長野県といえば善光寺や更科の月、姥捨山、八ヶ岳、上高地と多くの観光地や歌枕がある県です。
古来より長野を舞台に詠まれた俳句は多く、さまざまな地名が詠まれています。
春風や
牛に引かれて
善光寺 小林一茶
#春の俳句#小林一茶 pic.twitter.com/6UdSUqfFv7
— 桃花 笑子 (@nanohanasakiko) April 13, 2015
宴かな
鬼無里の里の
水芭蕉*鬼無里(きなさ)は長野県の
水芭蕉の群生地で有名な地名です#俳句 #写真haiku pic.twitter.com/bO88IWOcwc— とんぼ (@tonbo_yu_yu) July 1, 2016
稲わらを
干して暮れゆく
刈田かな#俳句 #写真haiku #長野県 pic.twitter.com/9ow0Xu0cbJ— とんぼ (@tonbo_yu_yu) October 18, 2015
今回は、「長野県」を舞台として詠まれた俳句を20句ご紹介します。
「長野県」を舞台として詠まれた有名俳句【10選】
【NO.1】小林一茶
『 春風や 牛に引かれて 善光寺 』
季語:春風(春)
意味:春風が吹いているなぁ。牛に引かれて善光寺参りをしよう。
善光寺について詠まれた句の中でとても有名な一句です。おだやかな春にゆったりとした牛に引かれてお参りするという長閑さを感じます。
【NO.2】小林一茶
『 そば時や 月のしなのの 善光寺 』
季語:そば時(秋)
意味:新そばの時期だなぁ。更科の月で有名な信濃国は善光寺もある。
「そば」「月」「善光寺」と長野県の風物詩を詰め込んだ一句です。旅行会社のキャッチコピーのような面白さがあります。
【NO.3】松尾芭蕉
『 おくられつ おくりつはては 木曾の秋 』
季語:秋(秋)
意味:人を見送り、見送られと続けていった果てに木曽の秋の風景にたどり着いた。
『更科紀行』に「別れつ果ては」となっている句がありますが、同じ句だと思われます。人生を表したような一句で、出会いと別れの果てには秋のような色が変わっていく風景なのだと詠んだ句です。
【NO.4】杉田久女
『 紫陽花に 秋冷いたる 信濃かな 』
季語:紫陽花(夏)/秋冷(秋)
意味:紫陽花が咲いているが、秋のように冷え込んでくる信濃の地であることだ。
この句は季重なりの句で、「紫陽花」と「秋冷」のどちらか、もしくは両方を季語とするのか解釈が分かれます。紫陽花の咲いているときに寒くなったのか、秋になっても紫陽花が咲いているのか、どちらの意味にも取れるため2つを季語として載せました。
【NO.5】与謝蕪村
『 浅間山 煙の中の 若葉かな 』
季語:若葉(夏)
意味:浅間山が煙を上げている。煙の中にまぎれるように若葉が見えているなぁ。
浅間山は噴火を繰り返している山で、作者の時代では噴煙が上がっていたことがわかります。そんな中でも若葉が生い茂る生命力の強さを詠んだ句です。
【NO.6】加藤楸邨
『 梓川 瀬音たかまる キヤンプかな 』
季語:キヤンプ(夏)
意味:梓川の川の音が大きくなっていくキャンプであることだ。
梓川は上高地などを流れる川で、景勝地として知られています。キャンプ場に近づくにつれて川の音が大きくなっていく様子が、アウトドアへの高揚感につながっている句です。
【NO.7】前田晋羅
『 乗鞍の かなた春星 かぎりなし 』
季語:春星(春)
意味:乗鞍岳の彼方に春の星が限りないほど瞬いている。
乗鞍岳は標高3,000mをこえる飛騨山脈にある高山です。そんな高い山々が連なる姿を影のようにして、春の星が瞬いている写真のような一句になっています。
【NO.8】飯田蛇笏
『 藍々(あおあお)と 五月の穂高 雲をいづ 』
季語:五月(夏)
意味:深い藍色をした五月の穂高連峰が雲の中から出てきた。
青ではなく藍を使うことで、深い藍色をした山であることが想像できます。夏の雲の中からひょっこりと山頂を覗かせた様子が浮かんでくるようです。
【NO.9】山口誓子
『 姥捨へ せり上り来し 青棚田 』
季語:青棚田(夏)
意味:姥捨山にむかってせり上がるように配置されている青い棚田だ。
姥捨山は古来より歌枕として詠まれ続けてきた地です。そんな姥捨山に向かって、生活の拠点となるような棚田が向かってきている様子にたくましさを感じています。
【NO.10】大野林火
『 さくらしだれ 諏訪の浮城 湖つづき 』
季語:さくらしだれ(春)
意味:しだれ桜が咲いている。諏訪の浮城と呼ばれた高島城は、諏訪湖と湖つづきになっているように見える。
「諏訪の浮城」とは高島城のことで、現在では諏訪湖から少し離れていますがかつては諏訪湖のほとりにあったとされています。浮島のように見えたことから異名がつけられましたが、周囲が桜で遮られた状態では未だに浮城に見える、と詠んだ句です。
「長野県」を舞台として詠まれた一般俳句ネタ【10選】
【NO.1】
『 御開帳 善光寺には 人の波 』
季語:御開帳(春)
意味:ご開帳の時期をむかえた善光寺は人が波のように押し寄せている。
善光寺のご開帳は多くの観光客が参拝に訪れます。波のようにひっきりなしに押し寄せる人々を、少し高いところから観察しているような句です。
【NO.2】
『 車窓には 善光寺平 遠案山子 』
季語:案山子(秋)
意味:車窓からは遠くの善光寺平に案山子が立っているのが見える。
「善光寺平」とは長野盆地のことで、古くから善光寺が建っていることから善光寺平と呼ばれてきました。車窓を眺めていたら案山子がぽつんと立っているのが見えたというノスタルジックな句です。
【NO.3】
『 詰め込んだ 木曽路の夏の 釣り忍 』
季語:釣り忍(夏)
意味:詰め込んだような釣り忍がかかっている夏の木曽の道だ。
「釣り忍」とは竹などで作った芯に苔を巻き付け、さらにシノブを巻き付けてさまざまな形に仕立て上げる夏の風物詩です。旅の途中で!まるで土台にギュウギュウに詰め込んだような釣り忍が掛かっていた面白さを詠んでいます。
【NO.4】
『 木曽の路 宿場ですする 走り蕎麦 』
季語:走り蕎麦(秋)
意味:木曽への道にある宿場で立って走り蕎麦を食べている。
木曽路は中山道と呼ばれる昔の街道の一部で、現在でも当時の宿場町の様子が再現されています。そんな木曽の宿場で蕎麦をいっぱい引っ掛けている様子が、当時の旅人のようで面白い一句です。
【NO.5】
『 霧隠れ 開店前の 浅間山 』
季語:霧(秋)
意味:霧に隠れてしまって、まるで開店前のような浅間山だ。
霧に隠れてしまった浅間山の状態を、開店前のお店に例えています。霧は気温が上がってくれば消えていくものが多いため、まさに開店前といった雰囲気です。
【NO.6】
『 秋雲の 流れてしずか 浅間山 』
季語:秋雲(秋)
意味:秋の雲が静かに流れていく浅間山だ。
浅間山は現在でも活発に活動を続けている活火山です。そんな浅間山も静かに秋の雲を受け止めている静謐さを詠んでいます。
【NO.7】
『 春霞 白き乗鞍 仰ぎ見ん 』
季語:春霞(春)
意味:春の霞がかった、残雪で白い乗鞍岳を仰ぎ見ている。
乗鞍岳は標高が高いため、春になってもまだ雪が残って白いままです。雪の白さと春霞の白さを掛けている一句になっています。
【NO.8】
『 畑から 八ヶ岳まで 梅雨晴間 』
季語:梅雨晴(夏)
意味:畑から八ヶ岳までがよく見える梅雨の晴れ間だ。
畑から八ヶ岳がよく見える風景のいい場所で詠まれた俳句です。梅雨の間は雲が視界をさえぎっていますが、久しぶりの晴れ間で八ヶ岳が顔を出した爽やかさを感じます。
【NO.9】
『 葡萄園 見渡す限り 八ヶ岳 』
季語:葡萄園(秋)
意味:ぶどう園に来た。見渡す限り八ヶ岳の高い山が見える一帯だ。
八ヶ岳は標高が高いため、近い場所では視界のほとんどを山が占めます。ぶどう園のぶどうの他は八ヶ岳しか見えないなぁという感嘆の一句です。
【NO.10】
『 薄氷(うすらい)に 神渡れずの 諏訪湖かな 』
季語:薄氷(春)
意味:薄氷が張ったが、御神渡りの現象が起きずに神様は渡れなかった諏訪湖であることだ。
諏訪湖は冬になると全面結氷する湖です。1 月から2月になって気温が緩み始めると氷が盛り上がるように割れて「御神渡り」という現象が起きますが、起きない年もあります。この句が詠まれた年は起きなかったため、神様は渡れなかったなぁと感じています。
以上、「長野県」を舞台として詠まれた俳句でした!
今回は、長野県を舞台にした有名な俳句とオリジナル俳句を10選ずつ紹介してきました。
さまざまな歌枕や地名が詠まれているのが特徴で、長野の豊かな自然を思わせます。
季節ごとにいろいろな顔を見せる長野県を訪れた際は、ぜひ一句詠んでみてください。