日本の剣術にルーツを持つ伝統武術の一つである「剣道」。
競技としての意味合いはもちろんですが、剣道は稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」であると定義されています。「礼に始まり礼に終わる」という精神性を何よりも重んじているスポーツです。
今回は、そんな「剣道(部活)」をテーマに学生さんが詠んだ俳句を20句紹介します。
寒稽古
朝日を背にし
あと5本新俳句大賞。剣道の寒稽古かな pic.twitter.com/SrhdNz5XFv
— mayumi kuroshima (@kuroshimam) January 16, 2016
剣道(部活)おすすめ学生俳句ネタ例集【前半10句】
【NO.1】
『 道場に 気合が響く 蝉時雨 』
季語:蝉時雨(夏)
部員たちの気合いの声だけが響く夏の剣道場。心を静め、神経を集中させて精神統一している姿が想像できます。蝉の声と気合いの声だけ、無駄なものはなにもない空間を感じます。
【NO.2】
『 気を入れて 心を静め 千本素振り 』
季語:なし
剣道において、竹刀を振るという基礎的な部分はとても大切なものなのだそうです。素振りを1000回することはとても大変で辛いことだと思います。でもそれを乗り越えることは大きな自信になることでしょう。集中して素振りに取り組んでいる作者の姿が目に浮かびます。
【NO.3】
『 大寒の 面打つ声の 響きけり 』
季語:大寒(冬)
「大寒(だいかん)」とは一年でいちばん寒さが厳しくなる頃をいいます。気温が低く寒い剣道場に響く面を打つ声。寒さに負けることなく黙々と練習を続けることは簡単なことではないと思います。剣道は精神を鍛える、とよく言われますが、まさにそのことを表現した一句だと思います。
【NO.4】
『 頭から 水かけて果つ 夏稽古 』
季語:夏(夏)
「果つ」とは終わること・終了することを意味します。厳しい暑さの中での稽古。剣道場は室内とはいえとても暑い。そのような環境でも、心がぶれることなく集中して練習を行うことはとてもすごいことだと思います。ただ剣道の練習を積み重ねるだけではないという剣道の奥深さを感じます。
【NO.5】
『 張りつめた 静けさの中の 緊張感 』
季語:なし
剣道の練習をする光景。私語等の余計な雑音が一切ない剣道場の静けさがとても伝わります。静かな剣道場の中にピンと張りつめた緊張感。この緊張感を感じながら練習を積み重ねるからこそ、生徒たちの精神が鍛えられていくのでしょうね。
【NO.6】
『 剣道部 袴の裾から 冬が来る 』
季語:冬(冬)
剣道部の袴は裾が大きめに広がっているような形です。気温が低く寒い時期は、ここから冷たい風が入ってくるのでとても寒いようです。「冬が来る」という言葉のセンスがとても素晴らしく、光景を上手に表現しています。
【NO.7】
『 炎天下 面を干してる 剣道部 』
季語:炎天下(夏)
夏の厳しい暑さの中での剣道の練習だったのでしょう。面をしていると汗がダラダラと流れてきます。夏の暑さの中ならば尚更のことでしょう。面は使用後に手ぬぐい等で汗をしっかりとふきとり陰干しをしないと錆びてしまうこともあるそうです。夏の暑い時期の練習は道具の手入れも大変ですね。
【NO.8】
『 剣道の 素振り百回 秋日和 』
季語:秋日和(秋)
「秋日和」とは、秋らしい爽やかによく晴れた良い天気のことをいいます。剣道を極める上で大切なことは基礎である素振りをしっかりと行うことなのだそうです。基礎をしっかりと積み重ねることこそが技術の向上につながっていく、ということなのでしょうね。剣道は深いですね。
【NO.9】
『 右足裏 増量確信 剣道部 』
季語:なし
剣道では、右足を前に出して左足を後ろにおく姿勢が基本的な立ち姿勢なのだそうです。左足はかかとを浮かせほとんどの重心は右足にかかるため、右足裏が分厚くなるような感覚になるとのこと。剣道部である作者だからこそ分かる状況ですね。
【NO.10】
『 一振りに 想いを乗せて 我武者羅に 』
季語:なし
「我武者羅」とは良い意味合いでの言葉として、一つの目的に向かってひたすらに夢中になって取り組むさまをいいます。作者が、竹刀を一振りすることをとても大切なものと捉えて、集中して練習に取り組んでいる様子が伝わります。
剣道(部活)おすすめ学生俳句ネタ例集【後半10句】
【NO.11】
『 休まない 跳躍素振りで 次狙う 』
季語:なし
「跳躍素振り」とは、一挙動素振りとも言い、文字通り跳躍しながら素振りをすることです。跳躍するので安定した体幹が必要になります。練習試合で負けてしまいとても悔しい思いをした作者。でもすぐに気持ちを切り替えて「次 狙う」と気合を入れています。このような気持ちの切り替え、とても素晴らしいですね。
【NO.12】
『 寒いけど 頑張れ踏ん張れ 剣道部 』
季語:なし
厳しい寒さの中での練習。剣道場の床はひんやりと冷たく、さらに寒さを感じることでしょう。でも寒さに心が折れてしまうことなく、負けてしまうことなく、一生懸命練習を積み重ねている剣道部の生徒たち。「踏ん張れ」という言葉が素敵で心に響きます。
【NO.13】
『 剣道の 面に湿り気 夏の朝 』
季語:夏の朝(夏)
剣道の面は、練習を重ねれば重ねるほど、とても暑くて汗がいっぱいになってしまうことでしょう。夏の暑い時期の練習であればなおさらのこと。「面に湿り気」という言葉から、作者も面も汗だくになっている様子が目に浮かびます。
【NO.14】
『 竹刀ふり 我が手見れば まめばかり 』
季語:なし
毎日一生懸命剣道の練習を積み重ねている作者。基礎である竹刀の素振りを何度も何度も繰り返し行っていることがとても伝わります。「まめばかり」の手は、一生懸命練習をしている証。真っすぐに剣道に向き合っている作者の姿が想像できます。
【NO.15】
『 面取れば 湯気立ち昇る 寒稽古 』
季語:寒稽古(冬)
「寒稽古」とは、剣道の技術向上とともに、寒さに耐えながらしっかりと稽古をやり遂げることで、精神の鍛錬をするというものです。寒い時期に剣道場で行われる稽古。寒いはずなのに湯気が立ち昇るほど、心を静め集中して稽古している様子がとても伝わります。「湯気立ち昇る」という言葉がとても良いです。
【NO.16】
『 感覚を 忘れぬうちに タイヤ打ち 』
季語:なし
剣道部の練習で行ったことを忘れてしまわないように、すぐに自主練習をはじめる作者。一人稽古としてタイヤ打ちを何度も何度も繰り返す作者の姿が想像できます。剣道への想いがとても強いことが伝わります。
【NO.17】
『 稽古中 蝉に負けずに 声を出す 』
季語:蝉(夏)
剣道の稽古中に響く蝉の声。夏の暑い時期の剣道場での稽古であることが伝わります。大きな蝉の声だけが響く剣道場。その大きな声に負けないように、気合を入れて集中して声を出す生徒たちの姿が目に浮かびます。声を出すことも大切な稽古の一つですね。
【NO.18】
『 千本素振り 疲れてふらふら 休みたい 』
季語:なし
初めて千本素振りを行った作者。「千本」ですからとても苦しくて辛いことでしょう。でもその想いに負けることなく最後までやりきった作者。「疲れてふらふら」という言葉から、完全燃焼したことがとても伝わります。「休みたい」というのは本当に正直な作者の想いですね。
【NO.19】
『 面越しに 見えるアイツも 震えてる 』
季語:なし
剣道部の練習試合。稽古をするのとは緊張感が違うのではないでしょうか。作者も「見えるアイツも」もお互いに緊張しているのでしょう。「震えてる」という言葉は、二人の心のドキドキがとても上手に表現されており、こちらも同じように緊張するような感覚になります。
【NO.20】
『 竹刀振り 徐々に感じる 春の風 』
季語:春の風(春)
剣道において竹刀を振ることは基礎中の基礎であり、とても大切なことです。季節問わず一生懸命竹刀を振り続ける作者。ふと、暖かでおだやかな春の風を感じたのでしょう。竹刀を振って感じる風から季節の移り変わりを感じたのかもしれませんね。
以上、剣道(部活)に関する学生向け俳句ネタ例集でした!
今回は、剣道(部活)をテーマに学生さんが詠んだ俳句を20句紹介しました。
日本の剣術にルーツを持つ伝統武術の一つである剣道。
「礼に始まり礼に終わる」という礼節を重んじる武道の一つでもあります。
相手へ敬意を払い、思いやりの心を持つことは、日常生活においてもとても大切なことですね。
剣道部で、剣道との関わりの中で得たことをぜひ俳句にしてみてください。