【金子兜太の有名俳句 20選】埼玉県出身の俳人!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の韻律を踏む十七音の短文の詩で、季節を表す季語を詠むことによってさまざまな風景を表します。

 

江戸時代から始まった俳句は明治大正期の近代俳句を経て、戦後も現代俳句として隆盛しました。

 

今回は、昭和から平成にかけて活躍した「金子兜太(かねこ とうた)」の有名俳句を20句紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

金子兜太の人物像や作風

(2017年4月ごろの金子兜太氏 出典:Wikipedia

 

金子兜太(かねこ とうた)は、1919年(大正8年)に埼玉県の小川町に生まれました。

 

父親も開業医ながら俳号を持つ俳人で、水原秋桜子の「馬酔木」に参加しています。そんな父の影響もあり高校在学中に句作を始めて全国学生俳誌「成層圏」に参加、大学進学後には加藤楸邨の「寒雷」に投句し、加藤楸邨に師事しています。

 

1943年から従軍しトラック島など激戦区に配属され、捕虜から解放される1946年までを軍人として過ごします。翌1947年には日本銀行に復職し、1974年まで勤めあげました。復員後に「寒雷」へも復帰して句作を再開して以降は、社会性俳句運動へと傾倒していきます。

 

1962年には俳句雑誌「海程」を創刊、1983年には現代俳句協会の会長に、1987年には朝日俳壇の選者となるなど精力的に活動を続け、2018年(平成30年)に亡くなっています。

 

 

金子兜太の作風は、骨太の叙情、ダイナミックなスローガン調の文体と呼ばれ、同時代の飯田龍太と並んで戦後の現代俳句を牽引しました。

 

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戦争体験からくる社会性俳句や、小林一茶や種田山頭火といった「漂泊詩人」の再評価など、俳句論の発展にも多くの貢献をしています。

 

金子兜太の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 人体冷えて 東北白い 花盛り 』

季語:花盛り(春)

意味:人の体が冷え切るほど寒いが、東北地方は白い花が咲き誇っている。

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この句は作者の自解で、5月の初めにリンゴや桜の白い花が一斉に咲いている様子を見たときの句であると語っています。花の俳句に「人体」と詠んだことについては、農作業の大変さを表現したと解説しています。

【NO.2】

『 梅咲いて 庭中に青鮫が 来ている 』

季語:梅(春)

意味:梅が咲いて、庭中に青いサメが来ているような青い空と春の空気だ。

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梅と青鮫という全く関係のない生物を同時に詠むことで、絵画のようなインパクトを読む人に与える句です。作者の自解では「梅の花が咲く春の生命力が青い海のように感じ、強い海の生物である鮫が泳いでいるように思えた」と語っています。

【NO.3】

『 猪(しし)が来て 空気を食べる 春の峠 』

季語:春(春)

意味:イノシシが来て空気を食べる仕草をしている春の峠道だ。

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イノシシは農家の畑を荒らすため、さまざまな手段をとって退けられています。この句では春の峠道に出没していますが、春ののんびりとした空気に当てられたのか空中に向かってなにか仕草をしているようです。

【NO.4】

『 山桜の 家で児を産み 銅色(あかがねいろ) 』

季語:山桜(春)

意味:山桜の咲く家で子供を産んだ女性は日に焼けた銅色をしている。

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「銅色(あかがねいろ)」とは銅のような光沢のある赤茶色とされていて、ここではよく日に焼けていることを表現しています。人工的に植えるソメイヨシノではなく山桜か咲いていることから、山中で生活をしている一家を詠んだものでしょう。

【NO.5】

『 三月十日も 十一日も 鳥帰る 』

季語:鳥帰る(春)

意味:310日も、311日も変わらず鳥たちは帰っていくのだ。

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3月10日は東京大空襲、311日は東日本大震災が起こったことを踏まえている句です。人間の生活に関係なく鳥たちは春という季節を受けて帰っていくという自然の営みと対比させています。

【NO.6】

『 水脈(みお)の果て 炎天の墓碑を 置きて去る 』

季語:炎天(夏)

意味:遠い海の果て、炎天下に立つ墓碑を置いて去っていく。

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この句は作者が戦時中に派兵されていたトラック島から引き上げる時に作られました。トラック島で亡くなっていった戦友たちを置き去りにして去っていく悲しみが「果て」という表現から感じ取れます。

【NO.7】

『 おおかみに 蛍が一つ 付いていた 』

季語:蛍(夏)

意味:オオカミに蛍が1匹付いてきていた。

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日本におけるオオカミはすでに絶滅していて、蛍もかなり数を減らしています。そんな両者を組み合わせることで、幻想の世界を表現している一句です。

【NO.8】

『 夏の山国 母いてわれを 与太(よた)という 』

季語:夏(夏)

意味:夏の山の中の故郷には母がいて、いまだに私を「与太」と呼ぶのだ。

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「与太(よた)」とは愚か者という意味です。この句が詠まれたときの作者の母親は100歳をこえていたと言われており、いくつになっても自分の子は子のままだという親子の愛情を感じます。

【NO.9】

『 「夕べに白骨」などと 冷や酒は飲まぬ 』

季語:冷や酒(夏)

意味:「夕べに白骨」などという説法に感じる悲しみを、冷や酒で紛らわせることはしないぞ。

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この句は盟友であった原子公平の追悼句です。「夕べに白骨」とは仏教の説法で出てくるフレーズで人はいずれ必ず死ぬという意味ですが、作者の死生観とは相容れないのかお酒で悲しみを誤魔化すことはしないと言い切っています。

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長崎で行われているマラソン大会を見て、ランナーが走っている様子を爆心地にいた人たちと重ねてみている句です。どれだけ復興したとしても確かに歴史として刻まれているという教訓めいた句でもあります。

 

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作者は銀行で働いていたため、自分自身の実感もこもっている一句です。朝早くから明かりがついている銀行をホタルイカの光に例えています。

【NO.12】

『 曼珠沙華(まんじゅしゃげ) どれも腹出し 秩父の子 』

季語:曼珠沙華(秋)

意味:曼珠沙華が咲いている。どの子も腹を出して遊んでいる秩父の地だ。

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曼珠沙華(まんじゅしゃげ)という真っ赤な花に生命力を見出している一句です。秩父の子供たちは秋になってもお腹を出して元気いっぱいに遊んでいると喜んでいます。

【NO.13】

『 霧の村 石を投(ほう)らば 父母散らん 』

季語:霧(秋)

意味:あの霧の村に石を放り投げれば、父母の幻影は散ってしまうのだろう。

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霧の中の村という風景から連想された空想の一句です。自分がかつて両親と過ごした村がそっくりそのまま霧の中にあるが、石という現実を投げ込めばこの空想は消えてしまうのだろうなと考えています。

【NO.14】

『 鰯雲 故郷の竈火 いま燃ゆらん 』

季語:鰯雲(秋)

意味:鰯雲が出ている。故郷では竈の火が今も燃えているのだろう。

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鰯雲から故郷を連想している望郷の句です。今では竈がある家は少なくなりましたが、作者にとっては故郷といえばごうごうと燃える竈の火のイメージだったのでしょう。

【NO.15】

『 星がおちない おちないとおもう 秋の宿 』

季語:秋(秋)

意味:星がなかなか落ちない、落ちないと思う秋の宿の出来事だ。

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秋は流星群が見られる時期であり、この句ではその流星を待ち望んでいます。宿泊先でちょうど見頃をむかえたのか、今か今かと星が流れていくのを待っている人々の様子が見えるようです。

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冬の関東平野は乾燥した風が吹き、火事が起こりやすい地域です。実際には首都圏は人工の明かりがあり真っ暗闇になりませんが、関東平野という暗く広大な平野に1つだけ火事の火が見えている絵画のような句になっています。

【NO.17】

『 冬旱(ふゆひでり) 眼鏡を置けば 陽が集う 』

季語:冬旱(冬)

意味:冬の晴れ間だ。メガネを置くとレンズに陽の光が集まってくる。

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虫眼鏡で火をつける実験をやった事がある人も多いでしょう。そこまでの熱ではありませんが、日が照っているところにメガネを置くと、レンズを通して光が集まってきます。

【NO.18】

『 マッチの軸頭 そろえて冬逞し(たくまし) 』

季語:冬(冬)

意味:マッチの軸頭を揃えて冬でもたくましく生きていく。

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最近では火をつけるのにマッチを使用する人はほとんどいないかもしれません。かつてはガスの点火などに使ったため、マッチを切らさないように用心していた様子を詠んだ句です。

【NO.19】

『 枯草に キャラメルの箱 河あわれ 』

季語:枯草(冬)

意味:枯れ草の中にキャラメルの箱が落ちている。河岸で子供たちが遊んでいたのだなぁ。

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ここで詠まれている「あわれ」とは「憐れみ」ではなく、「しみじみと感じ入る」という意味だと言われています。キャラメルを食べながら遊んだだろう子供たちの痕跡を感じ取っている表現です。

【NO.20】

『 陽の柔わら(やわら) 歩ききれない 遠い家 』

季語:無季

意味:陽の光が柔らかくさしている。遠いあの家まで歩ききれないなぁ。

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この句は作者の絶筆の句の1つと言われていて、亡くなった後に発表されました。かつて住んでいた家の夢を見たのか、望郷の念が込められている一句です。

以上、金子兜太の有名俳句20選でした!

 

 

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今回は、金子兜太の作風や人物像、有名俳句を20句紹介しました。

伝統的な俳句から無季の自由律俳句まで自在に詠んだ作風は現代俳壇に大きな影響を与えています。
現代俳句には近代俳句に負けず劣らず多くの作風があるので、ぜひ読み比べてみてください。