「小満(しょうまん)」は二十四節気の1つで、現在の暦では5月21日頃を指します。
初夏も終わり、あらゆる生命が満ちていく時期であり、田植えや麦の収穫など農作物にも影響を及ぼす時期です。
本日は二十四節氣のひとつ【小満(しょうまん)】
生氣が満ちて万物が天地に満ち始める。本来は麦の穂が実りはじめ、ほっとひと安心(少し満足)という意味から小満といわれる。#氣生根 #貴船 #貴船神社 #kifune #kifunejinja #二十四節氣 #小満 #貴船神社の初夏 pic.twitter.com/mpi6JWNsgd— 貴船神社 (@kifunejinja) May 21, 2017
5月21日は【小満】
今日は「小満(しょうまん)」。二十四節気のひとつで、立夏から数えて15日目。天文学的には太陽黄経が60度になる日をさす。気候が良くなり、万物の成長が天地に満ちるという意味をもち、農作業においては田植えを始める季節の目印にもされている。#今日は何の日 pic.twitter.com/qXoP4gV31J— 地球くん (@chikyukun) May 20, 2017
今回は、「小満(しょうまん)」を季語に含む有名俳句を20句ご紹介します。
小満を季語に使った有名俳句【前半10句】
【NO.1】齊藤美規
『 小満や 一升瓶に 赤まむし 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日だなぁ。一升瓶の中に赤マムシを漬けてある。
マムシ酒を作っている最中の一句です。マムシ酒は水に漬けて老廃物を出させたあとに焼酎などに1年ほど漬けて作成しますが、暑くなってくる時期に精をつけるためにマムシ酒を買って飲んでいるのかもしれません。
【NO.2】太田嗟
『 小満の 人影ふゆる 田に畑に 』
季語:小満(夏)
意味:小満の頃は人影が増えるのだ。田んぼに畑に。
小満の5月下旬は、田植えや麦の収穫など慌ただしくなり始める時期です。冬や春の間はあまり人がいなかった田畑がにわかに活気づいている様子を詠んでいます。
【NO.3】小島雷法子
『 小満や どの田も水を 湛へをり 』
季語:小満(夏)
意味:小満だなぁ。どの田んぼも水をなみなみと湛えている。
田植えが終わり、水が張られた田んぼの様子です。水を湛えた田んぼは空を映し、美しい風景を生み出しているだろうという想像が広がります。
【NO.4】黛執
『 小満の 月へ開けおく 納屋の窓 』
季語:小満(夏)
意味:小満の頃の月が見えるように開けておく納屋の窓だ。
まるで月の光を屋内に導くために、窓を開けておくような印象を持つ句です。初夏の夜に納屋で仕事をしている最中の句でしょうか。
【NO.5】藤田あけ烏
『 小満や 馬鹿貝採りの 膝の波 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日だなぁ。バカガイを採っている最中に膝まで波が来た。
バカガイは食用の貝の一種で、主に関東地方で食されます。アサリなどと同じく潮干狩りで採れますが少し沖の方に多く生息するため、ついつい膝まで波が来る方まで行ってしまったという一句です。
【NO.6】森澄雄
『 小満や みどりさしたる 寺の屋根 』
季語:小満(夏)
意味:小満だなぁ。緑がさしている寺の屋根だ。
「みどりさしたる」については、コケなどで緑に見えているという解釈と、周囲の木々の緑が屋根に映えているという解釈の2つがあります。どこを見ても美しい緑が楽しめるお寺なのでしょう。
【NO.7】草間時彦
『 小満の 風を青しと 遊びけり 』
季語:小満(夏)
意味:小満の風は青いなぁと遊んでいる。
【NO.8】星野麥丘人
『 小満や 箭竹(やだけ)篠竹(しのだけ) 生えしめて 』
季語:小満(夏)
意味:小満だなぁ。箭竹や篠竹が生えてきた。
「箭竹」とはイネ科の植物で、4mほどに成長しかつては矢の材料として使われました。「篠竹」は根笹と呼ばれるイネ科の植物の総称で、鬱蒼と生い茂る山野を彩る草です。
【NO.9】鈴木しげを
『 山葵田の 小満の水 余りけり 』
季語:小満(夏)
意味:ワサビ田にある水が余っているように見える小満の日だ。
ワサビ田は水の綺麗な清流で育てられます。雪解け水や雨の水で豊富な水量のワサビ田を見て、あふれてしまいそうだという感想を述べた一句です。
【NO.10】池田秀水
『 小満の 身を大いなる 樹下に容れ 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日の日差しから守るために、体を大きな木の下の木陰に入れた。
「大いなる」と誇張しているところがユーモアのある句です。暑くなってくる時期ですが風はまだそこまで暑くないため、木陰に入ることで涼しさを感じられることを称えています。
小満を季語に使った有名俳句【後半10句】
【NO.11】岡田詩音
『 小満や あやめにまじる 薄荷草 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日だなぁ。アヤメにまじってハッカが混じっている。
「薄荷草(はっかそう)」とはハッカのことで、アヤメに混じってスっとする独特の香りがしたのでしょう。ハッカは6月に収穫されることが多いですが、このハッカはアヤメに混じって生えているため種が飛ばされてきたものだと考えられます。
【NO.12】鳥居おさむ
『 小満や 川うごかして 手を洗ふ 』
季語:小満(夏)
意味:小満だなぁ。川の水を動かして手を洗おう。
少し暑い日に川岸を歩いている様子が浮かんできます。川の流れを動かして手を洗いたいなぁというユーモアのある句です。
【NO.13】山西雅子
『 小満の みるみる涙 湧く子かな 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日に、みるみる涙が湧いてくる子がいたことだ。
【NO.14】柿本多映
『 小満の まるき柱を 抱きをり 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日の丸木柱を抱いている。
「まるき柱」は「丸い柱」とも「丸木柱」とも取れる単語です。丸木柱とは木を切ったときのまま立てられた柱のことで、自然のおもむきをそのまま表しています。
【NO.15】栗栖恵通子
『 小満の湯桶に 泡立ちにけり 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日の湯桶に泡が立っている。
「湯桶に泡」の部分が句またがりになっています。湯桶にはお風呂で使う桶、茶道で参加者の手を温めるための道具、蕎麦湯などを飲むための容器の3つの意味があり、どの意味で使われるかによって受ける感覚が変わってくる句です。
【NO.16】能村研三
『 小満や 旅で借りたる 自転車に 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日だなぁ。宿で借りた自転車に乗って実感する。
宿で自転車を借りてサイクリングをしている時の句です。小満の頃は初夏の爽やかな陽気で梅雨が始まる前のため、絶好のサイクリング日和だったことでしょう。
【NO.17】伊藤白潮
『 小満の 佛花あれこれ 見つくらふ 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日に仏花をあれこれと見繕っている。
小満の日にお墓参りに行こうとしているときの一句です。春のお彼岸は過ぎていますが、四十九日の法要などが行われていたのでしょうか。
【NO.18】平間眞木子
『 小満や 母に八十二歳の日 』
季語:小満(夏)
意味:小満の日だなぁ。私の母は82歳の誕生日だ。
小満という日にちは5月21日から23日くらいまで毎年変動します。この年はちょうど母親の誕生日だったということが「小満や」という感嘆から読み取れます。
【NO.19】柿沼盟子
『 小満や 四筋に折りて 神籤結ふ 』
季語:小満(夏)
意味:小満だなぁ。4つに折っておみくじを枝に結んでおこう。
ちょうど神社によっておみくじを引いた時の句です。結果があまり良くなかったのか、境内に結って帰ろうとしています。
【NO.20】折橋綾子
『 小満の ひと日始まる 空真青 』
季語:小満(夏)
意味:小満の一日が始まる空は真っ青だ。
初夏の青空をシンプルに表しています。一日の爽やかな始まりを感じる一句です。
以上、小満に関する有名俳句でした!
今回は、小満に関する有名な俳句を20句ご紹介しました。
梅雨の直前の爽やかな陽気ということで、自然の様子を詠む俳句が多いのが印象的です。
年によっては天候があまりよくない年もありますが、初夏の心地よい風景を俳句に詠んでみてください。