「星」は俳句によく詠まれるテーマですが、四季によって俳句に使われる季語が変わってくる特徴を持っています。
固有の星や星座が季語になるもの、星の見え方によって呼び方が変わるものなど、表現のバラエティがとても豊かです。
今回は、そんな「星」に関する小学生向けのおすすめ俳句を30句紹介していきます。
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— hawk (@hawk_yama) August 12, 2016
星を表す季語は、季節ごとにいくつか存在しています。
以下にいくつか季節ごとに例を挙げてみましたので、確認しておきましょう。
- 春…春の星、星朧(おぼろ)
- 夏…夏の星、星涼し、麦星、梅雨の星、旱(ひでり)星
- 秋…秋の星、流れ星、星月夜、天の川、二つ星、七夕、碇星
- 冬…冬の星、寒星、凍星、オリオン、冬銀河、枯木星、寒昴、天狼
もっと知りたい方は下記の記事を参考にしてみてね!
小学生向け!星をテーマにした有名俳句集【15選】
【NO.1】柴田白葉女
『 春の星 ひとつうるめば みなうるむ 』
季語:春の星(春)
意味:春の星が出ている。ひとつうるんだように輝いているように見えると、全ての星がうるんでいるように見える。
「春の星」は、水に濡れているように瞬いているのが特徴の季語です。星のひとつが濡れた輝きを持っているように見えると、他の星々までも潤んでいるように見える、シンプルながら叙情的な表現になっています。
【NO.2】日野草城
『 夏の星 小さきが一つ 流れけり 』
季語:夏の星(夏)
意味:夏の星空だ。小さい星が一つ流れ星として流れていった。
「流星」は秋の季語ですが、ここでは夏の夜空を不意に流れていった小さな流れ星を詠んでいます。流星群として有名な日ではなく、何気ない日の夜空に流れる星を見つけたときの喜びはひとしおです。
【NO.3】伊藤敬子
『 水底の 石にこもりし 梅雨(つゆ)の星 』
季語:梅雨の星(夏)
意味:水の底にある石にこもってしまったような梅雨の時期の星だ。
「梅雨の星」とは、曇りがちな梅雨の時期の晴れ間に見える星のことを意味する季語です。ここでは実際に星は見えておらず、まるで降った雨でできた水底の石の中に星が隠れてしまったかのように見えない星として使われています。
【NO.4】松尾芭蕉
『 荒海(あらうみ)や 佐渡(さど)に横たふ 天の川 』
季語:天の川(秋)
意味:荒れた海の日だ。佐渡ヶ島に横たわるように天の川が見えている。
有名な松尾芭蕉の句です。「荒海」と詠むことで、静止しているように見える天の川との対比になっています。海と島と星空が一度に眼前に飛び込んでくる一枚の絵画のような一句です。
【NO.5】稲畑汀子
『 流星(りゅうせい)に 秘めごとならぬ 願ひごと 』
季語:流星(秋)
意味:流れ星に、内緒にしたいことではなく願い事を言おう。
「ひめごと」と「ねがひごと」で韻を踏んでいるのが特徴です。流れ星には声を出して3回願い事を言うと叶うと言われていますが、内緒にしたい願い事を心の中で唱えている人もいるかもしれません。
【NO.6】正岡子規
『 行く秋の 闇にもならず 星月夜(ほしづきよ) 』
季語:星月夜(秋)
意味:秋が深まってくると、真っ暗な闇にならない月夜のように明るい星空よ。
「星月夜」とは、月の出ていない晩にも星空の明かりで月夜のように明るい夜空のことです。秋から冬にかけては空気が乾燥して澄んでくるため、春や夏に比べて星空がにぎやかになり、夜でも明るくなってくることを季節の移ろいとして表現しています。
【NO.7】松尾芭蕉
『 七夕や 秋を定(さだ)むる 初めの夜 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の日が来た。秋を定める最初の夜だ。
七夕は旧暦の7月7日、現在の暦でいうと8月8日前後です。江戸時代までの七夕は「五節句」という季節の節目にあたっていて、松尾芭蕉の時代はまだ七夕は秋に切り替わる日だったという背景があります。
【NO.8】山口誓子
『 寒星(かんせい)の 天の中空 はなやかに 』
季語:寒星(冬)
意味:寒い夜空の天の真ん中は、華やかな星の輝きで満ちている。
冬の星空は、一等星が7個とほかの季節の倍以上見える華やかなものです。特にオリオン座が南の天高くに昇ると、おおいぬ座やこいぬ座、ふたご座、牡牛座、ぎょしゃ座の一等星を繋ぎ合わせた「冬の大六角形」が見えることがあり、とてもにぎやかな夜空になります。
【NO.9】山口誓子
『 傾きて オリオンは夜の 凧(いかのぼり) 』
季語:オリオン(冬)
意味:傾いているオリオン座は、夜に上げられた凧のようだ。
凧と書いて「いかのぼり」と読ませていますが、凧あげの凧として考えて構いません。傾いたオリオン座はまるで地上から上げられた凧のように見えるという無邪気さが垣間見える一句になっています。
【NO.10】加藤秋邨
『 頬杖(ほおずえ)の 何を見てゐる 冬銀河 』
季語:冬銀河(冬)
意味:頬杖をつきながら、何を見ているのだろう。あの冬の銀河のような星空を。
頬杖をつきながら夜空を眺めることがある人も多いでしょう。銀河のような星空という情報の多さと、「何を見てゐる」かわからない力の抜き方の対比が見事です。
【NO.11】福田蓼汀
『 かの曲の 耳にのこりて 春の星 』
季語:春の星(春)
意味:あの曲が耳から離れないまま春の星を眺めている。
お店やラジオなどで聞いたのか、印象深いフレーズが離れないまま春の星空を見上げています。どこか寂しげな様子から、別れの寂しさなどを歌った曲だったのでしょうか。
【NO.12】夏目漱石
『 春の星を 落して夜半の かざしかな 』
季語:春の星(春)
意味:春の星を落としたように輝く夜中の髪飾りだ。
ある女性の髪飾りを「星が落ちてきたようだ」と褒めている一句です。キラキラと街灯などの光に反射して輝いて見えたのでしょう。
【NO.13】三橋鷹女
『 夏の星 我が齢までは 数へられる 』
季語:夏の星(夏)
意味:数の多い夏の星も、私の年齢の数までは数えられる。
夏は天の川がよく見える季節なので、多くの星が見える地域もあります。そんな中で、自分の年齢の数まではなんとか数えられるのにと一生懸命空を見ている作者が浮かんでくる句です。
【NO.14】臼田亞浪
『 草道の 家かげに入り 天の川 』
季語:天の川(秋)
意味:草の茂る道を歩いていたら、家の影に入ったのか天の川が見えなくなった。
当時は街灯もなく、星の光が遮られることで近くに家があるとわかったようです。その部分だけ天の川が欠けて見えています。
【NO.15】富安風生
『 冬の星 らんらんたるを 怖れけり 』
季語:冬の星(冬)
意味:冬の星がらんらんと輝いているのがどこか怖いのだ。
冬は空気が乾燥して星が良く見えます。そのらんらんたる輝きが逆に怖いと感じている一句です。
小学生向け!星をテーマにした一般俳句作品集【15選】
【NO.1】
『 春の星 スカイツリーは 明る過ぎ 』
季語:春の星(春)
意味:春の星が出ている。ライトアップされたスカイツリーが明るすぎてよく見えないなぁ。
春の星という自然の輝きと、スカイツリーという人工の輝きを対比しています。街灯が明るすぎて一等星以外は見えないことがよくありますが、スカイツリーというまぶしいほどのライトアップを前にすると星の輝きも見えなくなってしまう都心ならではの句です。
【NO.2】
『 星涼し 隣の部屋の 長電話 』
季語:星涼し(夏)
意味:星が涼しげに輝いている夜だ。隣の部屋から長電話の声が聞こえてくる。
視覚と聴覚からどのような情景か想像しやすいのがポイントです。涼しさを求めて窓を開けると、星が見えたけれど同じように窓を開けていた隣の部屋からずっと話し続けている声が聞こえる暖かい陽気になるとよくある光景が広がっています。
【NO.3】
『 麦星を はねあげている 麦の波 』
季語:麦星(夏)
意味:麦星をまるではね上げているかのように収穫を待つ麦の穂の波だ。
麦星とはぎょしゃ座の一等星アークトゥルスのことで、麦の収穫期によく見えることから麦星と呼ばれています。そんな麦星を上空高くにはね上げるかのごとく、風に吹かれた麦の穂が波打っている、幻想的な一コマです。
【NO.4】
『 しかられて 見上げる先に 旱星(ひでりぼし) 』
季語:旱星(夏)
意味:夜に叱られて、空を見上げた先に怒ったように赤い星が見える。
旱星とは、火星やさそり座の一等星のアンタレスなど、夏に見える赤い色をした星です。叱る人の色のイメージとして赤を挙げる人は多いですが、見上げた空の先にも真っ赤な星が輝いている、鮮やかな赤い色彩がテーマの俳句になっています。
【NO.5】
『 山の中 見上げる空は 星月夜(ほしづきよ) 』
季語:星月夜(秋)
意味:山の中から見上げる空は、月が出ていないのにとても明るい星空である。
標高が高く、周りに街灯のない山の中では星がよく見えます。登山中の山小屋での一幕を詠んだ句で、普段は見られない光景を存分に楽しむ喜びが、シンプルな表現から伝わってきます。
【NO.6】
『 天の川 星の数だけ 夢を見る 』
季語:天の川(秋)
意味:天の川にある星の数だけ夢を見ている。
天の川には無数の星があります。数えられないほどの「星の数だけ夢を見る」という表現が、眠ったときに見る夢なのか、願い事としての夢なのか、天の川を見ながら想像をふくらませられる一句です。
【NO.7】
『 七夕や 去年と同じ 願ひ事 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕が来たなぁ。去年と同じ願い事をしよう。
七夕で短冊に書く願い事は、毎年いろいろな願い事をする人といつも同じ願い事をする人がいます。家庭円満や健康祈願など、どんな願い事をしているのか気になるところです。
【NO.8】
『 星見上げ オリオン探す 露天風呂 』
季語:オリオン(冬)
意味:露天風呂に入りながら、星空を見上げて、オリオン座を探している。
冬の夜の露天風呂での一句です。オリオン座は一等星が2つあること、わかりやすい三ツ星があることなどから探しやすい星座ですが、多くの星がある中から戯れに探し出そうとしているのが「露天風呂」から伝わってきます。
【NO.9】
『 真夜中の 山茶花(さざんか)照らす 冬の星 』
季語:冬の星(冬)、山茶花(冬)
意味:真夜中に咲く山茶花を照らす冬の星だ。
「山茶花」と「冬の星」で季重なりになっていますが、星の光に照らされる花が主題なので問題ありません。夜に照らす光源でよく使われるのは月ですが、ここでは鋭く輝く冬の星を使っていることがポイントです。
【NO.10】
『 プロポーズ されそうなほど 冬銀河 』
季語:冬銀河(冬)
意味:プロポーズされそうなほどに美しく迫力のある、冬の天の川が見えている。
天の川といえば夏から秋にかけてのものが有名ですが、実は冬にも暗い場所ならば見られます。オリオン座の方向にありますが、輝きは秋の天の川よりも暗く、周囲に街灯のない場所でしか見られないでしょう。この句ではプロポーズと表現することで、普段は見られない圧巻の冬の天の川を表しています。
【NO.11】
『 さよならの 三角四角 春の星 』
季語:春の星(春)
意味:さよならを言いながら三角や四角の春の星を見る。
遊んでいて日が傾いてきたのか、誰かと「さよなら」を言い合っています。空を見ると三角や四角の星座に見える春の星が昇ってきたようです。
【NO.12】
『 冬の星 お前みたいに なれたらな 』
季語:冬の星(冬)
意味:空に輝く冬の星よ、お前みたいになれたらなぁ。
冬の星は一等星という明るい星が多く、よく目立ちます。そのため、冬の星のように明るく目立つ存在になれたらいいのにと羨んでいる一句です。
【NO.13】
『 天の川 飲んだらきっと ソーダ味 』
季語:天の川(秋)
意味:天の川の水を飲んだらきっとソーダ味がするのだろう。
天の川の小さな星たちを炭酸水の気泡に見立てたユニークな一句です。英語でミルキーウェイとも呼ばれる天の川ですが、皆さんはどんな味を想像するでしょうか。
【NO.14】
『 天の川 渡るや定期 航空便 』
季語:天の川(秋)
意味:天の川を渡る定期航空便だ。
天の川を渡るように飛行機が飛んでいる様子を詠んだ句です。あの飛行機のように、天の川の両岸に定期便が出ていればいいのにという願いも込められています。
【NO.15】
『 喉鳴らす 君健やかに 流れ星 』
季語:流れ星(秋)
意味:喉を鳴らす君が健やかにあれるように流れ星に祈りを託す。
喉を鳴らしているのは飼い猫です。健やかに暮らせるようにという飼い主さんの祈りが流れ星に込められています。
以上、小学生向け星に関するオススメ俳句集でした!
今回は、星をテーマにした俳句を有名なもの15句、一般の方のものを15句紹介しました。
星を季語にした俳句は多く、星自体にも多くの別名や季語があります。星空は季節によって表情を変えていくので、夜空を見上げて一句詠んでみてはいかがでしょうか。