「鰯雲」とは、秋の清々しく澄んだ空に、鰯の群れのように広がる雲のこといいます。魚の鱗にも似ていることからか「鱗雲」とも呼ばれています。
昨日鰯雲を見ました。(鰯雲は秋の季語)
秋はもうすぐそこまで来ています・・・ pic.twitter.com/g6BIJjtflD— 蓮槻 透@ฮัทซึสึกิโทรุ (@hasutsuki_toru) August 28, 2013
久しぶりの青い空。鰯雲は秋の季語♪
気持ち良い~。 #イマソラ pic.twitter.com/525wmB5dgo— oboro (@ob0r0) August 30, 2014
【鰯雲:9月の季語】巻積雲(絹積雲)のこと。白い陰影のない非常に小さな雲片が多数の群れをなし、魚の鱗や水面の波のような形状をした雲。鱗雲、さば雲などとも呼ばれる。巻雲の次にこの鰯雲が現れると、天気の悪化が近付いているという。 pic.twitter.com/5XurWvZhRr
— うちゆう (@nousagiruns) September 9, 2013
今回は、「鰯雲」を題材にしたおすすめ俳句をご紹介します。
鰯雲に関する有名俳句【おすすめ10選】
【NO.1】津田このみ
『 階段は 二段飛ばしで いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
意味:階段を二段飛ばしで駆けあがった場所から見えたいわし雲。
作者はとても急いでいたのでしょうか。勢いよく階段を駆け上がっていく様子が目に浮かびます。二段飛ばしで駆けあがった先に見えたきれいないわし雲は作者の疲れを癒してくれたことでしょう。
【NO.2】伊藤通明
『 鰯雲 記憶は母に はじまれり 』
季語:鰯雲(秋)
意味:鰯雲を見ながら想う、母の記憶が始まりである。
鰯雲を「郷愁に誘われる雲」と表現するそうです。郷愁とは、故郷や過去を懐かしむ気持ちのことをいいます。作者は、懐かしい故郷を想い、自身の幼少期を思い出す。そこから記憶を突き詰めていったとき、作者にとっての最初の記憶は「母」であるということを表現しています。作者の中にある最初の記憶の「母」はどのような姿だったのでしょうか。
【NO.3】酒井せつ子
『 人間が 名付け親なり 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
意味:人間が名付け親である、鰯雲の。
全てのものには名前があり、その名前は人間である私たちがつけているものである、ということを表現しています。「名付け親」という言葉はユーモアがあり、鰯雲を身近なものとして感じられるような気がします。
【NO.4】加藤楸邨
『 鰯雲 人に告ぐべき ことならず 』
季語:鰯雲(秋)
意味:鰯雲が広がっている。自分の今の気持ちを人に伝えたいけれど伝えることはできない。
美しい鰯雲が広がる光景の中で、作者がとても悩んでいる様子が伝わります。自分の想いを伝えたい、でも今は伝えるべきではない・伝えることはできないという心の葛藤を感じます。
【NO.5】飯田蛇笏
『 いわし雲 大いなる瀬を さかのぼる 』
季語:いわし雲(秋)
意味:川に映ったいわし雲が、川の流れによってさかのぼっているように見える。
瀬とは、流れが速いところ、もしくは浅い川の流れのことをいいます。作者は、瀬に映るいわし雲が、まるで川をさかのぼっているかのように見え、その美しい奇跡的な光景に感動していることでしょう。
【NO.6】寺西規子
『 まだ膝の 震へてをりぬ 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
意味:まだ膝が震えている、震えがおさまっていない。きれいな鰯雲が広がっていた。
作者は山登りをしたのでしょう。下山してからも、膝の震えがおさまらないほどたくさん山の中を歩いたことがとてもよく伝わります。まだ、膝が震えている状態で山登りのことを振り返り、山の上から見えたきれいで美しい鰯雲を思い出している作者。きっと作者の心の中にずっと残ることでしょう。
【NO.7】久保田万太郎
『 なにゆゑの なみだか知らず 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
意味:どのような理由で流れる涙なのか分からない。空には鰯雲が広がっている。
秋の空に広がる美しい鰯雲を見た作者。ふと気付くと、自分でも理由が分からないけれど涙がこぼれ落ちる。自分のことなのにどうしてなのか理由が分からない、という作者の戸惑いを感じます。
【NO.8】飯田蛇笏
『 児をだいて 日々のうれひに 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
意味:子どもを抱きながら、日々の悲しみや苦しみを想う。空には鰯雲が広がっている。
鰯雲が広がり秋の風がさわやかに吹く中、作者は子どもを抱きながら、心に抱える悩みや心配事を思い悩んでいる、そのような様子が伝わります。作者にとって心が晴れないようなことがたくさんあるのでしょうか。
【NO.9】中村汀女
『 こもごもに 帰り仕度や 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
意味:かわるがわるに帰り仕度をしよう。空には鰯雲が広がっている。
「こもごも」は、「交交」と書き、かわるがわる・入れ替わってという意味です。お仕事等が終わり、ちょうど帰る時間の様子でしょうか。順番に入れ替わって帰り仕度をしましょう、と呼びかける作者。そのような時にふと空を見上げたら、きれいな鰯雲が空に広がっていたのかもしれませんね。
【NO.10】高浜虚子
『 鰯雲 日和いよいよ 定まりぬ 』
季語:鰯雲(秋)
意味:鰯雲が空に広がっている、空模様がいよいよ定まった。
「日和」とは、空模様や天気のことをいいます。秋の澄んだ空に、斑点のようにまるで鰯が群れているように浮き出す美しい雲を「鰯雲」といい、秋を象徴する最も美しい雲といわれています。作者は、鰯雲が広がる美しい空を見て、清々しい気持ちになったことでしょう。やっとこの時期がきた、と幸せを感じているのではないでしょうか。
鰯雲に関する小学生向け俳句ネタ【おすすめ10選】
【NO.1】
『 人声なき プールに映る いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
夏から秋に季節が移り変わり、子どもたちが楽しむ声がなくなったプール。そのプールの水面に、いわし雲が映っている光景をみて、作者は秋になったことを実感しているのではないでしょうか。
【NO.2】
『 いきいきと 空一面に いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
鰯が群れているように浮き出す美しい雲といわれる「いわし雲」。空一面にきれいに広がるいわし雲の様子を、生きの良い魚のいわしとかけて詠んでいるユーモアのある一句です。
【NO.3】
『 いわし雲 巨大な魚 空に寝る 』
季語:いわし雲(秋)
空一面に大きく広がるいわし雲の様子を「巨大な魚」と表現しています。とても上手な表現で、空に広がるいわし雲の様子が目に浮かびます。「空に寝る」という言葉もとても可愛らしく、作者の言葉のセンスが素晴らしいです。
【NO.4】
『 見上げれば 空のひろぐよ いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
「ひろぐ」は広がる、広げる、開くということを意味しています。作者がふと見上げた空に、美しく広がるいわし雲が見えたのでしょう。思わず見とれてしまったのではないでしょうか。
【NO.5】
『 運動会 白組の勝ち いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
秋の運動会の様子でしょうか。赤組・白組の熱い戦いを終え、最後に勝ったのは白組。喜びと共にばんざいをして空を見上げたらいわし雲が空一面にひろがっていたのでしょう。いわし雲もお祝いにきてくれたのかもしれませんね。
【NO.6】
『 いわし雲 二十三区を うめつくす 』
季語:いわし雲(秋)
二十三区は、東京都のことを意味しているのでしょうか。東京都全体を覆うほど、大きく広がっているいわし雲の光景が想像できます。「うめつくす」という言葉は、いわし雲が全体に広がっていることをより強調していて、とても上手な表現です。
【NO.7】
『 いわし雲 宿題全部 持ってって 』
季語:いわし雲(秋)
作者は宿題が終わらないのでしょうか。なかなか進まない宿題が机の上にそのままになってしまっている様子が想像できます。ふと部屋の窓の外を見てみると、流れるいわし雲が見えた、藁にもすがる気持ちでいわし雲に助けを求めたのかもしれませんね。
【NO.8】
『 友達と ランチ分け合う 鰯雲 』
季語:鰯雲(秋)
空に鰯雲が広がっている秋の清々しい気候の中、作者はお友達とランチを食べているのでしょう。「ランチ分け合う」というのがとても微笑ましいです。とても穏やかな時間を感じる一句です。
【NO.9】
『 校庭の 芝に吹く風 いわし雲 』
季語:いわし雲(秋)
穏やかな秋の風が、校庭の芝に優しく触れるかのように吹く光景が目に浮かびます。空に広がるいわし雲と共に、「秋」の光景をとても上手に表現している素敵な一句です。
【NO.10】
『 いわし雲 望む向こうに 富士の山 』
季語:いわし雲(秋)
秋の澄んだ空に、まるで鰯が群れているかのように広がる美しい「いわし雲」。その向こうに見える富士山。秋を象徴する美しい雲と、日本を代表する山とのコラボレーション。最高の景色に幸せを感じたことでしょう。
以上、鰯雲に関するおすすめ俳句でした!
さいごに
今回は、鰯雲に関する俳句【20選】をご紹介しました。
「秋を象徴する最も美しい雲」ともいわれる鰯雲。鰯雲が空に広がっている光景を見ると、その美しさに見とれてしまうことでしょう。
夏から秋へと季節の移ろいを感じる光景でもあり、すこし物悲しさを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
なかなかゆっくり空を眺める機会もないかもしれませんが、すこし立ち止まって空をじっくり眺めてみると、いつもとは違う景色がみえるかもしれませんね。
ぜひ気持ちを込めて一句詠んでみてください。