立冬は二十四節気の一つで、冬の始まりとされる日です。
現在の暦では11月8日頃で、冬の気配がだんだんと強くなってきます。「冬来る」「冬に入る」「冬立つ」「今朝の冬」なども立冬を表す季語です。
おはようございます。
立冬を終え暦の上では冬に入りましたが、まだまだ紅葉が美しい季節。冬と言うよりは秋といった印象が強いですね。その一方で北海道では雪など確実に冬に近づいており、日が暮れるが早くなってまいりました。今朝は快晴、放射冷却で寒い朝です。皆さん、今日も1日頑張りましょうね pic.twitter.com/hlm770VqWp— る〜あ (@mk2gx100) November 8, 2017
今回は、「立冬(りっとう)」に関するおすすめ有名俳句を20句ご紹介します。
「立冬」に関するおすすめ有名俳句【前半10句】
【NO.1】与謝蕪村
『 けさの冬 よき毛衣を 得たりけり 』
季語:けさの冬(冬)
意味:立冬の朝だ。あたたかく良い毛皮の服を手に入れられた。
これから寒くなる時期をむかえて、防寒具として最適なあたたかい服を手に入れられた喜びを詠んでいます。江戸時代の暮らしが垣間見える一句です。
【NO.2】上島鬼貫
『 あらたのし 冬たつ窓の 釜の音 』
季語:冬たつ(冬)
意味:ああ楽しいなぁ。立冬の日の窓から外を見ながら、火にかけた釜の音を聞くのは。
寒くなってきた日に、火にかけたあたたかい食事を作っているとどこか楽しく幸せな気分になります。最近では釜は使われませんが、今でいうと鍋で煮込んでいる音になるでしょうか。
【NO.3】正岡子規
『 菊の香や 月夜ながらに 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:菊の香りがするなぁ。よい月夜であるけれど、暦の上ではもう立冬だ。
「菊」「月」と秋の季語が並んでいますが、秋を思わせるのに季節は「冬に入る」という主題のため、季語は立冬になります。3つの季語が重なっていますが、効果的に冬であることを強調する表現です。
【NO.4】正岡子規
『 冬立つや 背中合わせの 宮と寺 』
季語:冬立つ(冬)
意味:立冬の日だ。背中合わせのように神社とお寺が建っている。
江戸時代までは神社とお寺が同じところに建てられる神仏習合が行われていました。今でもその名残が残っている場所がありますが、この句の舞台もそういった寺社だったのでしょう。
【NO.5】飯田蛇笏
『 凪ぎわたる 地はうす眼して 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:全てが静かに凪いでいる。地は薄目で見るようにして立冬を迎えた。
冬の風雪の激しい空ではなく、凪のように静かな空であることを「凪ぎわたる」の5音で示しています。そんな凪ぎわたる空でも、大地は冬の気配を鋭敏に感じ取ったように薄目をあけているという擬人化を使用した句です。
【NO.6】河東碧梧桐
『 出羽人も 知らぬ山見ゆ 今朝の冬 』
季語:今朝の冬(冬)
意味:出羽の国の人たちも名前を知らないような山が見えた。空気が澄み渡って遠くまで見える立冬の日よ。
空気が湿っている間は見えないような山が、冬に入って遠くまで見えるようになったという意味の句です。普段は見えていない山のため、地元の人でも山の名前がわからないこともあるでしょう。
【NO.7】村上鬼城
『 蜂の巣の こはれて落ちぬ 今朝の冬 』
季語:今朝の冬(冬)
意味:蜂の巣が壊れて落ちた立冬の朝である。
【NO.8】日野草城
『 句を作る こころ戻りぬ 冬立ちぬ 』
季語:冬立ちぬ(冬)
意味:俳句を作ろうという心が戻った立冬の日であることだ。
詩作の意欲を無くしていたところに、季節の変わり目を実感する出来事があったのでしょう。暦の上でも一区切りということで、決意表明をしているような句です。
【NO.9】高浜年尾
『 庭芝の 今が手入や 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:庭の芝を今こそ手入れしよう。立冬の日だ。
芝は寒い地域の芝と暖かい地域の芝で冬の間の手入れが変わってきます。枯れてしまう暖かい地域の芝は手入れが必要ないため、緑を保っている寒い地域の芝を植えていたのでしょう。
【NO.10】山口青邨
『 立冬や 手紙を書けば 手紙来る 』
季語:立冬(冬)
意味:立冬の日が来たなぁ。手紙を書けば、相手からも手紙が来る。
メールやチャットですぐに要件を伝えられる現在とは違い、当時は手紙が交流の主流でした。冬の訪れに挨拶として手紙を送れば、相手方も同じことを考えて手紙を送っていたのですぐに届いたようです。
「立冬」に関するおすすめ有名俳句【後半10句】
【NO.11】長谷川かな女
『 立冬の 火焚けば映る 民家かな 』
季語:立冬(冬)
意味:立冬の日に火を焚くと、夜が短くなって暗くなっているので明かりに映える民家であることだ。
火を焚いている場所が屋内か屋外かで見えてくる風景が変わってくる句です。暗い夜に映えているので、屋内で火を焚いて窓から見える光が浮かび上がっている印象を受けます。
【NO.12】室生犀星
『 冬に入る 椿の葉つや まぶしかも 』
季語:冬に入る(冬)
意味:立冬をむかえた。常緑樹である椿の葉の艶やかさがまぶしいことだ。
冬をむかえて落葉樹の葉が紅葉していく中で、艶やかな緑色を保つ椿の葉をまぶしそうに見ています。季重なりですが、冬をむかえているのに緑の葉であるということから立冬が季語です。
【NO.13】林信子
『 墨を磨る 心しづかに 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:墨をすっていると心が静まるのを感じる。立冬の日だ。
【NO.14】阿部みどり女
『 立冬の 川を彩る 胡桃の黄 』
季語:立冬(冬)
意味:立冬をむかえた川を彩るように胡桃の黄色が見える。
胡桃の木は紅葉するため、彩りとして葉を詠んでいるように読めます。しかし、胡桃の実は水に浮いて流されていくので、実際に胡桃の黄色い実が流されていたのかもしれません。
【NO.15】久保田万太郎
『 今朝の冬 薪したたかに 燃えにけり 』
季語:今朝の冬(冬)
意味:立冬の朝だ。薪はしたたかに燃えている。
冬の始まりをむかえ、室内も寒くなっています。寒さに負けずに薪が燃えているところに、火のあたたかさと強さを感じている句です。
【NO.16】高木晴子
『 冬立つ日 いと新しき 思ひする 』
季語:冬立つ(冬)
意味:立冬の日だ。心身ともにとても新しい気持ちがするなぁ。
季節の変わり目に身を引きしめるのは定番の表現ですが、寒くなるとよりいっそう引きしまる感覚がします。新しい季節に心身を入れ替えて挑む決意を感じるシンプルな表現です。
【NO.17】高野素十
『 この池の 浮葉の数や 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:この池に浮かんでいる浮葉の数のなんと少ないことよ。立冬の日だなぁ。
浮葉とは蓮のように水の上に葉を浮かべる植物のことです。寒さに強い品種であれば越冬できますが、そうでない種類は葉が枯れてしまうため数が少なくなります。
【NO.18】臼田亞浪
『 立冬や とも枯れしたる 藪からし 』
季語:立冬(冬)
意味:立冬だなぁ。枯れた草木と共に枯れている薮からしよ。
「薮からし」とは夏の季語にもなっているツル性の植物で、ほかの植物に絡んで繁殖します。そんな薮からしも、冬になって巻きついた植物が枯れてしまうと一緒になって枯れてしまっている様子を詠んだ句です。
【NO.19】飯田龍太
『 立冬や 紺の上衣に 紺の闇 』
季語:立冬(冬)
意味:立冬の日だなぁ。紺色の上着に紺色の闇が見える。
紺色の上着を来て夜中に歩いていると、同じような色のために見えにくくなるということが現在でも良くあります。良く見えないと直球で詠むのではなく、紺色という色を繰り返すことで、より色の濃さを際立たせる表現です。
【NO.20】鈴木真砂女
『 熔岩に 生ふ一握の草 冬に入る 』
季語:冬に入る(冬)
意味:熔岩に生えているひと握りの草も立冬をむかえた。
熔岩地帯に最初に生えてくるのは苔類だと言われています。ここでは草が生えているように読めるので、苔が覆っている熔岩の中に一際目立つ草が生えていたのでしょう。
以上、立冬に関する有名俳句でした!
今回は、立冬に関する有名な俳句を20句ご紹介してきました。
厳しい冬の始まりということで、空気の冷たさや紅葉から徐々に枯れていく様子などを詠んだ句が多いのが特徴です。
現在のカレンダーではまだ秋という感覚ですが、徐々に強くなっていく冬の気配を一句詠んでみてはいかがでしょうか。