「さくらんぼ」は俳句の世界では「桜桃の実」とも表現される夏の季語です。
現在食べられているさくらんぼは「セイヨウミザクラ」という種類で、明治以降に日本に導入されました。
今回は、「さくらんぼ(桜桃)」を季語に含む俳句を20句紹介していきます。
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桜桃の木蔭明るき布の靴
きれのくつ
桜桃のきみを憶へり北の宿樹の旅は終て桜桃の朱きかな
たびははて
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さくらんぼ(桜桃)の有名俳句【10選】
【NO.1】高浜虚子
『 茎右往左往 菓子器のさくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:茎が右往左往している。果物が盛られた器のさくらんぼたちよ。
「菓子」とは水菓子のことで、果物を意味しています。器に盛られたさくらんぼの茎があちこちに飛び出ている様子を右往左往と表現するユーモアのある一句です。
【NO.2】波多野爽波
『 美しや さくらんぼうも 夜の雨も 』
季語:さくらんぼう(夏)
意味:美しいなぁ。赤いさくらんぼも夜の雨も。
「美しや」と冒頭に感嘆を持ってくることによって、さくらんぼの赤と夜の雨がより強調して対比されています。日の光が当たる昼ではなく夜を詠んだところに作者の美意識へのこだわりが伺えます。
【NO.3】原石鼎
『 山風に あらはれ見ゆる 桜んぼ 』
季語:桜んぼ(夏)
意味:山風に葉が揺られて現れて見えるさくらんぼだ。
一見緑色の葉しかないように見える桜の木が風で揺れて、葉の間から赤いさくらんぼが見えている様子を詠んでいます。栽培用のものではなく山の中で見つけた驚きを詠んだ句です。
【NO.4】高橋淡路女
『 さくらんぼ ふくみ語るや あどけなう 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:さくらんぼを口の中に含んであれこれお喋りしているなぁ。あどけなくてかわいらしい。
子供がさくらんぼを食べながら何かを話している様子を微笑ましく見守っています。「食べてからにしなさい」という親の注意も聞こえてくるような一句です。
【NO.5】右城暮石
『 一つづつ 灯を受け止めて さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:1つずつ灯りを受け止めるように赤く輝くさくらんぼだ。
つやつやとした赤いさくらんぼの実が、灯りを受け止めて輝いている様子が浮かんでくる句です。箱詰めされたさくらんぼと木になっている状態のさくらんぼのどちらを連想するか人によって変わってくる表現になっています。
【NO.6】種田山頭火
『 兄がもげば 妹がひらふ さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:兄がもげば妹が拾っていくさくらんぼだ。
兄が戯れにもいでいるのか、妹にあげようとしているのか、微笑ましい兄妹の様子を詠んでいます。取った実は2人でこっそりと食べていたのでしょうか。
【NO.7】伊丹三樹彦
『 玉手箱風なり 開ければさくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:玉手箱のような箱だ。開ければさくらんぼがぎっしりと詰まっている。
贈答用のさくらんぼをもらい、まるで玉手箱のような箱だと感嘆しています。玉手箱は開けると白い煙がでてきますが、この箱は開けると真っ赤なさくらんぼがぎっしりと詰まっている嬉しい贈り物です。
【NO.8】久保田万太郎
『 この恋よ おもひきるべき さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:ああ、この恋よ。思い切るべきなのだろうなぁ、甘酸っぱいさくらんぼのような恋よ。
未練のある甘酸っぱい恋心と、甘酸っぱい味のさくらんぼを掛けている句です。初句に「この恋よ」と言い切ることで未だに引きずっている様子が伺える句です。
【NO.9】日野草城
『 くちびるに 触れてつぶらや さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:くちびるに触れてつぶらに見えるさくらんぼだ。
女性の仕草を詠むことが得意な作者なので、ここでさくらんぼを食べているのも女性かもしれません。赤いくちびるとさくらんぼの両方をつややかと表現しているのだとすると、とても艶かしい句になります。
【NO.10】池田澄子
『 恋文の 起承転転 さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:恋文が起承転転ととりとめがない。さくらんぼのように転がっていく。
「起承転結」ではなくよく見ると「転転」となっています。ラブレターがとりとめもない話題に転がって結論が出ない様子を表しています。
さくらんぼ(桜桃)の一般俳句ネタ集【10選】
【NO.1】
『 桜桃 落ちて野原を 彩るや 』
季語:桜桃(夏)
意味:さくらんぼが地に落ちて野原を赤く彩っているなぁ。
緑の草原にちらほらと落ちているさくらんぼが色を添えています。強い風が吹いたのか、熟しきって落ちたのか、想像が膨らむ句ぇす。
【NO.2】
『 宣言は せずともちゃんと さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:宣言はしなくてもちゃんとさくらんぼになるんだなぁ。
桜の花が咲いている時はさくらんぼになるとは思わないけれど、ちゃんとさくらんぼになるんだなという感慨深さを詠んでいます。セイヨウミザクラも薄ピンクの綺麗な花が咲く桜です。
【NO.3】
『 ペンションの 朝の紅茶と さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:ペンションで過ごす朝は紅茶を飲んでさくらんぼを食べよう。
ペンションという非日常の空間で過ごす優雅な朝の様子を詠んでいます。甘酸っぱいさくらんぼを食べながら紅茶を飲む朝の風景は、リゾート旅行の最中のようです。
【NO.4】
『 山形の 日差し届いた さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:山形の日差しが届いたようなさくらんぼだ。
さくらんぼの赤い実を、産地の山形県の日差しに例えています。真っ赤な実が太陽の光を連想させるわかりやすい一句です。
【NO.5】
『 帽子にも カバンも靴も さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:帽子にもカバンにも靴にもさくらんぼをつけていく。
帽子の飾りやキーホルダー、靴にもさくらんぼの意匠の飾りや模様を付けている様子を詠んでいます。さくらんぼで揃えたコーディネートなのか、さくらんぼ好きな人なのか、かわいらしい雰囲気の句です。
【NO.6】
『 クリームソーダ さくらんぼの赤 強すぎる 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:クリームソーダの黄緑色を見ていると、上に乗っているさくらんぼの赤色が強すぎるなぁ。
クリームソーダといえば鮮やかな黄緑のソーダに白いアイス、赤いさくらんぼの取り合わせが定番です。黄緑と白というパステルカラーに比べてさくらんぼは原色の赤なので「強すぎる」と表現しています。
【NO.7】
『 初物を 猫にも見せて さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:初物のさくらんぼを猫にも見せてみる。
頂きものの初物のさくらんぼを思わず猫にも見せてみるという、ペットを飼っている人には経験がありそうな一句です。さくらんぼは猫も食べられる果実とされているので、実際に一緒に食べたのかもしれません。
【NO.8】
『 己れ(おのれ)への 褒美さくらんぼ 一パック 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:私へのご褒美としてさくらんぼを一パック買おう。
頑張った自分へのご褒美として、いつもなかなか買えないさくらんぼを買って食べています。スーパーで毎日見かけて気になっていた様子が伺えます。
【NO.9】
『 童心に かえる魔法の さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:童心にかえるような魔法のさくらんぼだ。
小さい頃に食べたさくらんぼに特別な思い出があるのでしょう。さくらんぼを食べると小さかった頃を思い出せる魔法の食べ物だと感嘆しています。
【NO.10】
『 頂上や 弁当箱の さくらんぼ 』
季語:さくらんぼ(夏)
意味:山を登りきった頂上だ。弁当箱を開けるとさくらんぼが入っている。
お弁当持参で山登りをした時の一句です。デザートの場所にさくらんぼが入っていて、疲れた体に甘酸っぱいさくらんぼがぴったりのメニューになっています。
以上、さくらんぼ(桜桃)を季語に含む俳句でした!
今回は、さくらんぼ(桜桃)に関する俳句20句紹介してきました。
夏の味覚であるさくらんぼは赤い色や甘酸っぱさなど視覚や味覚をよく詠まれる特徴があります。
さくらんぼを見かけた時はぜひ一句詠んでみてください。