梅雨時を代表する花である「紫陽花」。
大きな毬状の見た目とバリエーション豊かな色合いが魅力です。そんな紫陽花を俳句に詠んでみませんか?
もう紫陽花の時期なんだねぇ。。。
お兄ちゃんが中学の時に作った俳句…
「梅雨空に 暇もてあそぶ 野球帽」w pic.twitter.com/p6T584fmCT— せ・ん (@sem_9301) June 7, 2015
今回は紫陽花の俳句の作り方についてご紹介していきます。
目次
俳句を作る前に知っておきたい!紫陽花の特徴
紫陽花は日本原産の花で、昔から日本人に親しまれてきました。
紫陽花の名所となっているお寺なども、全国各地にあります。
(あじさいに燕 出典:Wikipedia)
花びらのように見える4枚の萼の中心に細かい粒のような花があることから、「四葩(よひら)」とも呼ばれます。
また、花色は酸性の土壌で青色に、アルカリ性の土壌では赤紫色になります。色が次第に変化することから「七変化」といわれることもあります。
紫陽花の俳句の作り方
(1)五七五の十七音で構成する
まずは俳句の基本的なルールを確認しましょう。
俳句といえば、五・七・五のリズムが特徴です。
【例】作者:正岡子規
柿食えば(五音) 鐘が鳴るなり(七音) 法隆寺(五音)
字余り・字足らずの句や自由律俳句という技法もありますが、それらは緻密な意図をもって作らなければ効果が出ません。
慣れるまでは定型(五・七・五)のリズムで作るのが良いでしょう。
(2)正しい表記をする
俳句を紙に書いている人もいれば、スマホのメモ帳などに打ち込んでいる人もいると思います。
どちらにしても表記は正しくしましょう。
五七五の間を空けず、1行で書くのが正しい表記です。
テレビではよく3行に分けて書かれているのを見ますが、あれは画面の都合上そうしているのであって、正しい表記ではありません。
【例】
◯ 大輪の紫陽花に葉の大きさよ
× 大輪の 紫陽花に葉の 大きさよ
× 大輪の
紫陽花に葉の
大きさよ
(3)一句に一季語
俳句には季語を一つ入れるようにしましょう。
1つの句に季語がいくつも入っていると、それぞれの季語の力が打ち消し合ってしまい、季語の魅力が伝わらなくなってしまします。
一句一季語の型を守り、季語を立てるように心がけましょう。
【例】
◯ 大輪の紫陽花に葉の大きさよ 季語「紫陽花」
× 梅雨時に紫陽花見つつビール飲む 季語「梅雨」「紫陽花」「ビール」
今回題材にする「紫陽花」は夏の季語ですので、他の季語は考えません。
(4)俳句の型を知る
俳句には「一物仕立て」と「取り合わせ」という2つの型があります。
一物仕立ては季語についてのみ詠むもの、取り合わせは季語と季語以外の要素を組み合わせて詠むものという違いがあります。
【例】
- 大輪の紫陽花に葉の大きさよ……季語の紫陽花について描写する一物仕立て
- 紫陽花や単身赴任まで三日……単身赴任という季語以外の要素が入っている取り合わせ
一般的に一物仕立ての句を作るのは難しいと言われています。季語について描写しようと思うとどうしても発想が似通ってしまい、オリジナリティのある句が詠みづらいのです。
今回の紫陽花でいえば、雨粒に濡れて綺麗だとか、毬のような形だとか、そういったありふれた描写で俳句を作ってしまうことになります。少し新鮮さに欠けますよね。
一物仕立ての句を作るには、相当な観察力と表現力が求められますので、慣れないうちは取り合わせの句を作るのがよいでしょう。
(5)季語に取り合わせるものを考える
季語である紫陽花は4音なので、残りの13音で他のものを描写します。
13音が難しければ、切れ字を使って「紫陽花や」として12音で描写するのも良いでしょう。
まずは季語の紫陽花について情報を整理しましょう。
紫陽花はどこにありますか。庭に植えてありますか。花瓶に生けてリビングにありますか。お寺に群生している紫陽花ですか。
場所が整理できたら紫陽花以外のものに目を向けてみてください。
何がありますか。どんな匂いがしますか。どんな触り心地のものがありますか。誰が何をしていますか。
それらの情報を12〜13音でまとめ、季語と組み合わせます。
【例】
リボンして 紫陽花届く 2DK (作:中原忽胡)
(6)心情語は入れない
季語以外の情報を表現するとき、「うれしい」「悲しい」などの心情語は入れない方が魅力的な句になります。
心情は季語に託すのが、成功の鍵です。
【例】
◯ 紫陽花や単身赴任まで三日
× 紫陽花は雨にうたれて綺麗だな
季語以外の情報が明るい感じであれば鮮やかな紫陽花を、悲しい感じであれば萎れていたり雨に打たれてしっとりとしていたりする紫陽花を読み手は思い浮かべるでしょう。
このように季語と季語以外の情報が組み合わさって読み手の想像を膨らませることが大切なのです。
よって心情語は入れない方が良いでしょう。
うまい!紫陽花の素人俳句【5選】
【NO.1】
『 幼子の 四葩の精の ごとき舞 』
季語:四葩(よひら)(夏)
現代語訳:幼い子どもが紫陽花の妖精のように舞っている
【NO.2】
『 街を出る 日や紫陽花の 浅みどり 』
季語:紫陽花(夏)
現代語訳:住み慣れたこの街を出る今日という日よ。ふと目についた紫陽花は薄い緑色をしている
【NO.3】
『 日本間は 移民の郷愁 濃あじさい 』
季語:あじさい(夏)
現代語訳:外国に住む者にとって、家の日本間は故郷を懐かしむものだ。そこには濃い色の紫陽花が生けてある
【NO.4】
『 千段を 下る水音 濃あじさい 』
季語:あじさい(夏)
現代語訳:雨水が千の階段を下る音がする。そこには濃い紫陽花が咲いている
【NO.5】
『 一枝の あぢさゐ初恋 の重さ 』
季語:あぢさゐ(夏)
現代語訳:一つの枝に咲いている紫陽花。その重さは初恋と同じだ
さいごに
今回は紫陽花の俳句の作り方について説明してきました。
面白い取り合わせは浮かびましたか?
いろいろな組み合わせを試し、紫陽花という季語の生きる素敵な句を作ってみてくださいね。