【池西言水の有名俳句 20選】江戸時代の俳人!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音で構成される短い詩です。

 

十七音の中で韻律を踏みつつ季節を表す季語を入れることで、さまざまなことを表現します。

 

今回は、江戸時代前期という松尾芭蕉と同時期に活躍した「池西言水(いけにし ごんすい)」が詠んだ名句を20句ご紹介します。

 

 

俳句仙人
ぜひ参考にしてください。

 

池西言水の人物像や作風

 

池西言水(いけにし ごんすい)は1650年に奈良に生まれ、20代のときに江戸に出て俳諧を始めました。

 

大名俳人であった内藤風虎のサロンで頭角をあらわし、近世俳諧成立の立役者である松江重頼や高島玄札に師事しています。

 

談林派に所属していましたが、32歳のときに松尾芭蕉一門と交流を始めて芭蕉の蕉門に傾倒していったほか、東北や関西へ地方行脚し、最終的に京都に居を構えました。

 

40歳のときに詠んだ「木枯らしの果てはありけり海の音」が評判となり、「木枯らしの言水」と有名になります。

 

 

木枯らしの句あってこその自身であるとして、辞世の句は「木枯らしの」の句とし、73歳で亡くなりました。

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池西言水の作風は先鋭的なものを好み、登場したばかりの前句(七七の前句に合わせて五七五を詠むもの)や、雑俳と呼ばれる懸賞文芸も扱っていました。古風で堅苦しいものを嫌った談林俳諧から、芭蕉一門の蕉門俳諧に移るなど、新しいものを追い求める俳人だったのが池西言水です。

 

池西言水の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 菜の花や 淀も桂も 忘れ水 』

季語:菜の花(春)

意味:菜の花が咲いているなぁ。菜の花で川が見えなくて、淀川も桂川もまるで忘れ水のようにちらちらと見えるだけだ。

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「忘れ水」とは、野原に人知れず流れている川のことです。この句では菜の花の群生を野原に例えることで、大きな川がまるで忘れ水のように見えると表現しています

【NO.2】

『 神帰り 其座や袖の 花鎮 』

季語:花鎮(春)

意味:神様がお帰りになる。その座は舞台の袖だ。花鎮の祭りよ。

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「花鎮」とは「鎮花祭」のことで、奈良時代から奈良県の大神神社と狭井神社で旧暦の3月に行われてきました。花が咲く頃に流行する疫病を払うためのお祭りとされていて、現在でも執り行われています。

【NO.3】

『 破れ鐘も 霞む類か 鳰(にお)の海 』

季語:鐘も霞む(春)

意味:壊れた鐘の音も遠くから聞こえてくるような感じの気候だ、この琵琶湖の湖岸は。

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「鳰の湖」とは琵琶湖を意味します。「鐘が霞む」は春の季語で、遠くから鐘の音が聞こえてくるような霞んだ空で、湖畔から見る琵琶湖が霞んでいる様子が目に浮かびます

【NO.4】

『 猫逃げて 梅動きけり 朧月 』

季語:朧月(春)

意味:隠れていた猫が逃げて、梅の枝がかさりと動いた朧月の夜よ。

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春の夜に遊ぶ猫と、梅の花と朧月というまるで絵画のような一句です。夜の闇の中ではよく見えない猫や梅の枝が、朧月というぼんやりとした光の中で浮かび上がっています。

【NO.5】

『 ねこの子や いづく筏の 水馴竿(みなれざお) 』

季語:ねこの子(春)

意味:ねこの子がいるなぁ。どこの筏のみなれ竿だろうか、見慣れないねこの子だ。

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「水馴竿」とは使い込まれて水に馴れた竿のことを言いますが、「みなれ」という読みから「見慣れない」という言葉がかかるのが特徴です。この句は拾遺集の詠み人知らずの「大井川 くだす筏の 水馴棹 見なれぬ人も 恋しかりけり」を下地にしていると考えられます

【NO.6】

『 汲まぬ井を 娘のぞくな 半夏生 』

季語:半夏生(夏)

意味:水を汲まない井戸をのぞかないほうがいいよ娘さん。今日は半夏生の日だ。

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「半夏生」とは植物を意味しますが、同時に七十二候の1つで72日頃です。半夏生の日は空から毒気が降るとされ、井戸に蓋をしておくのが習慣でした。

【NO.7】

『 高根より 礫(こいし)うち見ん 夏の海 』

季語:夏の海(夏)

意味:高い山から小石を放り投げてみたい夏の琵琶湖であることよ。

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この句で海と詠まれているのは琵琶湖のことだと言われています。届かないことはわかっているけれど、高い山から投げたら届きそうだというユーモアのある一句です。

【NO.8】

『 薬玉や 灯の花の ゆるぐ迄 』

季語:薬玉(夏)

意味:色とりどりの鮮やかな薬玉が飾られているなぁ。花のような灯りが揺るぐほどの鮮やかさだ。

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「薬玉」とは55日の端午の節句に、薬草やお香を錦の袋にいれ、造花などで飾りつけたものです。江戸時代に入ってからは紙製の造花などを組み合わせて作るものが主流になっていて、現在でもくす玉などに受け継がれています。

【NO.9】

『 流れ去る 夜や奈良茶舟 時鳥 』

季語:時鳥(夏)

意味:流れ去っていく夜の奈良茶舟が見える。ホトトギスが鳴いている初夏だ。

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「奈良茶舟」とは奈良茶飯という「薄く入れた煎茶でたいた塩味の飯に濃く入れた茶をかけて食べるもの」を売っていた船のことです。大阪などでの乗り合い船を相手に商売していて、夜であることから店じまいをした後の船を見ていると考えられます

【NO.10】

『 伊勢海苔や 春を持越す 青すだれ 』

季語:青すだれ(夏)

意味:青々とした伊勢海苔だ。春を持ち越すような青さの青すだれのように見える。

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「海苔」は春の季語ですが、夏にもかかわらず春のようなという意味合いであり、固有名詞の伊勢海苔のため季語は「青すだれ」になります。青すだれはおろしたての畳のことであり、青みがかった緑の海苔が畳に見えたのでしょう

 

【NO.11】

『 芋洗ふ 女に月は 落ちにけり 』

季語:芋(秋)

意味:芋を洗う女に月が落ちてくるように掛かっている。

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芭蕉の句に「芋洗ふ 女西行ならば 歌よまむ」というものがあります。この句を下地にしていたかはわかりませんが、芋を洗う女性たちは度々俳句の題材にされていたようです

【NO.12】

『 此の川は うるかの郡(こおり) みよし野や 』

季語:うるか(秋)

意味:この川はうるかたちの街なのだろうか、吉野の川よ。

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「うるか」とはアユの塩辛のことです。おいしいアユの塩辛を吉野の地で食べたことで、名産地として称えています。

【NO.13】

『 法師にも あはず鳩吹く 男かな 』

季語:鳩吹く(秋)

意味:法師に会うこともなく狩猟のために鳩吹きをする男であることだ。

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「鳩吹く」とは猟師が狩りの時に獲物に気付かれないように、手を組み合わせて笛のように吹く合図のことを言います。殺生をしない法師と狩りをする男が対になった俳句です。

【NO.14】

『 日枝高く 吹きかへさるる 野分かな 』

季語:野分(秋)

意味:比叡山の高い山に吹き返されている野分であることだ。

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「日枝」とは古くから比叡山のことを指しています。山に阻まれて、野分(台風)の風がさえぎられていることを詠んだ句です

【NO.15】

『 城跡を 泣く人誰そや そばの花 』

季語:そばの花(秋)

意味:城の跡を見て、泣いている人は誰だろうか。往時を忍ぶものはなくそばの花が咲いている。

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池西言水は江戸時代の前期に活躍しているため、かつての城の跡にゆかりのある人がまだ存命だった時代です。往時を忍んで泣いている人と、咲き乱れるそばの花に諸行無常を感じているかのようです

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木枯らしといえば木々や家を揺らして音を立てるイメージですが、そんな木枯らしが行き着く果てが海であることに驚いています。言水はこの一句をもって有名になり、「木枯らしの言水」と呼ばれるようになりました

【NO.17】

『 炭売や 雪の枝折(しおり)の 都道 』

季語:炭売(冬)

意味:炭売りが歩いているなぁ。雪が木の枝を折った道標のように積もっている都への道を。

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「枝折」とは「しおり」と読み、道に迷わないように枝を折るなどして目印を付けていたことに由来します。都への道は何人もの人が歩いているため、その踏み跡がまるで枝折のように道標になっていたのでしょう

【NO.18】

『 はつ時雨 舌うつ海胆(うに)の 味も今 』

季語:はつ時雨(冬)

意味: 初時雨が降っている。舌を打つほどおいしい海胆の味も今こそ旬であるように感じるなぁ。

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ウニは春の季語ですが、旬は産地や種類によって変わってきます、作者が食べたウニは初時雨の頃が旬のウニだったのかもしれません。

【NO.19】

『 太箸や 御祓の木の あまりにて 』

季語:太箸(新年)

意味:新年を祝って太箸を使おう。この箸はお祓いされた木の余りだから、ご利益がある。

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「太箸」とは新年の習慣の1つで、正月に雑煮を食べるのに用いる箸です。折れることを嫌って丸く太く作るもので、目にしたことのある人もいるのではないでしょうか。

【NO.20】

『 花近し 髭に伽羅たく 初連哥 』

季語:初連哥(新年)

意味:生けられた花が近いなぁ。髭に伽羅のお香を焚いて挑もう、新年初の連歌会に。

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「初連哥」とは新年初の連歌会のこと、「伽羅」とはお香の一種のことを指します。新年初の連歌会への意気込みを感じる句です

以上、池西言水が詠んだ有名俳句でした!

 

 

俳句仙人

「木枯らしの言水」との異名も持つ池西言水について、人物像や作風、有名な俳句20選を紹介してきました。
松尾芭蕉以降の俳人たちとは違って、めずらしい季語を読み込むことの多い池西言水の俳句は一線を画しています。
同時代でも作風の違いで受ける印象がかなり変わるので、いろいろな人の俳句を読み比べてみてはいかがでしょうか。