「立秋」とは二十四節気の一つで、暦の上では秋の始まりです。
立秋と同じ意味の言葉として「今朝の秋」「秋来る」「秋立つ」などがあります。
今日8月8日は「立秋」ですね。
まだまだ暑いですが、暦の上では秋の始まり。
松茸に鬼灯、どちらも秋の季語!季節は進んでいますね〜(^_^)しみじみ pic.twitter.com/z7fC6WlnRW— 江川 清音@ウェザーニュースLiVE (@sah_yan) August 8, 2015
今回は、「立秋(りっしゅう)」に関するおすすめ有名俳句を20句ご紹介します。
「立秋」に関するおすすめ有名俳句【前半10句】
【NO.1】松尾芭蕉
『 張抜きの 猫も知るなり 今朝の秋 』
季語:今朝の秋(秋)
意味:張り子でできた猫も立秋だと知って驚いただろう。
「張抜き」とは張り子のことで、紙細工で作られています。秋の気配を感じたのが普通の猫ではなく張り子の猫というところに芭蕉のユーモアが感じられる表現です。
【NO.2】松尾芭蕉
『 秋来にけり 耳をたづねて 枕の風 』
季語:秋来にけり(秋)
意味:秋が来た。枕元に吹く秋の風がまるで耳を訪ねてくるように吹いている。
藤原敏行の「秋きぬと」を下地にした句です。元の句では風の音から秋を感じていましたが、芭蕉の句では起き抜けに枕元に届いた風の音や涼しさに秋を感じています。
【NO.3】与謝蕪村
『 秋立つや 素湯香しき(こうばしき) 施薬院(せやくいん) 』
季語:秋立つ(秋)
意味:立秋の日が来たなぁ。素湯が香ばしい施薬院であることよ。
「素湯」とは「白湯」と同じ意味で、沸かしただけのお湯です。涼しさを感じる秋に、あたたかいお湯の湯気の香りが香ばしいという、香りが伝わってくる句になっています。
【NO.4】与謝蕪村
『 硝子(びいどろ)の 魚おどろきぬ 今朝の秋 』
季語:今朝の秋(秋)
意味:ガラス製の金魚鉢に入っていた魚が、いつの間にか秋だと驚いた立秋の朝である。
今のようにヒーターや冷房などで水温管理をされていなかっただろう江戸時代では、気温が水温に直結していたでしょう。目に見える風景は変わらないのに、魚でも秋めいてきたと感じさせるところに作者の遊び心を感じます。
【NO.5】小林一茶
『 立秋は 風のとがでも なかりけり 』
季語:立秋(秋)
意味:立秋で秋になったことは、風が悪いわけでもないだろうに。
この句も「秋きぬと」の和歌を下地にしています。元の和歌では「秋が来て風の音に驚かされる」という意味なので、風が悪いわけではないだろうと茶化している句です。
【NO.6】小林一茶
『 立秋や 旅止めまくと 思ふ間に 』
季語:立秋(秋)
意味:立秋が来たなぁ。こんな旅は止めようと思っている間に秋が来てしまった。
「旅」について、文字通りの旅か人生を旅と例えているかで解釈が変わってくる俳句です。人生であるという説を取ると、秋という季節も単純な季節ではなく、人生の折り返し地点であると解釈できます。
【NO.7】大伴大江丸
『 秋来ぬと 目にさや豆の ふとりかな 』
季語:秋来ぬ(秋)
意味:秋が来たと目に映るのは、さや豆の大きく育った姿であることよ。
【NO.8】加賀千代女
『 秋立つや きのふの昔し 有のまま 』
季語:秋立つ(秋)
意味:秋の始まりの日が来たなぁ。夏の暑さも昨日のままでありながら、どことなく秋らしさも感じられる。
立秋を迎えたことで、夏を昨日のことのように感じています。それでもまだまだ暑い日は続いているので、「有のまま」の季節も感じているという表現です。
【NO.9】上島鬼貫
『 そよりとも せいで秋たつ 事かいの 』
季語:秋たつ(秋)
意味:そよりとも涼しい風が吹かないのに、立秋だなどと言うのかなぁ。
暦の上での季節と、実際の気温の暑さに物申している有名な一句です。俳句では季語は大切ですが、それはそれとして暑いという嘆きが聞こえてきます。
【NO.10】正岡子規
『 秋立つや ほろりと落ちし 蝉の殻 』
季語:秋立つ(秋)
意味:立秋の日だなぁ。ほろりと木からセミの抜け殻が落ちていった。
夏の終わりを、セミの抜け殻という終わりを思い起こさせるものに託して詠んでいます。夏の間は木に止まったままだった抜け殻が落ちることによって、セミの季節である夏が終わったと実感する句です。
「立秋」に関するおすすめ有名俳句【後半10句】
【NO.11】正岡子規
『 けさりんと 体のしまりや 秋の立つ 』
季語:秋の立つ(秋)
意味:今朝は凛とした空気で、まるで身が引き締まるようだ。立秋の日が来た。
夏の暑さから一転、秋の澄んだ空気の朝になった一句です。暦の上の区切りとはいえ、今日から秋だと思うと身が引き締まる気分になる人もいるのではないでしょうか。
【NO.12】高浜虚子
『 怪談は ゆうべでしまひ 秋の立つ 』
季語:秋の立つ(秋)
意味:怪談は夏の間に行うものなので、昨夜でおしまいだよ。今日は立秋の日だ。
夏という季節の象徴を怪談話に託しているのがユーモアのある表現です。今日からは秋なので、昨夜の怪談話でおしまい、とまるで子供に言い聞かせている印象があります。
【NO.13】高浜虚子
『 立秋や 時なし大根 また播かん 』
季語:立秋(秋)
意味:立秋がきたなぁ。時なし大根の種をまたまこう。
【NO.14】右城暮石
『 日南暑し 朝を裸で 今朝の秋 』
季語:今朝の秋(秋)
意味:日南地方は暑いなぁ。朝でも裸になりたいくらいだ、今日は立秋なのに。
日南とは宮崎県南部にある地域です。暖かい地域なので、立秋といえども裸になってしまいたいくらいの暑さなのになぁというぼやきが聞こえてきます。
【NO.15】星野立子
『 秋立てば それに従ふ 天地かな 』
季語:秋立てば(秋)
意味:立秋が来てこれからは秋だと言われれば、それに従うように秋になっていく天地であることだ。
順番としては、その日から秋めいてくるから立秋という日が定められたということを、暦に万物が従うように秋になると表現しているダイナミックな句です。少しずつ風が涼しくなり、花や虫も秋のものに変わっていく様子をよく表しています。
【NO.16】稲畑汀子
『 立秋と 聞けば心も 添ふ如く 』
季語:立秋(秋)
意味:今日から立秋だと聞くと、まだまだ暑いけれどこれから秋だと心も添うような気がする。
こちらは秋だと言われて、自然ではなく自分の心構えが秋への備えに変わっていくと詠んだ句です。徐々に気温が下がり、気候が変わっていく心構えを詠んでいます。
【NO.17】飯田蛇笏
『 秋たつや 川瀬にまじる 風の音 』
季語:秋たつ(秋)
意味:立秋の日だなぁ。川瀬にまじって風の音が聞こえる。
立秋と風を結びつけているところから、「秋きぬと」の和歌を下地にしています。暑い日の風ですが、せせらぎとともに聞いているとどこか涼しげに感じる秋の始まりの風景です。
【NO.18】森鴎外
『 口髭の 一すぢ白し 今朝の秋 』
季語:今朝の秋(秋)
意味:口ひげが一筋だけ白く染まっている。立秋の日の朝だ。
鏡を覗いて身支度をしていると、口ひげが白髪のように白く染まっていることを発見しています。それだけの月日が経ったことを実感しつつ、また秋が来たと詠んだ句です。
【NO.19】夏目漱石
『 秋立つや 一巻の書の 読み残し 』
季語:秋立つ(秋)
意味:立秋のが来たなぁ。一巻の本を読み残してしまった。
暑い夏の間は外には出ずに、家の中な読書にはげんでいたのでしょうか。秋が来る前に読み終わろうとしていた本が1冊だけ残ってしまったところに、過ぎ行く季節への名残惜しさを覚えているようにも感じます。
【NO.20】鈴木真砂女
『 立秋や 雲の上ゆく 雲とほく 』
季語:立秋(秋)
意味:立秋の日だなぁ。雲の上を流れるあの雲も空高く遠く見えることだ。
秋の雲の特徴としては、夏の積乱雲よりもずっと高いところに薄く見えるすじ雲でしょう。空の様子は季節の移り変わりを感じるのに適しているため、秋の雲が見えたことに立秋であるという実感を覚えています。
以上、立秋に関する有名俳句でした!
今回は、立秋に関する有名な俳句を20句ご紹介してきました。
秋の訪れを喜ぶものから、まだまだ暑いのにと詠むものまで幅広く表現されています。
立秋は8月上旬という最も暑さの厳しい時期ですが、だからこそ秋の涼しさを求めて一句詠んでみてはいかがでしょうか。