【川端茅舎の有名俳句 20選】茅舎浄土と冠された早逝の俳人!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音の韻律を使用する江戸時代に成立した詩です。季節を表す季語を詠み込むことによって、さまざまな風景を表現します。

 

明治から大正にかけては様々な作風が生まれた近代俳句の黄金期で、多くの俳人が誕生しました。

 

今回は、大正から昭和初期にかけて活躍した俳人「川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)」の有名俳句を20句紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

川端茅舎の人物像や作風

 

川端茅舎(つぼうち としのり)は、1897年(明治30年)に東京都の日本橋に生まれました。本名は信一(のぶかず)といいます。

 

 

父は紀州藩の下級武士で、雅号を持つほど日本画や俳句に精通していたことが茅舎に影響を与えています。

 

画家として独立していた兄を追うように絵の勉強を始める一方で、17歳の時に茅舎という俳号を使用し『雲母』の前身である俳句雑誌『キララ』に投句を始めるなど、早くから芸術方面に進路を定めていました。

 

春陽会に入選するほど絵画でも知られていましたが、結核や脊椎カリエスなどの病気が重なったことで画家の道を断念、以降は句作に専念します。

 

投句する雑誌を『ホトトギス』に変えたことで高浜虚子に師事して同誌の同人となりましたが、1941年(昭和16年)に肺の病の悪化で亡くなりました。(享年満44歳)

 

 

川端茅舎の作風は病床での生活の苦悩から仏教やキリスト教を取り入れた「茅舎浄土」と呼ばれ、師である高浜虚子は茅舎を「花鳥諷詠真骨頂漢」と称えています。

 

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また、比喩である「ごとく」を多用することで知られており、同じく『ホトトギス』で活躍した松本たかしと境遇も作風も似ていたため「句兄弟」と評されました。

 

川端茅舎の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 一枚の 餅のごとくに 雪残る 』

季語:雪残る(春)

意味:一枚の餅のように雪が残っている。

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白い雪を餅に例えた一句です。「一枚」と指定していることで、薄く平らに雪が残っている様子が想像できます。

【NO.2】

『 ぜんまいの のの字ばかりの 寂光土 』

季語:ぜんまい(春)

意味:ぜんまいの「の」の字ばかりがある寂光土のような風景だ。

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ぜんまいの独特な形を「の」の字に例えています。「の」という平仮名が4回出てくることで、たくさんのぜんまいが生えている野の様子と、春の穏やかな風景を浄土に例えた作者の心境が伺える句です。

【NO.3】

『 鶯の 声澄む天の 青磁かな 』

季語:鶯(春)

意味:ウグイスの澄んだ声が響く天はまるで青磁のような美しさだ。

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「青磁」とは焼き物の一種で、美しい青緑色が特徴です。ウグイスの声が天高く響き、青い空がどこまでも広がっている様子が浮かんできます。

【NO.4】

『 朝靄に 梅は牛乳(ちち)より 濃かりけり 』

季語:梅(春)

意味:朝の靄の中で梅を見ると、牛乳の白よりも濃く見える。

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朝もやという辺りがよく見えない状況で浮かび上がってくる白梅の花を牛乳に例えている面白い一句です。朝もや、牛乳、梅の順で濃い白になっていくという見立ても面白い表現です。

【NO.5】

『 啓蟄を 啣へて(くわえて)雀 とびにけり 』

季語:啓蟄(春)

意味:啓蟄の名のとおり、穴から出てきた虫をくわえたスズメが飛んでいった。

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「啓蟄」とは36日前後のことで、虫が冬眠から目覚めて穴から出てくる様子を表す二十四節気の1つです。その啓蟄の名のとおりに出てきた虫をスズメがくわえて飛んでいく春の風景を詠んでいます。

【NO.6】

『 どくだみや 真昼の闇に 白十字 』

季語:どくだみ(夏)

意味:どくだみの花が咲いている。真昼の闇のように暗いところにほんのりと白い十字が浮かび上がっている。

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どくだみの花は白い十字の形をしています。日向ではなく物陰になっている場所に咲くため、真昼と闇、闇と白という対比がされている句です。

【NO.7】

『 朴散華 即ちしれぬ 行方かな 』

季語:朴散華(夏)

意味:朴の花が咲いている。あの花が散るとき、私の魂の行方もわからなくなるのだろうなぁ。

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「朴散華」はこの句特有の季語で、朴の花は散るのではなく花ごと落下します。作者は病床にいたときにこの句を作っていて、さながら辞世の句のような雰囲気をかもし出しています。

【NO.8】

『 風薫る 鹿島の杉は 剣なす 』

季語:風薫る(夏)

意味:風が薫るような日だ。鹿島の杉は剣のようにそびえ立っている。

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「鹿島」は茨城県にある鹿島神宮のことでしょう。荘厳な雰囲気のある神社の杉はまるで剣のようにとがった枝先を天に向けています。

【NO.9】

『 しんしんと 夜の光の 草茂る 』

季語:草茂る(夏)

意味:しんしんと降り注ぐ夜の光に草が茂っているのが見える。

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「しんしんと」という表現から、街灯ではなく月の光が連想されます。夏らしい草の茂みに生命力の強さを感じつつ、夜の光という幻想的な風景も描写している句です。

【NO.10】

『 蟻地獄 見て光陰を すごしけり 』

季語:蟻地獄(夏)

意味:蟻地獄を見て夏の日々を過ごしていた。

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作者にはアリが出入りする巣をじっと見つめていたら時間が過ぎていた、という逸話があります。この句はアリの巣を見つけてその時のことを思い出して詠まれたものでしょう。

 

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石の上にたった1粒だけあった露を金剛石、つまりダイヤモンドに例えている句です。草の上ではなく石の上ということで鉱石を連想したのでしょう。

【NO.12】

『 また微熱 つくつく法師 もう黙れ 』

季語:つくつく法師(秋)

意味:また微熱が出た。ツクツクボウシはもう黙っていてくれ。

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ツクツクボウシは秋の無常さを表す季語としてよく使われています。しかそこの句では体調の悪い作者にとっては無常さもなくただやかましいだけだという非常に現実的な訴えが際立っている句です。

【NO.13】

『 夕空の 土星に秋刀魚 焼く匂ひ 』

季語:秋刀魚(秋)

意味:夕方の空に土星が輝いている。秋刀魚を焼いている匂いもどこからともなく漂ってくる。

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「土星」という遥か彼方の星と「秋刀魚」という身近な食べ物が対比になっています。空を見上げて輝く土星に宇宙のことを考えていると、漂ってくる秋刀魚の匂いに現実に引き戻されているようです。

【NO.14】

『 運河悲し 鉄道草の 花盛り 』

季語:鉄道草(秋)

意味:運河が悲しく見えてくる。鉄道草が花盛りだ。

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「鉄道草」とは別名「ヒメムカシヨモギ」と呼ばれる草で、白から緑色の花を咲かせます。もっぱら荒れた道に咲くことが多く、そのことから「悲し」という感情が連想されたのでしょう。

【NO.15】

『 此石に 秋の光陰 矢のごとし 』

季語:秋(秋)

意味:この石を見ていると、秋の月日が矢のように早く過ぎていくように感じる。

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この句は京都にある龍安寺の石庭を見て詠まれたと言われています。数百年続くお寺の庭を見ていると、秋の日もお寺の歴史も矢のように過ぎ去っていくという感慨を詠んだ句です。

【NO.16】

『 約束の 寒の土筆を 煮て下さい 』

季語:寒(冬)

意味:前に約束した寒の土筆を煮てください。

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この句は土筆をモチーフにした「二水夫人土筆摘図」の一句です。寒の土筆は滋養にいいと聞き、病床の作者が友人にねだっている様子を詠んでいます。

【NO.17】

『 咳き込めば 我火の玉の ごとくなり 』

季語:咳き(冬)

意味:咳き込むと私は火の玉のように熱くなる。

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作者は結核や脊椎カリエスなど呼吸器の病気に悩まされ続けました。咳き込むことも多く、喉や胸が痛む様子を「火の玉」に例えています。

【NO.18】

『 月の雪 あをあを闇を 染めにけり 』

季語:雪(冬)

意味:月に照らされた雪があおあおと闇を白く染めている。

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雪は積もっていると夜でも明るく見えます。この句では、月の光が反射して「あをあをと」と春や夏に使われることが多い表現になるほど明るく輝いている様子を詠んだ句です。

【NO.19】

『 畑大根 皆肩出して 月浴びぬ 』

季語:畑大根(冬)

意味:畑に植えられている大根が、みんな肩を出して月光を浴びている。

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収穫前の大根は少し肩の部分が畑の上に露出しています。その様子をみんなで月光浴をしているようだと例えているユニークな一句です。

【NO.20】

『 初春の 二時うつ島の 旅館かな 』

季語:初春(新年)

意味:初春の2時を告げる島の旅館にいることだ。

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この句は神奈川県の江ノ島で新年をむかえた時に詠まれたと言われている句です。ずっと起きていたのか、2時を告げる時計の音で起きたのか、旅行先でのそわそわとした感情が「旅館かな」という詠嘆から感じます。

以上、川端茅舎の有名俳句20選でした!

 

 

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今回は、川端茅舎の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。
卓越した自然への観察眼や仏教思想を取り入れた俳句はまさに花鳥風月を詠む伝統俳句の真骨頂と言えます。
高浜虚子の門下には他にもさまざまな作風を持つ俳人がいますので、詠み比べてみてはいかがでしょうか。