるなぁ。
雨が降らない梅雨の時期を「空梅雨」と呼びます。降るはずの飴が一向に降ってこないことにカエルが不思議そうにしているというユーモアのある一句です。カエルとともに作者も首を傾げているのかもしれません。
【NO.28】
『 空梅雨や 蝉も鳴かずば 耐えれまい 』
季語:空梅雨(夏)
意味:空梅雨だなぁ。蝉も鳴いていなければ耐えられない暑さだ。
空梅雨になる時は日差しが強く、早くも夏の気候になります。蝉も鳴いていないと耐えられないほどの暑さだと嘆いている一句です。一斉に鳴き出した蝉の声に夏の訪れを感じる一句です。
【NO.29】
『 梅雨寒で 何着ていこう 学校に 』
季語:梅雨寒(夏)
意味:梅雨寒の時は何を着ていこうか、学校に。
梅雨は寒くても湿度が高いため、服を選ぶのが難しくなります。何を着ていこうか悩んでいるところを見ると、制服のない学校なのでしょう。カーディガンを羽織るか、インナーを暖かいものにするか、あれこれなやんでいます。
【NO.30】
『 荒梅雨や うつむく花に 容赦なく 』
季語:荒梅雨(夏)
意味:荒々しく雨の降る梅雨だなぁ。うつむくように咲く花に容赦なく降り注いでいる。
「荒梅雨」とは雨の勢いが強い梅雨のことを指します。しとしとと降るのではなくざあざあと降るため、雨粒の勢いで花がうつむいてしまっています。うつむく花にさらに容赦なく降る雨の勢いに辟易としている一句です。
以上、梅雨を題材にして詠んだオススメ俳句でした!
梅雨ならではの苦悩や楽しみ、雨の晴れ間の喜びなど、いろいろな風景や感情が込められた句が多いのが特徴です。
長雨を眺めながら一句詠んでみてはいかがでしょうか。