ブランコは公園に必ずあるといっても過言では無いほど有名な遊具です。
1年を通じて子供たちが遊んでいるため季語にならないと思われがちですが、実は春の季語になっています。
そういえば、夕方のとある番組で知ったんだけどブランコって、春の季語なんだってね。#スマホ撮り #ファインダー越しの私の世界 #さくら #ブランコ #公園 #XPERIA https://t.co/4am4nqiGtZ pic.twitter.com/ahXLZZxrJX
— Toma🍅🇯🇵@HSP (@tomato_1991) April 13, 2017
今回はブランコが春の季語である理由、そして意外な季語の解説やブランコを季語に含む有名な俳句を5選紹介していきます。
目次
ブランコ(鞦韆)が春の季語である理由
春の季語である理由としては、現代日本での遊び方ではなく古代の中国の慣習や漢詩が元になっているからです。
ブランコは古くから鞦韆(しゅうせん)と呼ばれていました。古代の中国には冬至から105日後に訪れる「寒食節(かんしょくせつ/かんじきせつ)」というものがあり、鞦韆はその日に女性たちが遊ぶものとされています。
この「寒食節」では文字どおり火を使わない食事をする日ですが、古い火を消し新たな火を熾すという農耕儀礼であり、女性たちによる鞦韆遊びもまた農耕儀礼のひとつだったと言われています。
(蕙園伝神帖「端午風情」 出典:Wikipedia)
また、唐の玄宗皇帝は宙に浮く様子が仙人のようだと「半仙戯」と名をつけましたが、こちらもブランコを表す季語になっています。さらに、北宋時代の蘇軾という詩人が書いた「春夜」という漢詩にも次のように登場しています。
春宵一刻値千金 (しゅんしょういっこくあたいせんきん)
花有清香月有陰 (はなにせいかあり、つきにかげあり)
歌管樓臺聲細細 (かかんのろうだいこえさいさい)
鞦韆院落夜沈沈 (しゅうせんいんらくよるちんちん)
春の夜の花の香りや月の輝き、聞こえてくる歌や音楽と夜が更けても揺れている鞦韆が描写されています。
日本には奈良時代の嵯峨天皇の時には既に鞦韆が伝来していて、「鞦韆篇」という春のお祭りの様子を詠んだ漢詩が作られています。
そのため、鞦韆の農耕儀礼としての由来も含めてブランコや鞦韆は春の季語とされました。
季語としてはブランコや鞦韆だけではなく、【ふらここ・ふらんど】など多くの表現の仕方があります。ポルトガル語でバランスを意味する「バランソ」、白色を意味する「ブランコ」を、江戸時代の人達が発音しやすいように表現したためとも言われています。
知っておきたい!意外な俳句の季語【5つ】
ボートレース【春の季語】
ボートレースは競艇が3月から11月頃まで行われていますが、競艇ではなく手漕ぎのボートで行われる「レガッタ」という競技から季語として採用されました。隅田川で4月に行われる早慶レガッタが有名で、明治38年から100年以上続いてきた大会のため春の季語になっています。また企業対抗別の大会も多くが春に行われています。
甘酒【夏の季語】
現在は甘酒というと初詣で飲んだり冬の寒い時期に飲んだりと冬のものであるという認識を持っている人も多いでしょう。甘酒が夏の季語である理由は、俳句が始まった江戸時代には暑気払いとして甘酒が売られていたことに由来します。釜や茶碗を担いで甘酒を売りに来る甘酒売りは江戸では一年中見られましたが、特に暑気払いとして飲まれていた印象が強いため夏の季語になっています。
香水【夏の季語】
香水は一年中付けている人もいるものですが、季語としては夏の季語になります。汗の臭いを消すために香水を付けるという理由から夏を表す季語になりました。同じように防臭効果や防虫効果を期待して香料を袋に詰めた「掛香」や「匂袋」も夏の季語です。
夜食【秋の季語】
季節を問わず、勉強の合間や夜更かしの途中で軽食を食べる人も多いでしょう。夜中に食べる軽い食事を意味する「夜食」は秋の季語になっています。かつての農村で秋の長い夜に草履作りや糸つむぎなどの作業を行ったあとに、雑炊などの軽食を食べていたのが理由です。夜に作業を行う「夜なべ」という言葉も同じく秋の農村での風景として秋の季語になっています。
小春日和【冬の季語】
「小春日和」は春の季語と間違えやすいですが、冬の季語です。春先の暖かい日と混同されますが、「小春」とは旧暦の10月を意味する異称と覚えておくと間違えないでしょう。秋の終わりから冬の初めまでの穏やかな晴天が続くことを小春日和と呼びます。1月などの真冬 の最中の暖かい日には使用しないため注意して使ってください。
ブランコ(鞦韆)の有名俳句【5選】
【NO.1】小林一茶
『 ふらんどや 桜の花を もちながら 』
季語:ふらんど(春)
意味:ブランコに乗っている。桜の花を持ちながら漕いで遊んでいる。
ブランコ遊びをしながら桜の花を持つという春を象徴する一句です。冬が終わり待ちかねた春が来た喜びが感じ取れます。
【NO.2】三橋鷹女
『 鞦韆(しゅうせん)は 漕ぐべし愛は 奪ふべし 』
季語:鞦韆(春)
意味:ブランコは漕ぐべし。愛は奪うべし。
ブランコは漕ぐものであるように、愛を奪ってしまおうという情熱的な俳句です。「べし」を2回続けることで奪うという言葉がより強調されます。
【NO.3】高浜虚子
『 鞦韆に 抱き乗せて沓(くつ)に 接吻す 』
季語:鞦韆(春)
意味:ブランコに婦人を抱いて乗せて、靴に接吻する。
この句は1918年4月に行われた婦人俳句会で詠まれたものです。かつては朝廷の人々がブランコでこのように遊んでいたのだろうかと想像して作ったと自解で述べています。
【NO.1】加藤楸邨
『 ぶらんこの うしろすがたは 呼びかねつ 』
季語:ぶらんこ(春)
意味:ブランコに乗っているひとりぼっちの後ろ姿は声をかけにくい。
1人でブランコに腰掛けている姿を見ると、寂しそうでどうにも声をかけられないという様子を詠んでいます。子供の時も大人になっても覚えがある人はいるのではないでしょうか。
【NO.1】星野立子
『 鞦韆に 腰かけて読む 手紙かな 』
季語:鞦韆(春)
意味:ブランコに腰掛けて読む手紙であることだ。
青春時代にラブレターなどドキドキする手紙を読んでいる様子が浮かんでくる句です。イスではなくブランコに腰掛けることで、揺れている心を表しています。
さいごに
今回は、ブランコが春の季語である理由や意外な季語、ブランコを季語に含む有名な俳句を紹介しました。
文字を見ただけでは季節感が感じられない季語でも、由来を知ると昔の情景が浮かんでくるようです。歳時記を確認しながらいろいろな季語を使って俳句を詠んでみましょう。