【現代の有名俳句 40選】春夏秋冬・おすすめ一覧!季語を含む俳人名句を紹介

 

俳句は五七五の十七音で構成される短い詩です。

 

江戸時代に成立した俳句は、明治時代の正岡子規によって近代俳句が成立し、大正時代を経て戦後の現代俳句へと続いています。

 

今回は戦後以降、現代で活躍した俳人の有名な俳句40句紹介していきます。

 

現代の有名俳句【前編10句】

 

【NO.1】星野立子

『 誰もみな コーヒーが好き 花曇 』

季語:花曇(春)

意味:誰もがみなコーヒーを飲むのを好むような花曇りの日だ。

俳句仙人
花曇という桜が咲いている明るい曇りの日にゆっくりコーヒーを飲む様子を詠んでいます。誰もが好きと称するほどゆったりとした春のコーヒーブレイクです。

【NO.2】飯田龍太

『 どの子にも 涼しく風の 吹く日かな 』

季語:涼しく(夏)

意味:外で遊ぶどの子にも涼しい風が吹く日であることだ。

俳句仙人
暑い夏でも外で遊ぶ子供たちに、涼しい風が吹いています。夕方の日が落ちてきた時間帯に子供たちを見守る大人の姿も連想させる句です。

【NO.3】松本たかし

『 チチポポと 鼓打たうよ 花月夜 』

季語:花月夜(春)

意味:チチポポと音を立てて鼓を打って遊ぼうよ、この桜が咲く月夜に。

俳句仙人
「チチポポ」という擬音が特徴的な一句です。作者は能役者の家系に生まれ、病で役者としての人生は諦めましたが折に触れて舞っていたと言われています。

【NO.4】大野林火

『 子の髪の 風に流るる 五月来ぬ 』

季語:五月(夏)

意味:子供の髪が風に流れるようになびくようになった。5月が来たなぁ。

俳句仙人

子供と初夏の日に外に遊びに行った時に詠まれた句です。初夏のさわやかな風が子供の髪を揺らす様子を見て、5月という季節を実感しています。

【NO.5】永田耕衣

『 朝顔や 百たび訪はば 母死なむ 』

季語:朝顔(秋)

意味:朝顔が咲いているなぁ。あと百回母の家を訪れれば、母は死んでしまうかもしれない。

俳句仙人
作者は20年にわたって病床の母親を見舞う度に按摩を行っていました。そんな作者も、咲いている朝顔を見てあと100回母に会えれば良いがと悲しんでいる様子を詠んだ句です。

【NO.6】中村汀女

『 外にも出よ 触るるばかりに 春の月 』

季語:春の月(春)

意味:外に出てご覧なさい。触れるくらい大きい春の月が出ていますよ。

俳句仙人
家族や友人に呼びかけているような一句です。ふと見た春の夜空に輝く月の美しさを共有したい気持ちが伝わってきます。

【NO.7】鈴木真砂女

『 熱燗(あつかん)や いつも無口の 一人客 』

季語:熱燗(冬)

意味:熱燗を飲んでいる人がいる。いつも無口で1人で訪れるあの人だ。

俳句仙人
作者は恋の歌が得意でした。また、小料理屋も営んでいたことがあり、 この句に詠まれた「1人客」とはカウンターの向こうから眺めている片思いの相手のことだとも言われています。

【NO.8】橋本多佳子

『 星空へ 店より林檎 あふれをり 』

季語:林檎(秋)

意味:星空へ向かうように店からリンゴがあふれているよ。

俳句仙人
この句は終戦直後に詠まれた一句です。明かりも物も少ない中で、満天の星空の光の影にたくさんのリンゴが置いてある様子を詠んでいます。

【NO.9】三橋鷹女

『 みんな夢 雪割草が 咲いたのね 』

季語:雪割草(春)

意味:みんな夢だったのか。雪割草が咲いたのね。

俳句仙人
つぶやくような「みんな夢」と、やわらかな語尾で終わる「咲いたのね」という対比が際立っています。まるで実感のないような言葉選びのため、夢心地で詠んでいる様子が思い浮かぶ句です。

【NO.10】能村登四郎

『 春ひとり 槍投げて槍に 歩み寄る 』

季語:春(春)

意味:この春の陽気に1人、槍を投げて投げた槍に歩み寄る選手がいる。

俳句仙人
槍投げの練習をする人を見ている句です。「槍投げて槍に」というテンポの良い言葉が選手の手際の良さを表現しているような感覚がします。

現代の有名俳句【中編10句】

【NO.11】富安風生

『 生くること やうやく楽し 老の春 』

季語:老の春(新年)

意味:生きていることがようやく楽しくなってきた年をとって迎える新春である。

俳句仙人
「老の春」には老いてから迎える新春のほかに、晩春と老齢を掛けている意味があります。この句はどちらの意味も含んでいて、老いてようやく人生を楽しむ春のようだと詠む作者の老成した精神が感じられる句です。

【NO.12】秋元不死男

『 鳥わたる こきこきこきと 缶切れば 』

季語:鳥わたる(秋)

意味:こきこきこきと缶切りで缶詰を切っていると、空に鳥が渡ってきているのが見えた。

俳句仙人
倒置法になっている一句です。終戦直後に詠まれた句で、貴重な食料である缶詰を慎重に扱っている最中にふと見上げた空に、秋を告げる鳥がいつも通り渡ってきています。

【NO.13】草間時彦

『 逢いに行く 開襟の背に 風溜めて 』

季語:開襟(夏)

意味:あの人に会いに行こう。開襟した襟から入る風を背にためながら。

俳句仙人
シャツの襟から風が入り、背中がふくれて見える様子を詠んでいます。かなりのスピードで動いているため、自転車に乗っているのでしょうか。

【NO.14】京極杞陽

『 美しく 木の芽の如く つつましく 』

季語:木の芽(春)

意味:美しい立ち居振る舞いで、木の芽のようにつつましい人がいい。

俳句仙人
作者の女性の好みを詠んだ句とも言われています。語尾が「く」で統一されているため、願望に過ぎないことはわかっているようなユーモアも感じる句です。

【NO.15】細見綾子

『 チューリップ 喜びだけを 持っている 』

季語:チューリップ(春)

意味:チューリップが咲いている。まるで喜びだけを持っているような美しさだ。

俳句仙人
春になり、花を咲かせたチューリップを見て喜びを感じている句です。咲いて嬉しいという表現ではなく、春の喜びだけを持ってそこに花開いているのだとする感性が独創的な一句になっています。

【NO.16】富安風生

『 まさをなる 空よりしだれ ざくらかな 』

季語:しだれざくら(春)

意味:真っ青な空よりしだれ桜の花が垂れて咲いているなぁ。

俳句仙人
空を見上げると真っ青な空としだれ桜の花が見えたという写真のような一句です。見上げると青い空とピンクの桜が見えるコントラストが見事な描写になっています。

【NO.17】森澄雄

『 鳴門見て 讃岐麦秋 渦をなす 』

季語:麦秋(夏)

意味:鳴門海峡の渦潮のように、讃岐の麦畑が渦をなしているようだ。

俳句仙人
「鳴門」とは四国の北東部にある鳴門海峡のことで、渦潮で有名な場所です。収穫を控えた麦畑が風によって渦を巻いているように見えた様子を渦潮に例えています。

【NO.18】飯田龍太

『 大寒の 一戸もかくれなき 故郷 』

季語:大寒(冬)

意味:大寒という寒い季節では、木々も葉を落とし一戸の家も隠れることの無い故郷になっている。

俳句仙人
春から秋にかけては木の葉が茂って家を隠してしまう集落なのでしょう。大寒という冬の最中のため、木々によって隠れられない故郷の冬の厳しさを詠んでいます。

【NO.19】金子兜太

『 湾曲し 火傷し爆心地の マラソン 』

季語:無季

意味:長崎で見たマラソンランナーの姿が、体を曲げて火傷して歩く爆心地の人々に見えた。

俳句仙人
作者がこの句を詠んだときは、爆心地に近い場所に住んでいました。マラソンで苦しみながら走る人々の姿を被災者の姿と重ね合わせています。

【NO.20】金子兜太

『 暗黒や 関東平野に 火事一つ 』

季語:火事(冬)

意味:外は真っ暗闇だ。関東平野には火事の明かりがひとつぽつんと見えている。

俳句仙人
この句は作者の自解で、昼間の電車の中で詠まれたものとされています。作者の想像の中の真っ暗な平野に火事がぽつんと見えている様子がどこか幻想的です。

 

現代の有名俳句【後編10句】

 

【NO.21】上田五千石

『 あたたかき 雪がふるふる 兎の目 』

季語:雪(冬)

意味:心があたたまるような雪が降っている。親子で作った雪うさぎの目も輝いているようだ。

俳句仙人
ここで詠まれている「兎」とは雪うさぎのことです。親子で雪うさぎを作って遊んでいる様子を詠んでいます。

【NO.22】有働亨

『 土筆生ふ 蘇我物部の むかしかな 』

季語:土筆(春)

意味:土筆が生えている。蘇我氏と物部氏の争いもはるか昔のことになったものだなぁ。

俳句仙人
「蘇我物部」とは飛鳥時代に派遣を争った蘇我氏と物部氏のことです。古代の戦場も今は土筆が生える平穏な野原に成り果てたことに、諸行無常を感じています。

【NO.23】赤尾兜子

『 鉄階にいる 蜘蛛智慧を かがやかす 』

季語:蜘蛛(夏)

意味:鉄の階段にいる蜘蛛が知恵を輝かせて階段を登っている。

俳句仙人
自然の樹木などと違い、鉄製の階段は蜘蛛が登っていくにはツルツルしていて大変でしょう。そこで「智慧をかがやかす」ようにして器用にのぼっていく姿を詠んだ句です。

【NO.24】藤村多加夫

『 秋風や 人は大地に 脚を置く 』

季語:秋風(秋)

意味:秋風が吹いてきたなぁ。人は大地にまるでしっかりと据え付けるように脚を置いている。

俳句仙人
「脚を置く」という表現が、風で飛ばされないようにしっかりと据え置くような雰囲気を出しています。秋風に誘われてどこかに行ってしまわないようにしっかりと大地に立とうという気概を感じる句です。

【NO.25】森澄雄

『 ぼうたんの 百のゆるるは 湯のやうに 』

季語:ぼうたん(夏)

意味:牡丹の花が百ほど揺れている。まるでお湯の中をたゆたうようにゆらゆらと揺れている。

俳句仙人
「ぼうたん」とどこかゆるやかな表記や、「ゆるる」「湯」と言葉を繰り返しているのが特徴的です。ゆらゆらと揺れる牡丹の花々が湯の中にいるようにたゆたって見えています。

【NO.26】金子兜太

『 銀行員等 朝より蛍光す 烏賊のごとく 』

季語:無季

意味:銀行員たちは朝から蛍光灯を付けて仕事をしている。まるでホタルイカの放つ光のようだ。

俳句仙人
この句は作者が銀行員をしていた時期に詠まれた句です。朝から蛍光灯をつけて作業をしている様子とホタルイカの光を掛けて皮肉っていると評判になりました。

【NO.27】角川春樹

『 遠雷や あるべき場所が 此処にある 』

季語:遠雷(夏)

意味:遠雷の音が聞こえるなぁ。私があるべき場所が此処にあるのだ。

俳句仙人
作者は編集者・出版者として名を馳せました。自身の生き方はこれであるという自信と自負があふれた一句になっています。

【NO.28】鷹羽狩行

『 日と月の ごとく二輪の 寒牡丹 』

季語:寒牡丹(冬)

意味:太陽と月のような二輪の寒牡丹が咲いている。

俳句仙人
牡丹は花の王様と呼ばれるほど見事な花を咲かせます。周囲が雪と葉を落とした木の中で、青々とした葉と堂々たる花を咲かせる寒牡丹を太陽と月に例えているのが面白い一句です。

【NO.29】友岡子郷

『 跳び箱の 突き手一瞬 冬が来る 』

季語:冬(冬)

意味:跳び箱を跳ぶために突いた手に一瞬冷たい空気を感じ、冬が来るなぁと実感した。

俳句仙人
体育の授業の一コマでしょうか。動いていて暑さも感じていたところに一瞬動作の止まる跳び箱を挟むことで、ひやりとした空気を感じた様子を詠んでいます。

【NO.30】坪内稔典

『 たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ 』

季語:たんぽぽ(春)

意味:たんぽぽの「ぽぽ」のあたりが火事になっているようですよ。

俳句仙人

この句について作者は正解の解釈はないと述べています。加藤楸邨の俳句にも「たんぽぽのぽぽ」という表現があり、作者はそこから着想を得ました。

現代の有名俳句【おまけ編10句】

【NO.31】黛まどか

『 待ちし一枚 その中にあり 年賀状 』

季語:年賀状(冬/新年)

意味:待っていた一枚がその中にあるんだ、この年賀状の束の中に。

俳句仙人
毎年面白い年賀状や消息が知りたい人の年賀状など…、楽しみにしている人の年賀状が届いた作者の様子を詠んだ句です。今年もまた受け取ることができたという喜びを感じます。

【NO.32】池田澄子

『 よし分かった 君はつくつく法師である 』

季語:つくつく法師(秋)

意味:よし、分かった。君はツクツクボウシのようにうるさいのだなぁ。

俳句仙人
この句はツクツクボウシと例えることで、ずっと鳴き続けるセミの声のうるささが相手であると婉曲的に伝えています。自由律俳句でもあるため、まるで散文詩のようにも感じる一句です。

【NO.33】大木あまり

『 木の揺れが 魚に移れり 半夏生 』

季語:半夏生(夏)

意味:木がさわさわと揺れている様子が魚にも移ったように揺れている暑い夏だ。

俳句仙人

「半夏生」とは植物の一種でもありますが、7月上旬を表す七十二候の1つでもあります。暑い夏の風に揺れる木々と、合わせるようにゆらゆらと揺れる魚の様子が写実的に表現されている句です。

【NO.34】大高翔

『 何もかも 散らかして発つ 夏の旅 』

季語:夏の旅(夏)

意味:部屋の何もかもを散らかして旅立とう。夏が過ぎ去ってしまわないうちに旅に出よう。

俳句仙人

部屋を整理することよりも旅に出たいという作者の衝動が感じ取れる句です。何もかも放り出してでも旅を満喫したいという、夏にぴったりの句になっています。

【NO.35】神野紗季

『 飛び込みの もう真っ白な 泡の中 』

季語:飛び込み(夏)

意味:プールに飛び込むと、もう真っ白な泡の中にいる。

俳句仙人
「飛び込み」は水泳の飛び込みのことです。飛び込んだ瞬間に周りが真っ白になってしまい、あっという間に泡の中に入ったことが「もう」という表現から伺えます。

【NO.36】池田澄子

『 じゃんけんで 負けて蛍に 生まれたの 』

季語:蛍(夏)

意味:ジャンケンに負けてホタルに生まれてきたの。

俳句仙人
誰かとジャンケンをして、負けてしまったから蛍になったのだという童話のような一句です。蛍の光は人の魂に例えられることが多いので、勝った人は人間に生まれ変わったのでしょうか。

【NO.37】石田波郷

『 プラタナス 夜も緑なる 夏は来ぬ 』

季語:夏は来ぬ/立夏(夏)

意味:プラタナスの葉が夜でも緑色によく見えているほど濃くなった。立夏だなぁ。

俳句仙人
プラタナスは街路樹として植えられていることが多い木です。この句では淡い色合いだった若葉からしっかりとした緑色に変わっていくことを、物が見えにくくなる「夜」を舞台にすることで表現しています。

【NO.38】坪内稔典

『 がんばるわ なんて言うなよ 草の花 』

季語:草の花(秋)

意味:がんばるわなんて言うなよ、野に咲く草の花よ。

俳句仙人

「草の花」とは特定の花の種類ではなく、道や野に咲く花の総称です。ひっそりと咲く花に「がんばった」と思って欲しくない作者の複雑な感情が読み取れます。

【NO.39】黛まどか

『 別な人 見てゐる彼の サングラス 』

季語:サングラス(夏)

意味:別な人を見ている彼のサングラスの奥の瞳だ。

俳句仙人

サングラスで隠された彼の目が、自分ではない誰かを見ていることを察知した一句です。顔の向きは変えずに視点だけを移したことを敏感に察した勘が冴え渡っています。

【NO.40】黛まどか

『 旅終へて よりB面の 夏休 』

季語:夏休(夏)

意味:旅を終えて、これからはB面の夏休みだ。

俳句仙人
B面」とはレコードなどで使われた用語で、メインの曲であるA面に対してサブであることを意味しています。旅が夏休みのA面なら、残りの休みサブであるB面だと表現している一句です。

 

以上、現代の有名俳句40選でした!

 

 

今回は、戦後から現在まで活躍した有名な俳人の俳句40句紹介してきました。

 

戦後という社会情勢が大きく変化していく中で、昔ながらの古典的な表現を重視する人や新しい表現に挑戦する人など多くの俳句が生まれています。

 

俳句仙人
江戸時代や近代の俳句とは一味違った現代俳句をぜひ楽しんでみてください。

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