「鬼は外!福は内!」と声を出し、豆をまいて鬼を退治する行事「節分」。
節分は2月の代表的な行事として、昔から日本で親しまれています。
今回は、「節分」について詠ったオススメ俳句を30句紹介していきます。
#節分 に一句、詠むぞい!
「鬼は外 いつでも福は うちスキー」
( ´ - `).。oO(豆をつまみに一杯いこうかの!)#豆まき #俳句 pic.twitter.com/T1PSZSV0aA
— ニッカウヰスキー【公式】 (@nikka_jp) February 3, 2016
節分会
ひかり溢れて
寒桜*季重なりですが境内の桜に感動して・・
美しい春が来る喜びで・・#俳句 pic.twitter.com/laljtFyk7b— とんぼ (@tonbo_yu_yu) February 3, 2016
俳句における季語「節分」について
節分は「晩冬の季語」です。
現在の節分はその年によってかわりますが、ほぼ二月三日前後に行われます。
なぜ節分が春ではなく、晩冬の季語なのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
現在の節分は、二月の「立春」と呼ばれる暦上で春が始まる日の前日をいいます。
つまり、節分は「春になる日の前、冬の終わりの日」であるため、「晩冬」の季語とされているのです。
ちなみに、節分は元々は「季節を分けること」という意味です。
本来、節分は立春・立夏・立秋・立冬と四季の移り変わりの節目を意味しました。現在のように立春の前日のみを「節分」とし、行事を行うようになったのは、室町時代からといわれています。
また、節分では「鬼は外」「福は内」と豆をまきますが、これは平安時代に中国から伝わった「鬼やらい」「追儺(ついな)式」と呼ばれる行事がもとになっています。
鬼やらいとは「鬼を追い払うこと」、追儺式とは「鬼を追う儀式のこと」です。この行事が現在でも残り、豆をまくことで立春に幸福を呼ぶ神々を招くとされています。
また、節分では「年の豆」「福豆」として自分の数より一つ多く豆を食べるとよいとされます。
節分を題材にしている有名俳句【15選】
【NO.1】阿部みどり女
『 節分の 豆を掴(つか)みて 躊躇(ためら)へる 』
季語:節分(冬)
意味:節分の豆をつかんで、ためらっている。
節分の豆をつかんだものの、鬼に扮した人にあててよいかどうか、躊躇している様子を詠っています。作者の優しさが伝わる句です。
【NO.2】石田波郷
『 赤鬼は 日本の鬼 鬼やらひ 』
季語:鬼やらひ(冬)
意味:赤鬼は日本の鬼。鬼やらいの行事のことだ。
「鬼やらひ」とは、立春の前日である節分の夜、「鬼」を追いはらう行事のことです。
「鬼」とは、季節のかわりめにかかりやすい病気のことをいいます。
【NO.3】正岡子規
『 節分や 親子の年の 近うなる 』
季語:節分(冬)
意味:親子の年が近くなった節分のことだ。
正岡子規が五歳の頃、父親は四十歳で亡くなったといわれています。
自分の歳の数だけ食べる節分の豆を口にしながら、「亡くなった父の年齢に自分も近づいている」と詠っているのでしょうか。
【NO.4】久保田万太郎
『 節分の 何気なき雪 ふりにけり 』
季語:節分(冬)
意味:節分で、何気ない雪が降ってきたことだ。
もう春が近づいているというのに、何気なく雪が降っています。
作者は、「季節外れの雪か」と降る雪を見つめて思っているのでしょう。
【NO.5】五十嵐播水
『 節分の春 春日の巫女の 花かざし 』
季語:節分の春(冬)
意味:節分の春、春日神社の巫女が花かんざしを挿している。
節分の日、神社の境内では厄除けを祈願する人々でにぎわいます。神社にいる巫女も、花かんざしを黒髪にさしているのです。
【NO.6】矢島渚男
『 節分や 海の町には 海の鬼 』
季語:節分(冬)
意味:海の町には海の鬼がいる、節分であることだ。
海の町に生きる人びとには、海の鬼を追い払う。
節分の行事は、地域によって様々な特色があることを感じさせられます。
【NO.7】平畑静塔
『 わがむかし 節分の豆 菓子とせり 』
季語:節分(冬)
意味:我が昔は、節分の豆を菓子としたことだ。
節分の豆は、福豆として年の数より一つ多く食べるとよいとされています。
作者は、子どもの頃、節分の豆を菓子として食べていたことを思い出しているのです。
【NO.8】高浜虚子
『 あたたかく 炒られて嬉し 年の豆 』
季語:年の豆(冬)
意味:あたたかく炒られた年の豆が、嬉しいことだ。
季語「年の豆」とは、節分の夜にまく豆のことをいいます。
「節分」の準備のために、豆があたたかく炒られている様子を見る作者。
これから始まる「鬼やらい」を思い、嬉しくてたまらない作者の様子が伝わってきます。
【NO.9】小林一茶
『 三つ子さへ かりりかりりや 年の豆 』
季語:年の豆(冬)
意味:三つ子さえも、かりりかりりと年の豆を食べている。
「かりりかりり」と音をたてて、三つ子が年の豆をかじっています。
幼子が豆を食べる様子を、一茶が優しくみつめている情景が浮かんできます。
【NO.10】三橋敏雄
『 姿ある鬼あはれなり 鬼やらひ 』
季語:鬼やらひ(冬)
意味:姿がある鬼はあわれなものだ。「鬼やらい」でのことである。
この句では、「姿ある鬼あはれなり」と上の句と中の句がつながる「句またがり」の表現技法を使い、流れるようなリズムを出しています。
季語「鬼やらひ」は、節分の夜に暴れる鬼を追い払う行事のことをいいます。
「姿ある鬼」とは、節分の行事で「お面」をつけた鬼のことです。本当に怖いのは、姿が見えない鬼なのかもしれない、と作者は考えているのでしょうか。
【NO.11】阿部みどり女
『 節分や ざくざくとふむ 夜の雪 』
季語:節分(冬)
意味:節分の日だ。ざくざくと踏む夜の雪がある。
2月3日の節分の日でも、まだ雪が残る夜を詠んだ句です。季節の上では春になりますが、まだまだ春が遠いことを表しています。
【NO.12】久保田万太郎
『 節分や 灰をならして しづごころ 』
季語:節分(冬)
意味:節分の日だなぁ。灰をならして心を鎮めよう。
昔の暖房器具は火鉢など炭を使うものが多かったのが特徴です。「灰をならず」という行動は今ではあまり縁がないかもしれませんが、炭を燃やしてできた灰を平らにならすことで平静を保とうとしています。
【NO.13】高浜虚子
『 節分や 鬼もくすしも 草の戸に 』
季語:節分(冬)
意味:節分だなぁ。鬼も医者もこの草で出来たような家に来る。
「くすし」とは医者のことです。季節の変わり目で体調を崩しやすいので、追い払いたい鬼と迎え入れたい医者が同時にやってくると詠んでいます。
【NO.14】尾崎放哉
『 節分の豆を だまつてたべて居る 』
季語:節分(冬)
意味:節分の豆を黙って食べている。
現在節分の代名詞になった恵方巻きは黙って食べるというルールがありますが、豆にはありません。この句は作者が1人で黙々と豆を食べている様子を表しています。
【NO.15】宝井其角
『 豆をうつ 声のうちなる 笑かな 』
季語:豆をうつ(冬)
意味:豆を打つ声の内に笑い声が混じっているなぁ。
「鬼は外」と豆を投げながら叫んでいる声が、笑い声混じりであると詠んでいる句です。家族で豆まきをしているのか、楽しみながら豆をまいている様子が伺えます。
節分を題材にしている面白い俳句作品集【15選】
【NO.1】
『 節分だ 鬼当番は お兄ちゃん 』
季語:節分(冬)
小学生が詠んだ句です。鬼当番を毎年家族交代で行っているのでしょうか。にぎやかな、家族の豆まきの様子がうかんできます。
【NO.2】
『 お父さん いたくなかった おにやくで 』
季語:鬼(冬)
鬼役で、皆から豆を当てられたお父さん。
「痛くなかった?」と気遣っている子どもの優しさが、伝わってきます。
【NO.3】
『 節分の おに役 母がやればいい 』
季語:節分(冬)
「節分の鬼役は、父でなく母がやればいいのに」と、こっそり思う小学生。
思わず笑いがこみあげてくる句です。
【NO.4】
『 鬼は外 あまりまくなと 母が言う 』
季語:鬼は外(冬)
「鬼は外」と豆を元気よく投げていると、「もったいないから、あまりまかないでね」とお母さんから言われているのでしょう。
「だって、豆まきなのに」と思っている作者の気持ちがこめられています。
【NO.5】
『 節分の お豆は小さな 戦士です 』
季語:節分(冬)
節分で、鬼をやっつけるためのお豆。それが「小さな戦士です」とする子どもならではの視点が面白い句です。
【NO.6】
『 豆をまく 母から本気で逃げる父 』
季語:豆をまく(冬)
鬼役のお父さんに、「鬼は外」と勢いよく豆を投げつけるお母さん。
「痛たた」と言いながら、鬼は逃げているのでしょう。その様子を見て、大笑いする作者の様子が伝わります。
【NO.7】
『 節分の 豆にも負けぬ 祖父の歯よ 』
季語:節分(冬)
節分で祖父は、「かりかり」と力強く豆を噛んで食べています。
「節分の豆にも負けないほど強い歯なんだなあ」と孫である作者は、祖父の食べている様子に見入っています。
【NO.8】
『 豆まきの 鬼も来ている 朝ごはん 』
季語:豆まき(冬)
豆まきの時には、鬼役をした父親。翌朝には、いつも通りに朝ご飯を食べています。
豆まきの非日常性を感じる句です。
【NO.9】
『 節分に 足速くなる 娘たち 』
季語:節分(冬)
鬼役である父親から見た句でしょうか。
節分の豆まきで、鬼から逃げる娘たちの足が、去年より速くなっていることに気づきます。
娘たちの成長を嬉しく思う親の姿が、微笑ましい句です。
【NO.10】
『 節分や 豆に暮らせと 母の声 』
季語:節分(冬)
節分の「豆」と「まめに暮らせ」が掛かっています。
「まめに暮らせ」は「元気で達者に暮らしなさい」という意味です。
今は離れて暮らす母親の声が、豆まきを行っている作者の耳に蘇ってきたのでしょうか。
楽しくも、懐かしい気持ちになる句です。
【NO.11】
『 節分や 今年は母が 鬼の番 』
季語:節分(冬)
両親で交代して鬼の役をやっていたのでしょう。今年は母親が鬼の番だと楽しんでいます。
【NO.12】
『 節分や 鬼遣らひより 屑払ひ 』
季語:節分(冬)
節分の日は「鬼やらい」という鬼を追い払う行事が元になっています。しかし、作者の家では鬼ではなく家の掃除をする方が先だと嘆いている一句です。
【NO.13】
『 節分や 鬼追い立てて 外は雨 』
季語:節分(冬)
豆を投げて鬼を追い立てた外は雨が降っていたという句です。鬼役の人がいたら可哀想になってしまいますが、どうだったのでしょうか。
【NO.14】
『 わが身には どれだけ棲むか 鬼やらい 』
季語:鬼やらい(冬)
鬼を追い出すのが節分ですが、自分の中にはどれだけの鬼がいるだろうと考えています。鬼は角を生やした恐ろしい化け物というだけではなく、自分の中の恐ろしい一面でもあるのだと考えさせる一句です。
【NO.15】
『 節分の 父さん鬼が 小鬼抱く 』
季語:節分(冬)
お父さんと子供が両方鬼役をして遊んでいるのかもしれません。小鬼を抱えて逃げ回って楽しんでいる様子が伺えます。
以上、節分をテーマにしたオススメ俳句でした!
今回は、節分の俳句を30句紹介しました。
節分は冬の終わる季節の節目とともに、鬼を追い払い家族が一年間無病息災で過ごすことができるようにお願いをする特別な行事です。
節分の俳句には、活気あふれるものが多くあります。
ぜひ、この機会に節分の俳句を一句詠んでみてください。