【松根東洋城の有名俳句 20選】俳句雑誌『渋柿』の主宰者!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音で構成される短い詩で、季節を表す季語を詠みこむことによって短い中にさまざまな情景を表現します。

 

今回は、明治から昭和にかけて活躍した「松根東洋城(まつね とうようじょう)」の有名俳句を20句紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

松根東洋城の人物像や作風

(金剛山大隆寺にある松根東洋城の墓 出典:Wikipedia)

 

松根東洋城(まつね とうようじょう)は、1878年(明治11年)に現在の東京都築地に生まれました。「東洋城」とは本名の「豊次郎」からとった俳号です。

 

高校時代、教員として赴任していた夏目漱石の教えを受けたことで俳句を始め、漱石に師事します。

 

その後、京都帝国大学を卒業した1906年に宮内省に入省。夏目漱石の手引きで正岡子規の指導を受けるようになったあとは「ホトトギス」に参加します。

 

1914年には大正天皇に「俳句とはどんなものか」と聞かれ、「渋柿のごときものにては候へど」と答えました。この返答が有名となり、1915年に創刊した俳句雑誌の名を「渋柿」と命名しました。

 

1916年には「ホトトギス」を離脱、1919年には公職も引き、俳句に専念します。週に1度開催した句会や渋柿一門を集めた俳諧道場など門弟の育成に熱心に携わり、門下には飯田蛇笏や久保田万太郎など有名な俳人を多く輩出しています。

 

1952年に隠居を宣言して「渋柿」の主宰を降り、1964年(昭和39年)に亡くなりました。

 

 

松根東洋城の作風は、高浜虚子の客観写生だけではなく松尾芭蕉の「生命を打ち込んで真剣に取り組むべきものである」とする独特の俳諧道に表れています。

 

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単なる表現技法でなく人間修行としての俳諧を志していました。

 

松根東洋城の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 からからと 鍋に蜆(しじみ)を うつしけり 』

季語:蜆(春)

意味:からからと鍋に蜆を移している。

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砂ぬきが終わったシジミを鍋に移して料理を作ろうとしている一場面を詠んだ句です。「蜆汁」はシジミを使用した味噌汁のことで、こちらも春の季語になっているので味噌汁を作ろうとしているのかもしれません。

【NO.2】

『 黛(まゆずみ)を 濃うせよ草は 芳(かんば)しき 』

季語:草は芳しき/草芳し(春)

意味:眉墨を濃くお引きなさい。春になり草木が芳しく萌え出ているように。

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「黛(まゆずみ)」とは眉を書く墨のことで、若い女性たちを見たときの句だと言われています。女性たちの生命力と、草木が芳しい香りとともに萌え出ている春を対比している一句です。

【NO.3】

『 のどけさに 寝てしまひけり 草の上 』

季語:のどけさ(春)

意味:あまりにのどかなので草の上で眠ってしまった。

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草原にごろりと横たわってすやすやと眠っている様子が浮かんでくる句です。ちょうどいい気温と風でうたた寝してしまう春という季節をよく表しています。

【NO.4】

『 春海の 伊勢海老やトロリ 葡萄酒煮 』

季語:春海(春)

意味:春の海でとれた伊勢海老をトロリとワイン煮にした。

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「伊勢海老」は新年の季語ですが、ここでは春の海でとれたものであるため季語は「春海」になります。伊勢海老のワイン煮はフランス料理などで見られる料理で、どこかのレストランで食べた時の一句でしょう。

【NO.5】

『 水取や 奈良には古き 夜の色 』

季語:水取(春)

意味:お水取りの日だ。奈良には古い時代から変わらない夜の色がある。

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「水取」とは東大寺のお水取りのことで、31日から14日にかけて行われます。この儀式は8世紀から続いていると言われていて、お水取りの日の夜ははるか昔と同じ風景が広がっていると感嘆している句です。

【NO.6】

『 青梅を かむ時牙を 感じけり 』

季語:青梅(夏)

意味:青い梅を噛む時に自分にも牙があるのだなと感じる。

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動物ほど顕著ではありませんが、人間にも犬歯などの牙のような形状の歯があります。硬い青梅を噛む時に歯が刺さり、これが人間の牙なんだろうなぁと考えているユーモアのある表現です。

【NO.7】

『 絶壁に 眉つけて飲む 清水かな 』

季語:清水(夏)

意味:絶壁に眉を付けるようにして飲む清水だなぁ。

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こんこんと湧き出る清水を飲むために、岸壁に顔をできる限り近づけて飲んでいる様子を詠んでいます。顔ではなく眉と表現することでギリギリまで顔を寄せているのが目に見えるようです。

【NO.8】

『 大和路や 麦生(むぎふ)に塔に 梅雨晴るる 』

季語:梅雨晴るる(夏)

意味:大和路は麦が生えているところや塔を見かけるところだ。梅雨も晴れてくる。

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「麦生(むぎふ)」とは麦の生えているところという意味で、麦畑のことでしょう。塔は奈良によく見られる古寺の五重塔などで、梅雨時の奈良の旅をよく表しています。

【NO.9】

『 青蛙 喉の白さを 鳴きにけり 』

季語:青蛙(夏)

意味:青蛙が白い喉をさらして鳴いている。

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青蛙は季語になっていますが、厳密にどの種類のカエルとは決まっておらず、緑色のカエル全般をさします。鮮やかな緑色と対比するように白い喉をしているので一際映えて見えたのでしょう。

【NO.10】

『 午下二時の しじまありけり 氷水 』

季語:氷水(夏)

意味:かき氷を食べている午後二時には静寂がある。

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季語で「氷水」と出てきた時には、氷を入れた水ではなくかき氷のことを意味します。暑い夏の盛りですが、午後二時に訪れた不思議な静寂に驚いている句です。

 

【NO.11】

『 秋薔薇や 彩(いろ)を尽して 艶(えん)ならず 』

季語:秋薔薇(秋)

意味:秋の薔薇が咲いている。色とりどりではあるのだが艶やかさはないようだ。

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バラの花びらは艶やかなビロードに例えられる品種もあります。秋に咲くバラは色の種類は多いがそういった艶やかさはないなぁという感想を表現しています。

【NO.12】

『 梨の肉(み)に しみこむ月を 噛みにけり 』

季語:梨(秋)

意味:梨の実にしみこんだ月を今噛んでいるんだなぁ。

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「肉」と書いて「み」と読む、梨の果肉のことです。月明かりに照らされ続けて収穫された実を食べて、この梨には月の光がしみこんでいるのだと感じるユーモラスな一句です。

【NO.13】

『 渋柿の 如きものにては 候(そうら)へど 』

季語:渋柿(秋)

意味:俳句とは渋柿のようなものでございます。

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この句は大正天皇の「俳句とはどういうものか」という問いに返答する形で詠まれました。一説には和歌を甘い柿、俳句を渋柿と例えたのではないかとも言われています。

【NO.14】

『 暁や しらむといへば 男郎花(おとこえし) 』

季語:男郎花(秋)

意味:夜明けだ。空が白むと同時に男郎花の花の白さも際立ってくる。

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「男郎花(おとこえし)」とは白い花を咲かせる花で、「おとこえし」と読みます。女郎花よりも花のつく数が多く堂々とした姿ですが、同じ白い花なので見分けるのは少し難しいかもしれません。

【NO.15】

『 遡(さかのぼ)る 百里の江なる 鱸(すずき)かな 』

季語:鱸(秋)

意味:百里の川を遡ってきたスズキなのだなぁ。

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スズキは淡水でも生きていける魚で、好物であるアユを追って内陸の県の川まで遡上することがあります。「百里」と表現していることから、作者が見かけたのもおそらく内陸の川でとれたスズキでしょう。

【NO.16】

『 武蔵野は 十一月の 欅(けやき)かな 』

季語:十一月(冬)

意味:武蔵野の十一月といえばケヤキの見事さだろう。

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「武蔵野」とは埼玉から東京にかけての武蔵野台地の一帯です。この地域には江戸時代に植えられたケヤキが多く、紅葉する様子はまさに11月の武蔵野を代表する風景と言えるでしょう。

【NO.17】

『 早稲田の夜 急にしぐれぬ 漱石忌(そうせきき) 』

季語:漱石忌(冬)

意味:漱石忌の早稲田の夜は急に冬の冷たい雨が降ってきた。

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「漱石忌(そうせきき)」とは夏目漱石が亡くなった129日のことです。早稲田で亡くなった漱石に思いを馳せる作者の内心を表すように、雨が降り出しています。

【NO.18】

『 庭裏や 木守(きもり)の柿の 冬夕(ふゆゆうべ) 』

季語:木守(冬)

意味:庭の裏には木守として1つ残した柿の実がぶら下がっている冬の夕べだ。

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「木守」とは、全て収穫しないで来年もよく実るように1つだけ実を残す風習のことです。冬の夕暮れにぽつんと取り残された柿の実がある絵画のような一句になっています。

【NO.19】

『 熊突(くまつき)や 爪かけられし 古布子(ふるぬのこ) 』

季語:熊突(冬)

意味:熊突の爪をかけられている古い綿の着物だ。

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「熊突(くまつき)」とはクマを狩る際に使われる槍のようなものです。ここでは保管されているときに危なくないようにか、古い綿の着物で覆われています。

【NO.20】

『 山風や 夜落ちしとこ 湖氷る 』

季語:湖氷る(冬)

意味:山から風が吹いている。夜が落ちたところの湖が凍っていく。

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湖がゆっくりと凍結していく様子を夜が落ちたからだと表現している詩的な一句です。山から吹き降ろす風も含めて凍えるような寒さであることがわかります。

以上、松根東洋城の有名俳句20選でした!

 

 

 

俳句仙人

今回は、松根東洋城の作風や人物像、有名俳句を20句紹介しました。

正岡子規や夏目漱石に学び、飯田蛇笏や久保田万太郎を門弟として輩出するという、近代の伝統俳句にとって重要な役割を果たしています。
近代は自由律俳句など多くの作風が生まれた時代なので、ぜひ同時代の俳人の俳句を読み比べてみてください。