【時雨の有名俳句 20選】冬の季語!!数々の俳人が詠んできたオススメ俳句を紹介

 

時雨とは、冬の初めの通り雨のことです。

 

短時間で降っては止む雨が来るたびに冬が近づくため、寂しい感情の象徴の季語として俳句によく詠まれています。

 

 

今回は時雨を題材に詠みこんだり、季語に使用したりしている有名な俳句を20句ご紹介していきます。

 

リス先生
ぜひ参考にしてみてね!

時雨を題材にした有名俳句集【前半10句】

 

【NO.1】松尾芭蕉

『 人々を しぐれよ宿は 寒くとも 』

季語:しぐれ(冬)

意味:友人たちと泊まり込みの句会を開いているが、時雨が降ってほしいものだ。例え寒さが増そうとも、侘びの雰囲気を楽しみたい。

俳句仙人

句会を開いている最中に詠まれた一句です。室温が下がってでも、静謐な雰囲気の句会で時雨をながめるという侘びを体感してみたいものだ、という気持ちが「人々をしぐれよ」という強調の表現から読み取れます

【NO.2】松尾芭蕉

『 草枕 犬も時雨るるか 夜の声 』

季語:時雨(冬)

意味:旅の途中、野良犬も時雨が降って寂しいのか、遠吠えが聞こえる夜であることだ。

俳句仙人

「草枕」とは旅先での仮宿に泊まることを暗示する言葉です。ここでは旅の途中である自分自身と、宿を持たない野良犬を掛けています。お互い腰を据えて暮らすことができない寂しさを、降り出した冬の時雨でより一層強調する俳句です。

【NO.3】与謝蕪村

『 冬近し 時雨の雲も ここよりぞ 』

季語:冬近し(秋)

意味:冬が近い。時雨を降らす雲もこれから来るのだろう。

俳句仙人

まだ時雨の降りださない秋の終わりの感覚を詠んだ句です。紅葉も散り始め、そろそろ冬を告げる時雨を降らす雲が現れるだろうという季節の移ろいを感じます

【NO.4】与謝蕪村

『 化けさうな 傘をかす寺の 時雨かな 』

季語:時雨(冬)

意味:化けて出そうな傘を貸してくれるお寺に降る時雨であることよ。

俳句仙人

作者の時代の傘はいわゆる唐傘で、妖怪の戯画などでよく見られる傘でもあります。急に雨に降られて傘を借りたものの、まるでお化けになりそうな唐傘だと表現するところにユーモアがあふれる句です。

【NO.5】小林一茶

『 北しぐれ 馬も故郷へ 向て嘶く 』

季語:北しぐれ(冬)

意味:北の方からやってくる時雨だ。馬も故郷の方角に向かっていなないている。

俳句仙人

「北時雨」とは北の方から風を伴ってやってくる時雨です。この馬は北の方が故郷の馬なのでしょう。故郷からきた雨風を懐かしんでいます

【NO.6】小林一茶

『 蕗(ふき)の葉に 酒飯くるむ 時雨哉 』

季語:時雨(冬)

意味:フキの葉に酒飯を包んで雨から守る時雨であることだ。

俳句仙人

酒飯とは、お酒を作る前にお米を蒸して、強飯と呼ばれる状態にしたもののことを言います。粘りのない固いご飯なので保存に向きますが、突然の時雨に大きなフキの葉で咄嗟に酒飯をくるんで雨から守っている構図です

【NO.7】服部嵐雪

『 茶を煎りて 時雨あまたに 聞きなさん 』

季語:時雨(冬)

意味:茶を煎りながら、時雨があちこちに落ちる音を聞いていよう。

俳句仙人
お茶の葉を煎るとほうじ茶になりますが、ほうじ茶を作っていたのでしょうか。淡々とした作業の合間に聞こえる時雨の音に耳を傾ける、静かな時間を感じる一句です。

【NO.8】向井去来

『 木枯らしの 地にも落さぬ 時雨かな 』

季語:時雨(冬)

意味:木枯らしが吹いて、時雨の雨を地に落とさないくらいの風雨であることだ。

俳句仙人

強い風が吹く中で時雨が降っている冬の初めの光景を写実的に詠んでいます。地に着く間もなく雨粒が風に流されている様子が思い浮かぶようです

【NO.9】宝井其角

『 あれ聞けと 時雨来る夜の 鐘の声 』

季語:時雨(冬)

意味:あれを聞けと、時雨が降る夜に鳴る鐘の音だ。

俳句仙人

「あれを聞け」の「あれ」とは、時雨の降る音なのか鐘の音なのか解釈が分かれます。鐘の音で夜半に起こされたとするなら、時雨が降り注ぐ音を聞かせたかったのでしょうか

【NO.10】加賀千代女

『 日の脚に 追はるる雲や はつしぐれ 』

季語:はつしぐれ(冬)

意味:段々と短くなっていく日の長さに、追われるようにやってくる雲だ。初時雨が降る。

俳句仙人

夏至から段々と日照時間が短くなっていきますが、秋の終わりともなると「秋の夜長」の言葉通り昼の時間が短くなります。その日に追われるように時雨を降らせる雲がやってきて、本格的な冬の到来を告げる様子を詠んだ句です

 

時雨を題材にした有名俳句集【後半10句】

 

【NO.11】正岡子規

『 きぬぎぬを ひきとめられて しぐれけり 』

季語:しぐれ(冬)

意味:逢瀬の朝にわかれようとしたが引き止められて、時雨が降ってきた。

俳句仙人

「きぬぎぬ」とは「後朝」と書き、男女の逢瀬の翌朝のことです。辞去しようとしたところを引き止められているうちに朝から時雨が降ってきたという少し色っぽさを表現しています

【NO.12】正岡子規

『 ともし火の 一つ残りて 小夜時雨 』

季語:時雨(冬)

意味:灯火が一つだけ残っている、時雨が降っている夜よ。

俳句仙人

雨が降っている夜はことさら暗く静かに感じますが、一つだけ残っている明かりがよりいっそう部屋の暗さを感じさせます。当時はまだ電球が普及していなかったため、ちらちらと映る行灯やランプの光だったことでしょう。

【NO.13】高浜虚子

『 天地の 間にほろと 時雨かな 』

季語:時雨(冬)

意味:空と大地の間に、ほろほろと降り注ぐ時雨であることだ。

俳句仙人
雨が空と大地を繋ぐという感覚は覚えがある人も多いのではないでしょうか。「ほろと」という表現が、しとしとと降る時雨をよく表しています。

【NO.14】高浜虚子

『 北国の 時雨日和や それが好き 』

季語:時雨(冬)

意味:北国の時雨が降る季節だなぁ。その季節が好きだ。

俳句仙人

この句は作者が金沢に来たときに作られた句です。虚子は京都などの古都の時雨は華やかで美しいと書き残しているため、金沢で遭遇した時雨もことさら好んだのかもしれません

【NO.15】夏目漱石

『 号外の 鈴ふり立る 時雨哉 』

季語:時雨(冬)

意味:号外の新聞を配る人の鈴が振り立てられている。外は時雨が降っていることだ。

俳句仙人

現在では行われていませんが、時代劇などで「号外!」と叫びながら鈴を鳴らして新聞を配っているシーンがあります。号外の鈴が鳴って何事だと外に出てきた人達と、重大なことが起きたのだという深刻さを、時雨という憂うつになる雨が降っている様子でより強調した句です

【NO.16】山口青邨

『 しばらくは 時雨の音に ものを書く 』

季語:時雨(冬)

意味:しばらくは時雨の音を聞きながら物を書くことになりそうだ。

俳句仙人

仕事をしている最中に時雨が降り出したときの一コマです。雨が降る音を聞きながら静かな時間を過ごしているだろう風景が浮かんできます

【NO.17】右城暮石

『 時雨して 人気火の気の 無き神社 』

季語:時雨(冬)

意味:時雨が降って、人気も火の気もない神社であることだ。

俳句仙人

雨が降ると人出は遠のきます。神社の社務所もそうそうに閉めてしまったのか、人がいる気配が感じられない静謐とした神社を思い起こさせる句です

【NO.18】高浜年尾

『 鎌倉の 観音巡り 時雨れつつ 』

季語:時雨(冬)

意味:鎌倉の観音巡りをしていたら時雨が降ってきた。

俳句仙人

鎌倉には多くのお寺がありますが、花の寺として有名な長谷寺をはじめとする三十三箇所巡りのできる観音巡礼が人気です。観音巡礼を行っている最中に時雨が降ってきて、冬のはじめならではの参拝の風景を詠んでいます

【NO.19】中村汀女

『 小夜時雨 子等は己の 臥床(がしょう)のぶ 』

季語:時雨(冬)

意味:夜に降る時雨だ。子供たちは自分たちのベッドに横になって伸びている。

俳句仙人

「小夜時雨」とは夜に降る時雨のこと、「臥床」とはベッドなどで横になることを言います。子供たちが寝てしまうほどの深夜にしとしとと降り出した時雨を描写している句です。

【NO.20】泉鏡花

『 川添の 飴屋油屋 時雨けり 』

季語:時雨(冬)

意味:川沿いにある飴屋や油屋も雨に降られているなぁ。

俳句仙人

川沿いにあるお店が時雨に降られている風景を詠んでいます。今のように1時間ごとの天気予報のない時代なので、急に降られた雨で品物が濡れないように覆いをしているのでしょうか

以上、時雨(しぐれ)を題材にした有名俳句でした!

 

 

俳句仙人

今回は、時雨を季語に使った有名俳句を20句紹介してきました。

冬の初めの雨ということで、侘びしさや寂しさを詠むことが多いのがほかの季節の雨とは違う特徴です。季節ごとに感じる感覚が変わってくる雨を題材に、一句詠んでみてはいかがでしょうか。