【銀世界は冬の季語?】簡単にわかりやすく解説!!意味や季節感・俳句例など

 

俳句は五七五の十七音の韻律と、季節を表す季語を詠むというルールで成立する文学です。

 

季語の季節や表す天候や行事、動植物を理解することは、俳句を詠む上で重要な要素の1つになっています。

 

今回は、「銀世界」という単語が季語かどうかについての解説と、「銀世界」を使用した俳句、同じような意味を持つ季語について解説していきます。

 

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

銀世界は冬の季語ではない!

 

「銀世界」は一面の雪景色を表すのに使われる単語ですが、季語ではありません。

 

季語の定義としてはさまざまな出版社が出す「歳時記」に収録されるものを指しますが、「銀世界」を収録したものはないため、俳句の世界では季語になりません。

 

「銀世界」という単語は最近になって作られたのではなく、江戸時代初期の俳人たちも使用しているのが特徴です。近年作られた単語は歳時記に収録されることが遅れる場合がありますが、江戸時代から使われていても季語とは考えられていないことに注意してください。

 

「銀世界」という単語を使いたい場合はほかに冬や雪など、冬であることを示す季語を使う必要があります。

 

俳句仙人

枠組みにとらわれない無季俳句として詠むことも可能なので、どのような景色や心情を伝えたいか考えて添える季語を吟味してみましょう。

 

銀世界に関する有名俳句【5選】

 

【NO.1】坂本朱拙

『 初雪に あふみの茶店や 銀世界 』

季語:初雪(冬)

意味:初雪が降ってきて、近江の茶屋が銀世界の一部になった。

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この句は松尾芭蕉が「三尺の山も嵐の木の葉哉」という俳句を詠んだ近江(現在の滋賀県)の茶屋で詠まれた一句です。茶屋で一服していたところ初雪が降り、あっという間に一面が真っ白になってしまった様子を詠んでいます。

 

【NO.2】松永貞徳

『 雪のうへの 月や金色 銀世界 』

季語:雪(冬)

意味:雪の上の月は金色に輝き、地は雪で銀色に輝いている。

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月の金色と雪の銀色を対比させている絵画のような一句です。月が出て晴れていると雪が月の光を反射して淡く輝き、幻想的な風景を作り出します。

 

【NO.3】正岡子規

『 豊年の みつぎの雪か 銀世界 』

季語:雪(冬)

意味:豊作にするための貢物として雪が降ったのだろうか。一面が銀世界だ。

俳句仙人

雪解け水の量に関わってくるため、農業では雪が多いか少ないかは翌年の収穫のために関心を払う事象です。銀世界と表現されるほど降雪があったことに対して、「豊年」という秋の収穫を表す単語を出すところに作者の観察眼の鋭さが垣間見えます。

 

【NO.4】池内友次郎

『 狐等に 銀世界雪 降りつづく 』

季語:雪(冬)

意味:キツネたちにも銀世界になるまで雪が降り続いていく。

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キツネたちがいる場所に雪が積もっていくという意味と、キツネの毛皮に雪が積もって白くなっていくという意味の2つが「銀世界」に掛かっています。作者はキツネたちの様子をじっと室内から見つめていたのでしょう。

 

【NO.5】角光雄

『 雪の銀世界より 嫁来たりけり 』

季語:雪(冬)

意味:雪が降る銀世界から私のお嫁さんは来たのだ。

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吹雪の中から訪れる女性としては「雪女」が有名で季語にもなっていますが、ここでは雪国から来たという意味だと考えられます。一面に雪が降ることがめずらしい地域で生まれ育つと、どこか神秘的に思えてくる感慨が「けり」に込められているようです。

 

銀世界に関連する季語を紹介!

雪景色

銀世界に最も意味が近い季語として「雪景色」が挙げられます。雪が降っている風景にも、辺り一面に雪が積もっている風景にも使えるので、写実的に表すのに便利な季語です。また、街中や自然の中など場所も選ばない季語のため、積雪を表現したいときに便利な季語になっています。

 

雪時雨

「時雨」は冬の初めにしとしとと降る雨のことを指しますが、「雪時雨」は雪混じりの雨が降っている状態のことを指します。冬の日本海側や内陸の山沿いでは湿った空気が吹き込んで雪になりますが、「雪時雨」の季語が表す時期は雨と雪の境界にあたる天候を表すのにぴったりです。

 

冬野

「冬野」はその名のとおり冬の野原のことです。似た意味の季語に「枯野」がありますが、「冬野」は枯れ草だけではなく雪が降り積もった雪原の意味も持ちます。「枯野」のような寂しい風景ではなく、雪の野原を表したいときに使用される季語です。

 

吹雪

強風を伴う降雪のことを指す気象用語で、冬の季語でもあります。ホワイトアウトと呼ばれる視界が真っ白になる現象や低体温症の危険もある恐ろしい現象ですが、江戸時代から多くの俳句に詠まれてきた景色でもあります。

 

雪女郎

雪国のおとぎ話に出てくる「雪女」や「雪女郎」も季語になっています。おとぎ話では吹雪の夜に家の戸を叩く美しい女性として描かれますが、吹雪による音や視界が悪いことによる錯覚への注意を寓話的に表現したとも考えられています。白く美しい雪と、大きな音を立て視界を惑わせるほど恐ろしい雪という二面性を表す季語になっています。

 

さいごに

 

今回は、「銀世界」という言葉の意味と使用されている俳句、関連する季語を解説しました。

 

「銀世界」は現在では歳時記に載っていないため季語ではありませんが、「雪」に関連する季語を入れて詠まれることが多いです。

 

銀色という色を伴う単語で作者が見た光景を伝えやすいため、季語を工夫して「銀世界」を俳句に詠み込んでみてください。

 

俳句仙人

最後まで読んでいただきありがとうございました。