鷺はペリカン目サギ科に属する鳥の総称で、川や水田などに飛来する水鳥の一種です。
日本には春から夏に渡ってくる夏鳥、越冬のために冬に渡ってくる冬鳥、一年中棲息している留鳥などがいるため、古くからさまざまな鷺が俳句の季語として親しまれてきました。
夕風や水 青鷺の脛(はぎ)をうつ(与謝蕪村) 【意味】暑い日差しが傾いて、ようやく夕風が立ち染めてきた。川岸では青鷺が脛を水に浸して立っていて、何とも涼しそうだ pic.twitter.com/CyfhuonyrW
— iTo (@itoudoor) August 5, 2013
森の楼薫風に立つ鷺も見て(河東碧梧桐) #俳句 #夏 pic.twitter.com/ono4eVUio0
— iTo (@itoudoor) July 26, 2015
今回は、そんな「鷺」に関する季語を季節ごとに紹介、解説していきます。
目次
鷺に関する季語にはどのようなものがある?
「鷺」単体での季語はなく、鷺の種類や状態によって表す季節が変わるのが特徴です。
今日の帰りみち。蒼鷺を見つけました。(青鷺は夏の季語)。 pic.twitter.com/hzdA6qChvX
— 木曜 (@coffee_sugar_) September 21, 2014
また、鷺の季語は鷺の姿を模した植物や行事、贈答品などが多く、例えとして使われることが多かったのが伺えます。
鷺草@九品仏。(鷺草:夏の季語) pic.twitter.com/hrBbD2vI45
— 豆ぐみ (@megmin2012) August 17, 2014
以下に、季節別の鷺に関する季語の例を挙げていきますので、参考にしてみてください。
【春の季語】鷺の巣・鷺苔・鷺芝・白鷺苔
【夏の季語】白鷺・青鷺・鷺草・連鷺草・鷺尻刺・津和野の鷺舞
【秋の季語】造り鷺
【冬の季語】冬鷺・残り鷺・鷺足
次に、これらの季語の中から特に知っておきたい季語をピックアップしてご紹介します。
鷺に関する季語【春編】
鷺の巣
鷺は3月下旬から4月下旬にかけて、高い木の上や藪の中に皿状の巣を作ります。鷺の中には黒鷺などの単独で巣を作る種類と、白鷺や小鷺などの集団で集まって巣を作る種類があり、後者は「鷺山」と呼ばれる集団営巣地を形成することで知られています。
鷺苔
「鷺苔」はゴマノハグサ科の多年草で、花の形が鷺が羽根を広げた姿に、葉がコケに似ていることから名付けられました。「鷺芝」とも呼ばれ、春に白い花を咲かせる植物です。紫色の花を咲かせる「紫鷺苔」などいろいろな種類があります。
鷺に関する季語【夏編】
白鷺
「白鷺」はサギ科の白い体色を持つ鳥の総称です。大鷺、中鷺、小鷺のほかに、黒鷺の白色型も含まれています。繁殖期が夏であることから夏の季語とされていますが、越冬するために飛来するものや一年中留まるものなども多く、1年を通して見られる鷺です。
青鷺
サギ科アオサギ属の鳥で、羽根の色が青灰色であるのが特徴の鷺です。全長が1m近い大型の鷺で、本州では一年中見かける留鳥のため江戸時代から俳句に詠まれています。川辺や湿地帯のほかにも水田で見かけるため、かつては身近な鳥であったことが伺えます。
鷺草
「鷺草」はラン科の多年草で、全国の湿地帯に生育します。花が羽根を広げた白鷺に似ていることから「鷺草」と名付けられていて、7月から9月にかけて開花します。多くの園芸種が作られていて、香りを持つ種類も作られるほど園芸家の中では人気です。
鷺尻刺(さぎのしりさし)
「鷺尻刺」とは、畳などの材料となる三角藺(さんかくい)または藺(い)の別称です。万葉集の時代から「しりさし」と呼ばれているこの植物は花のつぼみを包む苞が鋭く、鷺の尻も刺してしまいそうであることから付けられました。
津和野の鷺舞
「津和野の鷺舞」は、島根県津和野町の弥栄神社で行われる神事です。室町時代から廃絶されることなく続いていて、例年7月20日と27日に行われます。雌雄の白鷺の姿を木で模した羽根で表現し、町内各所を舞いながら練り歩きます。元は京都の祇園祭で行われていましたが、祇園祭では山鉾などが主流となって忘れられていき、昭和になって小規模ながら復活しました。
鷺に関する季語【秋編】
造り鷺
「造り鷺」とはイカの甲で鷺を模した形を作る贈答品です。旧暦8月1日は八朔(はっさく)と呼ばれ、稲穂が出始める時期でした。そのため、「田の実の節句」「八朔の祝」として祝われ、親族や主従の間で盛んに贈り物をする風習がありました。「造り鷺」はこの八朔の祝に贈られたものだと言われています。
鷺に関する季語【冬編】
冬鷺
鷺の中には日本を越冬地とする種類がいくつかいます。「冬鷺」として有名なのは白い小鷺と灰色を帯びた青鷺ですが、地域によっては白鷺や黒鷺なども見掛けるため、どの地域で詠まれたかによって鷺の種類が変わってくる季語です。
残り鷺
「残り鷺」とは、冬になる前に越冬地に帰り損ねた鷺のことです。青鷺や黒鷺は本州や四国などでは渡り鳥ではなく通年見かける「留鳥」ですが、東北地方や白鷺の一部などは越冬のために暖かい地域へ帰っていきます。怪我などで帰り損ねた鷺や、冬なのに見かける白鷺などを「残り鷺」と詠むことが多いです。
鷺足
「鷺足」とは竹馬のことです。竹馬の原点は田楽舞に使われる道具の一種で、一本の棒の上と中ほどに横木のある鷺足という道具だとされています。上の横木を両手で持ち、中の横木に乗って鷺が歩くように演じることからこの名が付けられました。
さいごに
今回は、鷺に関する春夏秋冬の季語を解説してきました。
鷺は日本のどの地域に飛来するかによって夏に飛来する夏鳥、冬に飛来する冬鳥、一年中見られる「留鳥」と変化します。
どの地域でどの季節の鷺を詠むのか気をつけて俳句を詠んでみましょう。