
現代で活躍する女性俳人「大高翔」。
彼女は現在も句作を中心にエッセイの執筆や校歌作詞など幅広く活躍しています。
今回は彼女の作品の中から『現代の国語3』(中学国語教科書)にも掲載されている「何もかも散らかして発つ夏の旅」という句を紹介していきます。
何もかも 散らかして発つ 夏の旅 pic.twitter.com/IpQ2sNYHCM
— 5269 (@midnightlanding) August 9, 2019
本記事では、「何もかも散らかして発つ夏の旅」の季語や意味・表現技法・解釈・鑑賞など徹底解説していきます。

目次
「何もかも散らかして発つ夏の旅」の季語や意味・詠まれた背景

何もかも 散らかして発つ 夏の旅
(読み方:なにもかも ちらかしてたつ なつのたび)
この句を詠んだのは、現在でも活躍中の女性俳人「大高翔(おおたかしょう)」さんです。
季語
この句の季語は「夏の旅」で、文字通り夏の季語になります。
シンプルに夏と書くことで、この句は夏の句であると印象付けることができます。

意味
この句を現代語訳すると・・・
『旅に出よう、狭い一人の部屋は散らかしたままでいい。短い夏が過ぎ去ってしまわないうちに。』
という意味になります。
この句からは、狭い部屋のなかは書類などで散らかっている状態であることが分かります。
そんな部屋のなかに作者は一人。今の季節は夏、夏らしいことなどせずにただ部屋にこもる日々…。
そのとき、ふと「そうだ、旅に出ようと。折角の夏なのだから、夏を満喫しにいかなくては。」と思い立ったのでしょう。
この句が詠まれた背景
この句の作者である「大高翔」は、句作、エッセイ、校歌作詞など幅広く活躍している俳人です。
多忙を極めており、やらなければならない仕事も山積みだと察することができます。
その忙しさのなかでも、精力的に句を作っていたとき、夏の風景に心奪われたのです。
そのとき彼女の心には、爽やかな夏を満喫したい気持ちが芽生えました。

「何もかも散らかして発つ夏の旅」の表現技法

体言止め「夏の旅」
体言止めとは、下五語を名詞または代名詞で締め括る技法のことです。
ここでは「夏の旅」がそれにあたります。
「夏の旅」と締め括ることでいかに夏を満喫できる旅に憧れ、旅立つ楽しみに溢れているかを伝えています。
句切れなし
句切れとは、意味や内容・調子の切れ目のことをいいますが、ここではその切れ目がありません。
そのため「何もかも散らかして発つ夏の旅」で一つの意味を表しており、「句切れなし」の句になります。
「何もかも散らかして発つ夏の旅」の鑑賞文

【何もかも散らかして発つ夏の旅】の句の一番の魅力は、作者の心の自由さにあります。
溜まった仕事で散らかってしまった一人の部屋。しかし、そんな状況を放り投げて旅に出る自由さが、読む人の心を引き付けます。
もし、彼女が仕事人間なら、このような行動には出ません。
どこまでも広がる夏空のように、作者は自由を求め、自由であることを選択したのです。

知っておきたい!夏休みに関する有名俳句【5選】

「夏の旅」も季語ですが、ここではより規模を大きくして夏休みを詠んだ俳句を紹介していきます。
夏の休暇については、元々盆休みなどの季語がありました。明治以降学校制度が普及して7月下旬から8月下旬まで長期休暇に入るようになり、盆休みを含む夏の長期休暇として「夏休み」が季語と認められるようになります。
俳人たちはどのような夏休みを過ごしたのでしょうか。

【NO.1】黛まどか
『 旅終へて よりB面の 夏休 』
季語:夏休(夏)
意味:度を終えて、これからはB面の夏休みが始まる。

「B面」とはレコードやカセットテープにあった区分で、「A面」がメインの曲、「B面」がサブの曲を意味しています。そのため、ここでは「終えた旅」が「A面の夏休み」であり、残りの夏休みがサブである「B面」であると表現している一句です。
【NO.2】山口青邨
『 学校は夏休 烏淋しがる 』
季語:夏休(夏)
意味:学校が夏休みだと、カラスが寂しがる。

夏休みの学校は閑散としていて、いつも響いていた子供たちの声や鳴り響くチャイムの音がありません。そのため、電線などに止まってその様子を見てきたカラスたちはさぞ寂しがっているだろう、とカラスを見て考えている面白い一句です。
【NO.3】高澤良一
『 主なき 机の海の 夏休み 』
季語:夏休み(夏)
意味:主がいない机の海だけがある夏休みだ。

夏休みは、登校日を設けて学校に来させる場合もありますが、基本的に教室には誰もいません。そのため、「主なき」机がただ海のように並ぶ空間になっています。
【NO.4】冨士谷清也
『 図書館は 学生の城 夏休 』
季語:夏休(夏)
意味:図書館は学生たちの城になる夏休みだ。

夏休みの宿題や自由研究などで、図書館にこもる学生が増えていることを「城」と表現した一句です。すぐに参考文献が取り出せること、クーラーが効いていて涼しいことなどから、図書館で宿題をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
【NO.5】鈴木六林男
『 母に習う ことの多かり 夏休み 』
季語:夏休み(夏)
意味:母に習うことが多い夏休みだ。

夏休みは学校がないため、普段はあまり見ることの無い母親の家事の様子がよく見えます。作者は母親の家事を手伝おうとしてやり方を習っているのでしょう。思ったよりもやることが多いとしみじみと実感している様子が伺えます。
作者「大高翔」の生涯について簡単に紹介!
「大高翔」は日本の女性俳人で、13才のときに「藍花」俳句会主催であった母の薦めで俳句の道に進みました。
現在は句作を中心にエッセイの執筆、校歌作詞、そして長女出産をきっかけに子どもたちや、初心者への俳句指導に精力的に取り組んでいます。
2010年から海外での俳句ワークショップを開催し、句会体験や季語の解説によって、日本文化の魅力を伝える活動も行っています。
藍花俳句会副主宰にして俳人協会幹事として俳句の魅力・素晴らしさを伝えています。
俳人の大高翔さんと一緒に、京都造形芸術大学で、短歌と俳句の講義を行いました。長時間でしたが楽しかったです。ホワイトボードに書かれているのは、ゾンビ先生付け句。 pic.twitter.com/BDIrAk3vdE
— 笹公人@「念力家族」など (@sasashihan) October 21, 2016
大高翔のそのほかの俳句

- 春の窓 ふいて故郷に 別れを告ぐ
- 藤棚の 真昼間吾(われ)を 幽閉す
- 朧夜の 香水そっと つけたして
- 夕薄暑 青い果実の やうな時間
- 秋天に 東京タワーと いふ背骨
- 黒々と 木は荒星を 捉えたり
- 一本の 詩として眠る 冬木かな







