「3月」といえば、寒い冬の終わりとともに、あたたかく心地良い穏やかな空気を感じはじめる頃です。
そして、卒業式が多く行われる時期でもあり、旅立ちの時を迎えると共に新たな一歩を踏み出す時期でもあります。
そのような「3月」の季語は、やはり春を感じるものが多くあります。
3月の季語、蒲公英!
これで「タンポポ」ってよむんだよ。
春の訪れを感じる季語だよね。 pic.twitter.com/uxGeRcoc6f— すしペット (@kura_sushipet) March 9, 2016
今回は、そんな「3月」の季語を使ったオススメ俳句作品を30句紹介していきます。
3月の季語を使ったオススメ俳句作品集【前編10句】
【NO.1】
『 背伸びして 朝日に向かう つくしの子 』
季語:つくし(春)
つくしの生長を毎朝観察しているのでしょうか。つくしがぐんぐんと育っている様子を「背伸び」と表現しています。とても上手な表現で、つくしが伸びている様子が想像できます。
【NO.2】
『 この町の 空気が好きで 燕くる 』
季語:燕(春)
燕は、家の軒等に巣をつくって子育てをする姿がとても愛らしく、日本人にとても歓迎され愛されている鳥といわれています。「この町の空気が好き」と燕が感じてくれていることはとても嬉しいことですね。つばめがやってくることを心待ちにしている私たちの雰囲気も燕にとって良いのかもしれませんね。
【NO.3】
『 しゃぼん玉 水でっぽうで ねらいうち 』
季語:しゃぼん玉(春)
しゃぼん玉遊びをしているのでしょう。しゃぼん玉は、大小、さまざまな大きさでふわふわと浮かんでいます。それを「ねらいうち」するのは気分が良いでしょうね。楽しく笑顔いっぱいに遊んでいる様子が目に浮かびます。
【NO.4】
『 一輪を 部室に活けて 卒業す 』
季語:卒業(春)
卒業のお祝いに、後輩から贈られた花束の中から一輪の花を部室に飾ったのでしょう。卒業を迎え、部室ともお別れです。作者の悲しさや寂しさ、心の奥が痛くなるような想いがとてもよく伝わる一句です。
【NO.5】
『 つくしたち こっち見てよと せいくらべ 』
季語:つくし(春)
つくしが沢山ある場所で遊んでいるのでしょう。作者にみてもらいたくてアピールしているような「つくしたち」。作者の豊かな想像力と絵本の世界のような表現がとても素敵です。
【NO.6】
『 卒業式 ひとクラスだけ 過疎の町 』
季語: 卒業式(春)
過疎の町での子どもの減少を表現しています。「ひとクラスだけ」の卒業式は、卒業の悲しさだけではなく、たくさんの人の切ない想いがあふれていることでしょう。
【NO.7】
『 春雷や 犬と一緒に 雨宿り 』
季語:春雷(春)
「春雷」とは春の訪れを知らせる雷で3月から5月くらいに発生するものをいいます。犬と散歩中の突然の春雷。春の訪れは嬉しいことですが、突然の雷雨は驚いてしまいますね。作者と犬が一緒に雨宿りする姿はとても微笑ましく感じます。
【NO.8】
『 ぶらんこで 私の心 ゆれている 』
季語:ぶらんこ(春)
作者はなにか悩んでいることがあるのでしょうか。ゆらゆら揺れるぶらんこと同じように、大きく心が揺れているのでしょう。ぶらんこの揺れのおさまりと共に、作者の心の揺れが穏やかになることを願うばかりです。
【NO.9】
『 たんぽぽの わた毛をとばす 昼休み 』
季語:たんぽぽ(春)
春を代表する植物ともいえるたんぽぽ。ふわふわのたんぽぽの綿毛は、見ているだけでも心が癒されますね。昼休み、ゆっくりと体を休めながら綿毛をふぅーと吹く。穏やかな時間を感じる一句です。
【NO.10】
『 晴れやかな 孫の笑顔や 卒業式 』
季語:卒業式(春)
お孫さんが卒業を迎えたのでしょう。「晴れやかな」笑顔は、みているこちらも笑顔になり、幸せな気持ちにしてくれますね。大事なお孫さんならなおさらのこと。とても幸せな一日だったことでしょう。
3月の季語を使ったオススメ俳句作品集【中編10句】
【NO.11】
『 蒲公英を 踏まずにとめる 駐輪場 』
季語:蒲公英(春)
作者がいつもとめている駐輪場で見つけた蒲公英。こんなところに…と愛おしく感じたのかもしれませんね。「踏まずにとめる」という作者の優しさとあたたかさがあふれている一句です。
【NO.12】
『 姿勢良き ものから摘まれ つくしんぼ 』
季語:つくしんぼ(春)
「つくしんぼ」とはつくしの別名で、親しみをこめてこのように呼ばれることもあります。しっかりと伸びて生長したつくしを「姿勢良きもの」と表現しています。すっと背すじが伸びているようなつくしの姿が目に浮かびます。
【NO.13】
『 キャッチャーの 前を横切る しゃぼん玉 』
季語:しゃぼん玉(春)
キャッチャーという重要なポジションの作者。緊迫した場面でしゃぼん玉が目の前を横切った時の様子を詠んでいます。真剣な表情で前を向く作者の目の前を、ふわふわと柔らかなしゃぼん玉がゆったりと横切る様子は、とても面白い光景ですね。作者の緊張を程良くほぐしてくれたのではないでしょうか。
【NO.14】
『 ぶらんこの 順番を待つ 鋭き目 』
季語:ぶらんこ(春)
子どもたちがぶらんこの順番待ちをして並んでいるのでしょう。「鋭き目」という表現は、すこし強めの言葉ではありますが、子どもたちの様子をうまく表現しているように思います。今か今かと待ちわびている子どもたちの姿が想像できます。
【NO.15】
『 入学の 着る制服や 袖長し 』
季語:入学(春)
入学を迎え、新しい制服を着た作者。「袖長し」という言葉から、少し大きめの制服を購入する新入生ならではの光景が想像できます。袖が長い制服は、初々しさを感じますね。
【NO.16】
『 れんぎょうは くるくる回る パラシュート 』
季語:れんぎょう(春)
「れんぎょう」は3月頃に黄色の鮮やかな花が葉に先立って咲きます。れんぎょうの花が風でくるくる回っている様子を「パラシュート」のようだと表現しています。作者の想像力が素晴らしい一句です。
【NO.17】
『 ブランコに 乗ってだんだん 風になる 』
季語:ブランコ(春)
ゆらゆらと小さな揺れからはじまるブランコ。少しずつ力をいれてこいでいくと、大きな揺れになり風と一体化しているような不思議な感覚になる。その流れがシンプルな言葉でとても上手に表現されています。「風になる」という言葉がとても素晴らしいです。
【NO.18】
『 かくれんぼ かくれた先の つくしかな 』
季語:つくし(春)
かくれんぼをして遊んでいたらつくしを見つけた作者。つくしも一緒にかくれんぼをして遊んでいるのかもしれませんね。とても微笑ましく可愛らしい一句です。
【NO.19】
『 夕桜 一人見ている 帰り道 』
季語:夕桜(春)
「夕桜」とは、夕方にながめる桜のことをいいます。あたりが暗くなり始めた帰り道、一人歩きながら途中で桜を見つけたのでしょう。昼間に見る桜とは少し印象が違うかもしれませんね。
【NO.20】
『 うつむいて 吹いても空へ しゃぼん玉 』
季語:しゃぼん玉(春)
しゃぼん玉はどんなことがあっても、ふわっと風にのり、ゆっくりと空へと飛んでいきます。たとえ、下を向いたまま吹いても、しゃぼん玉は上に向かっていきます。うつむいている作者も、それにつられてきっと顔をあげることでしょう。どんなことがあっても上に向かっていくしゃぼん玉の姿は心を元気にしてくれるのではないでしょうか。
3月の季語を使ったオススメ俳句作品集【後編10句】
【NO.21】
『 短パンを はいてタンポポ 笑う午後 』
季語:タンポポ(春)
春になったので、短パンを履いて遊ぶ子供たちが笑っている様子を詠んだ句です。タンポポの咲く野原で遊ぶ午後というのどかな光景を詠んでいます。
【NO.22】
『 チューリップ 何故か君らが 羨まし 』
季語:チューリップ(春)
美しく咲くチューリップを見て、何故か羨ましいなぁと感じている一句です。そチューリップの何が羨ましいのか、作者の心境が知りたくなる句でもあります。
【NO.23】
『 染分けた 源平桃の 花嵐 』
季語:源平桃(春)
「源平桃」とは赤と白に染め分けたように咲く桃の花で、源氏と平氏の色であることからその名が付いています。嵐のような強い風にも負けずに咲く花に見とれている一句です。
【NO.24】
『 部屋をまづ 片付けようね 春休み 』
季語:春休み(春)
部屋をまず片付けなければいけないと意気込んでいる様子を詠んでいます。「春休み」とあるので、親から子供へのメッセージなのかもしれません。
【NO.25】
『 いざさらば いざ行かんとて 卒業歌 』
季語:卒業歌(春)
卒業式のときに歌った歌の中に「いざさらば」「いざ行かん」という歌詞があったのでしょう。これで卒業なのだという自覚がじわじわと生まれている一句です。
【NO.26】
『 平穏な 日々ありがたや ひな祭り 』
季語:ひな祭り(春)
平穏なひな祭りを迎えられたことを喜んでいる一句です。病気や事故もなく、いつも通りの日常を送れることへの感謝が伺えます。
【NO.27】
『 スーパーに 干菓子並びて 彼岸かな 』
季語:彼岸(春)
仏壇に供えるための干菓子がスーパーに売り出されているのを見て、お彼岸だなぁと実感しています。普段は見ないお菓子で季節を実感した経験がある人も多いのではないでしょうか。
【NO.28】
『 春一番 流れる雲の 速さかな 』
季語:春一番(春)
春一番は春の初めに吹く強い風です。その風に吹き流されるように、雲が速く流れていく様子を詠んでいます。
【NO.29】
『 君の手が 割る草餅の 芳しさ 』
季語:草餅(春)
「草餅」はヨモギを使って作られるお菓子で、3月3日に食べられることが多い縁起物です。2つに割った時にヨモギの良い香りが漂って来ています。
【NO.30】
『 雪解けの 街のあちこち 水の音 』
季語:雪解け(春)
雪解けをむかえ、街のあちこちで水が流れていく音がする様子を詠んだ句です。視覚だけではなく、聴覚からも春の訪れを実感しています。
以上、3月に関するオススメ俳句作品集でした!
「3月」の季語は、春を感じるものや3月ならでは…というものが多いです。
「進級」「入学」「卒業」「たんぽぽ」「つくし」「桜」「梅」など、身近に感じられるものばかりです。
中には、「めざし」「ぶらんこ」「伊勢参り」「わらびもち」などお、季節を問わないものかなと思うようなものが、実は「3月」「春」の季語だったりします。
一つずつ調べていくと、さまざまな発見があり、とても面白いです。
俳句をつくることにさらに興味がわくかもしれませんね。