世界でもっとも短い詩といわれている俳句。
日常のちょっとした出来事や風景、自然や季節の移り変わりを詠んだものが多く残されています。
俳句で詠まれる数々の情景の一つに、天高く清々しいイメージのある「秋の空」があります。
「秋の空」は秋の代表的な季語ですが、この他にも「秋空」「秋天」「秋の天」という言葉も同じ意味として使われています。
季節を感じる広々、真っ青、澄みきった秋の空を眺めつつ朝ジョギング。「秋天にわれがぐんぐんぐんぐんと」(高浜虚子)をふと思い出し、開放的な気分で、ぐんぐん高揚感!。「秋空」より「秋天」は広がりを、「ぐんぐん」は力強さとスピードを感じますね。 pic.twitter.com/mzRpJcBM
— 147電鉄 (@147dentetsu) November 18, 2012
今回は、そんな「秋の空」をテーマにした季語を含むおすすめ有名俳句をご紹介いたします。
目次
秋の空の有名俳句【おすすめ40選】
ここからは、「秋の空」をテーマに詠まれた有名俳句を紹介していきます。俳人ごとに並べてみましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
(1)正岡子規の俳句【6選】
(正岡子規 出典:Wikipedia)
【NO.1】
『 すさまじき 雲の走りや 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:あぁ、もう夏も終わりだなぁ。モクモクと湧き立つのではなく空に走るような雲は、もう秋の空だ。
【NO.2】
『 湖の 上に置きけり 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:湖と空の境界を見ていると、まるで湖の上に空が置かれているような、そんな幻想的な雰囲気がする。あぁ、秋だなぁ。
【NO.3】
『 絶頂や 頭の上に 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:山の頂上に来ている。頭上には、天高く秋晴れの空が広がっているよ。
【NO.4】
『 秋の空 凌雲閣に 人見ゆる 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空に向かってそびえ立つ「凌雲閣」を人々は見上げているよ。
【NO.5】
『 秋の空 清水流るゝ 思ひあり 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:ある秋晴れの日、水の清らかな川が、まるで思いを乗せて流れているようだ。
【NO.6】
『 砂の如き 雲流れゆく 朝の秋 』
季語:朝の秋(秋)
現代語訳:砂のように細かい雲が流れていく秋の朝だ。
(2)高浜虚子の俳句【6選】
(高浜虚子 出典:Wikipedia)
【NO.1】
『 秋天に 赤き筋ある 如くなり 』
季語:秋天(秋)
現代語訳: 秋の空に赤い筋があるようだなぁ。
【NO.2】
『 秋天に われがぐんぐん ぐんぐんと 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:天高く広がる秋の空を見ていると、自分もぐんぐんと昇っていくようだ。
【NO.3】
『 秋雲は 老の心に さも似たり 』
季語:秋雲(秋)
現代語訳: 秋の空にうっすらと浮かぶ白い雲は、「老の心」に似ているなぁ。
【NO.4】
『 雲あれど 無きが如くに 秋日和 』
季語:秋日和(秋)
現代語訳:雲はあるけれど、ほとんど無いに等しい秋晴れの空だなぁ。
【NO.5】
『 立秋の 雲の動きの なつかしき 』
季語:立秋(秋)
現代語訳:立秋を迎えて秋の季節が始まった。雲の動きを見ていると、かつて見たような気がして、なんだか懐かしく感じたよ。
【NO.6】
『 秋空を 二つに断てり 椎大樹 』
季語:秋空(秋)
現代語訳:秋の空を椎の大樹が真っ二つに断っている。
(3)高野素十の俳句【5選】
(高野素十 出典:Wikipedia)
【NO.1】
『 秋天の 下の四五歩を 楽しみし 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:秋空の下を歩いていると、なんだかわくわく楽しくなってきたよ。
【NO.2】
『 新しき 町新しき 秋の天 』
季語:秋の天(秋)
現代語訳:夏が終わり、新しい季節の到来だ。町も新しくなり、見上げると天高く秋の空が広がっている。
【NO.3】
『 僧達に 大本山の 秋の天 』
季語:秋の天(秋)
現代語訳:清々しい秋晴れの日、僧侶たちが次々と大本山へと向かっている。
【NO.4】
『 秋天に 大揚羽蝶 現はれし 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:ある秋の日、大揚羽蝶が突如として目の前に現れた。
【NO.5】
『 秋天の 雲の浮べる 四方かな 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:天高く広がる秋の空。四方には雲が浮かんでいるよ。
(4)夏目漱石の俳句【5選】
(夏目漱石 出典:Wikipedia)
【NO.1】
『 草山に 馬放ちけり 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空の下、草山に馬を放つ。
【NO.2】
『 我一人 行く野の末や 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空のもと、野の果てを目指し、私は一人で旅をしている。
【NO.3】
『 静なる 病に秋の 空晴れたり 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:自分は今こうして病に倒れ、静養しているが、秋晴れの清々しい空が広がっている。
【NO.4】
『 雲少し 榛名を出でぬ 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:雲が少し出ている秋の空のもと、榛名を出発したよ。
【NO.5】
『 秋の空 浅黄に澄めり 杉に斧 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:空は青緑色に澄み渡っている。遠くから杉の木を切る斧の音が聞こえてきたよ。
(5)山口誓子の俳句【5選】
(山口誓子 出典:Wikipedia)
【NO.1】
『 秋天の 下雀斑の こまやかに 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:清々しい秋晴れの日。こまかいそばかすが印象的な子がいるなぁ。
【NO.2】
『 秋の雲 天のたむろに 寄りあへる 』
季語:秋の雲(秋)
現代語訳:秋の雲が一つまた一つと寄ってきて、いつの間にか大きな塊となった。
【NO.3】
『 秋の雲 うすれて天の 瑠璃となる 』
季語:秋の雲(秋)
現代語訳:秋の空に浮かぶ白い雲は次第に薄れ、あたり一面真っ青な青空となった。
【NO.4】
『 秋の雲 はてなき瑠璃の 天をゆく 』
季語:秋の雲(秋)
現代語訳:秋の雲がどこまでも続く青空に流されていくよ。
【NO.5】
『 墓地に聞く おるがん天に 秋の雲 』
季語:秋の雲(秋)
現代語訳:墓地にオルガンの音が聞こえてきた。その音は空高く昇っていくようで、空には秋の雲が浮かんでいる。
(6)そのほかの人物の俳句【13選】
【NO.1】与謝蕪村
『 秋の空 昨日や鶴を 放ちたる 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:昨日、鶴が秋の空に向かって一斉に旅立っていったよ。
【NO.2】小林一茶
『 秋の天 小鳥ひとつの ひろがりぬ 』
季語:秋の天(秋)
現代語訳:天高く、秋の空に向かって小鳥が飛び立っていった。
【NO.3】杉田久女
『 秋空に つぶてのごとき 一羽かな 』
季語:秋空(秋)
現代語訳:秋の青空に、投げた小石のように颯爽と飛んでいく一羽の鳥がいるなぁ。
【NO.4】内藤鳴雪
『 秋の雲 ちぎりちぎれて なくなりぬ 』
季語:秋の雲(秋)
現代語訳:白くて薄い秋の雲は、次々にちぎれ、次第になくなってしまったよ。
【NO.5】山口青邨
『 旗雲と 飛行機雲と 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空、あちらには旗雲、こちらには飛行機雲が浮かんでいるよ。
【NO.6】宝井其角
『 秋の空 尾上の杉を はなれたり 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空が山の高いところにある杉から離れていく。
【NO.7】炭太祇
『 行先に 都の塔や 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:行く先には都の塔が見える秋の空だ。
【NO.8】星野立子
『 秋空へ 大きな硝子窓 一つ 』
季語:秋空(秋)
現代語訳:大きなガラス窓が1つ秋空に向かっている。
【NO.9】野沢凡兆
『 上行くと 下くる雲や 秋の天 』
季語:秋の天(秋)
現代語訳:上を行く雲と下を行く雲があるなぁ、秋の空は。
【NO.10】松本たかし
『 雲一つ 秋空深く 上りゆく 』
季語:秋空(秋)
現代語訳:雲が1つ、秋の深い空を上っていく。
【NO.11】阿部みどり女
『 秋の空 日々好日を 願ふのみ 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:秋の空に、日々良き日であることを願うのみだ。
【NO.12】飯田龍太
『 去るものは 去りまた充ちて 秋の空 』
季語:秋の空(秋)
現代語訳:去るものは去り、また充ちていく秋の空だ。
【NO.13】大高翔
『 秋天に 東京タワーと いふ背骨 』
季語:秋天(秋)
現代語訳:秋の空に東京タワーという背骨が立っている。
以上、秋の空をテーマにした有名俳句でした!
さいごに
今回は、「秋の空」のほかにも「秋空」や「秋天」などの季語が詠み込まれた俳句をご紹介してきました。
清々しく澄み渡った秋の空は、「天高く馬肥ゆる秋」という言葉があるようにとても高く感じられます。
昨日の夕方、空を見上げると……
空は高く、すっかり秋模様『天高く 馬肥ゆる秋』ですね♪
四文字熟語では『天高馬肥』『秋高馬肥』とも言うらしい♪#秋 #秋空 #空 #夕方 pic.twitter.com/ArIe9vurVs— 美月 (@taka0105net) October 15, 2016
初夏の青々とした青空も魅力的ですが、秋の空は「趣深い美しさ」を持っています。そして、その美しさは今も昔も多くの俳句に詠み込まれてきました。
美しく広がる秋の空の光景が目に浮かぶような名句ぞろいですので、じっくりと鑑賞してみてくださいね。