「句切れ」とは、和歌や俳句で歌の意味の切れ目を意味する技法で、複数の内容が詠みこまれている場合に使用されます。
今回は、古文における助詞や活用形、係り結びなど多くの句切れの見分け方をわかりやすく解説していきます。
句切れの見分け方教えてください pic.twitter.com/Fnzk0bwg4v
— 苔桃 (@kokemomo3883) October 23, 2017
ぜひ参考にしてみてください。
目次
古文の句切れの見分け方&コツ
古文における句切れの見分け方を3つ紹介していきます。
① 感動や詠嘆を表す「けり/かな/かも/なり」を探す
感動や詠嘆を表す言葉は、必ず意味が切れる場所です。
まずは、感動や詠嘆の助動詞「けり/かな/かも/なり」を探してみましょう。
【見分け方&コツ】
「しのぶれど 色に出にけり/ わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」(平兼盛)
意味:心に忍ばせていたけれど顔色に出ていたようだなぁ。私の恋は誰かを思っていますかと人に問われるほどになって。
二句に詠嘆の「けり」があるため、二句切れです。
「けり」な「なり」にはほかの意味を表す助動詞もありますが、和歌や短歌で使われる場合は詠嘆を表していることが多いです。
② 句点が打てる場所を探す
「句点が打てる場所」とは、終止形や命令形、終助詞など意味が切れる場所のことを言います。
【見分け方&コツ】
「ちはやふる 神代もきかず/ 竜田川 からくれなゐに 水くるるとは」(在原業平)
意味:不思議なことが多く起こったという神代でも聞いたことがないだろう。竜田川が紅葉で真っ赤に染め上げられるとは。
二句の「きかず」の「ず」が、打ち消しの助動詞「ず」の終止形になるため、二句で切れます。(二句切れ)
単語によっては終止形や連体形の区別がつかないものもありますので、正確な品詞分解をマスターしておきましょう。
③ 係り結びに着目しよう
係り結びは強調や疑問など、切れ目になることが多い意味を持っています。「ぞ・なむ・こそ」は強調を、「や・か」は疑問を表します。
文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」(係助詞)が出てきたら,文末の活用形が「連体形」や「已然形」になるという決まりです。
【見分け方&コツ】
「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(藤原敏行)
意味:秋が来たとはいえ目に見える変化は無いけれども、吹いている風の音こそ秋だなぁと気付かされるものだ。
この句では係り結びが「ぞ~ぬる」と結句に来ているため句切れなしとなります。
係り結びには決まった形があるため、まずは係り結びがないかを探してみましょう。
【Check!!】品詞分解をマスターすると句切れがわかりやすい
同じ言葉でも意味が違う助詞や助動詞、終助詞、活用形が同じものがある動詞など、上記に挙げてきた例でも一目で句切れが分かるということはあまりありません。
パッとみてわかる基準もありますが、まずは古典の文法のマスターと正確な品詞分解を心がけましょう。
【補足】句切れをしっかり理解しよう
(1) 句切れの意味
句切れとは、和歌や短歌の意味の切れ目のことです。句点を打てる場所や詠嘆などで意味が切れる場所のことを意味します。
作者の心情や風景を複数詠むことが多い和歌や短歌では、意味がどこで切れているかを把握することが大切です。
(2) 句切れの種類
句切れには、切れる位置により呼び名が変わっており、いくつか種類があります。
【句切れの種類】
- 初句切れ
- 二句切れ
- 三句切れ
- 四句切れ
- 句切れなし
- 複数の箇所に句切れがあるもの
それぞれの句切れについて、実例を挙げながら解説していきます。
【初句切れ】
「契りきな/ かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは」(清原元輔)
意味:約束しましたよね。お互いに涙でぬれた袖を絞りながら、末の松山を波が決して越さないように心変わりをしないと。
「契りきな」は「契り」に過去を表す助動詞の「き」と感動を表す終助詞の「な」が組み合わさったもので、初句切れとなります。初句で切ることによって強い印象を与える効果がある句です。
【二句切れ】
「この世をば わが世とぞ思ふ/ 望月の 欠けたることも なしと思へば」(藤原道長)
意味:この世は私のための世界だと思う。今夜のような満月の欠けているところのないように思うので。
藤原道長の権勢を表す和歌として有名な歌です。「思ふ」で句点が付けられるため二句切れの和歌だとわかります。倒置法も使われているため、テンポ良く収まっている一句です。
【三句切れ】
「心なき 身にもあはれは 知られけり/ 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」(西行法師)
意味:出家して俗世の心を捨てた身にも感動はあるものだなぁ。鴨が飛び立つ沢の秋の夕暮れを眺めていると。
この句は「知られけり」の「けり」が詠嘆となっており、三句切れの和歌です。自分自身の感情と見たものがバランスよく配置されていて、何を見てどう感じたのか読者にわかりやすい句切れになっています。
【四句切れ】
「昔思ふ 草の庵の 夜の雨に 涙な添へそ/ 山ほととぎす」(藤原俊成)
意味:華やかだった昔を思い出している草の庵の夜の雨に、涙を添えないでくれ、山に鳴くほととぎすたちよ。
「な…そ」という「柔らかい禁止、命令形」が四句に見えるため、四句切れの和歌です。この句では「草の庵の夜の雨」が白楽天の漢詩から取られているため、主題はほととぎすの鳴き声に涙を流す作者の心情になります。
【句切れなし】
「田子の浦に うちいでて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」(山辺赤人)
意味:田子の浦を過ぎて海を進んでみれば、真っ白な富士山の高嶺に雪が降っていたことだ。
この句には詠嘆や切れ字などがないため句切れなしの和歌です。「田子の浦」という海岸から見渡せる富士山の雄大さを一息に詠んでいます。
【複数の箇所に句切れがあるもの】
「憶良らは 今は罷らむ/子泣くらむ/それその母も 我を待つらむそ」(山上憶良)
意味:憶良めはここで退出いたしましょう。子供たちも泣いているでしょう。その母も私を待っているものと思われます。
この句は「らむ」が3回も出てくる宴のための歌です。二句の「らむ」は「罷ら」+意思の助動詞「む」の終止形、三句の「泣くらむ」は「泣く」+推定の助動詞「らむ」の終止形、結句の「らむ」は推定の助動詞「らむ」の連体形となり、終止形である二句と三句で切れるめずらしい形の和歌です。
さいごに
今回は、和歌や短歌の句切れについて、実例を出しながら解説してきました。
終止形や命令形、係り結びなど、古文の文法を熟知していないと、どこが句切れになるかわからない和歌や短歌も多くあります。
和歌の学習のほかにも、古文の文法をしっかりと抑えて句切れを探してみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。