猫は犬と並んで人間の身近にいる生物です。
しかし、季語になっていない犬とは違って、「猫の恋」「子猫」「竈猫」などいくつかの季語が存在しています。
今回は、猫好き必見の「猫」にまつわるオススメ俳句を30句紹介していきます。
【猫の子/仔猫:4月の季語】春に生まれた猫の子のこと。
猫の子のくんづほぐれつ胡蝶哉(榎本其角)
スリツパを越えかねてゐる仔猫かな(高浜虚子)
子猫ねむしつかみ上げられても眠る(日野草城) pic.twitter.com/puIT0R9Cnd— うちゆう (@nousagiruns) April 29, 2015
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ふてぶてし歩く姿や竈猫
#haiku #俳句 pic.twitter.com/kvyE1mMmlo— Creap's (@May____18) November 29, 2018
ぜひ俳句作りの参考にしてみてね!
猫をテーマに詠んだ有名俳句【15選】
【NO.1】 松尾芭蕉
『 猫の恋 やむとき閨(ねや)の 朧月 』
季語:猫の恋(春)
意味:発情期の猫の声が途絶えた寝室に、朧月の光が入ってきた。
発情期の猫の声を聞いたことがあるとわかりやすいですが、かなりの音量で鳴き続けます。そんな夜中でも響いていた猫の声が急に途絶え、シンとした寝室に朧月の淡い光が入ってくる、静謐と寂しさを感じる句です。
【NO.2】正岡子規
『 おそろしや 石垣崩す 猫の恋 』
季語:猫の恋(春)
意味:なんとおそろしいことだ。石垣すら崩す猫の恋よ。
猫は発情期にオス同士が出会うとケンカになることがありますが、そのケンカが石垣を崩す勢いであるということを、「おそろしや」という詠嘆で示しています。
【NO.3】宝井其角
『 猫の子の くんずほぐれつ 胡蝶かな 』
季語:猫の子(春)/胡蝶(春)
意味:猫の子供たちが、くんずほぐれつしながら蝶と戯れている。
猫は動いているものに反応します。子猫ともなれば、初めて見るだろう蝶を捕まえようと、転びながらじゃれついているのが目に見えるようです。
【NO.4】日野草城
『 子猫ねむし つかみ上げられても 眠る 』
季語:子猫(春)
意味:子猫は眠いのだろう。親猫につかみ上げられても眠っている。
句またがりの俳句です。「ねむし」「眠る」と何をやってもぐっすりと眠っている子猫の様子をよく見ている、作者の猫への愛が伝わってきます。
【NO.5】富安風生
『 何もかも 知ってをるなり 竈猫(かまどねこ) 』
季語:竈猫(冬)
意味:家のことを何もかも知っているのだ、かまどの中で丸くなっている猫は。
「竈猫」という冬の季語はこの句で成立したと言われています。いつも火の消えたかまどの中でじっとしている猫こそ家の中のことを全て見て知っている、泰然と構えている猫の姿です。
【NO.6】飯田蛇笏
『 しろたへの 鞠(まり)のごとくに 竈猫 』
季語:竈猫(冬)
意味:かまどの灰で真っ白な鞠のようになっているかまどの中の猫であることよ。
現在はかまどを使うこともなく、灰を直接見ることも少なくなっているため想像しにくいですが、火が消えて灰だらけのところに丸くなるため灰まみれになってしまいます。その姿がまるで真っ白な鞠のようと作者は面白がっているのです。
【NO.7】正岡子規
『 うしろから 猫の飛びつく 袷(あわせ)かな 』
季語:袷(夏)
意味:ちらちらと布が揺れるので、背後から猫が飛びつく袷であることよ。
袷とは夏の着物で、表地と裏地を「合わせて」縫っている着物です。猫の視界に揺れる着物にじゃれついている可愛らしい姿を詠んでいます。
【NO.8】野村喜舟
『 永き日や 巳の刻よりの 眠り猫 』
季語:永き日(春)
意味:日が長くなってきた。午前10時くらいから昼寝をする眠り猫よ。
巳の刻とは午前10時から正午くらいまでの時間です。お昼寝というには早いですが、暖かい春の日差しについうとうとと眠ってしまう猫の姿が浮かんできます。
【NO.9】西島麦南
『 春の猫 夕づく炉辺(ろばた)に めざめけり 』
季語:春の猫(春)
意味:春の猫よ。夕方になって炉端でようやく起きてきた。
こちらも昼寝をしていた猫の句です。夕方になって囲炉裏の火に気がついたのでしょうか、欠伸をしながら起きてきた様子を詠んでいます。
【NO.10】横井也有
『 梅が香や 耳かく猫の 影ぼうし 』
季語:梅が香(春)
意味:梅の香りがするなぁ。耳をかく猫の影が映っている。
春の訪れを梅の香りと、外で毛繕いをする猫の姿で表現しています。寒さで丸くなるのではなく、のんびりと毛繕いをする様子が気温の変化を感じさせる一句です。
【NO.11】 小林一茶
『 春雨や 猫に踊りを 教える子 』
季語:春雨(春)
意味:春雨が降っているなぁ。猫に踊りを教えている子がいる。
雨が降っているため、室内で猫と遊んでいる子供がいます。猫じゃらしのようなもので遊んでいる様子が、まるで踊りを教えているように見えたのでしょう。
【NO.12】加賀千代女
『 ふみ分けて 雪にまよふや 猫の恋 』
季語:猫の恋(春)
意味:雪の中をふみ分けて進んでいたが、迷ってしまったように声が止まる猫の恋だ。
猫が求愛のために鳴いていたのに、雪の中で相手を見失ってしまった様子を詠んだ句です。雪の踏み跡は残っているのに相手がいないという悲しさを感じさせます。
【NO.13】池西言水
『 猫逃げて 梅動きけり 朧月 』
季語:梅(春)、朧月(春)
意味:猫が逃げて梅の花が動いた。空には朧月が昇っている。
朧月のぼんやりとした明かりの中で梅の花や枝が動いたと思ったら、猫が出てきたという一句です。夜でも外を出歩くくらい暖かくなっていることがわかります。
【NO.14】松本たかし
『 薄目あけ 人嫌ひなり 炬燵(こたつ)猫 』
季語:炬燵猫(冬)
意味:薄目を開けて、人に構われたくなさそうなコタツの中の猫だ。
「炬燵猫」とはコタツに入っている猫のことです。触ろうとすると嫌がる可愛らしい様子が伺えます。
【NO.15】内藤丈草
『 あら猫の かけ出す軒や 冬の月 』
季語:冬の月(冬)
意味:荒々しい猫がかけ出す家の軒下だ。空には冬の月が昇っている。
冬の夜という寒い日でもかけ出す猫の生命力の強さを詠んでいます。冬の月が照らす中でかけて行く猫を見送った作者はどんな気持ちだったのでしょうか。
猫をテーマに詠んだ一般俳句作品【15選】
【NO.1】
『 恋猫の 鈴は出雲の 土産とか 』
季語:恋猫(春)
意味:恋をしている猫の鈴は、縁結びをするという出雲大社の土産なのではないだろうか。
「出雲」とは、10月に日本の神々が縁結びの相談をするために集まる出雲大社のことでしょう。そこで授けられた鈴を持っているから、縁が結ばれて恋をしているという面白い一句です。
【NO.2】
『 欄干(らんかん)は 一本道や 猫の恋 』
季語:猫の恋(春)
意味:橋の欄干は猫にとっては手すりではなく一本の道であることだなぁ。猫が恋する相手に向かって歩いている。
橋の手すりにあたる欄干は、猫にとっては一本道と例えているのが面白い句です。橋の部分ではなくあえて欄干を通ってお目当ての猫の元へ向かう姿が目に浮かびます。
【NO.3】
『 風光る 子猫も眼細めをり 』
季語:風光る(春)/子猫(春)
意味:風が光り輝く陽気だ。子猫も目を細めている。
初めての春にまぶしそうに目を細める子猫とそれを眺める飼い主の風景です。寒さが和らぎ、外で遊んでいるのでしょうか。
【NO.4】
『 猫の子の 甘え加減や 甲の傷 』
季語:猫の子(春)
意味:猫の子が甘える加減を学んでいる事だ。この手の甲の傷は。
子猫がじゃれついて甘噛みした傷が手の甲に残っています。どのくらいの強さで噛んでいいのか試行錯誤する子猫と、その子猫を優しく見守る飼い主の句です。
【NO.5】
『 火の神は いま留守らしく 竃猫 』
季語:竈猫(冬)
意味:かまどの中の火の神様は今は留守のようだ。かまどの中にいるのは猫である。
竈には竈神という火の神様がいるとされています。そんな神様も今は火が消えていて留守のため、猫が竈の中に居座っている、そんな愛嬌のある句です。
【NO.6】
『 炬燵猫 いつもわたしの 左位置 』
季語:炬燵猫(冬)
意味:コタツで丸くなる猫よ。いつも私の左側で丸くなっている。
「猫はコタツで丸くなる」という童謡の通り、炬燵猫も冬の季語です。飼い主さんの左隣を陣取って眠る可愛らしい猫の癖でしょう。
【NO.7】
『 ダービーや テレビの前に 猫二匹 』
季語:ダービー(夏)
意味:日本ダービーの季節だ。テレビの前で猫が二匹走っている馬を見ている。
「ダービー」は初夏の季語になります。テレビの中で馬が走っている様子を猫がテレビの前で眺めている、その状況の面白さが味になっている句です。
【NO.8】
『 秋晴へ 撫(な)でろ撫(な)でろと 伸びる猫 』
季語:秋晴(秋)
意味:秋晴れだ。なでろなでろと猫が伸びてくる。
屋外にいる飼い猫か野良猫か、秋晴れの空の下でなでてほしくて頭を伸ばしてくる猫の可愛らしさが「撫でろ撫でろ」という言葉に表れています。
【NO.9】
『 野良猫の サドルに鎮座 秋の風 』
季語:秋の風(秋)
意味:野良猫がサドルの上に鎮座している。秋風が吹く季節だ。
サドルに猫が座っていてどかせない、という写真を見たことがある人も多いでしょう。秋風が若干冷たく、足を折りたたんで座り込んでしまっている様子が「鎮座」という言葉選びから見える句です。
【NO.10】
『 冷蔵庫 開けると猫が 足元に 』
季語:冷蔵庫(夏)
意味:冷蔵庫を開けるといつの間にか猫が足元にいる。
飼い主が冷蔵庫を開けることが、ご飯かおやつの準備だと思っているのでしょう。今か今かとキラキラした目で飼い主を見上げている様子が目に浮かびます。
【NO.11】
『 身震ひの 猫の子抱いて 温まる 』
季語:猫の子(春)
意味:身震いをする猫の子供を抱いて温まる。
寒かったのか、毛繕いの終わりなのか、身を震わせた子猫の温かさを詠んでいます。温かい子猫の温度が伝わってくるようです。
【NO.12】
『 屋根つたふ 黒猫の眼や 春の月 』
季語:春の月(春)
意味:屋根をつたって歩く黒猫の眼が見える春の月夜だ。
猫は夜になると目が僅かな光を反射して光って見えます。黒猫の眼と対比したのか、春の月に光る眼を例えたのかどちらの解釈もできる句です。
【NO.13】
『 大の字の 猫すこやかに 昼寝かな 』
季語:昼寝(夏)
意味:大の字になっている猫が健やかに昼寝をしているなぁ。
猫は丸まって眠るイメージが強いですが、人に慣れているとお腹を出して眠ることもあります。健やかに昼寝をする猫を見て癒されている様子を詠んだ句です。
【NO.14】
『 秋の庭 散歩の猫の 細き目よ 』
季語:秋(秋)
意味:秋の庭を散歩する猫の細い目よ。
猫は見ている光の強さによって瞳孔の太さが変わってきます。「細き」とあることから、日が高いうちに庭を散歩している様子が伺える一句です。
【NO.15】
『 冬座敷 ときどき猫と 見つめ合ひ 』
季語:冬座敷(冬)
意味:冬の部屋だ。時々猫とじっと見つめあっている。
猫はあまり人と目を合わせないと言われていますが、飼い猫など人間との信頼関係があると目を合わせてきます。遊んで欲しい、かまって欲しいなどという訴えが多く、この国句でも猫と遊んでいる雰囲気が漂っているのが面白い一句です。
以上、猫にまつわるオススメ俳句集でした!
今回は、「猫」をテーマにした俳句を30句紹介しました。
季節ごとに猫が表す季語が変わってきますので、一句詠んでみたいときはぜひ猫の季語を入れてみて詠んでください。