こいのぼりは、端午の節句の旧暦5月5日に「子どもたちが健やかに元気に育ち、将来立派に活躍できますように」という願いをこめて飾られるようになりました。
また、こいのぼりを飾ることで神様に子どもが生まれたことをお知らせし、守ってもらえるよう目印にしたとも言い伝えられています。
5月5日は新暦では春ですが、旧暦では夏になります。そのため、「こいのぼり」は「夏」の季語とされています。
Good morning!晩春の晴天の日の青空にたなびく鯉のぼりは、初夏の季語として用いられる。風をはらませてなびかせる吹流しは、皐月の鯉(恋)の吹き流しなどと風流さにはこと欠かない。間も無く連休だ。Have a nice day!! pic.twitter.com/wUuMtA6dV7
— 藤田桂輔 (@KeisukeFujitajp) April 18, 2015
今回は、そんな「鯉のぼり」をテーマにした一般俳句作品を30句紹介していきます。
「鯉のぼり」に関する一般俳句作品集【前編10句】
【NO.1】
『 青空の 向こうに見える 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
お天気がとても良い日でしょうか。雲一つない青い大きな空に、こいのぼりが気持ち良さそうに元気よく泳いでいる姿が想像できます。
【NO.2】
『 鯉のぼり 数えるほどの 過疎の町 』
季語:鯉のぼり(夏)
人口が流出し、社会生活が困難な状態になってしまった町では、こいのぼりを
飾るような世帯も少なくなってしまったという切ない想いが込められています。子ども自体も少なくなってしまっているのでしょう。悲しさや寂しさが伝わる句です。
【NO.3】
『 鯉のぼり 項垂れたまま 雨の中 』
季語:鯉のぼり(夏)
雨の中、こいのぼりが重く垂れさがり、項垂れてしまっている様子を表現しています。晴天の中では、元気に勇ましく泳ぐこいのぼりですが、雨の日は元気がなさそうにしている姿を上手く表現している句です。
【NO.4】
『 星空へ 月を探しに 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
夜の時間帯の鯉のぼりの姿を表現している句です。星空の中、月を探しにいくかのように上に向かって泳ぎ続けている鯉のぼりの姿が目に浮かびます。
【NO.5】
『 家族みな 同じ向きして こいのぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
「こいのぼり」の歌にあるように、真鯉や緋鯉のこいのぼりの家族が皆、同じ向きに並んでいることを表現しています。竿に飾られ、風になびくこいのぼりを見て、率直に感じたままを詠んだのでしょう。
【NO.6】
『 こいのぼり 待ってましたと 泳ぎだす 』
季語:鯉のぼり(夏)
大きな空を勇ましく泳ぐこいのぼりも、風がなければ泳ぐことができません。風がなく、垂れ下がったこいのぼりを見て、「風はまだかな」とじっと待っているかのように見えたのでしょう。「待ってました」という声と共に元気に泳ぎだすこいのぼりが想像できる句です。
【NO.7】
『 鯉のぼり 一番はしゃぐ お父さん 』
季語:鯉のぼり(夏)
大きなお父さん鯉のぼりが、他のどの鯉のぼりよりも元気に泳ぐ姿を、「はしゃいでいる」と表現したユーモアのある句です。「元気」と表現するよりも「はしゃいでいる」と表現することで、風を受けて、より大きく激しく泳ぐ姿をイメージすることができます。
【NO.8】
『 鯉のぼり 見かけぬ街よ 時代なり 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりを飾るようなスペースがなくなってきてしまっている、子どもの人数が少なくなってきている、そもそも鯉のぼりを持っていない、等々、さまざまな理由があると思いますが、街中で鯉のぼりを見なくなってしまったことを悲しんでいる句です。でも、「今はもうそういう時代なのだ」と自分に言い聞かせているように感じます。
【NO.9】
『 こいのぼり かぜをすいこみ およいでる 』
季語:鯉のぼり(夏)
大きな口を開けて、思いっきり風を受けながら泳いでいるこいのぼりの姿を表現しています。吸い込んでも吸い込んでも足りないくらい大きな口をあけたこいのぼりの姿が目に浮かびます。
【NO.10】
『 雨風に 負けぬ力の 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
雨が降っても、風が吹いても、負けることのない力強さがある鯉のぼりを表現している句です。どのような状況でも、真っすぐに上を向いている鯉のぼりの姿に、たくましさを感じているのかもしれません。
「鯉のぼり」に関する一般俳句作品集【中編10句】
【NO.11】
『 風を呼び 雲をも食べる 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
風を呼びこんでいるかのように大きな口で吸い込み、さらに、空に流れる雲をも吸い込みながら雄大に泳いでいる鯉のぼりの姿を表現している一句です。
【NO.12】
『 鯉のぼり 孫が入りて 人魚姫 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりの中に入って人魚姫のようになって遊ぶお孫さんの可愛らしい姿を詠んでいる句です。とても微笑ましい姿が目に浮かびます。きっと周りにいる人は皆、笑顔になっていることでしょう。
【NO.13】
『 ただ一竿 限界集落 こいのぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
過疎化や、少子・高齢化が進んだ限界集落において、こいのぼりを飾るような世帯が1世帯のみであることを詠んでいます。たった一竿だけのこいのぼりが寂しげに泳ぐ姿を悲しむ姿が想像できます。昔は、たくさんのこいのぼりが空一面を占領するかのように泳ぐくらい、多くの子どもがいたのかもしれませんね。
【NO.14】
『 鯉のぼり 尾をなびかせる 春風に 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりが、春風にのって、尾をなびかせながら雄大に泳ぐ姿が目に浮かびます。過ごしやすい気候の春の心地良い風は、きっと、こいのぼりにとっても気持ちの良いものなのでしょう。
【NO.15】
『 こいのぼり 大きな口を あけている 』
季語:鯉のぼり(夏)
大きな大きな口を開けて泳いでいるこいのぼりを見て、率直に感じたことを詠んだ句です。自分が想像している以上に大きな口を開けている姿だったのかもしれませんね。
【NO.16】
『 鯉のぼり 雨に打たれて 一休み 』
季語:鯉のぼり(夏)
雨にたくさん濡れてしまったのでしょうか。重く垂れ下がっているこいのぼりを「一休み」と表現しています。晴れたら元気いっぱいに泳げるよう、今は英気を養っているのかなと感じる句です。
【NO.17】
『 こいのぼり 一匹ふえて およいでる 』
季語:鯉のぼり(夏)
子どもが増えるとこいのぼりが増えます。作者はこのことに気づいたのでしょう。「あ!」という感覚がそのまま俳句になったような微笑ましい句です。
【NO.18】
『 こいのぼり 自由になったら どこへいく 』
季語:鯉のぼり(夏)
竿にしっかりとつながり、並んで泳いでいるこいのぼりの姿は、「自由ではない状態」と感じたのでしょう。もし自由になったらこいのぼりはどうするのだろうか?、どこへ行くのだろうか?という発想がとても面白いです。
【NO.19】
『 口広げ 船まで飲みそう こいのぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
こいのぼりの口は、大きな船まで飲み込んでしまいそうなくらい大きな口であることを表現している句です。「大きい=船」で表現することで、大きさがよく分かります。船をも飲み込んでしまいそうなくらいの大きさと力強さを感じます。
【NO.20】
『 こいのぼり 家族みんなで 日光浴 』
季語:鯉のぼり(夏)
一列に並んだこいのぼりの家族が、太陽をまっすぐにあびながら泳ぐ姿を「日光浴」と表現しています。とてもお天気が良く、きれいな青空が広がっている光景が目に浮かびます。
「鯉のぼり」に関する一般俳句作品集【後編10句】
【NO.21】
『 星空へ 月を探しに 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
星空へ向かって月を探しに行くように泳ぐ鯉のぼりを詠んだ句です。月の光に照らされた鯉のぼりの影が見えるような表現になっています。探しに行くような姿勢のため、風が吹いて空を泳いでいたのでしょう。
【NO.22】
『 川の字で 大空泳ぐ 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
3匹の鯉のぼりが川の字になって大空を泳ぐ様子を詠んでいます。真ん中の鯉のぼりが小さいのだろうなと想像させる一句です。広い空に大きな鯉のぼりが悠々と泳いでいる写真のような一句です。
【NO.23】
『 子どもの日 過ぎてお疲れ 鯉のぼり 』
季語:子どもの日(夏)/鯉のぼり(夏)
こどもの日が終わり、下ろされた鯉のぼりをいたわっている一句です。ずっと空を泳ぎ続けて疲れただろうというユーモアも感じさせます。「お疲れ」の言葉がいたわっている様にも感じます。
【NO.24】
『 めいっぱい 肺膨らます 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
風をうけて膨らんでいる鯉のぼりの様子を「肺膨らます」と表現した面白い一句です。風を一身に受け止めて泳いでいる様子が伺えます。丸く膨らんで風に負けずに泳いでいる鯉のぼりの様子です。
【NO.25】
『 鯉のぼり 龍になるもの ならぬもの 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりは鯉が試練を突破して龍になった伝説から、立身出世を願って掲げられます。龍になれたものもいればなれなかったものもいるのだろうなぁと空を見上げてしみじみとしている一句です。
【NO.26】
『 鯉のぼり 泳ぎ疲れし 美空かな 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりが泳ぎ疲れたようにぐったりとしている美しい空だと詠んだ句です。鯉のぼりは風で泳ぐようになびくので、無風だったことがわかります。下に垂れ下がった鯉のぼりを休憩中と考えるユーモアのある一句です。
【NO.27】
『 空泳ぎ 池にはためく 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
空を泳いでいる鯉のぼりの影が池に映っているのでしょうか。空と池の両方に鯉のぼりが泳いでいると詠んでいる一句です。どちらの鯉のぼりもゆったりと泳いでいる様子が伺えます。
【NO.28】
『 よーいどん ゴールは向こうの 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
「よーいどん」と勢いよく駆けていく子供たちを詠んだ一句です。あの鯉のぼりまで競走だとはしゃぐ元気の良さが伝わってきます。鯉のぼりが子供たちを見守っているようです。
【NO.29】
『 鯉のぼり 風に泳ぐ尾 戯れる猫 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりの尾に猫がじゃれついている様子を詠んだ句です。屋根の上よりもベランダなどそこまで高くない場所に設置されている鯉のぼりなのかもしれません。鯉のぼりの尾がはためく度に猫が飛びついています。
【NO.30】
『 太陽を 口でつっつく 鯉のぼり 』
季語:鯉のぼり(夏)
鯉のぼりが太陽を口でつついているようなアングルで見上げています。ヒラヒラと揺れる様子がより「つっつく」ように見えたのでしょう。太陽を飲みこもうとする気概を感じさせる一句です。
以上、「鯉のぼり」に関するおすすめ俳句作品集でした!
今回は、「鯉のぼり」に関する俳句作品を30句紹介しました。
こいのぼりは、子どもたちの健やかな成長を願い、端午の節句・5月5日に飾られます。
大きな空を雄大に泳ぐこいのぼりを、毎年変わらず見られるようなあたたかい世界がいつまでも続いてほしいです。
未来を担う子どもたちの幸せを願い、「こいのぼり」を題材に俳句をしたためてみてはいかがでしょうか。