日本には、これまでにたくさんの俳人に詠まれた多くの作品が残っています。
それらの中には、女心を題材にした句も少なくありません。
今回は女心を題材にした句「別な人見てゐる彼のサングラス」をご紹介します。
【今日出会った俳句】別なひと見てゐる彼のサングラス 黛まどか
— negitet (@NEGITET) July 28, 2013
本記事では、「別な人見てゐる彼のサングラス」の季語や意味・表現技法・作者などについて徹底解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
「別な人見てゐる彼のサングラス」の季語や意味・解釈
別な人 見てゐる彼の サングラス
(読み方 : べつなひと みているかれの サングラス)
こちらの作品は、現代の俳人「黛まどか(まゆずみ まどか)」によって詠まれました。
作者とサングラスをかけた彼が、どこかの街でぶらぶらと歩いている時に詠まれた作品です。
彼女がいるにもかかわらず、つい女性に目がいってしまう男性の性、そしてそんな様子に焼きもちを焼く女心が巧みに表現されています。
季語
こちらの句の季語は「サングラス」で、季節は「夏」を表します。
現代では一年を通してサングラスをかけている方も多いですが、本来は夏の強い日差しを避けるためのものです。
意味&解釈
こちらの俳句の意味は・・・
「別な人を見ている彼のサングラス」
となります。
こちらの句のキーポイントは「別の人」と「サングラス」です。
また、彼と記載されていることから、男の人を詠んだ俳句だと分かります。つまり「彼はサングラス越しに自分以外の誰かを見ている」状態です。
この彼は、サングラスをしているから彼女に視線の動きが読まれないと思ったと推察できます。男の人が彼女以外に、わざわざ視線をそらすとなると、やはり相手は見知らぬ女性となるはずです。
「彼はサングラス越しに私以外の別の女性を見ているんだわ」となり、女性の嫉妬心を詠んだ作品であると分かります。
「別な人見てゐる彼のサングラス」の表現技法
体言止め「サングラス」
こちらの作品では末尾の「サングラス」が体言止めです。
体言止めとは、俳句の結びを名詞で止める表現技法で、そのシーンをイメージしやすくなります。
また同時にインパクトのある作品に仕上がり、読者の記憶に残りやすい作品となります。
「見てゐる」の部分の歴史的仮名遣い「ゐ」
こちらの作品は、「別な人見てゐる彼のサングラス」と「ゐ」の部分が、文語体の表現です。
作者である黛まどか氏は現代の俳人ですので、口語体で「別な人見ている彼のサングラス」と表記してもいいはずです。
しかし、あえて文語体にすることで、グッと印象が変わり、昭和から遠い時代に詠まれたような古めかしささえも感じられます。
「別な人見てゐる彼のサングラス」の鑑賞
素敵な女性がいるとつい見たくなってしまうのは、男性だけに仕方がないものです。しかし、女性にしてみれば自分だけを見ていて欲しいはずです。
そんな男女の性の違いが、ユーモラス的に詠まれているようにも感じられます。
一方で、「色の黒いサングラスをしているから自分の視線のやり場なんてきっと気づかないはず」という男性の浅はかな気持ちも読み取れます。
そんな彼の様子を見て「サングラスをしているから分からないと思っているのかしら・・。ちゃんと気づいているわよ。あなたの考えることくらいお見通しだわ」といった女心も強く伝わって来ます。
ちょっとした男女のやりとりも俳句にすると面白い作品に仕上がる事に気づかされました。
作者「黛まどか」の生涯を簡単にご紹介!
(湯河原町の中心部 出典:Wikipedia)
黛まどかは、1962年7月31日に神奈川県足柄郡湯河原町で生まれました。
1983年にフェリス女子学院短期大学を卒業。その後、富士銀行に勤務し、杉田久女と出会い俳句の世界に惹かれて行きました。
俳句結社「河」にて吉田 鴻司の指導を受けます。その後、角川俳句激励賞や山本健吉文学賞を受賞。
現代俳句の先駆者として活躍し、著名人達の会員制句会「百夜句会」の主宰者でもあります。
黛まどかのそのほかの俳句
- 旅終へて よりB面の 夏休
- 観覧車 より東京の 竹の春
- 虫の夜の 寄り添ふものに 手暗がり
- かまいたち 鉄棒に巻く 落とし物
- バレンタイン デーカクテルは 傘さして
- 可惜夜の わけても月の 都鳥