京都旅行や修学旅行の定番スポットとしても有名な「銀閣寺」。
今回は、「銀閣寺」を題材にしたオススメ俳句20句をご紹介します。
銀閣寺
癒される空間でした pic.twitter.com/mN5W67BiYe— のぶ (@deranobu39) December 30, 2015
(銀閣(観音殿) 出典:Wikipedia)
「銀閣寺」は、京都府境地氏左京区にある臨済宗相国寺派の寺院で、正式名称は「東山慈照寺」といいます。
室町時代中期の東山文化を代表する建築物で、1994年に「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されました。
「銀閣寺」は、室町時代に将軍足利義政が金閣寺を参考に建てたものです。
しかし、8年間続く建築工事の中、「銀閣寺」の完成ならずして義政は亡くなってしまいます。義政が亡くなった後、義政の死を弔うため臨済宗の寺となり、「慈照寺」と呼ばれるようになりました。
「銀閣寺」は銀箔ではなく、「黒いうるし」で塗られたと言われ、きらびやかな「金閣寺」と対照的に、禅宗文化特有の静かで簡素な美があります。また、「銀閣寺」は観月のために建てられたものともいわれています。
昨日は本降りの雨でしたが
銀閣寺の静かな品のある佇まいはやはりいいもんですね♪ pic.twitter.com/sx2KvBUJFZ— どらごん (@yotsumiryu) November 18, 2015
銀閣寺を題材にした有名俳句【10選】
【NO.1】与謝蕪村
『 銀閣に 浪花の人や 大文字 』
季語:大文字(秋)
意味:銀閣寺に参る人びとの中に、大阪の人がいることだ。大文字が灯される日のことである。
「大文字」とは、八月十六日の夜に行われる、京都の盆行事の一つです。
東山に大の字が灯され、続いて妙法、船形、左大文字、鳥居形に火が灯されます。
その日、銀閣寺の前では、先祖供養などの目的で護摩木を書きます。
「浪花の人」(なにわのひと)とは、大阪の人のことです。
京都の地、銀閣寺で大阪弁が聞こえ、各地から大文字を見るために人々が集まっていることを、蕪村は実感している句です。
【NO.2】右城暮石
『 薄雪を 乗せし薄氷 銀閣寺 』
季語:薄氷(春)
意味:銀閣寺では、薄氷が薄雪を乗せている。
「薄氷(うすらい)とは、春の季語です。
次第に暖かくなり春めいてきた頃、急に寒さが戻り、池や水たまりなどに薄い氷が張ることをいいいます。
「薄氷」は、太陽の光ですぐに溶けるような薄い氷です。
銀閣寺の周囲には、薄い氷がはりその上に薄雪がのっています。
静かな銀閣寺の情景が浮かんでくる句です。
【NO.3】芥川龍之介
『 春寒や 竹の中なる 銀閣寺 』
季語:春寒(春)
意味:竹林の中に銀閣寺がある春寒のことだなあ。
季語「春寒(はるさむ)」とは、立春をすぎてからもまだ寒さが訪れることをいいます。
この俳句では係り結びの法則が使われ、係助詞「や」によってで助動詞が連体形「なる」となっています。係り結びにより、竹林の中にある「銀閣寺」の姿が強調されています。
【NO.4】富安風生
『 銀閣寺 門前の田の 案山子かな 』
季語:案山子(秋)
意味:銀閣寺の門前の田に、案山子が立っていることだ。
「銀閣寺」の門前に田が広がり、そこに案山子(かかし)が立っています。「銀閣寺」周辺の、秋の実りを感じる句です。
【NO.5】四明
『 茶の花や 細道ゆけば 銀閣寺 』
季語:茶の花(冬)
意味:茶の花が咲く細道をゆけば、銀閣寺につくことだ。
季語「茶の花」は、「茶の木」の花のことです。「茶の木」は、初冬に白く小さな花を咲かせます。「茶の花」の白色と、「銀閣寺」の黒塗りの色。二つの色の対比により、美しい情景が浮かび上がります。
【NO.6】小沢碧童
『 山茶花は 白一色ぞ 銀閣寺 』
季語:山茶花(冬)
意味:銀閣寺の庭に咲く山茶花(さざんか)は、白一色であることだ。
銀閣寺の庭には、四季の花が多く咲きます。
その庭にある山茶花の木は、白一色の花が咲いているのです。
黒に近い色の「銀閣寺」と、白一色の「山茶花」。
二つの色の取り合わせが、とても色鮮やかな情景を、かもしだしています。
【NO.7】山口誓子
『 銀のなき 銀閣驟雨 ひた濡らす 』
季語:驟雨(夏)
意味:銀箔がない銀閣に驟雨が降り、直接濡らすことだ。
夏の季語「驟雨」とは、「しゅうう」と読み、夕立を伴ったにわか雨のことをいいます。
銀閣寺は、銀箔で貼られているのではなく、壁に黒漆塗りがされています。
誓子が訪れた、銀閣寺で降る夕立を伴ったにわか雨は、銀閣寺の黒漆塗りの壁を濡らしていくのです。
【NO.8】紀陽
『 正面の 椿の花が 銀閣寺 』
季語:椿の花(春)
意味:正面に椿の花が咲いているのが銀閣寺だ。
季語「椿の花」は春を代表する花です。
赤や白の色鮮やかな椿と、銀閣寺の色の対比が印象的な句です。
【NO.9】日野草城
『 新緑に いよいよ古き 伽藍(がらん)かな 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑にいよいよ古さを感じる伽藍であることだ。
「伽藍」とは、僧侶が集まり仏道修行する場所のことです。
足利義政の時代には、銀閣寺に数多くの伽藍が建てられていたといわれていますが、兵火による焼失のため、現在では銀閣を含む二棟のみが残っています。
「新緑」のみずみずしい色合いにより、銀閣寺がますます古さを感じていくことだ、と作者は感じています。
【NO.10】景桃
『 名月や 慈照寺殿の 濃蒔絵 』
季語:名月(秋)
意味:名月が慈照寺殿の濃蒔絵を照らす。
「蒔絵」(まきえ)とは、日本の伝統的な漆芸の技法です。
器に半透明の漆で細い筆を使って絵を描き、その上に金粉や銀粉など色のついた粉をまきつけて模様を浮き上がらせます。
「慈照寺殿」は「銀閣寺」のこと。名月が、「銀閣寺」の濃蒔絵を照らす、美しい情景を描いています。
銀閣寺を題材にした素人オリジナル俳句【10選】
【NO.1】
『 砂山に 五月雨落ちて 銀閣寺 』
季語:五月雨(夏)
意味:砂山に五月雨(さみだれ)が落ちる銀閣寺のことだなあ。
中学生が詠んだ句です。
「砂山」とは、銀閣寺の名所の一つ「銀沙灘(ぎんしゃだん)」と呼ばれる砂庭のことでしょう。
「銀沙灘(ぎんしゃだん)」は、直線の縞模様があり荘厳な感じを受けます。そこに、五月雨がしとしとと降っているのです。
【NO.2】
『 銀閣寺 大人のよさは まだわからん 』
季語:なし
意味:銀閣寺大人はよいというけれど、そのよさは自分にはまだわからない。
小学生が詠んだ、思わずくすっと笑ってしまう句です。
小学生にとって、銀閣寺は金閣寺に比べて質素なものなのでしょう。
「大人は銀閣寺のわびさびが良いというけれど、自分にはまだその良さはわからない」、小学生の素直な感想が面白い句です。
【NO.3】
『 銀閣寺 白く輝く 雪景色 』
季語:雪景色(冬)
意味:銀閣寺が白く輝く、雪景色のことだ。
中学生が詠んだ句です。
一面の雪景色の中、雪をかぶった銀閣寺も白く輝いて見えます。
冬の銀閣寺の美しさが、伝わってきます。
【NO.4】
『 草餅と お茶をたしなむ 銀閣寺 』
季語:草餅(春)
意味:草餅とお茶をたしなむ銀閣寺のことだ。
中学生が詠んだ句です。修学旅行で寄った、銀閣寺近くのお茶屋さんで、草餅と抹茶を飲んでいるのでしょう。
「たしなむ」の語句が、草餅や抹茶だけでなく、銀閣寺の質素な美しさをも味わえるようになった、作者の大人びた目線を感じさせます。
【NO.5】
『 春深し 歴史悲しい 銀閣寺雲 』
季語:春深し(春)
意味:春がいよいよ深まっていく中、その歴史が悲しい銀閣寺であることだなあ。
中学生が詠んだ句です。
季語「春深し」とは、桜も散り春がいよいよ深まっていくことをいいます。
「銀閣寺」の歴史を知り、銀閣寺の桜の散る様子を見ながら、「あはれ」を感じている作者。義政にまつわる応仁の乱などの悲しい歴史や、義政が銀閣寺の完成ならずして亡くなった無念さを実感したのでしょう。
【NO.6】
『 季夏の庭 今につたえて 銀閣寺 』
季語:季夏(夏)
意味:夏の終わりの庭を、今の時代にも伝える銀閣寺のことだ。
「庭」は「銀閣寺」の特別名勝の庭園を指します。
この「庭」は、義政が造営した頃より現在も残る、世界遺産の庭園です。
「今につたえて」の語が、遥かな時の流れを感じさせます。
【NO.7】
『 金閣寺 銀に変われば 銀閣寺 』
季語:なし
意味:金閣寺は、銀に変われば銀閣寺だ。
中学生が修学旅行で詠んだ句です。
「金」が「銀」にかわると「銀閣寺」になる、と素直に詠んだ視点が面白い句となっています。
【NO.8】
『 銀閣や 石のかたちの 蝉の貌(ぼう) 』
季語:蝉(夏)
意味:銀閣寺は、石のかたちの蝉のすがたのようだ。
「蝉」の色と、銀閣寺の色の取り合わせが絶妙な句です。
蝉の生命力の強さと、銀閣寺の凛とした美しさが表現されています。
【NO.9】
『 銀閣の 白壁汚れ 薄暑光 』
季語:薄暑光(夏)
意味:銀閣の白壁が薄暑光のもと、薄汚れて見える。
「薄暑光(はくしょこう)」とは、初夏のやや汗ばむ頃の、まぶしい太陽の光のことをいいます。
初夏の太陽のもとに見る銀閣寺の白壁が、時を経て薄汚れていることに作者が気づいた句です。
【NO.10】
『 水面にも 月の道あり 銀閣寺 』
季語:月(秋)
意味:水面にも月の道がある銀閣寺のことだ。
俳句で「月」は、秋の季語としてあつかわれます。
「月の道」とは、満月が水面に映り、細長い光の道のように見えること。
銀閣寺は、観月のために作られたともいわれます。
銀閣寺を囲むように回遊式の池があり、そこに「月の道」があらわれたことを詠っているのでしょうか。とても幻想的な句です。
以上、銀閣寺を題材にしたオススメ俳句でした!
今回は、「銀閣寺」をテーマにした俳句を、有名なもの10選とオリジナルの俳句10選にわけて紹介してきました。
「銀閣寺」は、金閣寺のようなきらびやかさはありませんが、室町時代の閑静な美を現在にも伝えています。
「銀閣寺」の俳句には、日本独特の美意識「わび・さび」を感じるものが多くあります。
修学旅行で題材としても取り上げられることがあるかもしれません。
ぜひ、「銀閣寺」の美しさを詠った俳句を鑑賞して参考にしてみてください。