「清水寺」は、京都府京都市東山区にある北法相宗の寺で、清水の舞台でも有名な世界遺産に登録されている日本屈指の観光名所です。
現在は修学旅行でもかかせないスポットとなっています。
清水寺が建立された年は778年、鳴くよ鶯(うぐいす)平安京、の794年よりも歴史が古いんどすえ。紅葉もええけど、あえて早朝に行ったり、シーズンを外すのがオススメどす。#京都pic.twitter.com/lxh9wF0eYf
— 清水京子の京ことばbot (@kyou_kotobabot) December 31, 2018
今回は、そんな「清水寺」について詠ったおすすめ俳句を30句紹介していきます。
清水寺の歴史について
「清水寺」の歴史は長く、1400年を超えると言われています。
「清水寺」は、平安時代初期に、後に征夷大将軍となり東北地方の蝦夷軍を平定した坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)が建立したと伝えられています。
清水寺は火災により何度も焼失したため、創建当初の建築物はほとんど現存していません。現在ある多くのものは、江戸時代に再建されたものです。
国宝である本堂は、江戸幕府3代将軍徳川家光が再建したもので、本堂から張り出すように造られた舞台は、「清水の舞台」として有名です。
「清水の舞台」は、東山の高い崖にのぞんだ造りになっており、高さは約13mもあります。清水の舞台は釘を全く使うことなく、檜(ひのき)を組んで作られた、まさしく「檜舞台」です。
「死ぬ覚悟で物事を行う」ことを「清水の舞台から飛び降りる」というように、その高さは足がすくむ程のものなのです。
「清水寺」は、桜や紅葉の名所としても、常に多くの観光客でにぎわっています。
清水寺について詠んだ有名俳句【15選】
【NO.1】日野草城
『 初蝉の 清水阪を のぼりけり 』
季語:初蝉(夏)
意味:初蝉が鳴く中、清水坂を上ったことだ。
「初蝉」とは、その年の最初に鳴く蝉のことをいいます。
清水坂とは、清水寺へと続く坂のことです。初蝉が鳴き始めた夏の始まりの日、清水坂を上ってゆく作者の姿が思い浮かびます。
【NO.2】森川許六
『 清水の 上から出たり 春の月 』
季語:春の月(春)
意味:清水寺の上から出た、春の月のことだ。
春の大気は水分や、黄砂などの影響を受け、どんよりと曇っています。その中に浮かぶ「春の月」は、やわらかい光を放ちます。
清水寺の上に上る、春のやわらかな月という幻想的な風景です。
【NO.3】正岡子規
『 清水の 阪のぼり行く 日傘かな 』
季語:日傘(夏)
意味:清水寺への坂を上っていく日傘であることだ。
清水寺へ登る坂には、一年坂(一念坂)、二年坂(二寧坂)、三年坂(産寧坂)の3つの参道があります。坂道の両側には、土産屋などの建物が並び観光が楽しめる場所です。
京都の酷暑の中、和服姿で坂を上る女性。夏の日差しに照らされて、日傘が輝いて見えたのでしょう。
終助詞「かな」を用いることで、「日傘」に作者の焦点があることがわかります。
【NO.4】五十嵐播水
『 清水の 舞台の上の 雪達磨(ゆきだるま) 』
季語:雪達磨(冬)
意味:清水の舞台の上に雪達磨がある。
清水の舞台に降った雪でつくられた雪達磨。清水の舞台にはかつて様々な歴史がありましたが、それと何も関係のない誰かが作った雪達磨がぽつんと立っています。
歴史の重みと、雪達磨の和やかさの取り合わせが印象的な句です。
【NO.5】不明(「俳諧二見貝」に所出)
『 清水の 舞台消去る 朧(おぼろ)哉 』
季語:朧(春)
意味:清水の舞台が消え去るような春の夜の朧であることだなあ。
「朧」とは、春の夜に立ち込める霞(かすみ)のことです。
清水の舞台が消えて見えなくなる程の朧という、幻想的な場面を詠っています。
【NO.6】水茎春雨
『 清水の 舞台灯すや 六斎会 』
季語:六斎会(秋)
意味:清水寺の舞台を灯すのは、六斎会であることだ。
「六斎会」とは、京都を中心に行われる祭りの一つです。
八月の六斎日に太鼓を鳴らし、念仏を唱えながら踊ります。
清水寺の舞台を、六斎会の灯が明るく照らす、夜の風景です。
【NO.7】鈴木鷹夫
『 清水の 舞台に妻が 立ちて春 』
季語:春(春)
意味:清水の舞台に妻が立つ春だ。
清水の舞台に妻が立つ、その周りの景色は春。
桜の花が咲き乱れているのでしょう。とても美しい風景です。
【NO.8】山内なつみ
『 清水の 舞台ゆるがし 蝉時雨 』
季語:蝉時雨(夏)
意味:清水の舞台を揺るがす蝉時雨であることだ。
「蝉時雨」とは、時雨が空から降るように、一斉に多くの蝉の鳴く声が聞こえることをいいます。周りを緑に囲まれた清水の舞台では、蝉が盛んに鳴いています。
その鳴き声の大きさは、舞台を揺るがす程大きいのです。
「舞台ゆるがし」とする擬人法が、効果的に使われた句です。
【NO.9】村上鬼城
『 稲光 雲の中なる 清水寺 』
季語:稲光(秋)
意味:稲光が轟く中、雲の中にある清水寺だ。
高所に立つ清水寺。稲光が鳴る中、下から見上げる清水寺が雲の中にあるという、風景が読み手の目に鮮明に浮かびます。
【NO.10】山口誓子
『 お彼岸や 音羽の滝の にぎやかに 』
季語:お彼岸(春)
意味:音羽の滝がにぎやかになるお彼岸であることだ。
「音羽の滝」とは、清水寺にある清水が湧き出る滝のことです。
「清水が湧く」ということから、清水寺と名付けられたとされます。
「音羽の滝」は、清水の舞台の北東にあり、高さ約4メートル程の三筋に分かれる滝です。
この水は、「清めの水」として古来より崇められ、現在でも三筋の滝がそれぞれ「健康」「恋愛」「学業」のご利益があるとされています。
この句は、お彼岸の時期、参拝客で音羽の滝がにぎやかになるという、春の清水寺の様子を詠っています。
【NO.11】高澤良一
『 心ここに あらざる清水 春舞台 』
季語:春(春)
意味:心がここにあらざるように美しい清水の舞台の春だ。
清水寺は桜の名所としても知られています。桜の美しさで清水の舞台が美しく彩られています。心がここにあらずと表現されるほど美しい桜の舞台を詠んだ一句です。
【NO.12】鷹羽狩行
『 清水の 舞台下より 青嵐 』
季語:青嵐(夏)
意味:清水の舞台にいると、下から強い風が吹いてきた。
「青嵐」とは夏の強い風のことです。舞台は地面から離れて築かれているため、下からの風を感じられたのでしょう。下から吹き付ける突風は高い場所にある舞台をより意識させます。
【NO.13】五十嵐播水
『 清水の 舞台の雪を 下しをり 』
季語:雪(冬)
意味:清水の舞台の上に積もった雪を下ろしている。
清水の舞台は冬でも観光客で賑わいます。そのため、雪下ろしをして舞台を整えている様子を詠んだ句です。観光客がいない時に行われているので、早朝の様子を詠んでいるのでしょう。
【NO.14】加藤暁台
『 涅槃会(ねはんえ)や 雲下り来る 音羽山 』
季語:涅槃会(春)
意味:涅槃会の日だ。雲が空から下りてくる音羽山である。
「涅槃会(ねはんえ)」とは2月15日のお釈迦様の入滅の日に行う法会です。清水寺は音羽山の麓にあるため、涅槃会のために雲が下りてきたような風景を詠んでいます。
【NO.15】日野草城
『 音羽山 暮るる焚火の はなやかに 』
季語:焚火(冬)
意味:暮れていく音羽山に、焚き火がはなやかに輝いている。
日が暮れていく音羽山に焚き火がたかれています。周囲が見えなくなってきた山の中で焚き火がはなやかに輝いている様子が浮かんできます。
清水寺について詠んだ俳句作品【15選】
【NO.1】
『 清水の 春の音羽の 滝の水 』
季語:春(春)
意味:清水寺で、春の音羽の滝の水がある。
小学生が詠んだ句です。
清水寺の拝観券に、「松風や 音羽の滝の 清水を むすぶ心は 涼しかるらん」と松尾芭蕉の御詠歌が印刷されています。御詠歌とは、仏教の教えを和歌として唱えたものです。
この句は、御詠歌を想像させるようなものとなっています。
助詞「の」を繰り返すことによって、滑らかに清水寺で流れる滝の水音を表現しています。
【NO.2】
『 アテルイの 秋の法要 清水寺 』
季語:秋(秋)
意味:アテルイの秋の法要が行われている清水寺である。
この俳句は、清水寺に建てられている「阿弓流為 母礼之碑」に関する秋の法要について詠っています。
「阿弓流為(アテルイ)」とは、蝦夷の首領であった人物です。
清水寺の建立者である、坂上田村麻呂によって倒されました。
田村麻呂は「阿弓流為(アテルイ)」とその同胞「母礼(モレ)」、二人の武勇の命を助けるよう政府に嘆願しましたが叶わず、二人は処刑されてしまったのです。
1994年平安遷都1200年を迎えた年に、「阿弓流為(アテルイ)」「母礼(モレ)」の名前が刻まれた碑が建てられ、毎年11月に法要が行われています。
【NO.3】
『 清水の 舞台夏風 吹きぬける 』
季語:夏風(夏)
意味:清水の舞台を夏風が吹き抜けることだ。
中学生が詠んだ句です。
高所にある清水の舞台を、夏の熱風が吹き抜けてゆく様子が読み手にも伝わってきます。
【NO.4】
『 清水の 紅葉酔いする 舞台かな 』
季語:紅葉(秋)
意味:紅葉酔いするほど深紅に染まる、清水の舞台であることだ。
「清水の舞台」から見る紅葉の素晴らしさは、見る者を圧倒させます。
この句でも、「紅葉酔い」という語を用い「紅葉」に酔うほど感動したことを表現しています。色鮮やかな句です。
【NO.5】
『 名刹(めいさつ)の 丹(に)より丹に燃ゆ 紅葉かな 』
季語:紅葉(秋)
意味:名高い寺の三重塔の総丹塗りよりも丹色に燃える紅葉であることだ。
「名刹」(めいさつ)とは、古くからある名高い寺のことです。
「丹(に)塗り」とは、社寺が赤く塗られた伝統的な塗装方法です。
清水寺にある総丹塗りの三重塔は真っ赤ですが、それよりも赤く染まる紅葉の美しさをこの句は詠っています。
【NO.6】
『 舞台より 艶(あで)に紅葉の 大向こう 』
季語:紅葉(秋)
意味:清水の舞台よりも華やかで美しい紅葉の大向こうだ。
「大向こう」(おおむこう)とは、舞台から最も離れた場所にある客席のことをいいます。
清水の舞台よりも、紅葉が主役の席を得ている。紅葉の美しさを思い描かされる句です。
【NO.7】
『 新緑の 舞台の眺め 清水寺 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の舞台の眺めは、清水寺だ。
中学生が詠んだ句です。清水の舞台から眺める新緑の美しさ、そのすばらしい景色を詠っています。
【NO.8】
『 清水寺 雪舟庭の 石蕗(つわぶき)明かり 』
季語:石蕗(冬)
意味:清水寺の雪舟庭で、石蕗の明かりが灯っている。
「石蕗(つわぶき)」とは、冬の初め黄色の花を咲かせるキク科の植物です。
清水寺にある雪舟庭で、石蕗の黄色い花がまるで明かりをとともしているように咲いているという情景を詠っています。
【NO.9】
『 滝の水 しゃくて水飲み 長寿得る 』
季語:なし
意味:滝の水をすくって飲み長寿を得る。
中学生が詠んだ句です。「滝の水」とは、「音羽の滝の水」のこと。作者は、音羽の滝の中で、「長寿の水」を選んで飲んだのです。修学旅行で、どの水にするか友達と一緒に選ぶ楽しい様子が伝わってきます。
【NO.10】
『 清水の 舞台に誘われ 汗をかく 』
季語:なし
意味:清水の舞台に誘われて汗をかく。
中学生が詠んだ句です。
清水寺の舞台に立った作者のかいた汗。それは暑さによるものではなく、高所からの眺めで足がすくんだ「冷や汗」なのでしょう。
【NO.11】
『 舞台より 見渡す京や 小夜時雨 』
季語:小夜時雨(冬)
意味:舞台から見渡す京の都だ。夜に時雨が降っている。
「小夜時雨」とは夜中に降る時雨のことです。夜中に京都の夜景を清水の舞台から眺めている神秘的な一句です。しとしとと降る時雨が風情を感じさせる光景です。
【NO.12】
『 紅葉や 清水寺の 朱の伽藍(がらん) 』
季語:紅葉(秋)
意味:紅葉が美しいなぁ。清水寺の朱色の伽藍よ。
清水寺の柱は朱色に塗られています。紅葉と伽藍の朱色が美しい風景だと詠んでいる一句です。紅葉と伽藍の朱が同じ色に見えているのかもしれません。
【NO.13】
『 清水の 舞台に寄する 紅葉かな 』
季語:紅葉(秋)
意味:清水の舞台にそっと寄り添う紅葉だなぁ。
清水の舞台はすぐ近くまで木々が迫っています。そのため紅葉の時期には舞台に寄り添うように紅葉した葉が迫ってきています。舞台を彩るように近くにある紅葉はさぞ美しいことでしょう。
【NO.14】
『 清水の 舞台の観客 夏木立 』
季語:夏木立(夏)
意味:清水の舞台の観客は夏の木立だ。
観光客がまだいない早朝の時間帯でしょうか。夏の木立が観客のように清水の舞台の近くにそびえています。もしかすると、夏木立も観光客を見ているのかもしれないと詠んでいる一句です。
【NO.15】
『 見下ろせば 清水寺の 桜かな 』
季語:桜(春)
意味:山の上から見下ろせば、あれは清水寺の桜であるなぁ。
清水寺は「音羽山」という山の麓にあります。そんな山頂から見下ろすと一際桜の美しい場所があり、あそこは清水寺だなと考えている一句です。
以上、清水寺について詠んだオススメ俳句集でした!
今回は、「清水寺」のおすすめ俳句を紹介しました。
清水寺は、歴史ある寺であり、「清水の舞台」や「音羽の滝」など名所が多くあります。現在は修学旅行でも京都旅行でもかかせないスポットです。
「清水寺」の俳句には、桜や紅葉など四季折々の自然の美しさを詠ったものが多くあります。
ぜひ、「清水寺」の俳句を楽しんでみてください。