俳句は五七五の十七音に季節を表す季語を詠み込む文学です。
現在でも多くの人に親しまれており、修学旅行などの行事で記念や宿題として俳句を詠む学生も多いでしょう。
今回は、修学旅行先としてよく選ばれる「東大寺」を題材にしたオリジナル俳句を20句紹介します。
奈良東大寺。
修学旅行シーズンですなぁ(´ー`)#写真好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/68oLVWtzMM— ふぁぼぴく@きょうすけ (@kyousukeimg) October 28, 2014
05「奈良の鹿泣く子笑ふ子秋うらゝ」
正倉院展の鑑賞を兼ねて、東大寺や奈良公園周辺を散策してきた。アジア系の外国観光客の中には、鹿になかなか「鹿せんべい」をあげないので鹿が怒っていた。聞くところによると怪我人も出たらしい。 pic.twitter.com/jZPJJiNevy— 大谷彰一 (@otani_haiku) November 5, 2015
東大寺について詠んだ俳句ネタ集【前半10句】
【NO.1】
『 三月や 火の粉飛び散る 東大寺 』
季語:三月(春)
東大寺のお水取りは例年3月に行われます。僧侶が松明を持って東大寺二月堂の回廊を進む様子は春の風物詩として観光の目玉になっています。
【NO.2】
『 東大寺 鹿と戯れ 古都の春 』
季語:春(春)
東大寺は鹿で有名な奈良公園のすぐ近くにあることから、東大寺の敷地内でも鹿を見ることができます。春の穏やかな気候にのんびりとしている鹿たちが浮かんでくるようです。
【NO.3】
『 花満ちて 令和を祝う 東大寺 』
季語:花(春)
令和元年に詠まれた一句です。満開の桜が咲く東大寺は奈良時代から連綿と続く歴史を感じさせ、新しい元号を祝っているかのように感じています。
【NO.4】
『 草原は 金堂の跡 糸桜 』
季語:糸桜(春)
昔の東大寺は、現在よりも大規模で多くの建物が立っていました。現在は草原で糸桜が咲いている場所にかつての姿を想像して思いを馳せています。
【NO.5】
『 天平の 桜なりけり 東大寺 』
季語:桜(春)
東大寺は8世紀の天平時代に大仏建立の詔が出されたことにより建立されました。そんな天平時代にも桜が咲いていたのかなと感慨深く見つめています。
【NO.6】
『 鹿の子の 見る先みれば 東大寺 』
季語:鹿の子(夏)
「鹿の子」は夏の季語で、5月下旬から7月上旬頃に生まれてきます。生まれてすぐの鹿の子が見られる時期に東大寺を訪れ、鹿と触れ合ったときの一句です。
【NO.7】
『 新緑の 森に大仏 鎮座する 』
季語:新緑(夏)
東大寺のある奈良公園は多くの木々や原始林を抱える緑地です。新緑の季節には心地よいハイキングができる春日山もあり、東大寺と並んで世界遺産にも登録されています。
【NO.8】
『 松落葉 大仏あちらと 示しけり 』
季語:松落葉(夏)
松は常緑樹として有名ですが、春から初夏にかけて新しい芽を出した後に古い葉を落とします。行き先を示すような松の落葉たちが大仏殿への道を案内しているようだと面白がっている一句です。
【NO.9】
『 明々と 奈良の大仏 大西日 』
季語:西日(夏)
「西日」は夏の季語で、西に傾いてもなお暑い夏の太陽をさします。西は極楽浄土があるとされている方角で、その方向から強い光で照らされた大仏を拝んでいる様子が浮かんでくる一句です。
【NO.10】
『 灼熱の 夏でも鎮座 廬舎那仏(るしゃなぶつ) 』
季語:夏(夏)
どんなに暑い夏の日でも大仏は変わらず鎮座しているなぁという感慨を詠んでいます。東大寺の大仏は正確には「盧舎那仏」と呼ばれ、『華厳経』というお経が出典の仏様です。
東大寺について詠んだ俳句ネタ集【後半10句】
【NO.11】
『 秋気澄む 天平行列 練り歩く 』
季語:秋(秋)
「天平行列」とは「平城京天平祭」と呼ばれるプロジェクトで行われる行事の1つです。秋の澄んだ空気の中を天平時代の装束をした人々が練り歩き、東大寺に参詣している様子が詠まれました。
【NO.12】
『 東大寺 黄金の絨毯 イチョウ散る 』
季語:イチョウ散る(秋)
「イチョウ散る」で秋の季語になります。イチョウは黄色い葉を一斉におとすため、地面はまるで黄金の絨毯だと感動している一句です。また、もっと大きかったはずの金堂を想起させる黄金を読み込んだのかもしれません。
【NO.13】
『 大仏や 頬に安堵の 秋来る 』
季語:秋来る(秋)
大仏の頬にどこか安堵が見て取れるような秋の始まりの日です。これまでの灼熱の夏ではなく、朝晩に涼しい風が吹き込むことで、大仏も少し安心しているように見えるという着眼点で詠まれています。
【NO.14】
『 大仏の 溜息ひとつ 零れ萩 』
季語:零れ萩(秋)
大仏がため息をついて出てきたような零れ萩がある、という面白い一句です。「零れ萩」とは枝が下に向かって伸び、花が咲いている様子を表しています。
【NO.15】
『 野路の秋 鹿に連れられ 東大寺 』
季語:鹿(秋)
野の中の道を歩いていると、途中で出会った鹿に連れられて東大寺まで来てしまった、と面白そうにしている一句です。「秋」と「鹿」はどちらも秋の季語ですが、ここでは案内してくれたような要素のある鹿を季語にしています。
【NO.16】
『 煤払い 大仏様の マッサージ 』
季語:煤払い(暮)
煤払いは12月に行われる大掃除の1つです。東大寺では現在は夏に「お身拭い」という行事が行われていますが、炭を燃やしていた時代は煤が付着していたためまるでマッサージを受けるように煤を払われていたのだろうと想像しています。
【NO.17】
『 寒雀 大仏前の 石畳 』
季語:寒雀(冬)
大仏殿前の道にふっくらとした冬の雀がいる様子を詠んだ句です。大きな大仏と小さな寒雀という対比がまるで写真のように風景を表しています。
【NO.18】
『 そこかしこ 枯木にほふや 東大寺 』
季語:枯木(冬)
冬になり、東大寺にある広葉樹や芝生が冬の様相を呈していることを「にほふ」と表現しています。「にほふ」とは匂いではなく美しく染まることを指すので、枯木の色や雪、空の色など様々な色彩が連想される一句です。
【NO.19】
『 大仏も 私も猫背の 冬の朝 』
季語:冬の朝(冬)
冬の朝の寒さに、大仏も猫背になっているように見えるという一句です。実際の大仏の背はきちんと伸びていますが、拝観のために開け放たれている外気の寒さからつい背が丸まっている作者の心情を詠んだ句です。
【NO.20】
『 しずけさや 雪降る空の 東大寺 』
季語:雪(冬)
しんしんと静かに雪が降っている空をバックに、東大寺の大仏殿が見えるという写真のような一句です。冬でも観光客で賑わう東大寺が静かな時間という、朝なのか夜なのか想像の余地を残す表現になっています。
以上、東大寺について詠んだ俳句ネタ集でした!
今回は、東大寺を題材としたオリジナル俳句を20句紹介しました。
旅行先としても修学旅行先としても有名な東大寺では、有名な俳人も多く俳句を残しています。
どの季節、どんな場面でどう感じて俳句を詠んだのかを想像して、修学旅行の思い出として作る俳句の参考にしてみてください。