「雪」という季語は、冬の風物詩として多くの俳句に詠まれてきました。
いくたびも
雪の深さを
尋ねけり 正岡子規 pic.twitter.com/iOwTk9wuv2
— 桃花 笑子 (@nanohanasakiko) December 17, 2014
今回は、「雪」をテーマに詠まれた小学生向け俳句15句と中学生向け俳句15句をしていきます。
俳句の季語「雪」について
雪に関する季語は、初雪の降る冬の初めから雪解けが始まる春の中頃までの期間が主な範囲です。
そのため、雪に関連する季語は「冬」と「春」に集中しています。
【雪に関連する季語一覧】
- 初冬…初雪
- 仲冬…雪囲い
- 晩冬…雪、雪空、吹雪、雪遊び、雪だるま、雪見、雪景色、新雪、雪晴れ、雪かき、除雪車
- 三春…淡雪、春の雪
- 仲春…雪解け、残雪、雪崩
雪に関連する季語は12月から1月頃の晩冬の時期のものが多く、昔から人々の関心を集めていたことがわかります。
「淡雪」や「雪崩」は春の季語…。一見、冬の季語に見えるものもあるので、俳句を詠むときは季語の季節を確認するといいでしょう。
小学生向け!雪を題材にしたオススメ俳句作品集【15選】
上手な俳句が沢山揃っているから俳句作りの参考にしてみてね!
【NO.1】
『 初雪が 冬を知らせに ふってきた 』
季語:初雪(冬)
意味:初雪が冬を知らせるために降ってきたよ。
雪は冬の訪れを最も実感させてくれる自然現象です。雪が降ったから冬になるのではなく、「冬が来たことを知らせる」ために雪が降ってきたと表現しているところにユーモアを感じます。
【NO.2】
『 初雪が 街灯の火に とけていく 』
季語:初雪(冬)
意味:初雪が街灯の火に溶けていくようだ。
現在の街灯は消費電力の少ないLED電球に置き換えるのが主流です。しかし、雪の多い地方では雪で隠されてしまうため、発熱量の多い白熱電球を使用している地域があります。白熱灯の熱で初雪が溶けていったのか、初雪だからこそほんのわずかな時間で溶けていった様子を「街灯の火」と表現したのか、想像がふくらむ句です。
【NO.3】
『 雪だるま 冬限定の おともだち 』
季語:雪だるま(冬)
意味:雪だるまだ。冬の時期限定のお友達だ。
雪だるまは誰もが作ったことのある人形でしょう。春になったら溶けてしまう雪だるまは、寒い冬の間だけ一緒に遊べる「おともだち」です。
【NO.4】
『 真っ白に 雪でそまった 線路道 』
季語:雪(冬)
意味:真っ白に雪で染まった線路が道のようになっている。
雪が降った線路は、レールと車輪が触れる場所以外は真っ白に染まります。そんな線路の様子は、まるで黒いレールが道路の縁石のように見える真っ白な道に見えることでしょう。
【NO.5】
『 雪の中 パっと色づく 椿かな 』
季語:雪(冬)
意味:真っ白な雪の中で、パッと赤く色付いている椿だよ。
雪と椿で時期の外れた季重なりとなっていますが、主題は雪の白と椿の赤の対比のため、成立している句です。真っ白な世界で赤い花が見える様子が、「パッと」というまるで光っているような表現によって強調されています。
【NO.6】
『 雪遊び タイヤのわっかが おとしあな 』
季語:雪遊び(冬)
意味:雪遊びだ。雪が積もって見えないタイヤの輪っかが落とし穴になっているよ。
公園や校庭などで、飛び越える遊具としてタイヤが設置されていることがあります。タイヤを覆い隠すほどの雪が降っていれば、中央の輪の部分だけ柔らかいためまるで落とし穴のように引っかかってしまうでしょう。
【NO.7】
『 雪の日に あててあたって 雪合戦 』
季語:雪合戦(冬)
意味:雪の日には、当てて当たっての雪合戦をしよう。
雪の日の遊びといえば雪合戦です。「あててあたって」の小気味よいテンポが、声を掛け合いながら雪玉を投げ合う子供たちの姿をよく表しています。
【NO.8】
『 白い雪 なぜ白いのか わからない 』
季語:雪(冬)
意味:白い雪は、なぜ白いのかわからないなぁ。
子供ながらの率直な疑問をそのまま詠んでいる句です。ご両親や先生に理由を聞いている姿が目に浮かびます。ちなみに雪が白く見える理由は、光の乱反射によって本来透明な雪の結晶が白く見えるからです。
【NO.9】
『 雪ふれば ぼくの体が ロボットだ 』
季語:雪(冬)
意味:雪が降れば、僕の体はロボットのようにカチコチになる。
雪が降る日の寒さをロボットのカクカクした動きに例えている面白い表現です。手がかじかむだけでもぎこちない動きになることから、共感する人も多いのではないでしょうか。
【NO.10】
『 雪どけの 中から顔出た ふきのとう 』
季語:雪どけ(春)
意味:雪どけの中から顔を出したフキノトウだ。
フキノトウは春の訪れを告げる味覚の一つで、とけた雪の中から顔を出している写真を見たことがある人も多いでしょう。フキノトウを見つけた嬉しさと春の予感を感じさせる一句です。
【NO.11】
『 雪つもり 庭で白猫 遊ぶの図 』
季語:雪(冬)
意味:雪が積もり、庭で白猫が遊んでいる図だ。
童謡に「犬は駆け回り猫はこたつで丸くなる」とありますが、ここでは猫も庭で遊んでいます。白猫なので雪との見分けが付きにくいのも面白いポイントです。
【NO.12】
『 降りつもる 雪また雪の ドイツかな 』
季語:雪(冬)
意味:降り積もっていく、雪また雪のドイツであることだ。
ドイツは降雪の少ない国で、アルプス山脈に近い南部によく降ります。「雪また雪」という表現から、作者は南部の山岳地帯に近い場所にいるのかもしれません。
【NO.13】
『 もういいと 言っているだろ 春の雪 』
季語:春の雪(春)
意味:もういいと言っているだろう、春の雪よ。
春になっても降り続ける雪に「もういいよ」とうんざりしてしまっている一句です。「言っているだろ」と省略されているところからももう勘弁して欲しいという心情が伝わってきます。
【NO.14】
『 淡雪や いつまで君と いるのやら 』
季語:淡雪(春)
意味:淡雪が降ってきたなぁ。いつまで君といるのやら。
「淡雪」とは春先にうっすら積もって消えやすい雪のことです。暦の上で春になってもなかなか雪と離れられない状況にどこか呆れています。
【NO.15】
『 目を凝らし 額を窓に 「雪かな…?」と 』
季語:雪(冬)
意味:目を凝らして額を窓に当てて「雪かな… ?」とわくわくしている。
降り始めの雪はよく見ないと分からないので、額に窓を当てて室内の明かりの反射を防いでいます。雪が降るかなとワクワクしている様子が伝わってくる句です。
中学生向け!雪を題材にしたオススメ俳句作品集【15選】
【NO.1】
『 初雪が チラチラ舞い降り 日の出ごろ 』
季語:初雪(冬)
意味:初雪がチラチラと舞い降りる日の出頃の時間だ。
冬は日の出の寸前が一番寒い時間帯です。そんな寒い時間に初雪がチラチラと舞いはじめ、冬の訪れと早朝の厳しい寒さが感じられます。
【NO.2】
『 雪の日は 外の木みんな すましてる 』
季語:雪(冬)
意味:雪の日は外の木がみんな澄ましたような雰囲気だ。
風もなく雪がしんしんと積もる日は、木も枝を揺らさず静かな雰囲気です。そんな静けさを「すましてる」と表現するところにユーモアを感じます。
【NO.3】
『 雪だるま 校庭にいる 転校生 』
季語:雪だるま(冬)
意味:雪だるまだ。校庭にいるあの雪だるまは転校生だろうか。
雪だるまを転校生に例えている俳句です。朝早くに登校した人が作ったのか、見知らぬ雪だるまに対して親しみを持って観察しています。
【NO.4】
『 除雪車の せまる暗闇 朝仕度 』
季語:除雪車(冬)
意味:除雪車が来る時間が迫っている日の出前の暗闇だ。朝の支度をしよう。
冬は日の出が遅いため、6時半を過ぎてもなお外は日の出前の暗さです。毎日定刻に来る除雪車をアラームのようにとらえて、朝の支度を急いでいます。
【NO.5】
『 街中を 染めゆく雪や 音もなく 』
季語:雪(冬)
意味:街中を白く染めていくであることだ。音もなく降っている。
雪は音の振動を吸収するため、雪の日は特別静かに感じます。しんしんと降る雪が、街中という雪が積もりにくい場所も白く染めていく光景が浮かんでくる句です。
【NO.6】
『 大吹雪 白い砂漠が 風と行く 』
季語:吹雪(冬)
意味:大吹雪だ。まるで白い砂漠のようになっている地面が風と一緒に動いている。
吹雪の日は、地面に積もった雪が風で舞い上がって吹き荒れる地吹雪も発生します。地吹雪を「白い砂漠」と表現し、直接的でなくともどんな光景か連想できる良い表現です。
【NO.7】
『 万物が 息を潜める 雪の朝 』
季語:雪(冬)
意味:万物が息を潜めているような静けさの雪の朝だ。
雪は音を吸収するため、普段よりも静かになります。朝だと車の音や生活音もしないため、全てのものが息を潜めているように感じるのでしょう。
【NO.8】
『 雪掻きの 人と笑ひて 朝の道 』
季語:雪かき(冬)
意味:雪かきをしている人と笑って挨拶をする朝の道だ。
夜の間に降った雪を雪かきしている人と、笑顔で朝の挨拶を交わしている風景を詠んだ句です。子供たちの元気なあいさつが聞こえてきます。
【NO.9】
『 淡雪と 手指まみれる 白チョーク 』
季語:淡雪(春)
意味:淡雪のように、手指に白い粉がまみれる白いチョークだ。
淡雪とは春先に降るすぐに溶けてしまう雪です。この句ではチョークの白い粉を淡雪に例えて、手が真っ白になってしまったという学校での一コマを詠んでいます。
【NO.10】
『 雪どけに 不安と期待が まじり合う 』
季語:雪どけ(春)
意味:雪どけの季節に、期待と不安が混じり合うことだ。
雪どけの季節は春であり、学校の学年が変わったり、受験の結果や就職で環境が変わったりと、転機の時期です。これからの生活について不安と期待をとけていく雪に託して詠んでいます。
【NO.11】
『 ジャズとカレー 止まぬおしゃべり 外は雪 』
季語:雪(冬)
意味:室内にはジャズがかかりカレーを食べている。止まない室内のおしゃべり、外は雪だ。
雪が降っている中で食事をしながらおしゃべりをしている様子を詠んだ句です。「止まぬ」がおしゃべりと雪に掛かっています。
【NO.12】
『 しんしんと 雪わたくしは 生きてゐる 』
季語:雪(冬)
意味:しんしんと雪が降っている。わたくしはここに生きている。
雪がしんしんと降っている中でここに生きているのだと宣言している一句です。何もかも真っ白になってしまいそうな雪景色の中で、自らを主張しています。
【NO.13】
『 雪降ると 予報の朝を 包む闇 』
季語:雪(冬)
意味:雪が降るという予報の朝を包む夜明け前の闇だ。
冬は日の出が遅いため、朝の天気予報をやっている時間でもまだ暗いことがあります。夜が明けてみないと降っているかわかりにくい様子が「包む闇」という言い回しからわかる句です。
【NO.14】
『 ぼたん雪 白き花咲く 夜の木々 』
季語:ぼたん雪(春)
意味:ぼたん雪が降り、白い花が咲いているような夜の木々だ。
ぼたん雪は水分を多く含んだ大きい雪です。この句ではぼたん雪が木に積もる様子を白い花に例えています。
【NO.15】
『 すみぞめの 夜空に雪の 華の芯 』
季語:雪(冬)
意味:墨染のような夜空に雪の華の芯が見える。
「雪の華の芯」とは雪の結晶の形のことです。まるで絵画のように暗い夜空に雪の結晶が映える一句になっています。
以上、雪に関するおすすめ俳句作品集でした!
今回は、雪をテーマにしたおすすめ俳句作品を全部で30句紹介してきました。
雪の日に思いにふけることや雪遊びの楽しさ、雪の降り方による季節の移ろいなど、さまざまな表現の方法があるのが雪の季語の特徴です。
雪が降ってきたら、その時の思いを託して一句詠んでみてはいかがでしょうか。