【花火は夏の季語?秋の季語?】簡単にわかりやすく解説!!季語の分類と考え方など

 

俳句は五七五の十七音の韻律と、季節を表す季語を詠むというルールで成立する文学です。

 

季語の季節や表す天候や行事、動植物を理解することは、俳句を詠む上で重要な要素の1つになっています。

 

今回は、「花火」という季語が夏の季語なのか秋の季語なのかについてわかりやすく解説をしていきます。

 

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

花火は夏と秋の両方で使える季語!

 

花火は古くから歳時記では「秋の季語」とされています。

 

理由としては、江戸時代にお盆の送り火や秋祭りの奉納として打ち上げられたことが挙げられます。旧暦のお盆は秋のため、花火も秋の季語とされてきました。

 

 (歌川広重『名所江戸百景』に描かれた19世紀中頃の両国花火 出典:Wikipedia)

 

しかし、現在の季節感では8月は夏であること、「納涼花火大会」という催しも多く夏のイメージが強いことから、夏の季語であるとする歳時記も登場しています。

 

他にも、打ち上げ花火は秋、手で持つ花火は夏など花火の種類によって細かく季節が分かれていることもあり、歳時記の作者によって見解が異なる状況です。

 

現在では「花火」という季語に関しては厳密に秋の季語とするのではなく、作者の裁量によって、どちらの季節を表すか決めるというのが主流といえるでしょう。

 

俳句仙人

迷ってしまう場合は季重なりになりますが、夏であることを明示する季語も一緒に詠んでみてはいかがでしょうか。

 

知っておきたい!花火に関連する季語【5選】

揚花火(秋の季語)

「揚花火」とは、一般的な打ち上げ花火のことです。

 

手持ち花火とは季語の季節が変わってくるため区別するために使われます。

 

また、風景を思い浮かべやすいことや韻律の調整などでも、通常の「花火」ではなく、こちらの季語を使うこともあるので覚えておきましょう。

 

大花火(夏の季語)

「大花火」とは、大きな花火のことを意味しますが、隅田川花火大会のことも指します。

 

隅田川花火大会は江戸時代には隅田川の川開きである旧暦528日に行われたとされるため、季語としては夏になっています。現在の隅田川花火大会は7月の最終土曜日に行われています。

 

開催時期が江戸時代とは離れているため少しわかりにくい季語ですので、花火大会の意味で使う時は注意しましょう。

 

遠花火(秋の季語)

「遠花火」とは、遠くであがった花火のことです。

 

花火大会など近くで見るもののほかに、遠くで打ち上げられているのを見る場合に使用します。

 

近くで見る大きな花火とは違い、風景に紛れるように小さく見える様子を詠むときに使われることが多く、他のものとの対比に詠まれることが多い印象です。

 

花火船(秋の季語)

「花火船」とは、花火を見物するために川に浮かべられた船のことで、江戸時代から存在していました。

 

現在でも隅田川などで屋形船の上からの花火見物があるように、現在まで続く習慣になっています。

 

手花火(夏の季語)

花火の中でも、手で持って遊ぶ手持ち花火を意味する「手花火」は夏の季語になります。

 

打ち上げ花火がお盆頃に行われる行事であったのとは違い、民衆の遊びである手持ち花火は現在と同じく夏の遊びと認識されていたためです。

 

子季語には「線香花火」「庭花火」「鼠花火」などもあるため、家庭で遊ぶ手持ちの花火は夏の季語として迷わず使用して良いでしょう。

 

花火について詠んだ有名俳句【5選】

 

【NO.1】与謝蕪村

『 花火せよ 淀の御茶屋の 夕月夜 』

季語:花火(秋)

意味:花火をしておくれ。淀のお茶屋で見る夕月夜にはよく合うだろう。

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お茶屋で一服している最中に見た夕月夜の見事さに、ここに花火が上がればどんなに素晴らしいだろうかと考えている一句です。街灯がなかった江戸時代ではさぞ明るく花火が見えたことでしょう。

 

【NO.2】高野素十

『 大花火 重なり開く 明るさよ 』

季語:大花火(夏)

意味:隅田川に打ち上がった花火が重なって開く明るさよ。

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「大花火」とは江戸時代に始まった隅田川で開かれる花火大会のことで、現在では7月の最終土曜日に行われています。いくつもの花火が重なることで一瞬明るくなる様子を詠んだ句です。

 

【NO.3】正岡子規

『 木の末に 遠くの花火 開きけり 』

季語:遠くの花火/遠花火(秋)

意味:木の間から遠くの花火が上がっているのが見える。

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「遠花火」でひとつの季語になります。木の枝の隙間から見えるという写実的な描写から、小さく花開く花火の様子が見えるようです。

 

【NO.4】後藤夜半

『 手花火の こぼす火の色 水の色 』

季語:手花火(夏)

意味:手持ち花火がこぼす火花の色が水に一瞬うつっている。

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花火をする時は消火のための水を用意します。そんな水の中に花火の火花の色がうつったことで、「火」と「水」という相反するものに同じ色があることを面白がっている一句です。

 

【NO.5】長谷川かな女

『 揚花火 二階灯して すぐ消して 』

季語:揚花火(秋)

意味:打ち上げ花火の光が、2階に灯りをともしてすぐに消えていく。

俳句仙人

花火を屋内から見る時は暗くしてよく見えるようにする人も多いでしょう。花火の光が一瞬だけ作者のいる2階を照らして消えていく様子に、花火の美しさが感じ取れます。

 

さいごに

 

今回は、「花火」という季語の季節や解説、花火関連の有名俳句を中心に解説してきました。

 

花火は打ち上げられる季節が旧暦と新暦で区分が異なること、現在での夏のイベントというイメージが強いことから、歳時記によって季節が異なるめずらしい季語です。

 

いつ、どのような風景を見て花火を使った俳句を詠みたくなったのか、きちんと意識して詠んでみましょう。

 

俳句仙人

最後まで読んでいただきありがとうございました。