「星月夜」とは秋の季語で、月のない夜に満点の星が輝いている様子のことです。
月の文字は入っていますが月夜ではなく、まるで月が出ているかのように星の明かりが輝くことを意味します。
今回は、「星月夜」に関するおすすめ俳句(有名俳人の名句+一般俳句作品)を30句紹介していきます。
刻に消え 残る想い出 星月夜#俳句 pic.twitter.com/qDprjeNU46
— 文月 (@KazukiKuzuha) August 15, 2016
「星月夜」おすすめ有名俳句集【15選】
【NO.1】 江左尚白
『 星月夜 空の高さよ 大きさよ 』
季語:星月夜(秋)
意味:満点の星空だ。空は何と高いことか、大きいことか。
空を眺め、天空のあまりの高さと広大さに自身の小ささを感じ取った芭蕉の門人に相応しいわび・さびの句です。
【NO.2】楓橋
『 星月夜 さびしきものに 風の音 』
季語:星月夜(秋)
意味:星空の中、寂しいと思うものはこの風の音だ。
星空というにぎやかな空に対して、秋の風というこれからくる冬を思わせるかわいた音を聞いて閑寂を感じる…、まさに秋を代表する光景を歌っています。
【NO.3】小林一茶
『 木がらしや こんにゃく桶(おけ)の 星月夜 』
季語:木がらし(冬)
意味:木枯らしがふいている。こんにゃく桶の中に星月夜が映っているよ。
【NO.4】田川鳳朗
『 ものいはぬ 神輿(みこし)うつしや 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:物音も立てないお神輿をぼんやりと浮かび上がらせる星月夜であることよ。
お祭りが終わって出番を終えたのでしょうか、静かにひっそりとただすむお神輿を星明かりが照らしています。
【NO.5】道興
『 霧深し 鎌倉山の 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:霧が深い。鎌倉山からみる星月夜よ。
【NO.6】正岡子規
『 ちよぼちよぼと 黒きは村か 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:ちょぼちょぼと黒いものが見えているのは村だろうか、この明るい星月夜の中で。
「ちょぼちょぼ」という子規にしては珍しい擬音を使っています。星明かりの中で暗く浮かび上がる明かりの消えた集落が目に浮かぶようです。
【NO.7】芥川龍之介
『 風落ちて 曇り立ちけり 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:風が吹いてきて、くもり始めたことだ。星月夜なのに。
綺麗な星空がにわかに湿った風が吹き始めて曇っていく、その瞬間を切り取った一句です。
【NO.8】今井つる女
『 一筋の 湯の町沈め 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:一筋の湯けむりが立つ温泉地は沈んでしまえ。満点の星空に。
箱根の大平台温泉で句会が催された際に、宿に戻る途中にふと思いついたと言われている句です。「湯の町沈む」ではなく「沈め」と区切ることで、星空を際立たせています。
【NO.9】小林木の実
『 地の果ては 海のはじまり 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:あの地平線の果ては海が始まっているんだなぁ。この満点の星空の果てよ。
地平線までいっぱいに星空が広がる海辺の光景です。地、海、空と大自然を散りばめることによって、雄大な自然を表しています。
【NO.10】岡田日郎
『 絢爛(けんらん)と いふべし山の 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:絢爛とはまさにこのことをいうのだ。山の上から見る満点の星空だ。
句またがりの破調の句です。高山という澄んだ空気と人工的な明かりのない環境で見る星空は、絢爛豪華というに相応しい素晴らしさでしょう。
【NO.11】 正岡子規
『 禅寺の 門を出づれば 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:禅寺の門を出ると頭上には美しい星空が広がっていた。
室内から外に出た瞬間に広がる星空に感動している一句です。「星月夜」では月は出ていないため、純粋に星明かりに感動しています。
【NO.12】高浜虚子
『 われの星 燃えてをるなり 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:私の星が燃えている星月夜だ。
美しく輝く星月夜の中に自分の星もあると詠んでいる抽象的な一句です。あの星こそが自分なのだと決めているととらえるか、どこかにあるはずだと決まっていないと考えるかで印象が変わってきます。
【NO.13】夏目漱石
『 厳かに 松明振り行くや 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:厳かに松明を振って行く星月夜だ。
【NO.14】日野草城
『 砂山を のぼりくだりや 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:砂山を登ったり下ったりして眺める星月夜だ。
「砂山」という言葉から鳥取砂丘のような場所を連想する一句です。空を見上げながら足場の悪い砂山を歩いているどこか楽しげな様子を詠んでいます。
【NO.15】松本たかし
『 山山を 覆ひし葛や 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:山々を覆っている葛が見えるなぁ。今日は星月夜だ。
中学生向け!「星月夜」おすすめ俳句作品集【15選】
【NO.1】
『 星月夜 神楽太鼓の 響く里 』
季語:星月夜(秋)
意味:満天の星空の下で、神楽の太鼓が響く里であることよ。
【NO.2】
『 はやばやと ページを閉じる 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:早々にページを閉じてしまうことだ。外は星月夜である。
試験勉強中でしょうか、外の星空の見事さを見上げて本やノートを閉じ、見入っている様子が浮かびます。
【NO.3】
『 星月夜 二人が会えた 奇跡の夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:満点の星空の中で、二人が会えた奇跡の夜であるよ。
七夕をお題にした句になります。7月7日は曇りや雨になることが多いですが、この日は奇跡的に満点の星空となり、彦星と織姫が出会えたことを喜ぶ句です。
【NO.4】
『 仕舞ひ湯に ひびく鼻歌 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:仕舞い湯に入っている人の鼻歌が響いている星月夜だよ。
【NO.5】
『 真夜中の 水面に映る 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:真夜中のさざ波ひとつない水面に満点の星空が映っているよ。
風がない穏やかな秋の夜です。水面にはっきりと星空が映るほど星明かりが強く、また水面も澄んでいる幻想的な風景を詠んでいます。
【NO.6】
『 家なみが とぎれて気づく 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:家や街灯の灯りが途切れたことで、空に輝くばかりの星空が広がっていることに気がついた。
人工的な明かりのあふれる市街地から星明かりだけの場所に移ることで、気が付かなかった星空が一気に開けていく映像が浮かぶ句です。
【NO.7】
『 山小屋で 友と語らう 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:山小屋で登山仲間と語らっていた満点の星空よ。
山は人工的な照明がなく空気も澄んでいるため、星月夜と言うに相応しい星空が広がっていたことでしょう。その星を眺めながら気の置けない友人たちと語り合う、青春の1ページを歌っています。
【NO.8】
『 星月夜 しゅんとはんだの 溶ける音 』
季語:星月夜(秋)
意味:星空だ。しゅんしゅんというはんだが溶ける音がする。
はんだの金色や銀色などまるで星空のような輝きと、静かなしゅんしゅんという音を対比させ、まるで星空から音がしているような感覚を持たせる一句です。
【NO.9】
『 風吹いて 空が息する 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:風が吹いていて、空が息をしているような星空だ。
「空が息する」と擬人法を使っている句です。緩急付けた風の音だったのでしょうか、まるで呼吸をしているような星空を詠んでいます。
【NO.10】
『 飛行機の 灯の紛れたり 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:飛行機の警告灯の灯りが紛れている。そんな満点の星空であることよ。
【NO.11】
『 星月夜 地球は人間 だらけなり 』
季語:星月夜(秋)
意味:星の明るい夜だ。地球は人間だらけである。
【NO.12】
『 饒舌の 悔いがあと引く 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:饒舌になっておしゃべりをした悔いが後を引く星月夜だ。
誰かと話した際に、自分だけたくさん喋ってしまったと後から後悔した経験のある方もいるのではないでしょうか。帰り道に星空を見ながら反省をしている作者の様子を詠んでいます。
【NO.13】
『 星月夜 ピアスの君に 触れられず 』
季語:星月夜(秋)
意味:星の美しい夜だ。ピアスをしている君に触れられなかった。
星月夜の美しさとピアスをした「君」の美しさを対比させている一句です。ピアス自体を星の一つとして例えているのかもしれません。
【NO.14】
『 灯台を 離るる船や 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:灯台を離れる船が見える星月夜だ。
【NO.15】
『 恋バナの 更けゆくままに 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:恋バナが弾んで夜が更けていく星月夜だ。
恋バナでうっかり夜更かしをしてしまう様子を詠んだ句です。キャンプ場などの屋外で話していたのか、室内で話していたのかはわかりませんが、星月夜と添えることで時間経過を表しています。
以上、「星月夜」に関するおすすめ俳句集でした!
今回は「星月夜」に関する俳句を30句紹介しました。
星の輝きに感動する俳句から、星空を何かに例えたものまで多くの句が詠まれています。
現在では明るい満点の星空は高山でもなければお目にかかれなくなってしまいましたが、想像を広げて一句詠んでみてはいかがでしょうか。