【三橋鷹女の有名俳句 20選】四Tの一人!!俳句の特徴や人物像･代表作など徹底解説！

「鞦韆」とはブランコのことで、かつて中国では春の遊びとして行われたことから春の季語になっています。ブランコを漕ぐことは簡単ですが、並列されている「愛は奪ふべし」は大変なことです。作者の情熱的な一面が垣間見える句です。

まるでお芝居のセリフのような一句です。胡蝶の夢のような、夢と現実が渾然一体となる夢を見ていたのでしょうか。

春の夢は儚いものとして季語になっています。何の夢を見ていたかわからないけれど、いつの間にか泣いていたという経験がある方もいるのではないでしょうか。

この句には、文字のとおりに雌鳥と雄鶏を詠んだとする説と、出征する男子たちと銃後の女性たちを例えたとする説があります。すべて平仮名で書かれていることから柔らかさと同時に悲しみも感じる一句です。

藤の花が垂れている様子と、佇む老婆を対比させている句です。この老婆は言うまでもなく作者自身であり、「垂れる」という言葉に自身の老いを託して詠んでいます。

この句は、「火の鳥」を作者自身に見立てて詠まれています。身体を燃やす炎は社会や身の回りの出来事で、そんな中でも溶けない1粒の氷のような信念を持っているのだという自画像のような一句です。

夏は暑さで夏バテを起こしやすい時期です。作者も夏バテからか体重を落としてしまっていますが、食べろと言われたものも絶対に嫌だと主張している可愛らしい様子が浮かんできます。

戦後すぐの物資が足りない時期に詠まれた一句です。終戦間もない夏の最中に、大事に取っておいただろう帯を売りに来た人を見た悲しさが際立っています。

暑い夏でもきれいに巻きついている昼顔に、まるで電流でも通っているのかと考えている句です。「ゐはせぬか」という言い回しに自身の強い主張が感じられる特徴があります。

作者の作風の中で、母情を強く感じさせる一句です。鹿の子供と表現していますが、自分の子をそっと抱きしめたときのような優しさが感じ取れます。

「鬼女」とは、平安時代の鬼女退治を元にした「紅葉狩」という題目に由来します。美しく紅葉した樹を見て、伝説の鬼女紅葉を思い出したのでしょう。

死の間際まできちんとした姿でいたいという老いへの矜恃を示した句です。露という儚い季語と、帯を締めるという力のこもった動作が対になっています。

「烏帽子」とは貴族の衣装です。恋人と紅葉を見ている時の句なのか、平凡な自己から飛躍しようとする作者の作風が良く出ています。

「初嵐」とは、立秋を過ぎた頃に初めて吹く強い風です。天気がよく変わる秋の空のように、私の機嫌は簡単には取れませんよと主張している句です。

「秋風」と「淡き」という言葉の表現から、秋の澄んだ空と川が浮かんできます。写生的な俳句があまりない作者の句の中では自然の様子を詠んだめずらしい句になっています。

高浜虚子の句に「落椿　投げて暖炉の　火の中に」というものがあります。落ちた椿を何気なく暖炉にくべた様子を見て即興で詠まれた句のようで、作者もこの句を意識していたのでしょう。

「石蕗」は冬に咲く花ですが、海岸に多く自生します。そのため、どうしても冬の海という侘しい背景に咲く花となり、ここまではっきりと作者に嫌われる花になってしまったのでしょうか。

寒い外とは対照的に暖炉であたたまった部屋で、踊り出したい気分になった作者の様子を詠んでいます。「夫よ」という呼び掛けが、軽快なステップが今にも始まりだしそうな表現です。

冬の訪れである立冬の日に、思うことのある作者が何かを見極めようとしています。何を考えていたかは読んだ人の印象によって変わってくる句です。

作者の辞世の句と言われています。作者の最初の俳句は「蝶とべり飛べよとおもふ掌の菫」であり、手のひらから始まり拳を開くところで終わっています。死の間際に赤ん坊の生命力の強さを思ったのでしょうか。

今回は、三橋鷹女の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。
鷹女は俳句を詠んだ時期によってさまざまな作風があり、受け取る感覚も変わってくる俳人です。
同時期のほかの4Tと呼ばれた女流俳人はそれぞれ作風が異なっているので、読み比べてみてはいかがでしょうか。