【菊の有名俳句 20選】秋の季語!!数々の俳人が詠んだキクの有名俳句を紹介

旅の途中に奈良に立ち寄ったときの一句で、ちょうど重陽の節句の日でした。多くの家やお寺が菊を飾り香りが漂う中で、古都奈良の清廉な雰囲気がよく表現されています。

9月9日の重陽の節句に菊の開花が間に合うかどうか、やきもきしている心情を詠んでいます。重陽の節句は江戸時代では重要なお祭りだったため、菊が咲くかどうかは関心事の一つだったのでしょう。

子狐たちが秋の野原で遊んでいる様子を詠んだ俳句です。観賞用の立派な花をつける菊ではなく、小さく可憐な花をつける野菊というところが子供の狐とよく対比されています。

「菊の着綿」とは、重陽の節句の前日の夜に菊の花に綿を被せ、夜露で濡れたその綿で体を拭うと若返り、無病息災になるという風習です。紫式部の「菊の露　わかゆばかりに　袖ふれて　花のあるじに　千代はゆづらむ」という和歌が下敷きにあります。

一部の地域には菊の花を食べる風習があります。食用菊をさっと茹でて花びらのシャキシャキとした食感を楽しむものですが、「むしり込んだり」という表現から手近にあった菊の花を入れてしまったようにも読み取れる面白さがある句です。

江戸時代では菊は頻繁に品種改良を続けられ、多くの園芸品種が誕生しました。花の色も豊富で、ピンクやオレンジ、緑など多種多彩です。そんな状況を踏まえた上で、黄菊と白菊こそが菊であるのにと嘆いているのがこの俳句になります。

本来菊の開花時期には霜は降りないことが多いですが、特別寒い日の朝だったのでしょう。せっかく咲いた菊の花が霜に負けてしまった光景の句です。

菊の花は重陽の節句で長寿を願われます。去年と同じように今年も何事もなくまた菊の花が咲く、安定した世の中への願いが込められた一句です。

作者の親しかった友人の訃報に際して、病床の中で作られた手向けの俳句です。中七に強い命令形を使うことで、病床で動けない我が身と亡くなってしまった親しい人への悲しみの激情が感じられます。

「あしたゆふべ」とは「朝夕」と書きます。朝日と夕日に照らされて、真っ白な菊が古くから詠まれる色に染まっている光景を詠んだ句です。

現在でも駅などで、秋になると菊が飾ってある場所があります。また、駅の近くの花壇などでも菊が植えられていることもあり、まさに「どの駅に下りても」菊の花が出迎えてくれる季節です。

「まどかなる」とは「円かなる」と書き、月がまん丸になっている満月のことを意味しています。菊の丸い形の花が咲き誇る夜に、月も丸く照っている写実的な俳句です。

前句が月夜の様子なら、こちらは昼間の様子です。日の光を受けて、菊の花びらがきらきらと光っている様子を表しています。

かつて人々の通行を管理した関所の跡も、作者の時代にはすでに役目を終えて整備もされなくなっています。そんな関所跡に交通の安全を願ってかお地蔵さまが据えられ、菊の花が野に咲いている穏やかな風景を詠んだ句です。

「菊人形」とは、顔以外の部分を菊の花を使って表現した人形です。服や小物の細部まで菊の花の色や立体感で表現します。昼間ならば花だとわかる菊人形ですが、黄昏どきにはどこか怪しい美しさを感じる俳句です。

菊の花は強い香りが多く、その芳香を称えられることの多い題材です。ここでは菊の花から離れた野原でも香りが漂ってくる様子を表現しています。

黄昏どきとは日が沈む直前の夕暮れのことです。周りがよく見えなくなるため、「誰そ彼」とも言われます。そんな黄昏どきに、姿は見えないけども強い香りを漂わせた菊が近くに咲いている気配を、「なまめく」という花に使うにはめずらしい表現で表した句です。

菊は野生のものもありますが、最近では学校や寺社などで鉢植えで育てられている光景が一般的でしょう。たくさんの菊の花の向こう側に今まさに太陽が沈もうとしている様子が、「夕日いま」という表現から浮かんできます。

今回は、菊を季語に使った有名俳句を20句紹介してきました。
菊は秋を代表する花であると同時に、重陽の節句という祝い事に使われる花のため、多くの俳句が詠まれている題材です。
菊の花を見かけたら、見事な花を愛でながら一句詠んでみてはいかがでしょうか。